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Posted by ブクログ
ある事件をきっかけに『家族』の秘密が露わになっていく物語。
『家族』といっても夫婦、姉妹、親子、祖父母と孫などいろいろなかたちがある。その登場人物全員が複雑に絡み合い、そして秘密や闇を抱えている。次々と事実が発覚していくが、本当に愛する誰かのために行動するその姿が儚い。
それぞれの視点から少しずつ事件が明らかになっていき、その都度「なるほど」「そういうことだったのか」と納得。全てが伏線となっており、何度も読み返した。真相に近づくたびに鳥肌が止まらない。
Posted by ブクログ
この本めっちゃすごい。
まず文章がとても美しい。
それから物語全体に流れる不穏な空気感、不気味さ。
夏の暑気やまとわりつく湿度が余計に雰囲気を盛り上げている。
独白形式や少し古めかしいセリフも余計に影を感じさせ、この家族に引き込まれた。
(立介のターンで社内で一番や会社で一番とかいうワードが沢山出てきて、ちょっと笑った。それまで立介についてろくな描写はなかったから親近感が湧いた。)
初めての作家だったが他の作品も読みたい。
Posted by ブクログ
思ったより面白く、イッキ読みしました。
救いよう無さすぎて、お腹いっぱいです笑
各人物の心情を中心に進んでいくので、思い込みをしてしまって惑わされたり、多層構造的になっていて、置いてかれないようにスタミナがいりました。
人間の闇な部分が丸出しになってるし、何より怖いのが、殺されてるのに誰も悲しまない、演技をしているという点。
文体も純文学を読んでいるかのような読み応えでした。
Posted by ブクログ
皆さん言ってますが、何て救いのない話。
幼い子供が殺されてるのに、深い悲しみなどなく互いに疑心暗鬼になりながら保身のことを考えている。
自分が精神的に元気というか丈夫なときに読むことをお勧めします。
Posted by ブクログ
関係者の独白で、誰が犯人か惑わされる。どれも辻褄が合っている様に思われる。世の中にはもしかしたらこんな複雑な家族も存在するのでは無いかと思わされる。で、結末でやられた〜。
Posted by ブクログ
初作者!
この物語に「救い」なんて、ひとかけらもない。
というのが、カバーに書いてある。
また、重そうな…で、既に手元に…^^;
ハァ〜、仮面だらけや…仮面夫婦…
そんな意地とか、プライドとかで、子供を手にかけるなよ〜!
自分らで、決着つけたらええのに…一番弱いところにいくのが、何だかなぁ…って思う。
親、姉妹、その旦那と色々な登場人物の内面を語りながら、進んでいくんやけど、子供死んでも、強烈な浮気されても、みんなどこか冷静な…
ドス黒い家系というか、家族達…
こんなとこに、住んでたら、多分、狂ってまう!
あんたらは、人やない!鬼畜や!
はぁ〜!ひたすら暗い…
で、面白くないかというと面白い…
私もそんなドロドロの裏側を持ってる?
………
Posted by ブクログ
様々な思いが水面下で一人の子供に集中していることが恐ろしかった。色んな感情や出来事が絡み合ってて、真実は一つって感じじゃ無い。人の数だけ真相があった。
視点がどんどん入れ替わることで、登場人物の印象も変わっていく。他の人視点の時は嫌な人だなぁという印象だったのに、その人視点になると思ってたより悪い人じゃ無いなぁみたいな。語り手の主観に引っ張られちゃう。
Posted by ブクログ
まさかの展開
家族やその繋がりのある人、全ての人が一人の少女に関わっていたなんて、、、
ミステリー好きに読んで欲しい!
