【感想・ネタバレ】黒牢城のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

 良くも悪くも、因果は回るということだろうか。官兵衛を生かした村重は、恨まれ、官兵衛の策略をもって失脚に追い込まれた。また、村重が謀反し籠城を選んだことで臣下万民は割を食わされ、村重から心は離れていった。
 しかし村重が望んで皆を苦境に立たせたわけではもちろんなく、家を残したい民を死なせたくないという良心からだった。
 つまり物事を人がどう受け取るか、そこが肝心ということ。例えば官兵衛は自分が打首にされないことで、人質の子供が代わりに殺される。そこに怒りを燃やしていたが実のところ子は殺されていなかった。親子共々生き残る、結果的に良い終わりを迎えたのに官兵衛はそのことを知らないために、怒りで悪の因果を引き起こした。
 民を偽りの奇跡で騙そうとした千代保はそのことをよく分かっていた。それに村重が気付けなかったことも失脚した理由の一つなのかもしれない。とはいえ、無理もないこと。人の心を把握することは官兵衛ですら出来ないこと。心とは、乱世の因果と同じく複雑怪奇なのだろう。
 一つ救いがあるとすれば、民の心を侮ってはいけないという教訓が残ったこと。千代保から村重へ、村重から官兵衛へ、官兵衛からその子へ。良き因果は巡り、摂津の繁栄に繋がった。
 教訓の元は信長の引き起こした悪因だったはず。それを断ち切り良いものに変えた千代保は、武将の影に隠れた偉大な人物だったのかもしれない。
 

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2024年05月19日

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面白かった! 一気読み。
まず、語彙が豊かで素晴らしい。
歴史小説的な言い回しなのに読みやすいし、
当時の人の心情や考え方(と思われるもの)が、すっきり入ってくる。
その上で、米澤さんらしい構成、展開、そしてどんでん返し。
「折れた竜骨」以来の感動。

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2024年05月15日

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時代小説は読まないので、直木賞と言うことで気にはなっていたものの手にしていなかった黒牢城。いやあ、もっと早く読めば良かったと思ったとても面白い一冊でした。織田信長の時代の荒木村重が籠城していた1年間に起こった不思議な出来事・事件の謎をとく、まさにミステリー。黒田官兵衛の凄さをまざまざと見せつけられます。

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2024年03月18日

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久しぶりの時代物で、名前や武者言葉に苦労…でもグイグイ引き込まれてあっという間に読破。読んだ後も登場人物について調べてみたり、興味をそそられる話だった。

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2024年03月08日

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戦国時代ならではの緊張感が伝わり、ハラハラドキドキした。ミステリー仕立てで、驚くような展開と結末が待っている。村重ほどの知将が何故に織田に逆らったのかは最後まで腑に落ちず。しかし、黒田官兵衛に頼らざるを得ない心情や焦りがよく伝わり、読み手側も誰を信じて良いのかわからなく、あたかも自分が村重になったかのような錯覚が起きる。人心を一つにすることの難しさ、望みを見出せない生活の虚しさがタイトルの黒窂城にぴったりだった。結構考えさせられる作品だった。大好き度❤️❤️

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2024年02月16日

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歴史小説を久しぶりに読んだが、歴史要素やミステリー要素が含まれ、じっくり読むことが出来た作品。すごい。

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2024年02月11日

購入済み

さすが

としか言いようがない。
名作。

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2022年04月14日

K

購入済み

歴史小説をほとんど読んでこなかったが、かねてから敬愛していた米澤先生が、歴史・推理小説を発刊したとのことだったので、途中で挫けないかな……面白いと言われる『竜馬がゆく』でさえ途中で閉じてしまったからな……、と少々不安に思いながらも、買って、読んでみた。結果として、頁をめくる手が止まることはなかった。緻密に設計された小説に、いい意味で翻弄されながら、心ゆくままに楽しむことができた。荒木村重の気持ちも、黒田官兵衛の気持ちもよく分かったような気がした。簡単に露悪的になれる現代で、善く在りたいと思える小説だった。

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2023年02月13日

ネタバレ 購入済み

戦国時代の歴史の闇に切り込む

なかなかの意欲作。
荒木村重が謀反して籠城する有岡城を舞台にストーリーは展開される。数少ない記録をもとに緻密に組み立てられた村重の心模様は歴史ファンもうなづかせる。幽閉された黒田官兵衛まで登場させたのは秀逸でストーリーに厚みが増す。作者の発想に脱帽。
そんななかで謎解きの要素も無理なく加味され、ミステリーファンでもある私は一気読みだった。

