【感想・ネタバレ】下流の宴のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

 自分が上流であると思う主人公の母。決して努力をしないその息子。収入の高い相手との結婚のみを目指す娘。
 
 主人公である母親は息子の彼女を叱責してしまう。「あんたのような下流の家の出の娘はうちの息子にはふさわしくない。ウチは代々医者の家系」

 息子の彼女は努力の末医大への合格を果たす。しかし、息子は、「がんばった君に僕はふさわしくない」と別れを告げる。

 外資系金融機関勤務の男と結婚を果たすが、その男はうつ病を患い、実家に帰ってしまう。乳児を連れて娘は母親のもとに戻る。そして医大合格した交際相手と別れた息子は、マンガ喫茶の店員の給与では自活できず、彼も母親の元に戻る。

 下流から出ない若者。上昇志向のある若者。上流とは?下流とは?

 「私は何を間違えたのでしょうか」と母親が祖母に書く手紙で終わる。

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2023年02月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

多分、発行直後に読み、再読。

東京の中流家庭としての誇りを持つ由美子。
高校中退の息子、翔がフリーターの珠緒と結婚すると言ったことで、自分が下流に落ちてしまう、と恐怖を覚える。
そこで、断固阻止を決意する。
ずっと由美子に馬鹿にされ続けた珠緒は、私が医者になれば、結婚を認めるか?と啖呵を切り受験勉強を始める。

中流は、決して上流になれない。
下流を蔑むことで、プライドを満足させる。
なんて話だ!と思って読んだのは、発行直後の2010年。
その時と、12年経過した今では、同じ本を読んでいるのか、と思うほど自分の感じ方が違う。

幼い時から、母親の価値観が全という世界で育ち、中学受験をして高校に進学した頃から、反抗することで自分を見つめ直す翔。
今時の、と言っても2010年の若者の、ずっとフリーターで何が悪い?
この考え方は2022年の今も、ますます増長して受け継がれていると思う。コロナで成人式が無くなった、2000年産まれ、あんなにミレニアムベビーと騒がれた子どもの20年後。
子どもは産まれたときから不況で、私自身は決して裕福だった生活とは思えないが、子どもは、私を恵まれた生活を送ってた、という…

気の毒なことに、高校中退した翔には見本となるモデルがいなかった。中流家庭の自分たち家族はいかに立派か、由美子の父親は、医者だった(からエライ)その感覚は今の子には伝わらない。
翔の父親は、なんか頼りにならない。早稲田理工学部出身でも。
翔の姉の可奈は、対照的で、最後の大学でブランド女子大を選び、卒業後も正社員で決まっていたところがダサいという理由で断り、ハケンで華やかな商社に勤める。
そこで、自分で稼ぐではなく、稼ぐ夫を探す。
大変な努力により、きちんとそんな夫を確保する、しかもデキ婚で。
周りを正しい高収入の暮らしで固めたら、幸せになると疑いもしなかった。それがあっという間に崩れ去る。
いやらしいけど、読者としては、ざまあみろと思う。

翔の好きだった珠緒は、受験勉強の二年間で、離れた存在になってしまう。ここに格差が生まれるが、努力に努力を積み重ねた珠緒は、これからの人生に目的が見えてきた。
翔は変わらないから、その場に立ち止まってしまう。

世の中や男性をナメてきた可奈の将来も気になる。
シングルマザーとして再起するか、夫を回復させ尻を叩いて、もう一度セレブとして返り咲くのか。

林真理子の小説で面白いのは、とにかく学歴フィルター、家系フィルター、ものすごくはっきり分かりやすく描かれているところ。
そしてバブルっぽい描写も素晴らしい。
話し方も…ッ、というのは、ほぼどの本でも健在。

多分、また10年経って読んだら、また違う感想を抱きそう。また読みたい本です。自分への戒めとしても。

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2022年11月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

上に上がりたいと思っても努力ができない、というのと、そもそも上に上がりたいと思わない、という差。息子を持つ母親としては翔の不甲斐なさに絶望を覚えながら読んだが、一端の女性としては可奈の強かさや珠緒のひたむきさ、冷静さに共感を覚えた。そして多くの人が大人になるに連れて、見えないヒエラルキーの中で互いに格付けし合って生きていく現実をこの本は生々しく描いていて、ちょっと心をえぐられるところもあった。可奈の見栄っ張りや母親由美子の「上から目線」は傍から見れば滑稽だが、誰でも思い当たることはあるだろう。結局、人生の幸せって本人にとってしか分からないよなぁと色々考えながら読めた本でした。

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2021年01月22日

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