特に人間の裏の顔(人の醜さ)がすごいおもしろい
Posted by ブクログ
少女が殺される。その母親、父親、母の姉、その夫、祖父、他界した祖母、母親の不倫相手。その家庭に関係する人々の心の中に潜んでいる闇が暴かれながら事件の真実が少しずつ明らかになる。作者の小説によく描かれるドロドロの人間関係は、文庫本のカバーにあるように救いのかけらもなかった。読後感が悪いかと言えば、そうは言い切れない気持ちになるところが恐ろしい。
Posted by ブクログ
『すぐに門灯がともり、その灯におびえるように周囲の暮色は黒く陰り、花が光って見えるのが、蒸し暑さのために脂汗をしたたらせているかのようでした。』
この家には戦地経験のある桂造、その息子の立介と妻の聡子、娘の佳代の4人が暮らしている。
聡子には幸子という妹がいて、その幸子にも直子という4歳になる娘がいるのだが、最近カルチャーセンターに通い始めたという理由から頻繁に直子を預けに来る。聡子はそれをとても迷惑だと感じている。なぜなのかは、複雑な彼女なりの事情があるのだが、上手く断り切れずにまた直子を預かることになってしまった。その日佳代と歯医者に行っている間に、直子が行方不明になってしまった。やがて、その庭のノウゼンカズラの木の根元に埋められている死体が発見されることになる。
冒頭の文章は、その直子が発見される直前の文章だ。
なんて趣のある文なんだろうと思った。夕暮れの色が暗くなる様を「おびえて黒く陰る」と表現するなんて。前にこの著者の本を読んだときも感じたが、ミステリーなのだが文章がすごくいい。時々はっとさせられる。
語り手が次々と代わるように、もっとも疑わしいと思われる人物も目まぐるしく変わっていき、読み手は非常に混乱させられる。今日はここまで読んで続きは明日にしようと思いながら、気がつけばまたページをめくっている。ずるずると後ろ髪を引っ張るのだ、この本は。
事件の関係者はほぼ全員、少なからず思っている。
「直子は死ななくてはならない存在だったのだ」
だから殺人はこのような形で行われたのだ。
真実と呼ばれるものは、まずは誰に都合のよい角度でその顔を見せるのか。
クラシカルな話が苦手な方でなければ、是非手にとってもらいたい一冊だ。
Posted by ブクログ
いやダークプレイスくらい色々起きるやんとか思ったけど最後の顛末にはグッと掴まれた。色々ありすぎてえええ?ってなったけど、面白かった。女と男と、それらが寄り集まって家族と親類と出来上がっていく中で、その基盤が腐っているという。男女のどろどろが極大化した上で、一つの家族にぎゅっと集約されてるっていう、一番近い肌寒さがあった。幸子好きじゃないなぁ。
Posted by ブクログ
自分勝手で一方的な考えから、延々とすれ違いを繰り返すもどかしさ。
一人の女の子の死をめぐり、全員が「私が殺したのかも。」と、罪悪感と後悔を滲ませるのに、口から出るのは言い訳ばかり…
一人称で決して交わることがない。どこかで誰かがきちんと向き合っていれば生まれなかった悲劇。人間関係の難しさと怖さを思い知らされた。
驚愕の展開ととそのための伏線が至るところに張られているが、あまりの救いのなさに爽快感はなく、ある程度の覚悟を持って手に取る必要がある。
Posted by ブクログ
昔から大嫌いだった妹の、四歳の娘が殺され庭に埋められた。
痴呆の義父と二人きりで留守番している時だった。
身勝手な大人の事情に巻き込まれ、殺されてしまった直子があまりに不憫だった。
それぞれの視点から、殺害のきっかけになるような闇が出てきて、最後にはどれが真実なのか疑心暗鬼になってしまう程。
以前から気になっていた作家さん。
古本屋でいくつか購入したので次の作品も楽しみになった。
Posted by ブクログ
平凡な家庭で、ほんの僅かな時間のお留守番で、預かっていた幼い姪が殺される。
事件か事故か?
事故なら何があったのか。
事件なら誰がこんなことをしたのか。
家族それぞれが抱えた家族にも言えない思いが少しずつ交差する中で、たどり着いた結末には驚く
Posted by ブクログ
「連城三紀彦」の長篇ミステリ作品『白光』を読みました。
ここのところ「連城三紀彦」の作品が続いています。
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ごく普通のありきたりな家庭。
夫がいて娘がいて、いたって平凡な日常――のはずだった。
しかし、ある暑い夏の日、まだ幼い姪が自宅で何者かに殺害され庭に埋められてしまう。
この殺人事件をきっかけに、次々に明らかになっていく家族の崩壊、衝撃の事実。
殺害動機は家族全員に存在していた。
真犯人はいったい誰なのか?
