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1978年、今から四十年以上前のこと。悦子は、西荻窪の裏通りにあるバー「とみなが」でアルバイトを始めた。私立の美大を卒業して小さなデザイン事務所に勤めていたが、そこの所長がスタッフの若い女と恋仲になって、所長の妻と大騒動になり、そのとばっちりで悦子もその妻に疑われ、嫌になって辞めたあと、マッチのロゴをデザインした縁で「とみなが」の多恵子にその話をしたら、自分の店を手伝って欲しいと言われた。それから「とみなが」で働いている。「とみなが」は芸術家志望、芸術家くずれ、フリーで仕事をしている連中に人気のある店だった。それはママの多恵子の飾らない人柄のお陰だったと思う。そしてそこで、悦子は、飯沼とも、また千佳代とも会ったのだった。そしてそれがこれからの長い間の恐ろしい出来事の始まりだった…。小池真理子のホラー。いいねぇ。夜一人で部屋で読んでいると、なんだかゾクッとくる。部屋の隅の薄暗闇をつい見てしまう。楽しみました♪
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美しく品のある幻想怪奇小説。意味アリの気配を漂わせ現れる千佳代に怯える悦子、多恵子、飯沼たち。千佳代がコウモリを飼育していた過去と多恵子の恋人シゲタの存在が今も妙に引っ掛かっている。
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怖くなかった、という
レビューを散見します
が、十分怖かったです。
ひたひた忍び寄る戦慄。
スリルじゃなくて恐怖
・・・
『日影歯科医院』以来
小池真理子ワールドを
堪能しました。
怪談やら不思議な話に
怖気づくほうですが、
ひとたび話が終われば
すぐに忘れます。
現実に立ち返って風の
音はただ風の音であり
闇はただ闇でしかない
と思うようになります。
もとより細やかな神経
を持ち合わせていない
ので、
あの世の者が迫っても
私の場合、気付かずに
終わるのでしょう(笑
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彼女がそこで見ていそうな気配を感じるので、読み終わるまで何とも言えない不気味さを感じた。千佳代だけが一人モノクロ映画の無機質な登場人物のようで。女は全員飯沼に溺れてしまうんじゃないかというくらいモテっぷりがすごかったけど、何故彼には視えていなかったのか。シゲタの正体も気になるし、後は想像するしかない。
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人間の愛と憎が静謐な空気を纏いながら描かれる。
一人の魅力的な男性・飯沼一也と彼を取り巻く女性達の姿を、主人公・久保田悦子が手記として綴っていく物語。
悦子の親友・千佳代が飯沼と入籍後20代の若さで突然の他界。
それ以降、様々な場面で千佳代の亡霊が現れるようになる。
飯沼と関わった女性達の相次ぐ不審死。
果たしてそれらは全て異形の者の仕業なのか。
復讐したくなる程、悪い人間は登場しない。
死者の怨み辛みなどの強烈な憎悪も感じない。
それだけに尚更、異形の者の存在に恐怖を覚える。
深すぎる情が招いた危険なゴーストストーリー。
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初読みの小池真理子さん。
ポーの「アナベル・リイ」という詩をモチーフにした、幻想怪奇小説。
この詩は知っていたので、興味を引かれて手に取った。
この世に想いを遺して不意に世を去ることになった女性・千佳代が、彼女を知る人の前に姿を見せる。彼女はなぜ、出てくるのか、彼女の想いはどこにあるのか。
生前、彼女の唯一の親友だった悦子の回顧録のようにして、淡々と話は進み、けれどもどうして千佳代は霊となってしまったのか、目的はなんなのか、秩序だった理由や明快な結論は得られない。
何人かの人が亡くなり、現実におきたことなのかなんなのか、曖昧な事も多い。
そんな煮え切らない話でも、ぐいぐいと読んでしまったのは、大御所さすがの筆力なんだなと思う。
霊の話だけれど、不思議と怖くはない(私は)
愛に生きた「アナベル・リイ」だと思えば、哀しく美しくすら感じる。もちろん、会いたくはないが…。
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タイトルは、ポーが残した詩。作者、ホラーもいっぱい書いているのね。1950年代生まれの方なんだな、と理解できれば、時代背景もわかる。奇をてらってりの話や文体ではないし、安心して読める(メフィスト賞の読みすぎ)。
介護も旦那の死も乗り越えた作者(どこかで知った)。
グロテスクがあるわけでも、残虐があるわけでもない。でもこわい。すーーーーと背筋が寒くなる。人の思いは死んでも残るのか。それだけ強い思いだったのか。
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結構ありきたりな筋書きなのだけれど、読ませる文章でどんどん引き込まれていく。実写化したらこの配役だなと想像しながら読んで楽しかった。役の年齢とか考慮せずただのイメージでいうなら、飯沼→玉山鉄二か竹野内豊、多恵子→濱田マリ、千佳代→裕木奈江。主役の悦子がなかなか思い浮かばない。最後の補足で、結局はこれ友情物語だったの!?(かなり歪ではあるが)と思い至り、ホラー小説なのだけれど、不思議な軽やかさが後味として残る不思議な小説でした。
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ずーっとジワジワ怖い。1970年代後半の雰囲気と小池さんの文が怖さを引き立たせてる感があった。
丁寧な描写で主人公の恐怖が手に取るように感じられた。
ぜひ実写化して欲しいー
Posted by ブクログ
幻想怪奇小説。
無名の劇団員である千佳代は、「アナベル・リイ』の主演女優の代役をしたことで、ライターの飯沼と知り合い付きあう。
悦子がアルバイト先のバーで飯沼から千佳代を紹介されて親しくなるが、入籍して間もなく病に倒れ亡くなる。
千佳代が亡くなってから彼女の亡霊を見るようになり…。
飯沼と関係のあった者が、突然亡くなるという…。
亡霊や幽霊など、見たこともなく半信半疑であるが、因縁があれば見るものだろうか。
不可解ではあるが、亡霊はけっして襲ったりはしないだろう。
ただ寂しく彷徨っているのだろうと思うしかない。