【感想・ネタバレ】スローターハウス5のレビュー

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Posted by ブクログ

ヴォネガットの半自伝的名作。
ありとあらゆる理不尽を「そういうものだ」と一言で言い表すセンスに脱帽。
戦争を肌で体験している人にしか描けない境地。

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2024年01月04日

ネタバレ 購入済み

過去と今

カート・ヴォネガットは自身が体験したドレスデン爆撃をもとに、この小説を執筆したらしい。
自身で体験されたことあって、表現は、生々しく、そして、ユーモアに書かれている。

ただし、物語として見ると、少し味気ないのかなと思う。
同じ作者の作品のタイタンの妖女の方が、ストーリーとしては好きだ。
場面がコロコロ変わるのだけど、そこまで印象が残るような、物事は起きないから、多分味気ないと感じたのだと思う。

トラルファマドール星人は4次元の目を持っていて、時間を自由に行き来することができるという。
だから彼らは宇宙の終わりも知ってるし始まりも知っているそう。
主人公も、作品中人生の時間の枠で、様々な瞬間を旅するのだけど、あれは思い起こしているのか、実際にその瞬間に行っているのか、わからなかったのだけどどっちなんだ?

トラルファマドール星人は宇宙の終わりを知っているけど、誰も止めるつもりはないらしい。
トラルファマドール星人はそれを受け入れているのか、だから主人公も旅するけど、結局同じ事をその時するのか、よくわからない。

もう一度読んでみると思う。
そうすると色々わからなかったこともわかるかも

最後に僕はこの文を見た時、少し感動した。
神よ、願わくば私に、変えることのできない物事を受け入れる落ち着きと、変えることのできる物事を変える勇気と、その違いを常に見分ける知恵とを授けたまえ。
変わるのは、想像以上に難しい。
多くの人の悩みだと思う。
だから皆、自分の生まれた時の才能や、自分の問題を人のせいにするのだと思う、
主人公のように僕達も変えられないことを受け入れて、変えることのできる事を今変えていくことが大事なんだなと読んでいて思った。
ありふれた哲学本に書いてありそうな、
内容の感想になったね。

#感動する

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2023年07月23日

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人間の自由意志を否定したくなるほどの大量の死をもたらす戦争をトラルファマドール星人式の世界認識で追体験する。彼ら曰く全ては同時に存在しており、死は一時的なものなのである。

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2022年11月12日

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ネタバレ

SFというより本気の戦争小説でした。
翻訳なので実際の文章はわからないけど、ただ少なくともこの文章は読みやすくて良かったです。さりげなく散りばめられた目を引く文章の数々。ヴォネガットの場合は、美しいとか迫力がある系よりも含蓄に富んだ文章で、言葉のゆるい空気以上に直接的に語りかけてくる。異星人、時間跳躍、第三者視点(人称)。体裁だけ見たら特殊でいざ思い起こすと複雑多岐に渡る内容なのに、それを簡潔に読ませようとする作者の力量が凄い。現実の物事を語る上で非現実の目が巧く作用しておりSFだから伝わるモノもあることを思い知らされた。加えて全体的にブラックユーモアのある文体が悲壮感を増します。

主人公のビリーは不条理作品に相応しいくらい流されやすい。その彼が後半で「私はドレスデンにいた」とはっきりと明確な意思を持って発言する場面は深く印象に残りました。あとこの少し前にエドガー・ダービーというハイスクール教師が自身の戦争観について語り『しかしいまダービーは、ひとりの人間であった』と第三者視点で評する部分、この小説の中でも強いくらい意思を感じさせた。飄々とした文体の中にあっても、作者が力強く訴えたいこと伝わりますね。あるいは全体として堅苦しくないからこそ際立って印象に残るのか。どこまでが計算ずくか計り知れない。
読んだ後、しばらくしてふと目を閉じて思い起こす、そんな味のある作品。

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2021年10月02日

Posted by ブクログ

『タイタンの妖女』に引き続き、ヴォネガット二作目。こちらも私にたいへん刺さる作品で、これは作家読みするやつだな...という気持ち。笑い(というか朗らかさともいうべきか)もありながら、戦争をこう切り取るのかと、面白かった。実際に体験した人の感覚としてこういうのもあるのだろうというのが、しっとり伝わってきた。人生は不条理であることを、柔らかく受け止めるというか。そういうものなんだろうなあと、ひしひし。広島の記述には、む、と思ったけど、そこは訳者あとがきでケアされているので最後まで読んで落ち着いたし、やはり反射的にむと思う自分がいるんだなと認知したのもなかなかの体験だった。
そして私は最後の一文を、最後に読むのが大好きなのですが(私の中で特に刺さっているラスト・ワンセンテンスは『天人五衰』だったりする)、もはや作者により第1章でネタバレされるのに笑うし、自分で最後読んだ時にそれでもグッときた、ヴォネガット好きだなあ。あえてこう表現するというのが大変上手い作家だ..

