【感想・ネタバレ】聖書vs.世界史 キリスト教的歴史観とは何かのレビュー

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聖書が語る歴史と、教科書的な世界史が矛盾していることについてずっと気になっていた。なにしろ世界的なベストセラーである聖書に記載された歴史なのだから、矛盾をどのようにこれまで理解、解消されてきたのか知りたかった。
結果として解消は諦められたのですね。中国やエジプトが説明のつかないほどとんでもなく古い歴史を有していることを発見し聖書に取り込むことを諦め、歴史家の解釈によって年表がずれてしまう創世記起源の年号を諦め…
これが18世紀のことだということは、19世紀に「神は死んだ」と言われる前に神は瀕死の重傷を負っていたのかもしれません。その前後に地動説の市民権獲得もあるわけですし…

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2013年05月10日

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 著者は現さいたま大学名誉教授。本書は古代ローマ時代に発した聖書を絶対視する史観(「普遍史」)が、伝統的西欧世界がその外部の受容を余儀なくされた中世以降、中国史やエジプト史などの聖書と不整合な史実からチャレンジを受け変容していく過程を詳述したもの。

 ホップス、スピノザ、シモンらの文献批判による聖書記述の相対化、ニュートンが発展させた理神論による時間・空間の「無意味化」などの〈外からの圧力〉だけでなく、著者の専門である18世紀ドイツ・ゲッティンゲン学派が展開したカトリック/プロテスタントの対立を巻き込んでの〈内からの圧力〉により普遍史観が自己崩壊した、というのは中々説得力があって面白かった。

 中世以前の普遍史観による異郷の生物や文化(中国・日本も当然ここに含まれる)の想像力たくましい描写がいかにもエキセントリックで、ここを読むだけでも結構楽しめる。なお本書が執筆された90年代は、記紀などの神話を義務教育に取り入れようという保守的機運が高まった時代であり、本書終章で神代の記述が歴史学から排除されずに残っていた19世紀日本の状況に触れるのはこういった背景もあってのことと推察。

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2021年05月11日

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ネタバレ

 キリスト教がどのように世界の歴史を認識してきたのか、という過程について論じた本。聖書の世界の歴史は”普遍史”(Universal history)と訳される。

 周知の通り、キリスト教はローマ帝国でその地位を磐石とするまで、帝国や異教徒から迫害を受けてきた。その対抗手段の一つで作られたのが普遍史で、教父・アウグスティヌスが天地創造→人々が原罪を背負う→救済→”神の国”実現の過程として作る。

 中世には神聖ローマ帝国のフリードリヒ1世(バルバロッサという通称で有名)の叔父にあたるオットー・フォン・フライジンク司教がローマ帝国の後継者として中世普遍史を完成させる。

 普遍史の転換期が訪れたのは近世。天動説や自分たちの世界の外には化け物が住んでいるといった既存の価値観が否定され、聖書の世界観、歴史観が危機を迎える。モンテーニュが『随想録』で中世普遍史の絶対性を否定し、ヨーロッパとアジアを相対化したように。

 中国史を研究したマルティニは『中国古代史』で中国の神話上の伝説的存在だった伏羲の代から史実に認定するなどして普遍史を再編しようとしたが、この動きは時代の流れから見れば、蟷螂の斧に過ぎなかった。

 啓蒙思想家のヴォルテールの時代となると人間の理性、進歩史観といったことが強調され、19世紀にシュレーツァーが『世界史』で人類史を6000年とし、天地創造を否定することで、ようやく歴史の叙述と信仰が切り離された。

 全体として、キャッチーなタイトルと異なり、実直な内容の新書である。この本に登場する歴史の当事者たちは、自分たちの知りうる世界の外に別の文明、文化体系を持つ人々が存在するという事態に直面してきた。私はこの本を読んで、そういうことに思いを馳せた。

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2011年06月06日

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[ 内容 ]
天地創造から6000年で人類は終末を迎えると聖書はいう。
では、アダムとエヴァより古いエジプトや中国の歴史はどうなるのか。
聖書と現実の整合性を求めて揺れ続けた西欧知識人の系譜。