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2021年07月31日

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牢城されている場面が黒々としていて内蔵から胃を通って黒い塊が出そうな感じがした。黒田官兵衛の黒と牢城が上手く比喩されていて黒々しい、文中何度も唾を飲まされた。

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2024年05月16日

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ネタバレ

戦国時代を舞台としたミステリー小説。
閉ざされた有岡城の内で冬、春、夏に起こる事件の真相と、城の地下に囚われた官兵衛の企み、有岡城と荒木村重の行末が気になって読み進められた。
ミステリーのトリックに関しては単純で個人的には読んでいる中でなんとなく犯人が想像できたり先が想像できたけれども、モチーフが戦国時代なので新鮮に感じた。
登場人物が多いのでメモを取りながら読んだ。

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2024年04月29日

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着眼点が素晴らしい。荒木村重と黒田官兵衛を「羊たちの沈黙」のクラリスとレクターとして舞台設定を整え、籠城の緊張感の中、謎を解いていく。しかし、その対応には村重の望み?が、官兵衛の思惑が反映していく。
特に村重の追い込まれていく胸中が、非常にうまく描かれていて、舌を巻く思いだった。史実での村重は、直情型の武人と感じ、なぜ謀叛を犯したのか?官兵衛を土牢に監禁したのか?謎の部分もあったが、それも村重の揺れ動く心の内から納得いく返答をもらったように感じた。

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2024年04月21日

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直木賞受賞作品、米澤穂信さんということで読んでみました。
日本史は全く詳しくないので、荒木村重が有岡城に篭城、黒田官兵衛を拘束して土牢に監禁していたことを知らない状態から読み始めました。
言葉遣いが当時のものになっているので、読みづらかったが、知らない言葉が多分にあり、勉強になった。

武士の時代の話を読むと、命の軽さを感じる。
自分はこの時代に生まれなくてよかったと毎度感じる。

ミステリ要素が強く、発生する事件的なものの解決を村重が進める中でつまずき、官兵衛に助けを乞う流れ。
官兵衛かっこいいと思いつつ、なぞの状況(有能であると認め、恨みがあるわけでもない官兵衛を劣悪な環境に監禁しながら助けを求める)だと、思うが、これもまた武士の世界か。
ミステリだけでなく、武士の上下関係、色々と注意して発言する必要があること、城内政治があり、これもまた勉強になった。
村重の孤独がすごい

めちゃくちゃおもしろかった!でもないのですが、なかなか楽しめたのと、勉強になったということで星4

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2024年04月07日

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黒田官兵衛がカッコ良すぎる。聞いたことはあったけど、何した人か知らなかったから面白い。ホラーかと思いきや、ゴリゴリの歴史物で、著者の文才が光る
最後が昔っぽい文章でわからなかったけど、ミステリーとか探偵もの✖️歴史物っていう新しいジャンルで楽しめた。

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2024年03月18日

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歴史小説でもあり、ミステリーでもある二度おいしい作品。話の流れはもちろん、登場人物の描写もよい。信長に反旗を翻した荒木村重の焦り、安楽椅子探偵と化した黒田官兵衛に関してはいうまでもない。ただ話の流れ自体が面白くて、ミステリー要素が邪魔した場面もあった。
それと古典部シリーズの続編出して。

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2024年02月25日

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ネタバレ

信長へ反旗を翻した村重が籠城中に起きた事件について、土牢に捕えた官兵衛に解決の手掛かりを尋ねにゆく。

官兵衛がレクターみたいだ。
ようそんな捕えた人に手の内明かすような話をしに行くなぁと、もうこの時点で村重は判断をミスってるんちゃうかと危ぶんだ。
そしてチラチラ差し込まれる千代保の存在が目茶苦茶怪しかった。なるほど。
村重と官兵衛と、信仰心と。
良くも悪くも政治と信仰はいつの世も絡み合ってあるように思う。

時々読んでいた作家さんが時代物を?とずっと気になっていた。
私にとっては久々の長編、一日に少しずつにはなったけれどそれがかえってしっかりと脳に残ることになった。
村重の謀反や城を出た理由については諸説あるようだが、真実は不明。これも含めてミステリ作品なのか。面白かった。
他の作家さんが村重や官兵衛をどう書いているか気になる。

