【感想・ネタバレ】解夏のレビュー

\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

4作ともとても良い話でした。
文章や言い回しがとてもきれい。言葉選びが素敵。

解説にある、未来・現在・過去を全ての作品に盛り込んで、その後どうなったんだろうと余韻を残す終わり方は秀逸。
さだまさしは天才なのか?

サクラサクがイチオシでした。

0
2024年01月25日

Posted by ブクログ

ネタバレ

両手どころか両足の指まで使っても足りないほど、私には、この世で怖い人、怖い物、怖い事がある。あまりにも多すぎて並べられないほどだが、それでも、最も、一番、絶対に怖い事は決まっている。それは、視力を失ってしまう事だ。病気、怪我などで、何も見えなくなる事を、私はこの世で一等に恐れている。
そんな臆病な私の心にぶっ刺さってくる小説が、この『解夏』だ。映画と連続テレビドラマになっているので、読んだ事がある方も多いだろう。もしかすると、その人たちも、私と同じように、目が見えなくなる、つまり、本を読めなくなる事が最大の恐怖である人かもしれない。もちろん、さだまさしさんのファンって人もいるだろう。当然と言ってしまうのは失礼かもしれないが、この『解夏』は文章の構成が、さだまさしさんの歌のように美しかった。映画とドラマ、どちらが上か、それは決められない。その上で、あえて断言しよう、この原作が最高だ、と。
ある日、唐突に、目が見えなくなる事が決定している病に罹る主人公。彼の、自分が陥った災厄と向かい合い、受け入れ、時に、恐れおののき、絶望に浸り、そして、そんな自分を支えてくれる者の大切さを痛感し、自分が進むべき道を自分の眼で見据え、ついに、その時を迎える、この感情の流れ、その描き方、これが素晴らしい。大胆と繊細、実力がなければ、両立させる事が叶うはずのない要素が一つとなって、読み手の心を揺さぶり、涙腺を崩壊させてくる。果たして、私は、己の目が病気に食い潰され、「読書」が出来なくなる時、どのような選択を下すんだろうか、と考えながら、読み進め、答えを出せぬまま、読み終わってしまった・・・皆さんは、どうしますか?

この台詞を引用に選んだのは、これは、さだまさしさんにしか、さだまさしさんだからこそ書ける、男の心の弱い面だな、と感じたので。
性差別と言われてしまうかもしれないが、男の弱さってものは、女性には理解や共感がし難いものだ、と思う。もちろん、男だって、女性の弱さを、正確に把握するのは不可能だ。
と言うか、人間は全員、違う弱さを抱えていて、一つとして同じ弱さはないんだから、他人の苦しみを100%理解するなんて、無理なのだ。
アナタの辛さが私には理解できますよ、と言う奴は、基本的に嘘吐きだ、と私は思ってしまう。
何だか、何を言いたいんだか、自分でも不明瞭になってしまったんだが、まぁ、要するに、この弱さの表現は的確だ、と感じたのだ。
自分の中にある弱さ、怖いもの、と直面した時、ほとんどの男は、こういう状態になってしまうんじゃないだろうか。
そうなってしまってしまった以上は受け入れるしかない、と頭で考えて結論を出し、心に納めたつもりでも、結局、それは自分を騙していたに過ぎない。
この作品では、失明に対する恐怖ではあるにしろ、他の事に対する恐怖であっても、やはり、男は、こういう風に取り乱してしまうだろう。きっと、私もこうなると思う。
しかし、こんな風に取り乱す事を、恥ずかしい、とは思わない。
これこそが、人間らしさじゃないだろうか。
怖いモノは怖い、それは受け入れるしかない。
みっともなく取り乱してしまうからこそ、心に生じる余裕もあるんじゃないか?
業と行は、一人一人で違っているし、取り乱し方も異なるだろう。
大事なのは、生きる事を諦めず、希望を捨てず、弱い自分をあるがままに認めてやる、それだと私は思いたい。
男は、自分の弱さを糧にし、どんなに辛い状況に追い込まれたとしても、自分の人生を、自分だけの力で切り拓き、自分だけの物差しを杖にして、自分のペースで前進していくしかないんだから。
うーん、結局、この台詞の良さを上手く伝えられないなぁ・・・まだまだ、修行が足りないか。
次の瞬間、隆之は空に向かって「ああっ!」と大声で叫んだ。
今まで魂の奥底に押し込めてきた得体の知れない絶望的な怒りが、発作のように突然に隆之の身体の奥の、そう、内臓の底から火を噴きながら駆け上がってきたような叫び声になった。
言葉にならない感情が隆之めがけて襲いかかってくる。
哀しさと、悔しさと、恥ずかしさと、寂しさと、怒り、そして不安が一斉に隆之を襲う。
「ああっ!」
もう一度叫んだあと、隆之は自分の右手で拳を作り口にあてがい、強く噛んだ。
俺は怖いのだ。本当は怖くて怖くて逃げだしたいのだ。
俺は強くない。俺は本当は弱虫なのだ。
ああ、一体俺はどれほどの悪いことをした報いでこんな目に遭うのだろう。
なぜ俺だけがこのような目に遭わねばならないのだ。
誰か、お願いだから、助けてください。
ばあちゃん、助けてください。
親父、助けてください。
自分で噛んだ右手の痛みが必死で隆之の背骨を支えた。
「助けて」だけは絶対に言わないと決めた言葉だったはずだった。
「ああっ!!」
隆之は振り絞るようにもう一度叫んだ。(by天の声)

