【感想・ネタバレ】出雲と大和 古代国家の原像をたずねてのレビュー

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村井康彦先生、まだまだ元気だなあ~。(^o^)著者紹介もみるともういいお歳(失礼!)にもかかわらず、アクティブにフィールド踏査を重ね、また、さまざまな学問の垣根を越えてダイナミックな仮説を提示されるなど、心身ともに誠にお若い!
氏の専門である歴史学のみならず、考古学や文化人類学等の近隣領域を融合し、神話の世界から古代出雲と大和の関係の実像に迫る力作で、記紀に描かれた「大和朝廷」成り立ちの物語、出雲の大国主命の活躍から天照大神の子孫への国譲り、そして神武東征から大和王権の確立に至る神話について、大胆に読み解く。
鉄生産から勢力を拡大した出雲族の各地への展開は、大和へ至る磐座(いわくら)信仰の拡大、そして高志(越の国)にまでみられるヒトデ!(四隅突出墓)の存在により証明される。大国主命をはじめとする出雲系の神々を奈良の三輪山をはじめ、祭る理由は、かつてそこが出雲王国の一部であったことを物語るものとし、さらに、邪馬台国も大和で発展した出雲系氏族連合であったとする。それが、九州から侵攻してきた神武軍に敗れ、降伏する形で邪馬台国は終焉したという。また、国譲りの際に約束された大国主命を祭る宮殿が約束通りに建てられないため皇子が唖になったとの神話から、その後の巨大な出雲大社の成立につながるとしている。奈良時代おける出雲国造家が大領(郡司)を兼ねて勢威を高め、大和朝廷を護る立場になった出雲神々を強調する話なども興味深かった。
神話の神々の名前を憶えるのに難儀しましたが(笑)、歴史学としての神話解釈という難問を、氏ならではの流麗で論理が明快な文体にて、各地を巡る紀行を交えながら面白く構成巧みに説明されていて、興味が尽きないまま読み終えることができました。富山にも杉谷四号墳という有名なヒトデがあり、ずっと昔に見に行ったこともありますが、また新たな興味で見学に行きたくなったなあ。(笑)


2013年7月19日追記
 「いずも」と「やまと」のお門違いの考察については、「コメント」の方へワープ!(笑)

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2013年07月20日

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歴史学者が、実証主義にとらわれずに描いた古代史。磐座信仰と四隅突出墓から出雲勢力の影響範囲を北九州から信濃までと考え、邪馬壹国も出雲勢力が建てた国とする。日本書紀や魏志倭人伝を先入観なく読めば、基本的な構想は納得できる。邪馬壹国の四官を書紀に書かれた奈良盆地の四隅にあった勢力に比定するなど面白いが個々の証明は難しいだろう。あと何故、日本書紀にわざわざ王家の始祖が南九州から来たという神武東征伝説が採用されているのか、という疑問は解けるが、逆に何故、南九州の一勢力に敗れたのか、それほどの勢力があったのか、狗奴国のことなのか、さまざまな疑問が生まれる。そういった意味でも非常に刺激的。

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2013年06月04日

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 なかなか骨のある本を読んだなあという気分。
 今年は,5月に伊勢神宮,11月には出雲大社へ行ってきた。もちろん,大和政権の土地への行ったことがある。そんなわけで,少しだけ古事記や日本書紀に載っている日本神話にも興味がある。今のうちに読まないと,また積ん読になる。きっかけの論理で読んだのであった。本書は,10年ほど前,現役時代にお寺の坊守さんから「この本,○○さんなら面白いと思うよ」ともらったのだった。

 神話だからといって馬鹿にしてはならない。いくら神話といえども,土地の名前や時代背景など,すべて創作で書けるわけではない。そこで筆者は,歴史的事実ではない部分が多々あるのは十分承知の上で,古事記や日本書紀,出雲風土記なとがまとめられた当時の歴史的事実と照らし合わせながら,出雲と大和政権との関係に迫っていくのである。謎解きのようで,けっこう面白く読めたのがよかった。
 最後の部分には,能登の一之宮である気多大社も出てくる。ここの祭神が出雲関係であったことは初めて知った。神社観光をしても,いちいち祭神なんて覚えていないからな。気多大社には、時々行くので,今度行ったら見てみよう。
  出雲の神々が磐座信仰から来ているらしいというのは面白い!

