【感想・ネタバレ】僕らには僕らの言葉があるのレビュー

中学生の頃から硬式野球をしていた野中宏晃(のなか ひろあき)は、高校でも野球をすることしか考えていませんでした。
そんな彼が入学式で出会ったのが、インテグレーション生(障がいのある生徒が各種特別支援学校ではなく、通常教育の学校で一般の生徒と共に学ぶこと。)として普通学校に進学した、生まれつき耳が聞こえない“ろう者”の相澤真白(あいざわ ましろ)。
耳が聞こえない相澤とはどうせ関わることなんてないだろうと思っていた野中でしたが、なんと相澤は硬式野球をするために入学してきたのです。
相澤と組むのを面倒くさがった野球部のチームメイトは、その役を野中に押し付けます。
最初は嫌々だった野中でしたが、相澤の投げるフォームのしなやかさやボールの筋の良さに考えを改めるのです。
“ろう者”のピッチャーと“聴者”のキャッチャーのバッテリーが誕生したのでした。

この物語は“ろう”であることを様々な観点から描いており、乗り越える苦難としてではなく受け入れる日常として描いているところが印象的でした。
もうひとつ印象的だったのが、手話もひとつの言語であり日本語や英語を習得し会話するのと同じ。言語が違うだけということです。

それを表しているのが、50音のひらがなを指で表す指文字でコミュニケーションが取れることを知り、元来野球のサインを憶えるのが得意だった野中は相澤の投げたボールに対して指文字で「ナイスボール」と返すシーン。
普通学校での些細な躓きに傷ついていた相澤が初めて人とコミュニケーションが取れたと実感した瞬間だったのでしょう、その瞬間の彼の表情は読んでいるこちらも胸が震えます。

自身も子供の頃に周りから煙たがれていた野中は、“ろう”であることで周りから距離を取られがちな相澤にまっすぐ向き合っていきます。
“ろう”であることを特別視するのではなく、ただ普通に“ろう”であることを当たり前として受け入れる野中。
彼の姿勢は、様々な個性や価値観がある現代社会で生きる我々には学ぶべきものが多いのではないでしょうか。
また、そんな野中と一緒に野球をするうちに相澤自身も変化してゆくのです。

今作は巻数のクレジットがなかったので、1巻完結の作品なのでしょうか。
まだまだ彼らのこの先を読みたい!!と思ったのは私だけではないはずです。

“ろう”と野球を通してコミュニケーションを取るということについて考えるキッカケになる作品です。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

生まれつき耳が聞こえない真白と周囲から孤立している野中。高校野球のバッテリーを組むことになる二人を中心に、それぞれの家族のことや障害について深く考えさせられるお話でした。青春ブロマンス最高。

距離が縮まるのに時間はかからないんだなぁ。でもそれは野球が二人とも大好きだったから。清々しい気持ちになりました。続きありますよね?!

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2023年05月07日

購入済み

野球漫画なんて出尽くしている…
そう思っている人にこそ読んでほしい。
これは野球「だけじゃない」漫画です。

BookLiveで買って読んだ後、
書店で紙媒体も買ってしまいました。
誰かにおすすめしたくなる作品です。

登場人物の背景や思いだけでなく、
障がいや手話通訳のことなど

隅々まで丁寧に描かれています。

これから初めて読む人が羨ましい。
そんな作品です。

#癒やされる #深い #タメになる

1
2022年12月12日

Posted by ブクログ

あー好きだ。
こういうの、本当に好き。しかも野球。続編が早く出て欲しい。面白いから映画化とかドラマ化とかされそう。本物の真っ直ぐさには誰も敵わない。無敵だ。世の中的にはまだまだ全然足りないところもあるけど、こういう作品を読むと良い時代になってきたなぁ、としみじみ思う。

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2024年03月05日

Posted by ブクログ

聴こえなかったら野球ができない?聴こえなくても野球をやっている人は世界中にたくさんいる!野球がしたくて普通高校に入学したろう者の相澤。バッテリーを組むことになった野中は初め戸惑うが、指文字を覚えてコミュニケーションを取り始める。「ナイスボール」が伝わる最初のシーンは感動。二人の成長と活躍が周りをどう変えていくのかも楽しみだ。

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2024年02月20日

Posted by ブクログ

聴者のキャッチャー野中とろう者のピッチャー真白が高校の硬式野球部で出会うところから始まるボーイ・ミーツ・ボーイ。
丁寧に描かれた表情や間から伝わるそれぞれの思いで胸がいっぱいです。ぜひ続刊を!

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2023年02月18日

Posted by ブクログ

ろう学校から普通高校に進学したピッチャーと、プライドの高い孤高のキャッチャーの出会い。

出会いと過去や環境を交えた仲良くなる過程がメインで、面白く読み進めていたところ、え、もうエピローグ!? もう何巻か続かないのか!? と思いましたが、バッテリーの始まりの話としてきれいにオチていて、とてもいい一冊でした。青春……。(続き、あるのであれば勿論読みたいです)
私の場合は小学校の時、授業で手話を学ぶ機会があったので知識0ではないものの、実質ほぼ0なので50音表ページ(相手向き・自分向き)があるのは完全初心者にもやさしく、きっかけには持って来いなんじゃないかなと思います。

アニメイト特典として、取材記事風リーフレットがついています。
この本編後の彼らのミニ記事もとてもいいです。★4.5

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2022年12月18日

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