0
2023年09月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

標題作は読み進めるのがつらい。

『秋桜』(あきざくら)は、感動のツボを心得た中編。

『水底の村』は少し冗長な気がしないでもないがホッとできる温かさ。

『サクラサク』は、家族、会社、認知症、思慕、いろいろな思いを交錯させながら余韻を残す読後感。

4作に共通しているのは、良い出来事であれ、悪い出来事であれ、人生の分岐点、臨界点を迎えたときの登場人物たちの心の動き。

そして、重松清さんもさだまさし好きなんだろうな。

愛溢れる解説が花を添える。

僕は小学校から高校にかけて、「歌手・さだまさし」の大ファンで、今でも時々、
『長崎小夜曲』、『驛舎』、『夕凪』、『加速度』、『療養所』、『つゆのあとさき』、『フレディもしくは三教街―ロシア租界にて―』などを気が向いたときにカラオケで歌う。

小説家としてもすごいな、と今回改めて感じた。

読んでよかった。

サンキュー、オススメ、ありがとう!

①解夏(げげ)
小学校教師を辞め、婚約も破棄し、故郷に戻ってきた隆之は、母親にその理由を言い出せずにいた。

②秋桜(あきざくら)
自分に辛く当たる姑、喜久枝の叫び声を聞きながら、なぜ私は祖国を離れ、日本の農家に嫁いでしまったのだろう。アレーナはいつも思う。

③水底の村(みなぞこのむら)
小学校6年の時の同窓会の席で、純一は、敦子の名が出てきて思わず身を固くした。敦子は幼馴染で、そして人知れず付き合い、12年前に別れた間柄なのだった。

④サクラサク
今年80歳になる父がちょっとおかしい、俊介が感じたのは昨年の秋、父が一人で出掛けて帰り道がわからなくなり、警察に保護されていた出来事がきっかけだった。

0
2023年03月03日

Posted by ブクログ

4つの短編どれも一冊の本になってもいいと思います。なかでも表題「解夏」はさだまさしさんの故郷である長崎の美しい情景を思い浮かべながら読むことができて途中から涙がとまらなくなりました。優しく、あたたかく、切ない…うまく表現できませんが母親が幼子の手を両手で包み込むような感覚です。重松清さんが解説をされていますがこの本を誉めるというよりは、この本を書いたさだまさしさんの表現力に嫉妬されているように感じました。さだまさしさんの作品を続けて読むことになりそうです。

