【感想・ネタバレ】アダム・スミスの誤算 幻想のグローバル資本主義(上)のレビュー

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Posted by ブクログ

経済のグローバル化が叫ばれ、市場がすべての問題を解決するかのような勇ましい言葉が聞かれる現状を横目で睨みながら、市場主義経済学の鼻祖と目されるアダム・スミスが、じつは共同体の価値を重視し、当時のグローバリズムともいうべき重商主義に対して厳しい批判をおこなっていたことを明らかにしようと試みています。

著者はまず、スミスが「自然価格」を「市場価格」として規定していたのではなく、反対に理想的な自由競争のもとでは「市場価格」が「自然価格」に落ち着くはずだとしていることに着目します。その上で、スミスの考える「自然価格」は、土地に根ざした共同体的な価値によって決まるとみなされており、そこに彼の道徳哲学との結節点があるのではないかと著者は主張します。他方でスミスは、土地と労働に根ざした「徳」を離れて、貨幣を富とみなす重商主義に対して批判的だったと述べて、そうしたスミスの批判した重商主義の正嫡が、現在のグローバル市場経済にほかならないと論じています。

著者のスミス解釈がどの程度妥当なものなのか私自身は判断ができませんが、興味深い内容でした。

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2015年05月28日

Posted by ブクログ

一度読んだ本を読み直しました。グローバリズムが叫ばれた時の本ですが、今、読んでも、まったく本質論から外れていません。

IT、インターネット環境がより進展した現在の社会経済状況において、ますますグローバリズムの進化が増しています。

それでも、佐伯啓思氏の、社会経済活動に対する深い洞察力からなる分析は、何ら、陳腐さを感じさせないものであります。

原理原則を外さない、論理。

この本においては、アダムスミスが生きていたイギリスを中心としたヨーロッパ社会と南北アメリカ、アジアとの絡みは外せません。

なぜ、イギリスが重商主義に走らなければならなかったのかという因果関係の分析もよく理解できました。

名誉革命以後、イギリス社会の動向もよく分析されています。

自由主義経済の父としたかった勢力が如何に薄っぺらなアダムスミス解釈であったかが、よくわかる一冊でした。

続いて、ケインズの予言を読んでいきます。

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2014年04月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

[ 内容 ]
自由主義市場経済の父と称されるアダム・スミス。
しかし彼は最初に「グローバリズム」について警告した人物でもあった。
スミス、ケインズの思想を問い直し、グローバリズムの本質的矛盾と危うさを抉り出す。
[ 目次 ]
●序章「誤解されたアダム・スミス」 
●第1章「市場における「自然」」 
●第2章「道徳の基盤」 
●第3章「富の変質」 
●第4章「徳の衰退」 
●第5章「経済と国家」

[ POP ]


[ おすすめ度 ]

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☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
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[ 関連図書 ]


[ 参考となる書評 ]

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2011年04月19日

Posted by ブクログ

アダム・スミスは「自由主義」「神の見えざる手」を唱えたといわれるが、それは現在の「新自由主義」を正当化する理論になるかと言うと・・・読んでみてください。

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2009年10月07日

Posted by ブクログ

幻想のグローバル資本主義の上巻で、タイトルに惹かれて手に取った一冊。「国富論」で有名なアダム・スミスであるが、私たちの先入観とは違った側面があるのではないか……と、いうのが筆者の論点である。
確かに、アダム・スミスはなんでもかんでも市場自由主義を推していたわけではないようで(例えば、金融部門など)、それこそ、自らの「提言」が狂信的な信奉者たちに曲解されて「理論」とされてしまったのだとしたら、(マルクスよろしく)彼にとって一番の誤算であったに違いない。

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2011年08月29日

Posted by ブクログ

“われわれは、この二人の経済学者であり思想家であり文明評論家であった偉大な人物から多くのものを学ぶことができると思う…彼らが考えた問題状況は、程度の差はあれ、基本的に現代のグローバリズムの問題とあまり変わらない。(5頁)”と佐伯氏は言う。

 「この二人」というのは、アダムスミスとケインズの事である。そしてこの二人から著者はグローバリズム問題を考える。上巻ではアダムスミスの事を論じる。
 
 そして“経済学の父といわれているアダム・スミスの重商主義批判から、グローバル・エコノミーへの対抗という観点からみることができるだろう(2324頁)”と佐伯氏はアダムスミスの着目し、“市場主義の最初の擁護者はスミスであった、資本主義の最初の擁護者はスミスであった、グローバル・エコノミーの最初の提唱者はスミスであった。…だが本当にそうだろうか(2829頁)”と懐疑の眼差しを向ける。
 
 序章は「誤解されたアダムスミス」と題されている。“私はスミス研究者でもないし、経済学説氏の専門的研究家ではない。(29頁)”というお断りはあるものの、題から察するに、著者は「アダムスミスは誤解されているのではないか」、と思ったという事だろう。
 
 また“スミスは、彼の生きた時代に、彼と生きた政治状況、社会構造の中で回答を与えたわけである。その回答をそのまま受け止めるとすると、われわれは間違いかねない(35頁”と佐伯氏は言う。アダムスミスの回答を額面通り受けとるのではなく、時代・政治・社会の過去と現在と状況を見比べて、それに配慮した上で、アダムスミスを考えてみせようということなのだろう。
 
 私はこうした類の本はあまり読まないので、こうした示唆が世の中にどれだけ出回っているのかは私にはよく知らないのではあるが、アダムスミスは今の時代にどのような疑問を投げかけているかといった問題設定し、考えている人というのはこれといって私は聞いたことはない。となればやはり、佐伯氏独特のアダムスミス論が展開されているのが本書だという事なのかなと思った。

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2009年10月04日

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