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2024年02月24日

Posted by ブクログ

荒木村重は信長に謀反を起こし、逃げて自分だけ助かったイメージがあり、そのため直木賞のこの本を避けて来てしまった。
米澤さんの作品は『古典部シリーズ』『小市民シリーズ』を読んできたせいか、学園で小推理物という印象。それがこの作品では一気に歴史物に転換し、各種賞まで受賞している。
荒木村重の謀反と黒田官兵衛をなぜ幽閉していたのか謎なので、題材とするのには良いのだろう。
幾つかの事件を幽閉した官兵衛に尋ねる形で進行する。最後に解決するのは村重となる。ただ、最後は逆転に次ぐ逆転でひっくり返されて仕舞う。
官兵衛も黒幕のように描かれているが、知謀の将である官兵衛のファンとしては、もっとスッキリしても・・・?

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2024年02月23日

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歴史をミステリに落とし込んで、違和感がないのはすごい。
この本を読んで黒田官兵衛や荒木村重の歴史が気になって調べてしまった。
そのくらい面白かった!

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2024年02月22日

Posted by ブクログ

(Ⅰ)事前情報なしに開いてみたら、その行動に強く関心抱いてる(好きというんでもないけど)戦国武将荒木村重の話やったんで興味深く読みました。(Ⅱ)歴史ものであると同時に、村重に囚われた黒田官兵衛が謎を解く安楽椅子探偵もの。(Ⅲ)この話のラスボスはもちろん官兵衛になるんやろうと予想してたけど、もひとり初登場時から怪しいと思った人物がいて、そういう目で読んでたので謎は感じへんかったけど荒木村重、黒田官兵衛などキャラクタに凄味あってひきこまれました。

 ――信長なら、殺す。
 ――ならば、殺さぬ。(p.117)

この乱世では悪因がたとえようもなく複雑に絡み合っていて、憂き世の至る場所で悪果をもたらしているのだ。(p.439)

■簡単なメモ
/荒木村重を描くとともに、彼に幽閉された黒田官兵衛が居ながらにして謎を解く安楽椅子探偵もの。
/事前情報なしで読み始めたら荒木村重の話やった。個人的に戦国武将で最も興味深い人物。好きというんやなくその行動に謎を感じてるんで。これまでは曖昧な人物像しかイメージでけへんかったんやけど今回の話を読むと名将と思えたし、キャラが強かったんで今後ぼくの中での荒木村重像の標準になってまいそう。

/雪の庭の真ん中に備えられた納戸の中に囚えていた人質が殺されたが足跡はなく、凶器と思われた矢も残っていない。
/夜襲で討ち取った若い武将の首のいずれかが大将のものらしいがわからない。また、置いているうちに穏やかな死に顔から恐ろしげな凶相へと変じた。
/村重が使者として重用していた僧、無辺が殺され茶道具の名物が行方不明。すべて秘密のうちに行われたことがどこで漏れたのか。村重はできごとのタイムテーブルを作ったりする。
/村重と官兵衛の最後の対面で官兵衛は…。