全然知らなかった/覚えていなかったのだが、村上春樹やテッド・チャンの作品でも言及があるそうで..たしかに村上春樹も同じく、同じキャラがクロスオーバーするものね、と、ラムファードさんやトラルファマドール星で思った。母なる夜の主人公やら、ローズウォーターなど、他作品キャラクターもいたそうで、ますます読んでみたいのだ。そしてこの本は原書でも読みたいなと強く思いました。

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2021年09月04日

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久しぶりの再読。
カート・ヴォネガット・ジュニアの世界観が好き。淡白な語り口に、大きな出来事にさえ感情的になることがない。その平坦さと、その時々の状況の悲惨さとの対照的な文体が、その物語から浮かぶ情景をより強く刻んでくる気がする。

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2020年11月27日

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著者が経験したドレスデン無差別爆撃をSFの型式をとって描いている。トラルファマード星人に連れ去られてから時の流れから解放される。トラルファマード星人はすべての時間を見る事が出来る、そして、それは決して変わる事は無い。過去、現在、未来全てを関係なく行き来する。時間の流れが無い瞬間を生きている。それは幸せなのだろうか?人生そのものが起承転結の無い事柄。それらは「そういうものだ(So it gose)」と「プーティーウィ」で綴られる。

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2019年05月28日

Posted by ブクログ

読み始めた時、なかなか意味を掴めなくて何となく読み進める感じで入って行ったのだけど、読めば読むほど、作者の人間描写力に魅了されてしまった。

これは、その、いわゆる第二次世界大戦中の、悲惨な戦争体験について書かれた本である。
ヨーロッパに送られた、若き日のビリー・ピルグリム。彼のいた歩兵連隊がドイツ軍の捕虜となり、奇しくも連合軍による、いわゆる無差別爆撃、ドレスデン爆撃を生きのびてしまった、悲しいビリーの、そしてヴォネガット自身の物語なのだ。

序文でこの本のなかで私という男(いわばヴォネガット自身)がドレスデンを今、まさに語ろうとしている。戦友オヘアの細君メアリに誓う。
_メアリ、万一この本が完成するものなら、僕は誓うよ。フランク・シナトラやジョン・ウェインが出てくる小説にはしない。そうだ『子供十字軍』という題にしよう_

そうしてビリーの物語は時間軸を越えて語られる、それは、トラルファマドール星の本の手法で(電報的分裂的物語形式)書かれた。

彼は第二次世界大戦中に空飛ぶ円盤によってトラルファマドール星にさらわれた。そうして戦争中の過酷で暴力的な体験をけいれん的時間旅行によって時間軸をねじれされながら私たち読者に伝えてくる。
ある時にはビリーは爆撃を受け動けなくなっている。次の瞬間には娘の結婚式に呼ばれている、また次の瞬間にはトラルファマドール星にいて、またつぎにはドレスデンへ向かう列車の中、そしてある時は銃殺され、次には精神病棟のベッドの上…と、いうように。

戦争の暴力、壮絶な体験、トラウマをこんなSF的な表現、ユーモアと春樹さんがいうように、マイルドな悪ふざけをもって表現した、まったくもって見たこともないような本だった。

その瞬間移動の間に、私たちはビリーの死も目撃してしまう。でも、また過去にもどっても、彼はその死を受け入れたまま、何も変えたりしない。そこが素晴らしいと思った。

『雨天炎天』の中で春樹さんがてきとうに、「愛は消えても親切はのこると言ったのはカート・ヴォネガットだっけ?」なんて書いているのだけど、確かにヴォネガットは親切な愛ある作家だと、私に知らしめた。

こんなマイルドな悪ふざけをもってしてでないと、悲惨な戦争体験を描くことができなかったのだ。

ところで、読み初めた頃随分苦労したくせに、私はこの作品を心ゆくまで楽しんでしまった。しばらくヴォネガットを読んでみたいなと思う。

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2018年11月11日

Posted by ブクログ

今の今までなんでこんないい本を
読まなかったのか!と後悔しました

今年に入って
国のない男とこの本を読んで
ヴォネガットがますます好きになりました

上手く説明できないけれど

「そういうものだ」

ありがとう!ヴォネガット!