0
2023年02月18日

Posted by ブクログ

初さだまさし
自分が大人になるとこういう昔からいる有名人に抵抗が無くなる気がする笑
病気ものとか結構小狡い王道シナリオではあるけど暖かい文章で間違いない。

0
2022年12月11日

Posted by ブクログ

父と母が大好きな、さだまさしさんの本を大人になって手に取り読んでみる。

素敵な小説だということは間違いなくて作家としての1面でしかまだ知ることが出来ないので音楽も聞いてみようかしら。

私は『秋桜』が好き。
そして『水底の村』に出てくる文
『色即是空』般若心経の意味を知れて良かった。

0
2022年11月04日

Posted by ブクログ

ネタバレ

とても好きな本。徐々に視力を侵されいずれは失明する病を患いながら、残された時間を仏教の「行」に例え、故郷の景色を己の中に刻もうとする表題作は、視力を完全に失うラストシーンを決して饒舌な文章ではないのにあれほど美しく書き切ったのは見事の一言。また解説で重松清氏も引用した「大好きだった祖母は死んだ後この樹のどこかに住まわせてもらっていることにしよう、と思ったとたん隆之は自分が救われたような気がしたのだった。」をはじめ、所々見えるさだまさし氏の生死感や人への暖かな眼差しが心地良いです。全4編の短編集ですが、どの話も珠玉の出来栄えなのでぜひ読んでほしい。

0
2021年09月09日

Posted by ブクログ

文章のいたるところで、「好奇心が試される」

今の自分にとても寄り添うな、さださんの本。
縁を感じる。

最後の一文「解夏であった」

とてもとても染み入った。

0
2018年08月24日

Posted by ブクログ

タイトルにもなっている「解夏」(長崎)の他、長野、栃木、福井を舞台にした短編小説が集結した傑作。人情の機微を深く掘り下げた描写が、穏やかで優しい気持ちにしてくれます。タイトルのオチの深さと言い、さだ氏の言葉選びのセンスのよさを感じずにはいられない。各編で住人でないとわからないような場所がさりげなく紹介されており、リサーチ力にも脱帽。本書でさだ氏の小説に開眼した。

0
2014年04月29日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 目が見えていた頃は小学校の教師をしていた主人公が、 視野が狭くなって長崎後に戻った後、幼き日の事や教師 時代の生徒の事を思い出しながら長崎の地を巡る物語や、 ダムの地になるため沈んだはずの故郷が渇水で干上がっ て思い出と共に浮かび上がり思いを寄せる物語や、後少 しで会社の取締役に就ける所まで頑張ってきた主人公が そっちよりも痴呆を抱える父や気持ちがバラバラになり かけていた家族の方を選ぶ物語などがありました。

0
2023年12月20日

Posted by ブクログ

感想
暗闇に落ちていく。その恐怖。季節の色を失い、愛する人の顔が消えていく。だが声は、匂いは、手触りは残る。光はすぐ側にある。

0
2023年11月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

【2023年118冊目】
表題作、解夏の他4つの短編集で構成された一作。単刀直入に言うと、「解夏」以外全部泣きました笑

「解夏」
徐々に視力が失われていく主人公と、それを支える周りの人たちの話。いつ見えなくなるか分からない恐怖を戦いながらも、見える景色全てを記憶に刻みこもうとする、懸命さが光るお話でした。

「秋桜」
異国の地、日本にやってきたフィリピン人のアレーナのお話。日本人男性と結婚し、姑に敵意を向けられつつ、舅の温かさに助けられていた彼女。ところが、舅の死後、姑の当たりはますます強くなっていきます。例え人種が同じだとしても嫁姑問題はよくある話ですが、それを単純に描いたものではなかったです。いや、ツンデレか!泣いちゃったじゃん!