■有岡城についての簡単な単語集

【荒木摂津守村重】主人公。信長に謀叛を起こした。その理由も謎やし、攻められてすぐ逃げ出したように見えるその後の行動がなんだかなあ、という感じでやはり謎なんで興味抱いてます。茶人としても文化人としてもすぐれており残ってる歌なんかけっこう悪くなかったりします。逃げた後は風流に生きながら天寿をまっとうしたようです。『へうげもの』では大量の宝物を抱え脱出中、たしか地下の抜け道のようなところで古田織部と遭遇してました。そう…織部のように強者の下で、叛乱など起こさず風流人として生きる手もあったような気もします(結果的にそうなりましたが)。あと、昔、遠藤周作さんが荒木村重視点の作品を書いてはって新聞連載で読みましたが今回の『黒牢城』とはすいぶん人物像は異なります。これまでは遠藤さんの荒木村重像でイメージしてましたが文化人としてならともかく、武将としては曖昧な…というか繊細すぎて違和感を感じるときもありました。今回の作品では名将と思えます。ただ参謀に恵まれなかったかも。
【有岡城】荒木村重の城。伊丹の町そのものも含めて城とした大城塞。非常に堅固で信長といえど簡単には落とせそうにないので取り囲み、かつ毛利の動きを止める策を弄し長期戦のかまえ。
【一向宗】信長と非常に仲が悪く、長期間戦った宗教団体。「本願寺」と呼ばれる。バックに毛利家がついた。荒木村重とも手を組んではいる。さしもの信長も滅ぼすことができずかなり手を焼いてたようです。
【織田信長】村重が叛乱を起こした武将。有岡城を攻め、周囲を取り囲んでいる。今回の話では直接登場はないがその存在は常に意識されている。
【御前衆五本鑓】郡十右衛門、秋岡四郎介、伊丹一郎左衛門、乾助三郎、森可兵衛の五人を荒木御前衆の五本鑓と称えられる。
【加藤又左衛門】裏切った牢番の代わりに土牢の牢番を命じられた。いつ眠っているのかわからない。
【栗山善助】官兵衛を助けに来た。正確には生死の確認に来た。かなりの手練れ。
【黒田官兵衛】信長の下についている。荒木村重がその知力を認めている油断ならない武将。《官兵衛は大局を見ることが出来る。大局を見て、急所を一突きにすることが出来る。》p.15。主君である小寺の姓を与えられ公には小寺官兵衛と名乗っている。有岡城に出向き囚えられた。荒木村重とはけっこう仲が良かったので殺されなかったという説も聞いたことがあります。今回の話では互いに認め合いつつもやはり敵同士という感じ。村重の見るところでは、謎を与えれば知略を誇らずにはおられないタイプ。《摂州様。牢の中からひとを殺すというのは、存外、難しいことではござらぬな》p.212
【郡十右衛門/こおり・じゅうえもん】御前衆五本鑓の一人。村重は十右衛門の気働きに優れ物事を広く見られる仕事ぶりが気に入って御前衆の組頭に任じていた。村重が最も信頼している部下で、なにかあればとりあえず彼を使う。
【小畠】茶釜。村重が所持している名物の一つ。
【下針】雑賀衆の一人。狙撃手としての腕は立つ。
【鈴木孫六】有岡城の雑賀衆を束ねる。《戦のことに御仏を持ち出すのも、好み申さぬ》p.192
【茶道具】荒木村重や松永弾正や古田織部は茶道具ヲタクやったみたいやけど、実のとこ信長は茶道具なんてどうでもええと感じてたんではなかろうかって個人的には思ってたりします。武将たちが有難がるから報奨の品として便利に使えるアイテムやなあという程度で。松永弾正の嫌がらせは嫌がらせにならなかったんではなかろうかと。
【千代保/ちよほ】荒木村重の側室。おっとりと儚げな美女。二十歳を越えたところで村重とは倍ほどの年齢差がある。一向宗の門徒でありながら村重に対する布教活動はしていない。
【寅申/とらさる】茶壺。村重が所持している名物の一つ。
【古田左助】古田織部のこと。庭の春日灯籠は彼から贈られたもの。
【松永弾正久秀/まつながだんじょうひさひで】信長に謀叛を起こしたが敗北。信長に対する嫌がらせのように茶器もろとも死んだ。荒木村重は松永弾正に触発されたような形で謀叛を起こしたようには見える。
【無辺】僧侶。村重が使者として使っている。民の信頼が厚い。
【毛利】中国地方の強豪。この時点のトップは毛利右馬頭輝元。荒木村重は毛利が援軍を当てにして(ちゃんとあれこれ根回しもして)謀叛を起こしたんやろうけどそうそう甘くはなかった。もっとも野次馬的に考えてみたら毛利にとってはある程度チャンスやったのかもしれへんのやけどなあ。毛利が参戦してたら信長、秀吉、光秀がこの辺で消えてた可能性もあったかもと。

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2024年02月23日

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米澤穂信さんの戦国時代もの

やっぱ慣れてる感じとは違って読みにくく感じてしまうけども

ここでも全部のお話がつながるその技術に感服

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2024年02月19日

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話が進むにつれ(=籠城が長引くにつれ)、家臣の村重への信が薄れ、また村重の家臣への信も揺らいで行くのを感じる。読んでいるこちらも、周りの人々がみんな怪しく見えてくる。「籠城」という非日常が、時間が長引くことにより日常になっていくのかわかる。長く緊張状態を保つことは難しいし、気が緩んで禁を破ってしまったり、それを見て腹を立てたりする気持ちも、コロナ禍を経験した今、共感できる気がする。戦国時代における宗教観という面でも面白く読めた。
謎解きの要素あり、史実に照らした歴史物語でもあり、読み応えのある1冊だった。