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2018年01月15日

Posted by ブクログ

作者が戦時中に体験した事実に基づいた半自伝的SF小説。戦争をはじめとする、作者が直面した目を覆いたくなるほど辛い体験の数々。そこから目を逸らすのではなく、「そういうものだ」と受け止め、それでも楽しかった瞬間を思い出して(あるいは、その瞬間を訪れて)前を向いて歩んでいきたい。そんなメッセージを感じる、とても素晴らしい作品だと感じました。

最近「歌われなかった海賊へ」を読んだばかりだったこともあり、精神的にキツいところもあったのですが、別の視点から戦争を知ることができたことは、貴重な読書体験がでした。

SF作品として見ると、小松左京「果しなき流れの果に」や、今敏の映画「千年女優」に近いかもしれません。異なる時代を旅しながら人生を見つめ直す面白さは独特の味があり、タイムトラベルものとして非常に優れた作品だと思います。

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2023年12月30日

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SFであると同時に戦争小説。死の場面に必ず出てくる「そんなものだ」のフレーズ。達観したというより死に鈍感になってしまう怖さ。主人公が戦前、戦中、戦後と絶えず時間を行き来することで戦争の愚かさが強調されたような気がする。

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2023年11月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 名作と言われる『タイタンの妖女』がさっぱり面白いと思えなくて、疎外感を味わっていたものだ。そこでもっと評価の高いものを読んで、それでダメなら本格的に合わないのだろうと随分前に買ったのをようやく読んだ。SF的な要素はあんまりおもしろいとは思えなかったのだけど、ドレスデン爆撃の現場で地獄を見た人がその様子を描写するためには、こねくり回して形にするしかなかったことがうかがえる。諦観や虚無感が満ち満ちている。相当なPTSDがあるのではないだろうか。こちらとしては平々凡々とした人生を送っており、圧倒的な現実に立ち会ったことなどない。

 人が死ぬたびに「そういうものだ」と差し込まれ、村上春樹の「やれやれ」みたいな感じがするが、シビアさは大違い。本人が死ぬ思いをしたり、数多くの死体を見てきた人の言葉は違う。

 そんな地獄を体験した人が描いたものとして『タイタンの妖女』を読んだらきっと違う味わいがあることだろう。そのうち読み返したい。

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2023年10月04日

Posted by ブクログ

SFをはじめて読んだ。めまぐるしく場面がかわるのに読みやすく、おもしろかった。生きるとか死ぬとかいうことをよく考えるので興味深かった。徹底的な「SO it goes.」にじわじわと打ちのめされる。本から離れ現実世界に戻ると不思議な余韻がつづく。こんな体験ははじめてです。

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2023年07月08日

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ドレスデン無差別爆撃の話。


ビリーが第二次大戦における米軍爆撃機隊の活躍する深夜映画を逆向きに観て、負傷者と死者を乗せた穴だらけの爆撃機が逆向きに飛び立ってゆき、爆弾や銃弾を吸い込み、新品に戻り、軍需工場で解体され、鉱物になり、それをだれにも見つからない地中深く埋める、という一連の映画逆再生のシーンが切ない。




p. 33大量殺戮を語る理性的な言葉など何ひとつないからなのだ。


p. 44死んだものは、この特定の瞬間には好ましからぬ状態にあるが、ほかの多くの瞬間には、良好な状態にあるのだ。いまでは、私自身、誰かが死んだと言う話を聞くと、ただ肩をすくめ、トラルファマドール星人が死人についていう言葉をつぶやくだけである。彼らはこういう、
"そういうものだ。(So it goes. )"


p. 237 「まるで月の表面みたいだったよ」と、ビリー・ピルグリムはいった。
(略)
ひとつだけ明らかなことがあった。この市にいた人間は何者であろうと、すべて死を受容すべきだったのであり、いまそこに動くものは本来の計画の小さな手抜かりでしかないということだ。月に月人は存在してはならないのである。

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2022年03月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