「水底の村」
け、結局誰の子どもだったんですか?!例え血が繋がってなかったとしてもそれでいいって、主人公は割り切ってたけど、一方で酷いことをしてしまったって悔やんでいたのが、ええい、はっきりさせんかい!となりました!話そ!とりあえず!対話から始めよ!まあ、泣いたんですけどね。駒田さんがいい人でした。

「サクラサク」
痴呆はつらいですよね、本人も辛いし、周りも辛い。緩やかに壊れていく父親とその息子家族の話。歯車のかけ違いで、すれ違っていた彼らですが、果たして修復できたんでしょうか。あとね、会社が気になって仕方ありませんでした。中川さんが可哀想過ぎませんか?恩を仇で返してません?旅の後がどうなったのか気になり過ぎますが、「帰ってきたところ」は泣きました。

0
2023年09月30日

Posted by ブクログ

長編だと思ったら短編集だった。解夏と秋桜、心の正しい人が素直に自分の生き方を見つめる話は読んでいて気持ちがいい。重松清なんかよりもよほど深みがあり、しみじみする。

0
2023年06月30日

Posted by ブクログ

さだまさしさんと言えば、NHKの長時間番組でゆるゆるお話ししている面白いおじさんという印象しかなかったが、こんなに温かい文章を書く人だということを初めて知った。
解夏
視力を失いつつある主人公にとって、失明する恐怖は行(修行)であり、失明した瞬間に失明するという恐怖から解放される。その日が修行が終わる日であり仏教の言葉で「解夏」というらしい。
視力を失う程ではなくても、人生は苦悩の連続であり、また死ぬことへの恐怖は誰もが抱えているだろうから、そういう意味では生きている間は行であり、死んだ瞬間が解夏ともいえるのではないかと思った。

0
2023年02月25日

Posted by ブクログ

同じ病気の為に読んでみた、短編集だったのね、なんか物足りたりなかった感はあるが、小説版、ドラマ版、映画版、それぞれに感慨深い部分がある。
それ言うとドラマ版や映画版の脚本、演出はとても良かったのだなあ、と思う。

0
2019年07月27日

Posted by ブクログ

故郷とのいろんな関わり。
表現や感情が優しくて温かくじんわりと感動した。

ダムに沈んだ故郷との対面なんて想像出来ないけど、どんなに切ないことだろうか。
それでもそこに住んでいた人ごと沈んだわけでなく、人々はその人の人生をそれぞれ歩んでいるのか。

解説も重松清で良かったと思う。

0
2018年08月20日

Posted by ブクログ

すごくいい、さだまさし天才か…。重松清に温かさのベクトルが似ているなぁと思っていたら、解説に重松清が…。どうでもいいところでも鳥肌。どの話も本当に素敵だったが、個人的には秋桜とサクラサクが好き。重松清に大人のテイストを加えた感じ。地理に明るいところが、渋みを出しているのかな?あまり歌は聞いたことないけど、この人が歌う歌なら聞いてみたいと思った。

0
2017年08月25日

Posted by ブクログ

普段あまり短編小説は読まない。物足りなさを感じてしまうからね。でも、本屋でたまたま手にして、短編小説と知らずに買ったさだまさしのこの本はとても良かった。

どの話も登場人物たちの家族や夫婦、人生や運命などについて、悲しいような、ハッピーなような、胸が熱くなる話だった。本のタイトルにもなっている解夏以外が結構良かった。

さだまさしはいいね。

0
2015年11月20日

Posted by ブクログ

人の善い部分が起こす奇跡に接してきたさださんのの心映えに触れる

曲の精霊流しを小説にしたり、また風に立つライオンという歌が、俳優大沢たかおさんに請われて映画化されたり、
その世界観は様々な姿でわれわれの前に現れます。

そのさださんの世界の根源は、人の善い所を見ているという事。
作中

人は心で生きている
と書かれ、また

大介のことも咲子のことも、ちゃんと一所懸命に見つめていないのじゃないか?
と諭すシーンも見られます。

根は善い人たちによる、感動の出来事がいくつか現れます。
それはさだまさしという人間が、人の事を良く見て、さらにその人の善い部分、良い部分をみつけようという心映えでできているからこその世界観なんだろうと思います。

