【感想・ネタバレ】ストリートファイターアートワークス 極のレビュー

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Posted by ブクログ

ゲームショップにそれまでなかった"格闘ゲーム"という棚を作り上げた『ストリートファイター』の全シリーズを網羅したアートワーク集。表紙を飾っているのはその中の代表的な女性キャラクターである春麗だが、皆さまはお忘れではないだろうか。それまで春麗といえば大ヒット漫画『聖闘士星矢』の紫龍の恋人の名前だったという事を。それくらい『ストリートファイターⅡ』という格闘ゲームが日本のアニメ・漫画・ゲーム文化に与えた影響はとてつもなく大きい。

80年代~90年代において、日本のアニメ、ゲームの中のヒロインのほとんどが、「とにかく金髪で目とおっぱいを大きく!」という西洋主義の美意識によって作られていた。つまり上半身を重要視していた訳だったので、この春麗というキャラクターの目が細く、髪も黒く、腰回りがたくましいという、どちらかというとアジア人特有の下半身重視の特徴は、それまでの美しさの文脈外にある魅力だった。そしてそれは同時に、キャラクターデザインを担当していた通称"あきまん"こと安田朗さんをはじめとした制作スタッフの高い観察力と探究心を一番わかりやすく証明したかたちなのである。

つまりあの素晴らしい動き、ゲーム性、バランス、音、ありそうでないような緻密な背景に至るまですべてに共通しているのは、これまでのゲームの模倣ではなく、徹底的なリアリティへの追及だ。その証拠にこの画集の太いこと。タウンページと同じくらいの分厚さだが、これでもアートワーク中心で、ゲーム自体に関する細かい設定画などは一部を除いてカットされているので、相当な時間と研究量の上に、スト2というゲームは成り立っていたのである。だから春麗以外のキャラクターはもちろん、どのページを開いても1日中眺めていられるような情報量がこの本には詰まっている。

今や日本のアニメ・漫画・ゲームの中でも頻繁に見るようになった黒髪の女の子。彼女たちはみな、春麗という母親と、カプコンという父親が死闘の末に奪い返した子供たちなのである。そしてこの1冊こそ、その闘いの記録なのだ。

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2013年09月05日

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