【感想・ネタバレ】最後の鑑定人【電子版特典付き】のレビュー

\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

面白かった。
読んでいてタイトルの意味に納得。
そして歩容鑑定、炭化深度、燃焼残渣。。科学鑑定方法も興味深かった。
冷静に真実を求める「最後の鑑定人」と呼ばれた元科捜研エースの土門誠。
助手の高倉柊子とは最高のコンビ。是非続編期待。

0
2024年05月14日

Posted by ブクログ

 土門誠。事件に関わる物証を科学的に解析する鑑定のプロだ。かつては科捜研のエースだった土門だが、ある事件がきっかけで退職し、民間鑑定所を立ち上げ独立した。

 「彼に鑑定できない証拠物なら、他の誰にも鑑定できない」と言われた土門のもとには、現在でも鑑定困難な証拠物件が数多く持ち込まれる。

 これは「最後の鑑定人」の異名を持つ土門が解明した事件の記録である。
            ◇
 人間は嘘をつく生き物だ。
 若手弁護士の相田直樹は浅いキャリアであるにも関わらず、近頃その思いがますます強くなる一方だった。

 相田は現在、かつての交際相手の女性を殺害したとして起訴された北尾洋介の弁護を担当している。
 洋介は犯行を否認しているが、被害者の体内に残されていた体液の DNA が洋介のものと一致。状況は極めて不利である。

 一縷の望みがあるとすれば、防犯カメラに写っていた犯人の映像が不鮮明で、洋介であることを証明できないことぐらいだ。だがそれとて裏を返せば、洋介でないことの証明にもならないということになる。

 相田は先輩弁護士の勧めで土門鑑定所を訪ね、防犯カメラ映像の解析を頼むことにしたところ……。
    (第1話「遺された痕」) 全4話。

       * * * * *

 岩井圭也さんの作品は初読みでしたが、本作は骨太で読み応えがありました。
 何より主人公の土門誠という鑑定人の魅力によるところが大きかったと思います。

 長身痩せ型。眼光鋭く愛想笑いなどしない。
 無駄口は利かず、話すのは必要なことだけで、当然、人付き合い等は苦手で不器用。
 ただし鑑定人としての見識とスキルは高く、他の追随を許さない。
 その実力と重厚な人柄で、多くの関係者の信頼を集めている。
 
 まったくシブくてかっこいい。ザ・プロフェッショナルの風格を感じます。
 実際、土門の緻密な鑑定によって事実が次々と明らかになっていくところには、圧倒されてしまいます。
 そんな土門のスタンスの根底にあるのは「科学は嘘をつかない」という信念です。

 科捜研を退職する原因となった冤罪事件を教訓にして、その信念を強くした土門は「鑑定人なら、科学を裏切るような真似をしてはいけない」ということを常に念頭に置くようになりました。

 土門はそれ以来、ベストを尽くした鑑定をきちんと表に出し、科学に裏打ちされた分析結果に基づく見解を述べるのでした。
 たとえその結果が、組織的に見て、あるいは人情として、好もしくない事態を招いたとしても、土門の姿勢は変わりません。
 事実、第2話「愚者の炎」最終話「風化した夜」で土門が鑑定し解明したのは、このまま蓋をしておいてもよかったかも知れない事件の真相でした。

 土門鑑定所でただ1人の職員である高倉柊子は、「いかなる事件についても、解明した事実は表に出す」ということに疑問を呈しますが、土門の「事実を選別しない」という姿勢に圧倒されるとともに感銘も受けます。
 普段は朗らかでマイペースな柊子が、真剣に鑑定人としての自らの立ち位置について考えるシーンは印象的でした。

 事件に絡むすべての人の事情を斟酌して真相を明らかにするかどうかを判断するのは、神にしかできないことでしょう。
 1人の人間に過ぎない土門にとっての最善は、ただ粛々と鑑定作業に取り組み、忖度なしに真相を解明することであるのは間違いないと思いました。

0
2024年04月23日

Posted by ブクログ

2022年刊。本のタイトルの意味、何なんだろう?と思っていたが、それは直ぐに書かれていた。ミステリー4編で、相互に事件的な関連は無いが、中心人物の背景が明らかになっていく構成。読み応えあり。軽過ぎも、重すぎもしない。読後感も良い。

