【感想・ネタバレ】幽霊―或る幼年と青春の物語―のレビュー

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Posted by ブクログ 2023年07月28日

私の青春時代という時に何度も読み返した作品。
久しぶりに読みたくなったので購入して読んでみた。
今読むとどう感じるのだろうかと少し危惧するような気持ちもあったが、とても面白く読むことができた。
文章が美しく叙情性あふれていて、ストーリーのようなものはほとんど無いのだが文章を読むこと自体を楽しんで読ん...続きを読むでいける。
青春期の心の揺らぎや感性の鋭敏さが描かれていて、青春時代の私がこのあたりに共感して読んでいたことが思い出された。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2022年12月03日

自伝的小説。幼少期をありのまま、皮膚感覚が蘇るくらいねっとり描く。姉、母、父、その喪失。忘却に沈んだ記憶をたぐる。ばあや、叔父、従兄。自分と境遇は違うけれど、なぜか懐かしさを感じる。その具体性が魅力。遊び、会話、植物、昆虫、心情の変化。おかゆに残る梅干しの赤。そこに読むものを引っ張っていく力がある。...続きを読む序盤が特に良い。家族を失い、病気を患い、ばあやとも死別。戦争。糸が切れた凧のように山を歩き、自然の中で自分と向き合う。心理学的に研究できそうな深みがある。後半は思春期に入り、少女への渇望と羞恥心の狭間で揺れる。

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Posted by ブクログ 2020年05月23日

物語後半、主人公は少年期の記憶を思い出す。そのとき、読者も自分自身の少年期の記憶を思い出す、そんな美しい体験をもたらす、美しい小説です。

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Posted by ブクログ 2016年05月25日

“ぼく”というある人間の心の中にある神話を語る、追憶の物語。彼の語る言葉は彼自身のものであって、決して読み手のものにはならない。繰り広げられるイメージも漂う匂いも手触りも、彼がありったけの言葉を以て伝えようとしているもの全て、似通っている所はあるとしても決して読み手の中の神話とは重なり得ない。けれど...続きを読む人が自分の記憶の奥底に沈む“何か”を追い求めようとするその衝動自体は、きっと誰しもが見覚えのある感情であるはずだ。大抵の人はその衝動を形として認識することはないし、その”何か”にたどり着く前に忘れ去ってしまう。しかし”ぼく”は手を緩めることなくその何かを追い求めついには手にするに至る。その全過程が、ここには執拗なまでに詳細に言語化されて刻まれている。
人の心を過去の記憶へと突き動かす感情の形を初めて知ったと思えた。この世のものは、名前を見つけて初めて人の眼前に立ち現れる。
個人の心の中の神話、それは決して過ぎ去った幸福の絵図などではない。それはただなぜか、その陰影のひとつひとつ、手触り、温度のようなもの全てをそのままどこかに刻印しておかなければと苦しい程に思い詰めずにはいられない、そういう言いようもない“何か”だ。人がその姿を捉えようともがく時、名前を付けることは出来ずとも、せめてその輪郭を何かに焼き付けようとして生まれる物語がこの世には多くある。そういうものを書く人、求める人の無意識の意識の流れを、この物語を通して初めて知ることができたと思えた。

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Posted by ブクログ 2011年02月01日

辻邦生が、その柔らかい瑞々しい文体、文章に嫉妬した様に、やはり静かなその世界は彼(北杜夫)の最高傑作かもしれない。

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Posted by ブクログ 2009年10月04日

美しい文体で、美しいモチーフを用いて、記憶をめぐる物語を描き出す。紡ぎ出された物語もまた美しいのは必然とも言える。
昭和初期、幼い少年の記憶で幕を開け、敗戦前後の高校生の追憶を中心にこの物語は語られる。
非個性的な彼の感覚を通して淡々と描かれる現実と非現実の世界は幻想的でもある。

他人の心を理解す...続きを読むることが不可能である以上、「難解である」という感想はとても生まれやすい小説だと思います。山場もありません。それでも、その世界の美しさに、心を動かされます。きれいな文章です。
耽美よりの方、和風好きでかつ洋物に心惹かれるという方なんかにおすすめです。(H19.04.30)

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Posted by ブクログ 2009年10月04日

実は北杜夫はこれと「怪盗ジバコ」しか読んだことがない(苦笑)もともと家にあった本だから、たぶん叔母か母が買ったものだと思うんだけど。中学生のとき読んでガツンと頭をぶったたかれたような気がしたのを覚えてます。

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Posted by ブクログ 2023年10月09日

現代では情報過多で時間に追われるように過ごす人が多く、このように自分と向き合って自分で考えて何かを見出していくことができる人は少ないだろうと感じる。あらためて、自然と向き合ってじっくり考えて人のために行動することを意識したいと感じた。

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Posted by ブクログ 2015年06月07日

幼い頃のことを、幼い心が感じた通りに、しかし独特の美しい文章で綴った小説かな、と思いつつ読んで、自分の幼い頃も記憶の蓋が開いたように思い出され、いい小説だな、好きだなと読み進めるうち、思い付くままどころか、かなり巧緻に構成された完成度の高い小説だということが分かり、圧倒された。
トーマス⚫マンを読み...続きを読む返したくなった。

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Posted by ブクログ 2011年03月02日

北杜夫さんも全集を、しかもうっかり愛蔵版を買ってしまったくらい好きです。

なにか一冊ならどれを選ぶでしょう。

「航海記」?
「楡家」?
「少年」?