 それにしても…である。同じ神様でありながら,亦の名(別名)が多すぎる。なんとかならんかな。古事記・日本書紀に出てくる同じ神さんの名前を挙げてみるか。

大国主命・大穴牟遅神・葦原色許男命・葦原醜男・宇都志国玉神・大国主神・顕国玉神・大物主神・国作大己貴命・八千矛神・大国玉神

 これ,全部同じ神様・大黒さんなんだって。おいおい!

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2023年11月27日

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村井康彦 出雲と大和 

古代出雲論。邪馬台国畿内説と神武東征を通して、出雲王朝から大和王朝への変遷を論じた本


著者のことは知らないが、かなり面白かった


出雲王朝から大和王朝への変遷
*邪馬台国=大和にいる出雲系氏族の連合王朝
*神武東征により、神武勢力が大和に侵攻し、神武が大和朝廷が成立


「伊勢神宮=天照大神=大和=天皇勢力=記紀」と「出雲大社=大国主神=出雲氏族=出雲国風土記」の対照的な関係は興味深く、出雲視点で見る「国譲り」は記紀と微妙に異なる面白さ。饒速日命の帰順を国譲りとし、葦原中国(地上世界)は 天孫に譲るが 出雲国は守ることを主題としている


大国主神(大国様)に異称が六つあることは知らなかった
*大国主神〜大きな国の主。葦原中国の主。大己貴神によって形成された国土の主。
*大物主神〜大和の三輪山に祭られた大神神社の祭神。万物の主、森羅万象を司る神。大国主神が自然神的存在に変身した姿
*大己貴神〜国作り、天下作り、葦原中国を形成した神


出雲国造が朝廷に奏上した神賀詞のなかで貢置を申し出た「皇孫の命の近き守神」
*大国主神の口を通して語られる四つの神を「皇孫の命の近き守神」として貢置した
*大和の神々として、出雲系の神々を選定し貢置した=守神の押し売り





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2022年02月25日

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「古事記」や「日本書紀」などの資料や、出雲と大和の地にある神社を訪ねることで、古代の日本の姿に近づこうという試みが書かれています。神話を、神話として片付けるのではなく、それが現実にあった何かを表しているということを紐解いていかれています。中には想像力で行くしかない部分もあるのですが、その想像力であっても何かしらの答えを出そうとされています。検証は後世にというものもあると思います。邪馬台国と大和朝廷の関係など。出雲国譲りとの関係など。想像力からロマンを掻き立てられるところまで。学ぶということの楽しさを感じられる内容です。

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2018年06月28日

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 卑弥呼は天皇家とは無縁 村井康彦著『出雲と大和 古代国家の原像をたずねてー』.
 本書を理解するためには、「あとがき」から読みはじめると、よい.本書の意図が提示されている.

 1)大和の三輪山は山体自体が、出雲系の大国主神でること.
 2)8世紀はじめの国造が「賀詞」を通じて、<貢置>を申し出ている.
 それは大和朝廷が成立する以前から、出雲系の神が大和に存在して(大和の)<守り神>となっていた.
 3)卑弥呼は大和朝廷とは無縁の存在であり、大王=皇統譜の系譜に載せられるべき人物ではなかった.

 文献史学者は悩む.記紀に語られる「神話伝承の世界とは何であろうぁ」、と(「はじめに」 Xp).
 そのうえで、「古今東西これを=神話をもたない民族も地域もない.だとすれば神話伝承をさけて通る古代史というものはありえないだろう」と、考える.