0
2023年05月18日

Posted by ブクログ

「科学は嘘をつかない」。へぇほぉなるほど。私立探偵の本は世の中に腐るほどあるが、私立科捜研が題材とは新しい。警察庁の科捜研を退社後独立し、民間の鑑定所を設立している土門。能面の様に無表情で取っつきにくい土門だが、仕事への熱意・鑑定結果から推理する力は一流。そんなスゴ腕鑑定士の彼の元へは様々な事例が舞い込む。科学鑑定するのは機械でも、読み解くのは人間。そこに生まれる謎と人間ドラマ。短編でも読み応えがあって面白かった。土門のキャラもナイス。岩井圭也さん、これからもチェケラッチョ、一直線で追いたい作家さんだ。

0
2023年02月01日

Posted by ブクログ

人は嘘をつくけれど、科学は嘘をつかないのは確かにそうだなと思いました。科学は客観的に物事を捉える指標になると思いますが、過信しすぎてもだめだと思いました。

0
2024年05月19日

Posted by ブクログ

 刑事事件の証拠品やデータについて、科学的鑑定を行う民間鑑定所「土門鑑定所」の二人が大活躍します。4篇構成で、とっても面白いです。
 土門さんといえば、『科捜研の女の』の土門薫刑事ですが、こちらは元科捜研の土門誠先生、ややこしい。
 土門先生、科捜研をおやめになり、自ら鑑定所を開所。科捜研時代には、スーパーという意味で「最後の鑑定人」と呼ばれていたらしいです。

 「最後の鑑定人」の鑑定が、とても気になって読みました。今の仕事を引退したら、次の仕事は憧れのスタバの店員さんになりたかったのですが、もっと楽しそうなので土門鑑定所のバイトに憧れ対象をチェンジしました。まあ、キホン老害ですけど。

 土門さん、最後の鑑定人だけあって犯罪の鑑定に精通されていて、カバーする領域が広いです。
 登場人物の中には彼を、鑑定の「変態」と呼んでいた人もいました。どうやら鑑定大好きオジのよう。好きな鑑定の依頼を受けると、眼の奥がキラリ。

 土門鑑定所は土門先生と、技官の高倉さんの二人。この高倉さん、知的美人で心理系大学院修了、ポリグラフ検査で博士となっています。「科学」と「人が嘘をつくこと」に興味津々な人で、お客が来るとハーブ水をすすめる、クセ強めの人です。ハーブ水をすすめる理由は、本書でご確認くだい。

 という訳で、「科捜研」好きの方なら必読でしょう。ただ、各お話最後の犯人独白みたいなところは、ちょっと苦手でした。
 しかし、岩井圭也さん、面白そう。続けて読みたいです。

 以下、土門鑑定所でのバイトに備え、各お話の鑑定について、簡単にまとめておきます。

『遺された痕』
筆跡・文体鑑定、画像・歩容解析、DNA鑑定(科捜研データの検証)
・・・歩容解析などのソフトウエア解析は素晴らしいです。DNA鑑定、この事例は教科書の応用例みたいに感じます。もしそうなら、科捜研のひと、損な役回りでお気の毒です。

『愚者の炎』
ガスクロマトグラフ質量分析(GC/MS)、炭化深度測定及び解析、心理操作
・・・GC/MSは前処理が肝かな。予備実験なしで指示する土門さん、さすがです。
意外でしたが、土門さんは見かけによらず心理的圧迫がお上手なようです。

『死人に訊け』
DNA鑑定、復顔(外部実施)、骨緻密質観察、FT・IRまたはSEM・EDS(外部実施)、土砂分析及びデータベースリサーチ
・・・科捜研のデータをみるだけでなく、検査方法の詳細をチェックする土門さん、最高ですね。DNA鑑定で科捜研が選択したDNA抽出方法「フェノール・クロロホルム法とプレップ法」とはあれかな?確かにちょと荒っぽいかも。生化学系は何でもキットですからね。
このお話しが一番科捜研ぽいです。

『風化した夜』
筆圧痕レーザー顕微鏡解析、地理的プロファイリング、PCパスワード解除(専門外)
・・・筆圧痕は、えんぴつで薄く塗って読むんじゃないんだ!これじゃ、少年探偵団でしたね。

0
2024年05月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

元科捜研の土門誠は現在民間の鑑定会社を営むスゴ腕の鑑定人。ドラマ科捜研の女(実は見たことない)の流行りに乗ったか?と思いチョットベタさを危惧したが…

ベタ展開と言えばそうなんだが、決して悪くはない出来。その辺が岩井圭也の腕かなぁ。伏線の重層さとか圧倒的感動とかそういうのではないが、ミステリー短編としての丁寧さが安心して読めて心地よい。