「連城」ミステリーの最高傑作がここに。
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朝日新聞出版が発行する季刊小説誌『小説トリッパー』の1998年(平成10年)秋季号から2000年(平成12年)冬季号に連載… その後、2002年(平成14年)に単行本化され、その後、文庫化された作品です。
真夏のある日、ありふれた家庭で四歳の少女「直子」が殺され、庭に埋められた… 事件をきっかけに、平凡な家庭の裏側に隠されていたものが次々と明らかになる、、、
「直子」を苦手に思っていた伯母の「聡子」、その夫の「立介」と娘の「佳代」、ボケの始まった舅の「桂造」… 「直子」の母で「聡子」の妹である「幸子」とその夫の「武彦」、そして「幸子」の浮気相手の「平田」、全員に殺害動機はあったのだ…… あの夏、死んだ少女のために― 家族の交錯する思惑と、悪意が招いた「救いなき物語」。
複数の登場人物の独白を利用して多層的に組み上げることで意外な真相を導き出す… という展開の作品でしたね、、、
真相が二転三転するミステリ要素だけでなく、不倫疑惑を軸に進むドロドロの愛憎を描く恋愛小説的な要素、人間のダークな内面を浮かび上がらせる心理描写等々… 「連城三紀彦」らしい作品でした。
ひとつの事件が二つの家族の問題や、それぞれが抱える秘密をあぶり出すのですが… それぞれの感情が噛み合わないところや、いたいけない少女が惨殺されたのに誰も悲しまず、保身に走ったり、事件を冷静に分析したりと、人間の闇の部分、人間が生まれ持った罪深い部分が巧く描かれていたところが印象的でしたね、、、
家庭は安心できる場所、家族は癒しを与えてくれる存在という既成概念が崩される展開だし、悪意が強調されているので好き嫌いが大きく分かれる作品かも… 元祖イヤミスなのかもしれませんね。
以下、主な登場人物です。
「聡子」
主婦。
「立介(りゅうすけ)」
聡子の夫。
「佳代」
聡子の娘。
「桂造」
聡子の舅。
「昭世」
桂造の妻。
「北川幸子」
聡子の妹。
「北川武彦」
幸子の夫。
「北川直子」
幸子の娘。被害者。
「平田直樹」
幸子の浮気相手。大学生。
「山野」
刑事。
Posted by ブクログ
後味がマジで悪い!最高〜
個人的には(内容には関係ないけど)文字が小さいのか文章の間が狭いのかでやや読みにくさを感じたので、目が悪いとつらいかも?
Posted by ブクログ
まず最初の印象は、太陽が照りつけるメラメラとした密林やじめっとした日本の夏と、それとは裏腹に現場の部屋の中の冷たさと不気味さでした。温度がすごく伝わって来る感じ?
最後まで犯人が誰だか分からない、ミステリーだと感じながら読んでいたのが、大どんでん返しいつ来るのか、物語が終盤から畳み掛けるように進んでいく模様が面白い。
解説の通り、物語の語り手がコロコロと変わることで真実?事実を見つけていく進み方だが、一人称で告白をしている故、誰一人として嘘をついていないのに読み手からすると大どんでん返しが起きているという不思議な感覚を覚えた。
もう一度読めばまた物語の感じ方が変わるのだろうと思えるので少し時間をあけてまた読みたいと思う。
Posted by ブクログ
家族それぞれに物語と罪があり、この世に生まれてきて何も悪い事していないのに、家族の誰からも愛されなかったし、殺されてしまった直子ちゃん。
他の家族は皆クズです。
何となく最後はそうだろうと初めから感じましたので、やっぱり嫌な気分で読み進めました。
語りの部分がくどかったりするところは、サラッと読んでも理解出来ました。
後味悪い作品です。
実際にこんな家族が居ないこと祈るばかりです。
Posted by ブクログ
誰が犯人なんだと振り回されて振り回されて、最後にゾッとさせられた。この罪深い家族の秘密は白昼夢のように惑わせてくる。
家族みんなから忌み嫌われる存在の直子が不憫だ。誰もが少しずつ罪を背負っていて、最初に殺意を持ったのが故人である昭世で、トドメを刺したのがまだ子どもである佳代というのがまた何とも言えない後味。
語り手がどんどん代わっていくのが面白かった。それぞれの真実をそれぞれに信じていて、複雑に絡まって歪な様相を呈している。
直子の最後の言葉は事実なのか、それとも桂造の幻聴なのか、もはや誰にも分からない。これも昭世の、呪いにも似た言葉の結果だろうか。
Posted by ブクログ
二十年前の作品。
今や、血の繋がった我が子を餓死させたり、赤ん坊を骨折するほどの力で殴ったり、なんて報道されるだけでもゴロゴロ転がっており、この本の結末を受け入れるのに覚悟なんていらないのではないだろうか。
