【感想・ネタバレ】科学的とはどういうことかのレビュー

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Posted by ブクログ

 今年は板倉さん、加古さんという、子ども向けに本格的かつ刺激的で、面白い科学の本を書いてきたお二人が亡くなって、非常に寂しく、初学者向け科学の本の将来が少し不安にもなった。
それぞれの分野の専門家は、面白い書き手がたくさん出てきて愉しみなのだが、板倉さんや加古さんのような科学全般に目配りできて、かつ書く力のある人は殆どいない。左巻さんとか?竹内薫は物理学系は強いけど他はそうでもないし。

 この本は初版が1977年だから、出版されてもう40年以上経っている。だから、絵柄は古いし(といっても仮説社っていつもこういう絵なのよね~。絵だけでも描きなおしてくれたらと思う)、簡単にできる実験にマッチ箱が使われていて、昔はマッチ箱やフィルムケースは簡単な実験や観察によく使われたものだけど、今となってはなかなか手に入らない。特に昔飲食店で配っていたような薄いマッチ箱は。
そういう時代の変化はあっても、この本はやはり刺激的で示唆に富んだ本だと思う。何より読んで面白い。
 実験の前に仮説を立てる。(そしてどんな仮説も、否定しないところが先生として素晴らしい。)結果が出たら「なぜか」を考える。この大切さを忘れてはいけないし、これがあるからこそ科学が面白いのだ。
 「科学」という言葉がどうしてできたかとか、コックリさんは「狐狗狸さん」だとか、エピソードも楽しいが、虫眼鏡、塩水の実験などは、今でも家庭や学校で簡単にできるし、深く考えさせられる。
 個人的に一番感慨深かったのは、STAP細胞騒ぎみたいなものは、実は昔から度々あったという記述。(もちろんこの本はSTAP細胞騒ぎよりずっと前に書かれている。)
1924年には当時日本の物理学界の最高権威だった長岡半太郎が、水銀を金に変換することに成功したと発表。(何年と書かれていないが1896年以降)のちに京大教授となった村岡範為馳が蛍の出す光からX線類似の放射線が出ていると発表。

P215
科学の世界では、あとが続かないと、その報告者がいくら学会の権威でも、その発見の真実性が否定されるようになっている。「あのときはたしかにうまくいったんだ」と強弁してもダメである。人びとの十分納得のいくような形で繰り返し証明されなければ、それは本当のこととされないのだ。

P216
なぜ、客観性を誇りとする科学者までが、そういうたくさんのまちがった大発見をするのか。それは、たいていの場合、功をあせりすぎるからである。

長岡の発表はドイツでの水銀還金実験の成功の発表後、村岡の発表もX線発見直後。そういえばSTAP細胞もiPS細胞のノーベル賞受賞のすぐあとだったなあ。

P217
科学者たちも大発見の功をあせりすぎると超能力者同様になるのである。

板倉さんはSTAP細胞騒ぎの時「ああ、またか」と思ったでしょうね、きっと。世間(マスコミ、一般人)はかなりの間本当はSTAP細胞はあるんじゃないかと言っていたけど、冷静な科学者は当時から否定的だった。
人間って同じことを繰り返すんだなあ。「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」ってホントだなあ、と。

STAP細胞ほどでなくても、超能力や占いや「○○を食べれば健康」とかすぐ信じてしまう人も是非この本を読んで、「科学的」に考える訓練をするといいと思う。

たびたび読み返したい、いい本だった。

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2018年06月16日

Posted by ブクログ

大人も子供も楽しめる科学とはこういうものなのかと感じました。
特にマッチ箱の実験です,まだ実際にやってませんが,近いうちにやろうと思っています。
前半部分だけでも十分読む価値があると思います。科学読み物という感じでしょうか。

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2009年10月04日

Posted by ブクログ

。「いたずら博士」の異名を取る筆者らしく、第一部では簡単な実験から仮説を立ててその考え方の筋を紹介し、実験を行って仮説の検証を行うという、科学的思考のトレーニングを行う。
 本書の初版が刊行されたのが1977年だが、これと前後してユリ・ゲラーの来日や漫画「凄ノ王」などの連載が行われていたりもしているので、よほどのブームだったのだろうか。第二部では超能力ブームを例にとって、マスコミ報道に対しての受け手の科学的な見方についてまで、きわめて平易に解説している。マスメディアにも一定のプロパガンダや商業宣伝は潜んでいるわけで、これを見破るにはウソの構造をよく理解し、常に情報を冷静に分析し、自分なりに反芻して理解していくしかないのだろうか。しかし、科学的な思考方法は、現実の現象の相当多くの場面に対して有効なはずである。

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2015年07月13日

Posted by ブクログ

批判的思考の参考文献に指定できる。
考えることを億劫にせず,みずから考えて確かめてみる。論理的な操作による帰結には抽象的な思考が欠かせない。確証バイアスがかかることを知っているだけでも,ものごとを冷静に見られるのではないだろうか。
新書版700円位で販売してもらえれば学生でも買えるのでは。

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2014年09月02日

Posted by ブクログ

朝日新聞社の教育雑誌「のびのび」に連載された「いたずら博士の科学教室」と「いたずら博士の談話室」の文章を元に構成された本。

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2013年12月08日

Posted by ブクログ

 「仮説実験授業」を提唱し実践した先生として有名な筆者である。子どもたちに予想させ、実験をして白黒をはっきりさせるというのが、ごくおおざっぱなところだ。あまりにもおおざっぱ過ぎてたぶん怒られるだろうけど。

 本の前半では、確かに興味深い実験がたくさん紹介される。「水が97度で沸騰する」とか、「綿1キロと鉄1キロではどちらが重いか」とか、虚を突かれるような実験があり、その結果や種明かしを読むにつけ、筆者の目の付け所に感嘆するし、さぞ魅力的な授業が展開されるのだろうとわくわくしてしまう。こういった実験を核に置いた上で行う予想や討論というのは、とても楽しくしかも知的なものになるに違いない。

 しかし、この本は授業のマニュアルでも、実践紹介の本でもない(そういう本は別にある)。本の題名にあるとおり、ものの把握の仕方や推論の仕方など、思考の態度や方向性をテーマとした本なのだ。

 そのことは「応用編」である後半を読むとよくわかる。スプーン曲げといった「超能力」について科学的に分析し批判を試みる内容なのである。筆者の主張も実にはっきりとしてきて、ある意味痛快なのだけど、「ト学会」の活動などを知っている目で読むと、特に目新しいものでもなく興味深いものでもない。作者の主張の正当さにただうなずくのみである。

 「先入観や思いこみにとらわれず、考えたり実行したりすることが大切なのだ」という主張が全体をとおしてすっきりと伝わってくる。それを、理屈ではなく具体的に感じさせてくれる前半の実験の数々が、やっぱり一番おもしろい。

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2013年03月11日

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