なんとなくだが、この1冊は助走部分だという気がしている。シリーズ化して近いうちに結構骨太な長編を書く予定じゃないかなぁ。当たっていれば非常に楽しみ

0
2023年08月15日

Posted by ブクログ

 これはミステリではない。岩井圭也の作品なのだから。そう思いながら読むと、良さがしみじみと感じられる。人は、どんな屈託を抱えながら生きていくのか。どこまで抱えながら生きていけるのか。それを噛みしめ、測っていく。それが岩井圭也の世界なのだろう。罪への視線。彼の多くの作品を通して感じる。

0
2023年07月31日

Posted by ブクログ

ネタバレ

文体は読みやすく、科学鑑定は素人でもわかる程度に抑えられ、トリックも「ははあ?」と思える。本格ミステリ好きには物足りないのだろうが、いい読書ができた。
探偵役である土門が語り手に回らないのが、当人が最大のミステリという感じでいい。狂言回しとしては二章の刑事がいい相性に思えた。後半に犯人の(身勝手な)語りが入るというパターンもしっかり確立されているし、何作でも続けられそうなのでぜひまた読みたい。

0
2023年06月20日

Posted by ブクログ

最後の鑑定人と呼ばれる土門が依頼の案件の真実を次々に解明していく様は爽快でした。
しかしその犯罪の背景が物悲しく、複雑ななんとも言えない気持ちになってしまい、次に解決する鑑定こそ本当の悪を暴く爽快な最後であって欲しいと願います。

0
2023年05月28日

Posted by ブクログ

面白かった!でも物足りない!
何故ならもっと読みたかったから〜♪

〈土門鑑定所〉民間の鑑定人・土門誠は元警視庁の科捜研にいた技術者。その技術は誰もが認めるものだった。
土門に鑑定できない証拠物なら誰にも鑑定できない…科捜研最後の砦「最後の鑑定人」だと。

短編4作の依頼人は弁護士、刑事、判事でそれぞれ
刑事事件の行き詰まった状況を土門が解決‼︎
土門のキャラも良いが助手の高倉柊子も良いd(^_^o)
ラスト4作目は土門が科捜研を辞めた事件とその理由が判明。土門自ら再鑑定、助手と捜査し事件後7年経っての解決となりました。

地味だけど良作♪鑑定メインの作品は初めてかも?
岩井圭也さんも初読みの作家さん_φ(・_・
やだ!また良き作家さん見つけちゃって嬉しい悲鳴だわ‼︎‼︎


0
2023年04月12日

Posted by ブクログ

民間の鑑定人の土門の鑑定に基づく推理が凄い。どんでん返し起こしたりや迷宮入りを解決したりするのだが、あくまで科学が証明することがすべてと言い切る。そうだよなあ、綿密で正確な鑑定があってのことなのだから。無表情で感情を表さないのだが、助手の高倉や関わる弁護士、刑事がその土門の姿を描き出していくのが面白い。そして、彼らも土門によって変わっていく。最後に真犯人の吐露があるのだが、なかなかこれで露にされる真相がざらざらとしていて、読む者にとってはきついよなあ。全体として暗いよ。いやどす黒いか。

0
2023年03月28日

Posted by ブクログ

『科学は嘘をつかない。嘘をつくのは、いつだって人間です』
こう言い切るのは元科捜研の異端児・土門誠。

科捜研を辞めた後、民間の鑑定所を開設し様々な依頼を科学の力で解決していく。

人呼んで『最後の鑑定人』。

「遺された痕」「愚者の炎」「死人に訊け」「風化した夜」収録された4編の物語には、いくつもの嘘が隠されている。
土門の冴え渡る仮説と正確かつ確実な鑑定で、事件や事故の裏側が暴かれ真実が見えた瞬間、思わず溜息が漏れる。