栞を使わずに7日間かけて読んだ。栞を使わないので次にすでに読み終わった場所を読んでいることもあった。題名がピチカートファイブみたいでいいですよね。かっこいい。今思いついたけどプレオー∞の夜明けとも似てる気がする。あれも戦争の話だ。
戦争の話なんだよな。小説の存在するひとつの意味として後世に伝えるっていうのがあるとおもっている。僕がこれを読んで、ドレスデン爆撃について知ることができた。それはほんとうに大事なことだった気がする。

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2021年09月29日

Posted by ブクログ

普通、物語のはじまりが思い出からだったり、思い出がはさまれたりすると情緒がただようのである。が、この小説は「けいれん的時間旅行者」という思い出の進行、なんとも読者は不思議な気持ちにさせられる。

主人公ビリー・ピルグリムは現在、過去、未来を行ったり来たりしている「けいれん的時間旅行者」。そうなったのは戦争に召集され、襲撃を受け敗退、逃げ出した森の中で死ぬ思いをした時。

そこから過去に行くのだが、その過去が現在や未来へ続き、また現在へ戻るという複雑な経過。夢かうつつかまぼろしかということになるのだが…。

過去現在未来は一瞬、一生は一瞬。つまり、中国のことわざ「一炊の夢」、だから一瞬一瞬を大切に生きよ、東洋の思想でもある。

「そういうものだ。」はこの物語に繰り返される言葉。印象的だ。

声高ではない「反戦小説」を読むつもりだったが、人生の過ごし方を教示された。不思議なストーリーだ。そこがカート・ヴォネガットのSFたる所以なのだろう。

自伝的である戦争体験(第二次世界大戦)をSFのストーリーに閉じ込めてある。また、これより以前に書かれた本ともつながりのあるストーリーなのだ。

なお、

神よ願わくばわたしに
変えることのできない物事を
受け入れる落ち着きと
変えることのできる物事を
変える勇気と
その違いを常に見分ける知恵とを
さずけたまえ

この言葉に再び出会って感動。

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2021年09月13日

Posted by ブクログ

著者が体験したドレスデン爆撃がテーマ。スローターハウスとは食肉処理場のことで、旧日本語版タイトルは『屠殺場5号』となっていた。ヴォネガットらしくユーモアは散りばめられているが、決して楽しく明るい物語ではない。戦争という殺戮について語るためにはこのような形にならざるを得なかったのだろう。1章はこの本を書いた舞台裏のような話になっており、全体を読み終えた後に読み返してみるとより一層胸に来るものがある。「大量殺戮を語る理性的な言葉など何ひとつないからなのだ。」

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2021年04月04日

Posted by ブクログ

1945年2月。捕虜としてドレスデンにいたカート・ヴォネガットは、連合国軍によるドレスデン爆撃を目の当たりにした。長年その体験を小説にしようと考えてきた彼は、ビリー・ピルグリムという男を創造する。ビリーは同じくドレスデン爆撃を生き残ったが、帰国後にトラルファマドール星人に捕まって以来〈けいれん的時間旅行者〉となって、過去・未来の区別なくランダムに時空を飛び回ることになった。PTSDに悩まされる帰還兵の心理をSFに落とし込んだ反戦小説。


あからさまに兵士のトラウマからくるフラッシュバックを題材にした作品なので、「SF…?」と疑問符を浮かべながら読んでしまったけど、本文中に「二人とも人生の意味を見失っており、その原因の一端はどちらも戦争にあった。(略) 二人は自身とその宇宙を再発明しようと努力しているのだった。それにはSFが大いに役に立った」というくだりを見つけ、悲惨な現実に対してなにかフィクションが効用をもつのではないかという祈りのような物語なのだと思った。
特に印象深いのは、トラルファマドール星人との初邂逅を前にベッドを抜け出すシーンと、爆撃後のドレスデンの街を月面にたとえたシーン。どちらもSF的な書き方によって「宇宙の再発明」を試みるビリーとヴォネガットの思いが感じられる。そうした静かな場面が活きるのは、戦場での、あるいは戦後のアメリカ社会やトラルファマドール星でのスラップスティックめいたマンガ的な日々の描写のためでもある。トラルファマドール星人とのやりとりはナンセンスなコントのよう。
ヴォネガットはビリーを英雄にしなかった。作中唯一の例外は、のちに戦犯となるキャンベルに勇気を持って反抗したエドガー・ダービーだが、彼はティーポットを盗んで射殺された。ヴォネガットが戦争体験を“タフな男たちの物語”にしなかった理由はプロローグに記されている。そもそもヴォネガットがタフな男の話を書くつもりだったかはわからないが、結果としてこの作品は戦争の虚しさと人間の悲しみがひたひたと肌に感じられる稀有な語り口になった。ジェノヴァの善良な人びと、万歳!