 記紀を緻密に読み解く.そこで見えてきたこと.
 大和のさきに、出雲、吉備、丹後の神々の国がさきにあり、そこに神武東征後、大和の覇権が後世に記録されたと、読む.

 神話を、「枝葉末節が剥ぎおとされて、根幹部分が残ったものとみることができる」と、読み解いた.
 「作業仮説」.そうした論があるかも知れない.ただ、文献史学者で著明な著者が、ライフワークの国分寺調査で積み上げた聞き取りに、考古学上の知見、神話の新しい機能を確認したうえでの立論には、尊重すべき点も豊富に、書き込まれている.

 

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2015年04月03日

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結局は状況証拠なのでどうとでも言える。でも、それが古代史の面白さ。本作は、なかなか説得力がある。綿密なフィールドワークで、旅情もそそられた。出雲はいつか行ってみたいし、奈良も、京都より俗化されてなくていい。

事が古代史だと自分もいっぱしの専門家になれる気がする。 何せ、確たる文献が限られているので、空想の翼を思いっきり拡げられる。

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2014年10月31日

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ネタバレ

古代史の解説本かと思って読み始めてみたら、とんでもなかった。
邪馬台国は出雲系の氏族が建てた国で、九州地方から立った大和王権が、これにとって代わったとする。
いくつもの神社を尋ねる中で確信を得ていったものらしい。

出雲大神宮には行ってみた。丹波の国に「出雲」?と思ったが、以前はこちらが「出雲大社」と言われていたらしい。
などと、いろいろ初めて知ることが多かった。

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2013年07月27日

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2013.7.10-2013.7.21
出雲と邪馬台国との関係、大和政権の東征の説明など、説得力のある説だと思ふ。専門家の意見を聞きたい。

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2013年07月21日

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話題の一冊ですが、読み通しました。出雲勢力が大和に進出して邪馬台国を打ち立てた、九州発の大和朝廷勢力が出雲勢力を倒して朝廷を樹立したと説くもので、大変面白いです。フィールドワークと記紀神話等々からの大胆な推論で、ユニーク。出雲大社、久し振りに訪れたいです。

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2013年03月31日

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ヤマト王権による統治が確立される以前に、出雲勢力による「国作り」がおこなわれていたという著者の仮説が提出されている本です。

著者は、岡山県の総社宮に祭られているのが、オオナムチとスセリビメであることを知って、古代史においてオオナムチをめぐる数多くの説話が存在しており、多くの人びとの崇拝を受けていたことの理由をさがし求めます。著者は、記紀神話についての独創的な解釈を示したり、じっさいに各地の神社を訪ねて古代の信仰のありかたについて考察をおこなったり、さらには邪馬台国をめぐる論争にも立ち入ったりしつつ、上で述べた仮説の証拠とみなすことのできる事実を明らかにしています。

著者自身も「あとがき」で、「むろん、本書の取り組みが不完全であることは十二分に自覚しているが、これを捨て石としてさまざまな議論が起こるならば、これに勝る幸せはない」と述べているように、かなり大胆な仮説というべき内容だと感じました。その土地につたわる伝承を教えられて新たな視点に目を開かれる体験を語り、そのことをきっかけにして自説の形成に取り組む経緯が語られているところなどは、梅原猛の古代史関連の著作を思わせるような議論の進めかたで、眉に唾をつけながらも、わたくし自身はこういうスタイルの議論はけっしてきらいではありません。大胆な仮説にもとづいて古代史の大きな見取り図を示すことのロマンに浸ることができたということだけでも、読書のたのしみをじゅうぶんにあじわえたと感じています。

