【感想・ネタバレ】たまゆらのレビュー

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Posted by ブクログ

39歳で女流官能小説家の結城霞(ゆうき・かすみ)は、有名画家の個展で知り合った53歳でイラストレーターの神城鴻(かみしろ・こう)に出会い、手紙のやり取りをするようになります。夫の篤生(あつお)との冷めきった関係に生んでいた彼女は、しだいに彼に対して心のときめきを覚えるようになり、やがて2人は男女の関係となります。

神城は、最初に霞といっしょにホテルに入ったとき、彼女の両手を縛ってSMプレイしたいと告げると、驚きながらも彼の要望に応えてくれます。その日は2人は身体を重ねることはありませんでしたが、その後も繰り返し逢瀬を重ねていくうちに、霞は神城のことを「パパ」と呼び、しだいにアブノーマルなプレイを受け入れてくれるようになります。

しかし、やがて霞は神城のうちに、夫との関係に倦んでいる彼女自身よりもずっと深い心の闇を抱えていることに気づくようになります。そして彼女は、神城以外の男との関係を求め、6歳年下で、バー「燻煙」のマスターである蒼井(あおい)という男と旅行に出かけますが、著名な小説家となった彼女に近づきがたいものを感じた蒼井は、彼女に手を出そうとしません。その後霞は、若い頃に肉体関係を結んだことのある50歳近い間野克之(まの・かつゆき)と一夜をともにしますが、むろんのこと彼女の心は満たされません。

そんなある日、霞は神城から支笏湖へ旅行に誘われますが、夫との旅行の予定があったために断ってしまいます。ところがその後、神城が事故死したという報せが彼女のもとに届けられ、霞は自分が彼を死に追いやったのだと確信します。

女流官能小説家である著者本人を思わせるようなヒロインの心情を巧みに描き出した性愛小説です。当初は、神城のキャラクターがやや平板だと感じましたが、最後に彼の自殺の原因が「藪の中」とされることで、神城へ向けられた霞自身の心に焦点が絞り込まれていく構成に感心させられました。

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2017年08月22日

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