いろいろ考えた結果、これだろうと。
身につまされるというかボクにとって追体験しやすい内容だったから。

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Posted by ブクログ 2009年10月04日

初めて読んだのが中学生の頃だったから、私も大概ませた頭でっかちのガキだったんだろう。
「死」と「人生」と「生きる」ということを繊細に、しかも美しく書いた本書の内容を当時どれだけ理解していたか怪しいものだが、それから何回読み返しても変わらず切なく、哀愁を帯び、そうして愛しい話だ。
安易に論評を加えるの...続きを読むは控えるが、「これ、読んでみろ」と差し出したい本の一冊である。
著者の(ほぼ)処女作といっていい時代に書かれたものだというのに、こんなにクオリティが高いのも驚きの種。

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Posted by ブクログ 2023年10月14日

おぼろげな幼年期の追憶。見た記憶がないのにしばしば重なる母の姿。自然の中に浸かって五感で感じる神秘な世界に酔う。2023.10.14

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2023年01月09日

当たり前ですけど児童向けと全然違いますね…。言っていることはわかりますが結局何が言いたいのかよくわからない部分もありました。僕の力不足なんですが。
うーんどんな話かって言われると全く説明できません。ただ自然の描写がとにかくすごくて、しっかり読むと自然の生々しい感覚が味わえます。特に虫の情報がすごい。...続きを読む著者は大の虫好きだったようです。

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Posted by ブクログ 2021年06月21日

北杜夫 処女小説「幽霊」

難しい

テーマは「死の不安の克服」と捉えた
母への追憶が、母の異質性に結びつき、母(自然)との一体性から 死の不安を克服した小説と捉えた

タイトル「幽霊」の意味
異質な存在や死んだ家族がいる世界と捉えた。幽霊は 死への不安と死の願望の両義性や 家族との一体性を象徴する...続きを読むのだと思う


母の異質性と父との同質性の対照性
死に選ばれ美しく死んだ母と姉、苦しみながら死んだ父との対照的に描写した意味は、病気に苦しむ自分は 母姉と違い、父のように死ぬことを受け入れたと捉えた


終盤で目立つ自然を讃歌するような描写の意味
国破れて山河あり的な自然讃歌が終盤に大量に綴られることの意味が難しいが、死の不安を克服した充実感や生への渇望と捉えた


序文(無意識の中にある心の神話としての追憶)と結文(運命そのものである原始からの大地のひびき)の関係
自分の無意識の中の母 と 自分の目の前の自然 を同一視したものと捉えた

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Posted by ブクログ 2019年06月26日

大自然との交感の中に、激しくよみがえる幼時の記憶、母への慕情、少女への思慕――青年期のみずみずしい心情を綴った処女長編。

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Posted by ブクログ 2018年12月31日

★3.5。
作家の代表作の一つであることに疑いがないのと同時に、若さに由来する何というか密度もその特徴ですかね。故に読者を選ぶ作品かと思われ。
しかしこの作家、徹頭徹尾私小説家なんすかね、その後の作品にも現れるエピソードが既にこの作品でも描かれてます。その意味では日本を象徴する作家と考えるべきかもし...続きを読むれませんな。

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Posted by ブクログ 2018年11月05日

子供のころ、家の本棚にこの本の単行本版がならんでいた。お化けや妖怪(水木しげる系ね)のお話が好きだったわたしは「あの本を読みたい」と親に訴えて、あんたがおもっているような本じゃないんだよ、難しい本なんだよと、たしなめられていた。子供心に釈然としない、あきらめきれない思いが残ったのを覚えている。

...続きを読む者が20代前半の頃に書いた作品で、副題のように、幼年時の記憶だとかマザコンみたいなものが主題。言われるとたしかにセンチメンタルだし若い感じがある。でも文章がすっきりしているので、センチメンタルさも嫌味にならない。ユーモラスな語り口であるとか、昆虫の描写には後の作品にも通じる北杜生らしさがある。

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Posted by ブクログ 2018年10月03日

おそらくはユング心理学を還元法に用いて
いま・ここにある私(作者)から捏造された過去の記憶の物語
トーマス・マンの影響を指摘されるが
教養小説というより、偽私小説とでも呼んだほうがしっくりくる
とはいえ、自分を大きく見せようとするでもない
性のよろこびや、人間としての生きかた
それに、死に対する畏れ...続きを読むが、幼心に目覚めていく有様を
やや気張った文章で書いている
その手法には、いま読んでも清新さを感じるが
クソみたいなナルシズムの産物…と言われると
それもまた認めざるを得ない

北杜夫のデビュー作で、もとは自費出版だったという
13冊売れたとか

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Posted by ブクログ 2009年10月04日

【本書より】「ママがそう言ったわ。気の毒な人にだけ、幽霊が住み込んじゃうんだって。あなたは気の毒な人だって」
  彼女はまた笑った。まるで誰かに喉かなんぞをくすぐられたときのように笑ってみせた。
  「僕も幽霊を見るよ」
  「そう?」
  少女はまじまじと、つぶらな、まだすこし虹彩のあおみがかった...続きを読む目を瞠いて、こちらを見上げた。どことなく、気の毒そうに。

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