サイエンスミステリーとしても十分面白いが、それ以上に深く濃く描かれた人間ドラマの部分に心を打たれた。

0
2023年02月18日

Posted by ブクログ

何かの書評で褒めていたので手に取った。TVドラマ『科捜研の女』ってこんな感じなのかな〜と思いながら読んだ(同番組は見たことなし)。

主人公土門とその助手である技官の高倉の造形が良く、四話読み終わると土門の「科学は嘘をつかない。嘘をつくのはいつだって人間です」の台詞が胸に刺さる。

謎の提示、鑑定のプロセス描写、犯人による独白というパターンで非常に読みやすい。土門が科捜研を辞めた理由が明らかになる第四話が私にとっての本書の白眉。

0
2022年10月10日

Posted by ブクログ

ヒューマンドラマに科学が結びついた内容で、読みやすくすらすらと読破できる。
科学と言ってもその内容は深くないので誰でも大丈夫。科学用語は出てくるが事件解決には直接関係しない。
気楽に読む本。

0
2022年10月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

元科捜研の民間「鑑定人」を題材にした連作。「矯正医官」「数学者」「建築を学ぶ学生」などに次いで題材の選択肢が面白いなと思いました。
作中の「嘘をつくのは、いつだって人間です。」がとても印象に残りました。DNA鑑定の反証は興味深かったです。

実習生問題。酷い受け入れ企業もあれば良い受け入れ企業もあるし、まじめで堅実な実習生もいれば、警察のお世話になる実習生もいて休日返上で対応させられたり、そもそも失踪目当てで入国したり色々あったり。あと監理団体のことに触れる作品は少ないなと読んでいて思いました。

この「鑑定人」はシリーズになったらいいな、と思いました。

0
2022年09月29日

Posted by ブクログ

ドラマ「科捜研の女」のようだけれど、それとは別種の面白さ。
4編の事件に纏わるそれぞれの立場での人物描写が興味深い。
そして、「最後の鑑定人」の人間らしさが少しずつ現れてきて、だんだん興味が湧いてくる。

また、新たな人間像を加えたシリーズ化を!

0
2022年09月21日

Posted by ブクログ

ある事件をきっかけに科捜研を辞め、民間の鑑定所を開設した、変わり者の鑑定人を中心としたサイエンスミステリー。
科学捜査で明らかなる真実はどれも残酷で、どの話もやるせない気持ちになる。

0
2024年04月21日

Posted by ブクログ

助手がハーブ水を飲ませる理由が面白い/ ミステリ的な意味では面白味は少ない/ 読者に鑑定知識が無いから、その情報を知っているかどうかってだけの話で/

0
2023年07月05日

Posted by ブクログ

『科学は嘘をつかない。嘘をつくのは、いつだって人間です』

〈科学捜査研究所〉を辞めて民間の鑑定所を立ち上げた土門誠。『最後の鑑定人』と呼ばれ、彼が『鑑定できない証拠物なら、他の誰にも鑑定できない。科捜研の最期の砦』とまで言われたほどの高い技術と鑑定眼を持つ男。

四話収録されているのだが、第一話での印象は名探偵キャラにありがちな、気難しくて彼の興味を引く事件でないと引き受けないという設定。
そんな彼が警察や科捜研が下した事実をどう覆すのか、あるいは警察や科捜研すら見つけられない新事実をどう見出すのかが作品の肝となる。

専門用語には着いていけなかったが、物語としては興味深く読めた。
第一話のDNAの話は確か横山秀夫さんの作品にも似たようなものがあったように記憶しているが、全く違う展開だった。
一方でこの話の中で、土門が科捜研を辞めたことに何かしらの事情があることが示される。

第二話では土門鑑定所の唯一の技官で助手で事務員の高倉の目線で描かれる。
第一話同様、事件の真相は苦い。同情の余地はあるがだからといってどうすれば良かったのかは分からない。
その苦さによるモヤモヤを口にする高倉に対し、「鑑定人なら、科学を裏切るような真似をしてはいけない』と断じるブレない土門が描かれる。

そして第三話では、土門鑑定所と警察、科捜研ではなく科警研の三つ巴の捜査が描かれる。
海底から引き揚げられた十二年前に沈んだ遺体。遺体の身元すら分からなかった捜査が、土門と科警研との競い合いで様々な手がかりが見つかっていく。
そしてその手がかりを元に警察の捜査も加速していく。

『科学は嘘をつかない』『私は鑑定結果を読み違えたことなどありません』と絶対の自信をもっている土門だが、一方で科学捜査にも様々な手法があり鑑定結果の解釈にも様々あることも分かる。
ということは、どの手法を取るのか、どういう条件で鑑定するのか、そしてその結果をどう解釈するのかによって結果は違ってくるということではないかという疑問も湧く。