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2020年09月13日

Posted by ブクログ

不思議な世界。凄く惹き込まれて、あっという間に読み終えた。
戦争の悲劇が不思議な描写で描かれてる。なぜかぐいぐい食い込んでるくる、不思議な本。別の著書も読んでみよう。

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2019年12月07日

Posted by ブクログ

そういうものだ。で完結させられる主人公の周りで起こる時代も場所も超えた様々な出来事。行ったり来たりして混乱するかなと思いながら、読みきれた

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2019年11月26日

Posted by ブクログ

SF。戦争。
タイムトラベルや異星人やらが出てくるSF作品であることは間違いないが、非常にリアルで生々しい。
残酷な描写も多いが、なぜか感動的。
なんとも不思議な魅力に溢れた名作。

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2019年04月20日

Posted by ブクログ

時空を縦横無尽に駆けめぐる
不思議なストーリー。
小説というメディアならではの仕掛け。
悲惨な現実へのシニカルな視線も印象的。

戦争映画の逆回しのシーンが
有名だが、やはり独創的だった。

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2018年12月15日

Posted by ブクログ

わたしはキリスト教的決定論を信じるタイプである。
運命はすでに決まっていてあとは神に導かれるまま生きるだけ だからこそ臆せずに自らをしっかり持って貴重な一日を生きることができるから。
あの時ああしていれば、わたしがこうしたせいで、という後悔の仕方はしない。自分がどのように行動しても遅かれ早かれその出来事は起こったのだとおもう わたしが後悔するのは失われてしまったものを大切にできなかったことについてだけであり、愛情とか、穏やかな時間とか、そういうものを十分に受け止められなかったことは心に引っかかり続ける
ビリー・ピルグリムはそのような後悔さえしない。それは運命を先に知っているからということになっているけど、本当は失われるものがあまりに多かったから、そう考えずには生きていられないほど辛かったから、たどり着いた考えなのだろうともおもう

現在好ましくない状態にあるが他の瞬間には確かに生きているということ ああ、『海からの贈り物』から得たいちばん貴重な気付きもこういうことだったな
”我々は「二つとないもの」——二つとない恋愛や、相手や、母親や、安定に執着するのみならず、その「二つとないもの」が恒久的で、いつもそこにあることを望むのである。つまり、自分だけが愛されることの継続を望むことが、私には人間の「持って生れた迷い」に思える。なぜなら、或る友達が私と同じような話をしていた時に言った通り、「二つとないものなどなくて、二つとない瞬間があるだけ」なのである。”

ほんとうに、これ!なのだ まだ起こっていないことを恐れて自分の可能性を狭めたくはない、日々よりよく生きることくらいしかわたしにはできないしわたしに変えることができるのはこの一瞬ごとだけなのである
そして私はこういう運命に向かって淡々と進む物語が大好きなの、、、、
はじめから読み返しはじめたらもう常に心がぎゅっとなって ひっそりポロポロと泣くビリー・ピルグリムの気持ちになれます

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2017年06月07日

Posted by ブクログ

けいれん的に起きる時間旅行のせいで最初のうちはとても読みにくく感じたが「そういうものだ」と思ってからは引き込まれた。捕虜生活、ドレスデン爆撃の、渦中にいながらもどこか達観した、俯瞰するような視点は『夜と霧』やら『If This Is A Man』など多くの死に触れ生き延びたもの独特の何かを感じさせる。幸せな時から地獄へとたびたび行きつ戻りつする時の流れは死しても抜け出せない牢獄(作中の表現を借りれば琥珀に閉じ込められた虫)に閉じ込められた意識であり感情であると思うと、非常に壮絶で、苦しい。そういうものか?