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2022年10月25日

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大国主の出雲王朝と大和王朝の関連性
を考察した内容。邪馬台国と大和王朝の
関係。古事記や日本書紀、記紀に書かれてある
神話や言い伝えの内容からくるところの考察など
なかなか面白いところも多くありました。
古事記を読んだ後なので、よくわかったことが
多くありました。
ただ少し自分の考え方について、正しいとの思い込み
が強い気がして突っ込みたい内容もある感じがします。

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2015年02月07日

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なんとも変わった歴史の本。仮説?としては、とても有力な感じがします。しかし、それを証明する物証がよく分からない感じ。情況証拠的にはなるほど、と思います。
どちらかと言うと、磐座信仰と古墳の形状から導きだされる結論に説得力を感じました。
ただ…、本の内容は私のような歴史の素人にはちと難しかったかな…。

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2014年10月11日

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出雲旅行前に読んでおこうと慌てて手に取ってみたものの,無知な人間が理解できる類の本では無かった.それでも,幻の出雲王国に想いを馳せて,読み進めるのはとても楽しいひとときでした.まずは,観光ガイドあたりから読み進めて,いま一度,チャレンジしたい一冊.

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2014年03月09日

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色々と批判があるが、ここでは、研究者の嘆きを知り、戒めとしょう。あと一歩踏み込みが足らなかったと著者が言うとおり、フィールドワークは難しい。

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2014年01月23日

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邪馬台国大和説、大和朝廷とは非連続。
出雲の四隅突出墓やら吉備やらへの言及もあり、なかなかおもしろい。
古墳や神社の引用も多く、こんなとこもあるのか、というかんじ。

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2013年12月19日

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定説からは離れ、自由な発想で文献にあたり、出雲の国から大和朝廷の成立、そして邪馬台国、出雲の国作りについて解説。現地調査の様子や、写真などが適度に織り込まれており、飽きることはなかった。

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2013年11月19日

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【神社ってなぁに?―2】
なにかにつけてミーハーなボクは、今年ばかりは、
伊勢神宮に行きたい! 出雲大社も行きたい!って
思っているのです…で、関係するような本を、
あれやこれや読もうと思って手にした一冊でした…

岩波新書の今年に入ってから出されたもの…
おそらくやボクのようなミーハーがいっぱいいるだろう…
って思って出されたものなんだろうなぁ…門外漢のボクにも
たいへん興味深く読むことができました…

著者は、「記紀」を読み、あちらこちらを訪ね歩きます…
そこから浮かび上がったのは…
「邪馬台国は出雲勢力が立てたクニである」ということ!
ま、おそらくや、つっこみどころはいっぱいあるんだろうけど…

どうやら、伊勢神宮の祭祀より出雲大社の方が古いようで、
古代国家の変遷…こんな仮説を脳裏に浮かべながら、
旅するのは、さぞや楽しいことだろう…と思うのです。
うふふ…近頃、むっちゃ暑いけど、夏休みが楽しみっ!

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2013年07月11日

Posted by ブクログ

ある意味・・・衝撃的でもあり、胸のつっかえがすとんと落ちた気もする。
著者も「国司神社」が「コクシ」ではなく「クニシ」であり、もともとは国主(コクシュ)であったことを長い間知ることがなかった・・・と言う。
作者がリュックを背負い、カメラを片手に探索、調査されている姿が目に浮かぶようでした。
それにしても、読後の本日に箸墓古墳の調査が許可された日だなんて・・・・。
著者の言うところが当たっているかどうか・・・・楽しみです。

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2013年02月20日

Posted by ブクログ

邪馬台国や大和王朝など古代王朝と、出雲の関係。

いろんな神社を渡り歩いて、どのような神が祭られているか、建造物等の形式などにも着目していて、紀行文のように読める。
出雲は場所的に不利かとも思っていたけど、海流などを考えると好条件の立地なのかな。

学校の歴史の授業では、出雲のことはほぼ語られないのは、まだ多数の説があるからかもしれない。
これからいろいろわかって、古代歴史に組み込まれるといいな。

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2013年02月17日

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