なんとお行儀のよい人たちだろう。薄く色の付いたセロファンを何枚も重ねて闇を深めるようなこの物語は、もはやメルヘン。現世はヘドロにまみれている。
Posted by ブクログ
場面だけでなく登場人物の心情や行動にまで、真夏のジリジリとした暑さとジメっとした湿気をまとっている。愛されていないとは思いたくないが、たしかに「救い」なんてひとかけらもない。
Posted by ブクログ
ある家で幼い姪が殺害され庭に埋められる。その事件を機に両家の家族等が次々に自分の心情と認識を告白していくことで、二転三転しながらも事件の真相が明らかになっていく作品。
1つの真実に対して、誤解や認識不足により登場人物それぞれの事実が存在するため、読者としては情報の上書き、追加を繰り返さなければならない読みごたえある作品だった。
また、姪の殺害には到底無関係と思われる人物まで何らかの闇を抱えており、嫌気が差すくらい人間の闇を見せられる作品でもあった。
帯に書かれているとおり、本当に、この物語に「救い」なんてひとかけらもなかった。
Posted by ブクログ
一癖も二癖もある登場人物たちの独白によって事件の真相が明かされていく、といった趣のミステリーで、さほど目新しさはないのですが、事件の真相(らしきもの)に至る展開を演出する方法としては結構ハマっており、悪くはないと思いました。
なのですが、彼ら一人一人のとる行動が何だか昭和の2時間サスペンスドラマみたいで、冷静に考えるとかなり無理があるような気が。20年前の作品なのである程度割り引いて考えないといけないのかもしれませんが、子供が殺されたのに皆平然としているとか、妻の不貞を義姉に事細かに打ち明けるとか、文学賞の選考対象になったら間違いなく「人間が描けていない」と言われちゃいそうなくらいに作り物感が漂っているのがちょっと残念でした。
Posted by ブクログ
ある一人の少女の死をきっかけにごく普通の家族がみるみる崩壊していく。
関係者全員の独白により事件前後の詳細が明らかになるが各々の誤解や勘違い、妄想等により二転三転する真相にはお見事としか言いようがない。
不愉快極まりない展開なのに淡々とした語り口によってさらっと読めてしまう。
Posted by ブクログ
女の子が殺されたという事実が軽く扱われすぎて、「もうあんたらの真相なんてどうだっていいわ!!!」と思えてくる。創作なのでそういった視点でかんがえる必要はないのだろうけど。
語り手の告白が真相のようで、次の語り手がまた別の真相を告白する、という展開は面白かった。同じ場面が別の見え方になる。
湊かなえの「母性」みたいな感じ。
Posted by ブクログ
姉の家に預けていた娘が死体で発見される。
殺したのは誰か。
不倫をしていた母親か、それともその不倫相手か
それとも結婚当初からの関係であった姉の夫か
それを恨んだ夫の犯行か、はたまた関係に気付いた姉か
戦時中の悲しい記憶に苦しむ認知症のおじいちゃんか
それぞれの思惑が交差して
それぞれの視点からの主張が独白される
それぞれが「あの人が犯人」と思いながら
同時に「自分が殺した」と思っている
直接手をくだしていないだけで
自分が殺したのも一緒だと
途中から
結局誰やねん!てなってくる
わかったあとも
ほんで結局なんでやねん!
てなる
みんなが自分中心自己陶酔に思えてくる
Posted by ブクログ
『藪の中』のような語り口で物語は進む。
誰もが皆、嘘をつき本音を隠し、いや、あるいはそれが真実だと思っている。
誰が本当のことを言っているのか。
いや、語り手にとっては語っていることが全てなのだ。
熱に浮かされたように、譫言のように、たとえ始まりが虚言であっても、それが語り手にとっての真実になっていく。
本書は、芥川の描いた手法を使いながら現代を織り込む。
そこで語られるのは、南の島の情景。
それはパラダイスやホリデイという前向きな言葉の「南の島」ではなく、70年以上も前の、大戦の記憶だ。
行ったきり帰ってこないと分かっていたから、前妻は「この子はあなたの子ではない」と懺悔したのか。
そもそも懺悔だったのか。
本当に、女の子は殺されたのか。
熱に浮かされ、罪悪感が見せた幻影だったのか。
もはや読者には何が現実の出来事なのかわからない。
殺していいのよと誰が言ったのか。
愛などない夫婦、愛していない子供。
家族の姿は、白い光の元で不気味に変化していく。
それとも、初めから整ってなどいなかったのかもしれない。
すべては真っ白な光の中、人を過たせる世界の中の、物語。
だとしても、「南の島」の記憶は、もしかしたらそれだけは本当だったかもしれない。
罪なき人を、殺めた記憶だけは。