全国を歌い訪ね歩く中で、様々な人を見て、人の善い部分が起こす奇跡に接してきた人だから書ける話なのだと思いました。

文中仏教を底とする言葉や考え方が多く現れます。
これを読む私のような人間は「さだ教」と言ってもいいでしょう。
さださんの節々からこぼれる言葉を胸に受け止めてます。主に月一の深夜番組「生さだ」(今夜も生でさだまさし)で。

最近は知的好奇心の観点から欲する宗教・哲学への興味が湧いてきておりますので、
美しい長崎の風景に心惹かれながらも、神社仏閣を見に行くのに何も長崎や京都に行くまでもなく、先ずは関東圏の人間ですので鎌倉があるだろうと思い立ちました。

中学生の定期テスト、そして大学入試センター試験の際一度全て叩き込んだはずの鎌倉時代の仏教大きく6つ、教祖と教義の特色、有名な寺社。鎌倉の寺の格付け。
そういったものを改めて、歴史背景からほぐし接することをしてから鎌倉を訪いたいという欲望がむくりと私の中にもたげたので、またまた読みたい本が増えたなと言ったところです。

しかし解夏という作品、映画化されているわけですが、というか映画になっていたことでこの作品があるという事を知ったわけなのですが映画という表現でこの解夏のシーンはどう描かれているのでしょうね。隆之の視界をそのままカメラに投影し、乳白色なんて映したら野暮ですからねえ。

最近は映画を見ずに原作を見てどんな演出をするのか心を巡らすのが楽しかったり。

蛇足ですが解夏のなかで安吾の話が出てきます。
私が読んでいる「7SEEDS」というマンガに出てくる安吾というキャラクターが夏のチームに属しているのですが、安吾とはこういうことなのか、と合点がいきました。
こうやって、全然関係のない作品の中で自分のシナプスが連結する瞬間を感じる事が出来るのも、いろんな本を雑多に読むことの愉しみの一つでございますね。

0
2015年09月23日

Posted by ブクログ

優しさにつつまれた作品。失明していく恋人に寄り添う女性と長崎の風景。ダムの底にある故郷と初恋の人と少年と私。ミステリー的な展開。三人に幸あれ!

0
2015年08月13日

Posted by ブクログ

「解夏」の他にも「秋桜」「水底の村」「サクラサク」全部で4作品が綴られてます。

さださんって、とても素敵な時間をお持ちなんだなぁ って思いました。
どの作品もとても優しくゆっくりとした時間が流れてるような・・・
作品の雰囲気が本当に素敵だなぁと思いました。

歌手としてのさださんも、歌詞の中に何とも言えない優しさが込められてるものがありますよね。
解夏は映画化されて『大沢たかお』さんが隆之の役をされたようですが。
大沢さん大好きなんです。
観てませんけど・・・

さださんの作品は「精霊流し」も読みました。
さだまさしって名前ではなく作家さんとして別の名前で出されてたら、なんの先入観もなく手にとられて読まれる人も多いのではないのかなぁ…って思うんですけど、それは考えすぎですか?
とにかく優しく素敵な時間が訪れます。

0
2014年06月15日

Posted by ブクログ

解夏・・・大切な人と一緒に歩む
げげ・・・解夏・・・初めてみる言葉である。

結夏・・・旧暦の4月16日
雨期の始まる頃 生命が躍動するときに 外にでず、修業をはじめる。

解夏・・・旧暦の7月15日
修行生活で、それぞれの共同生活の中で気づいた、互いの欠点を指摘し、修行を終わりとする。

隆之は、ベーチェット病という難病にかかり、
次第に目が見えなくなる。
目が見えなくなるという行が始まり、
目がみななくなって、
初めて行が終わる・・それが解夏。

「光が見えないものには、暗闇が見えない。」
・・・すごい印象的な言葉。

隆之は、恋人 陽子がいたが、
失明するというおそれから、結婚することを破棄する。
陽子は、その隆之のそばに一緒にいようとする。
目が見えなくなるというおそれの中で、
陽子が、なぜ隆之のそばにいようとするのか?