[ 目次 ]
第1章 普遍史の成立
第2章 中世における普遍史の展開
第3章 普遍史の危機の時代
第4章 普遍史から世界史へ
第5章 普遍史と万国史

[ POP ]


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[ 関連図書 ]


[ 参考となる書評 ]

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2010年12月18日

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神様が七日で世界、そしてアダムとイブを作った。
そこから始まる聖書の中の「歴史」観がどのように広がり小さくなっていったか。そんな本。
 だいたいの流れ
     ↓
キリスト教の黎明期、キリスト教の正当化のために
聖書より(古い)エジプトやメソポタミアの歴史をこねくり回しながら聖書に入れる
そんな教父たち。
     ↓
「海の向こうには何があるの?」「アジアの向こうはどうなってるの?」
アジア人は首無しふたなり人間なのぉ!←(やや語弊あり)という世界観を
最近の欧州人の心に植えつけた偉大なる聖書ベースの地図の話
     ↓
大航海以後、欧州人の「世界」が広まった。新大陸を聖書的にはどうみなすか?
中国の歴史ってめっちゃ古!という矛盾を解決してきた人たち。それに納得できなかった人たち。
宗教改革やルネサンスを経た欧州に!聖書的歴史観の危機が訪れる!!!!
パスカル、ホッブス、モンテーニュ!あなたの歴史観きかせてね!
 ニュートン「エジプトの歴史長すぎ、大して何もしてない王様は省く。異論は認めない。」
     ↓
エジプトのこととか聖書のバージョンによって年代違う。マジで泣きそう。
聖書は聖書、歴史は歴史。そんなアウトな考えをし始めた時から、「世界史」のはじまりはじまり

 聖書ってどれだけ西洋人の思想を支配してきたんだろう。凄いと思う

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2009年10月04日

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天地創造から6000年で人類は終末を迎えると聖書はいう。では、アダムとエヴァより古いエジプトや中国の歴史はどうなるのか。聖書と現実の整合性を求めて揺れ続けた西欧知識人の系譜。

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2011年07月17日

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普遍史から世界史への移り変わりを話題にした本。普遍史ってのは聖書を基準にして歴史を構成する分野。中国やエジプト、カルデアの歴史の長さに次第に圧倒されていくのが寂しい。まあ、それが西洋人一般に大好きな進歩ってやつでしょう。
年号の計算はややこしい。理解不可。まあ、脳みその血の巡りがいい人にはわかるのでしょう。私には無理だ。

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2009年10月04日

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聖書の記述に基づいて書かれた「普遍史(Universal History)」はいつから「世界史(World History)」となったのか。年代学そのものの歴史を辿る。それは、ヨーロッパの人々が世界をどう理解してきたかを辿るということ。
ローマ期には、"人類史6,000年間"の観念が定着し、年代には創成紀元が使われるようになる。
キリスト紀元は、もとは復活祭の日を決めるという教会行事上の必要から、525年に発生した。
聖書の記述と矛盾するエジプトや中国の歴史の古さの問題は、やがて年代学論争に繋がった。
18世紀頃には普遍史の息の根は止められ、世界史の叙述がなされるようになる。

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2015年10月14日

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テーマは、誰でも一度はふっと興味が湧く事柄です。
でも読み物としてはちょっと退屈でした。
中国の歴史が聖書よりも古いので西欧の人たちは困り果てた、というあたりの話が面白かった。

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2012年05月06日

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なぜこの本を買ったのか、読みながら不思議になってしまった。思い返してみると「キリスト教史」「神学史」を知りたくて数冊買ったうちの一冊だった。しかし、自分の目論見と別に、キリスト教がどういうふうに聖書に基づいて世界史を取り込んだか、のようなことが書かれていて、正直「別に」という感じだった。この書自体の質の可不可ではなく、私の興味という点ではハズレ。

11/12/13

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2011年12月13日

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聖書の出来事がいつ起こったかをつきとめる年代学についての話。ヨーロッパの人々がこんなに必死になって解釈しようとする聖書という存在に驚いた。

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2010年06月22日

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