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2017年02月24日

Posted by ブクログ

最初は、筋も山場もよく分からないまま、漫然と読んでしまったので、再読。
集大成的なキャストやすわ名言という文章も多いのだけど、やはり無性格に描かれた登場人物たち、ブツ切りにされた筋、感じのいいエピソードなんてほとんどない、カート・ヴォネガットの作としてはやはり実験作、あるいは失敗作と言えるのかもしれない。ただ、そこまであの手この手を使ってまで伝えたかった(それもどうやっても伝わらないと確信しながらも)ことがある、ということだけはひしひしと伝わって来る。

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2016年10月09日

Posted by ブクログ

古典的なSFで、著者のヴォネガッドの実際の戦争体験が元になっているということだが、自分にその手の歴史的な知識がないため内容が良く理解できない。

ラスト近くの有名な一節だが、なぜ主人公がそう思うに至ったかが上手く飲み込めない。

自分にとっては読み進めるのが難しい難解な部類の本だった。映画化もされているということなので、映像で見れば多少はイメージが湧くか?

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2024年05月11日

Posted by ブクログ

SF小説と戦争ノンフィクション小説が融合したような作品。時間旅行と戦争実録が絡み合う。
ドレスデン爆撃については、全く知らなかったので、衝撃的だった。米兵の捕虜生活も壮絶で、作者の実体験を元に描かれたからこそ、具体的だ。
「そういうものだ」…多用されるこの言葉に諦めを感じさせる。
ビリーの虚無的な人生は戦争体験によるものなのか。
ヴォネガットがこの作品を描いてから何十年経つのだろう。いまだに戦争は無くならない。
愚かな行為を繰り返す地球人をトラルファマドール星人はどう見ているのだろうか。

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2023年12月23日

Posted by ブクログ

読書会課題本。奇想天外な展開と言えば、確かにそうだけれども、戦争によって多くのものを失う悲しみが、ひしひしと感ぜられる内容だった。時々挟まれるユーモアや繰り返される「そんなものだ」という台詞に、諦めのような感情が伝わってくる。戦争について色々と考えさせられた。

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2021年10月21日

Posted by ブクログ

カートヴォネガットジュニア
スローターハウス5
カバー 和田誠

面白さはないが、死に対して鈍感にならざるえない戦争の雰囲気は伝わる

戦争の中の死を語った自伝的小説。時間旅行や異星人との会話などSF要素を組み込んでいるのは SF世界が本来あるべき世界という意味か?

多くの人の戦死が 語られた後、必ず出てくる セリフ「そういうものだ」が 鈍感に生きる全てを示唆しているように読める


*過去、現在、未来は変えられないが、変えられないことを受け入れることはできる

*戦争に対して何もできないが、死を無視して、生の瞬間の深みを感じることはできる

*個々の人間に差異は存在しない〜この世に性悪とか、低劣と言われる人間はいない

*我々は〜いなければならない場所にいるだけ〜自由意志でこの場所にいるわけではない→自由意志は存在しない

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2020年08月29日

Posted by ブクログ

カート・ヴォネガット 、学生時代何冊か読みました。独特のブラックなユーモアと風刺と、物語としての面白さ。
当時からヴォネガットの最高傑作は「スローターハウス 5」と言われていたのですが、なぜか読む機会を逸していました。
ただ、ちょっと期待しすぎたみたい。

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2018年11月23日

Posted by ブクログ

こんなふうにユーモアたっぷりに批判的な主張をかける人って、すごい頭がいいんだろうな。ドレスデンの爆撃がどれほどひどかったのか知らないので実感として受け止めることはできなかったけれど、戦争というもの、またそれも含めての人生、人の運命というものに対しての諦念混じりの憤りが描かれていたように思えた。
実際に読む前はなんとなく不条理SFのイメージがあった本書だったが、読んでみたら不条理ではなくこの世の理がそのまま書いてあったので少し驚いた。命や時間というものについてトラルファマドール星人のような見方ができたら、確かに人類の考え方や行動は変わるのかもしれない。
ところで、やたら出てくる「そういうものだ。」という言葉は、訳として上手な日本語なのだろうか?

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2018年11月15日

Posted by 読むコレ

ドレスデン爆撃を経験した著者の半自伝的小説との事ですが、その意図に気付くまでは苦しめられました。
痙攣的時間旅行者なる男の物語で、過去未来を往来しつつ戦争捕虜や宇宙人の誘拐という体験を語るのですが、読み始めは混乱するばかり。
しかし次第に、辛い体験も「そういうものだ」と多くを語らない様子や、宇宙人視点より戦争を鳥瞰する様子から却って著者の受けた衝撃が伝わって来る様で、徐々に引き込まれる事に。
SF要素もありふれた戦争体験記で済まさぬという作者の執念を表現する要素という所か。
勿論初めて味わう読書経験。
世界は広い。

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2014年06月01日

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