「隆之さんの眼が見えなくなるまでの、この、1日1日、
大切な日々を、一緒に歩かせてもらうことで、
私、いまとっても充実しているのです。
隆之さんは、婚約を解消することで責任をとったのです。
今度は私が隆之さんへの責任をとるのです。」といって、
隆之に寄り添う陽子

竜舌蘭の花を見ようとしたとき、隆之は、失明した。

そして、白いサルスベリ(百日紅)の花が、
心の中に鮮やかによみがえった。
隆之と陽子の「解夏」である。

さだまさしは、詩人である。
埋もれた言葉をうまく発掘して、
私たちに大切な人と どういきていくかを教えてくれる。

0
2018年03月10日

Posted by ブクログ

処分

1.解夏
徐々に目が見えなくなる病気を抱えた主人公が、仕事(小学校経論)を辞め、母の暮らす地元(長崎)に恋人と帰り、病気を受け入れていくというお話。
徐々に目が見えなくなる恐怖。完治=失明。原因不明。そんな病気があることも知らなかったけど、読んでるだけでその怖さが伝わってきて、最後には病気を受け入れる主人公に感動してしまった。
登場人物もいい。お母さんも恋人も解夏ということばの意味を教えてくれたお坊さん、全員に人間的な深みのようなものを感じる。
この章がなかったら★★★。

2.秋桜
フィリピンから日本人の農家に嫁いだアレーナ(愛)のお話。
秋桜がコスモスって読むこと、知らなかった(恥)

3.水底の村
テレビ局で構成作家をしている純一が、かつての恋人の敦子と再会するお話。

4.サクラサク
中年サラリーマンの父親の痴呆をきっかけに、家族の絆を築きなおすお話。

0
2014年03月27日

Posted by ブクログ

『解夏』
失明した瞬間に「失明することへの恐怖」から開放される。
こういう考え方があるんだと気付かせてくれて、少し気持ちが軽くなった。

0
2023年07月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ベーチェット病に罹患した隆之がハヤシ老人に会って力を与えられるお話。
「『自分の眼の残りの時間の全てをかけて、歩いて歩いて、歩いてこの町の風景をぜんぶ眼の中に閉じ込めて記憶してしまおう』と決めた。」

さださんの文章力に驚いた

0
2022年10月04日

Posted by ブクログ

表題作の「解夏」がとても印象に残りました。目が見えなくなる恐怖を想像するだけで不安な気持ちが強くなります。一番辛いのは主人公だと思いますが、主人公の母親の気持ちを想像すると胸が痛いです。生まれる前から大切に育て、同じ時間を過ごしてきた我が子の目が見えなくなる。描かれてはいませんが、どうしてあげることもできないという気持ちの葛藤があったのではないでしょうか。
この物語を読んで、私たちはたくさんのことを知り、想像する力をつけて行かなければならないと強く思いました。良い読書時間でした。

0
2021年05月23日

Posted by ブクログ

著者は誰でも作風というか、語りの特徴というものがある訳だが、さだまさし氏の場合はそれが強すぎる様に思う…

ただし、そうであっても、読者が本を閉じずに、最後まで読み進めさせるだけの力を感じるし、お決まりの“感動的終局”になると分かっていても、彼のテーマ選びのセンスが素晴らしいからか、その展開に身を委ねたくなってしまう…



0
2021年05月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

4つの短編集からなっています。
それぞれ違う視線があり、行き方の参考になる話です。
表題の「解夏」より「水底の村」がなんか好きになれました。

0
2015年11月19日

Posted by ブクログ

支える側のつらさはちろんあるが、支えられる側のつらさが垣間見れて感じられる。そのつらさこそ相手への愛情なのだと思う。
舞台となった街へ訪れてみたくなる。

0
2015年01月12日

Posted by ブクログ

短編集。ちゃんとした小説でした。特に解夏は良かった。なんでもない文書の中に心を揺さぶる一言が出てきて胸が熱くなる。さすが詩人だけあって、短文、単語が洗練されてる。世界観もしっかりしてるけど、全体的に現実認識が若干甘い気がする。ファンタジーにまで昇華し切れてないっと言うか。人生を語るには中途半端。

0
2014年12月29日

「小説」ランキング