そして最終話。いよいよ土門が科捜研を辞めたきっかけとなった冤罪事件の真相に土門自身が迫る。
土門の下した鑑定結果が、捜査にどう影響を与えたのか。結果的になぜ冤罪事件は起きたのか。そしてその捜査を担当した警察官は何故亡くなったのか。

第三話で土門のプライベートも少し明かされ、この第四話では彼の気難しいキャラ設定にも変化が出ている。それだけ彼にとってもこの事件は大きな影を落としていたということだろう。
だが何よりも、ここまでの第三話で加害者の物語ばかりが描かれていたのだが、最終話では初めて被害者遺族の話が出てきた。

様々な事情があって事件を起こしたのは分かるが、やはり一方的な印象が拭えずモヤモヤが残っていた。
だが最終話に至って鑑定者、捜査員、加害者、被害者遺族という様々な視点から描かれていたのが良かった。

加害者にとっては過去のことであっても被害者遺族にとっては『終わりなんてない』のだ。
この事件と再度向き合った土門がどう変化するのか。また高倉の技官としての成長もみたい。
続編を期待したい。

初めて読む作家さんだったが、他の作品も読みたくなった。

0
2023年07月01日

Posted by ブクログ

鑑定人の人柄と、そこの事務職員のコンビがいい感じ。
鑑定人モノでは他の作者さんのものより淡々としてるかも。
犯人の独白部分は好みの分かれるところかなと思う。
短編なのもあって、スルスル読めた。

0
2023年02月06日

Posted by ブクログ

元科捜研の土門は、7年前のある事件をきっかけに辞めて民間の鑑定所を開設している。
彼に鑑定できない証拠物なら、他の誰にも鑑定できないと言わしめたほどの人物である。
無口で無愛想だが、腕は確かで不可解な事件を実験データから読み解く。
4話ある短編も最終話が、辞めたきっかけとなった事件に繋がっている。

「鑑定人なら科学を裏切るような真似をしてはいけない」
「先入観や思想は事実を見誤らせる。我々は常にそれを意識しなければなりません」

科学を信じているからこそ言える土門のことばなんだが、あまりにも仕事が出来すぎる。
サクサクっと解決してしまう感があって、スマートすぎるのである。
もうちょっと人間くさいものがあれば…と思ってしまった。

0
2022年12月04日

Posted by ブクログ

警視庁科学捜査研究所で「最後の鑑定人」と呼ばれた男・土門誠。7年前のある事件をきっかけに退職し、今は民間の鑑定所を開いている。
彼のところに持ち込まれた4件の依頼を描く連作短編。

元科捜研研究員が開く民間の鑑定所というと、中山七里の「鑑定人氏家京太郎」と被るけど、こちらの方がより科学に主眼を置いたような趣き。
短編だからか深みに欠け、謎解きが犯人の告白であっさりなされるという工夫のなさで、ミステリとしては面白みに欠ける。

「風化した夜」で土門が科捜研を辞めるきっかけとなった7年前の事件の決着をつけ、彼が警察を辞めた理由が最後に明らかになるが、サイエンスとしてもミステリとしてもなんだか中途半端な感じの作品で物足りなくて残念。

主人公の土門より、助手の高倉さんの方が存在感あったような気がする。

0
2022年11月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

科捜研を中途退職して民間鑑定所を営む主人公の話。
いくつかの事件がそれぞれ短編として収められていて、合間に読むのにも手頃。

しかし、この人、毎回毎回全然違う設定の小説を発表し続けているのはある意味すごい。

0
2022年11月27日

Posted by ブクログ

とても面白く一気読みできるが、岩井さんの作品としては今ひとつ。シリーズ物のドラマを見ている様な感覚でした。

0
2022年11月17日

Posted by ブクログ

科捜研で“最後の鑑定人”と呼ばれた男・土門誠。「彼に鑑定できない証拠物なら、他の誰にも鑑定できない」と言われたほどの凄腕だが、ある事件をきっかけに警察を辞め、現在は民間の鑑定所を運営している。そこに持ち込まれた様々な依頼を描く4作で構成された連作短篇集。
んー、岩井さんにしては軽めな仕上がりで、コアなファンには物足りないかもしれないが、案外こういう作風のほうが一般受けはするかもしれない。土門を始めキャラが立ちまくりなので続篇を熱望する。

0
2022年08月01日

「小説」ランキング