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2024年02月17日

Posted by ブクログ

度重なる戦で命がたやすく失われていく中、臣下万民が死後の安寧を望む時代ならではのミステリ。村重の謀反は史実だが、官兵衛が土牢に捕らえられたのは黒田家譜にあるが本当のことはわかっていないそう。ミステリとしても時代物としても楽しめます。

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2024年02月03日

ネタバレ

この発想に…平服。

2023年10月読了。

永らく積ん読ですっかり忘れており(失礼!)、ふと見付けて読みました。

いやはや荒木村重と黒田官兵衛の有岡城での1年弱の間に、これだけの芳醇且つ濃密な戦国譚、ミステリー小説を描くとは…、歴史好きの私にとっても意表を突かれ、又その重厚さに心から魂消てしまいました。

荒木の城抜けはその後の歴史を知る者にとって、かなり不可解な行動と解されている部分に、これだけの物語を仕掛けるとは……、本当にこの方はミステリ作家なのですか?凡百の歴史小説家を蒼白にさせたでしょう。

大河ドラマ等の影響で、最近はこの頃の武将達が比較的マイルドに(と言えば聞こえは良いが、要は綺麗事だけ描く事が常態化して)、現代人にも“優しく見える”偽りの武将の人物伝が巷に溢れています。

話は逸れますが、『鎌倉殿の13人』の放映後、視聴者の一部で「鎌倉時代は血腥過ぎて嫌いだ。戦国時代の方がまだ良い」と云う感想が上がっていたのを読み、その無知さに飛び上がる程驚きました。

室町末期はそんな生易しい時代などでは無く、もっともっと人の生命が軽かった時代なのは少し学べば解るのに…と、メディアに易々と振り回される人達に正直腹が立ちました。

その点、この小説は正に「戦国時代の峻烈さ」をよく描き出している意欲作です。長期籠城策と云うのは一般的に「追い込まれている側」が執る行動であり、あの小田原城でも結果として、大きな戦闘が無いまま落城した通り、とても上策とは言えません。
それは取りも直さず、兵糧の問題に限らず「多くの人の閉塞感が高まる」為、総構の長期戦には向かないからです。では何故荒木は、織田からの再三にも渡る「赦免及び話合い」の誘いを悉く断り籠ったのか、そしてその後単独脱出したのか、不思議で成りませんでした。毛利が“東進したがらない”のは、元就以来自明の筈。
因みに信長は「苛烈誅求を究めた残虐な殺人者」では有りません。最近の資料でも寛容に赦免したり、荒木や松永には何度も「許すからチャンと話をしよう」と云う手紙を出して、翻意を促していた史実が分かっています。

それだけに、荒木の本当の心中は誰にも分からないのですが、これだけ細部まで良く調べた書込みで「籠城側の揺れ動く心理状態」を克明に描き出し、その上にミステリーを重ねるという離れ業は、著者にしか出来ない大業だと思いました。
荒木村重と云う目立たない武将に光を当てた事にも感謝です。

#アツい #ドキドキハラハラ #深い

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2023年10月19日

購入済み

直木賞受賞作

直木賞受賞で気になりましたので、購入しました。城内の牢に幽閉された黒田官兵衛と荒木村重の経緯関係に興味があり、また、荒木村重の乗っ取りと謀反のイメージが悪かったですが、気分を害する事無く一気に読み下しました。

#ドキドキハラハラ

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2022年02月05日

購入済み

この著者の作品は、現代を舞台にしたものがほとんどで(異世界風のもありましたが)、時代物とは驚きました。地の文もセリフ回しも本格的で、そこに謎解きの要素を加えてひと捻りが流石だと思います。

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2021年10月20日

Posted by ブクログ

面白かった。荒木村重の感情が手に取るように描写されており、没入感があった。
人の心を捉え続ける難しさを感じた作品です

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2024年05月19日

Posted by ブクログ

歴史に疎く調べながら読みました。
なるほど直木賞を獲るわけだなと思いました。
歴史小説をこよなく愛する人にはたまらないでしょうね。
史実を曲げずにこういう小説を書ける人を尊敬します。

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2024年05月18日

Posted by ブクログ

戦国時代ミステリ。なるほどとは思ったし読み応えはあったが意外と目新しさがなかったというか米澤穂信じゃなくてもという感じ。それと主人公は主人公で書ききってもらったほうが好みだった。

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2024年05月04日

Posted by ブクログ

塞王の盾を読んだ後、前評判やあらすじも知らず読み始め、1章の途中からこれがミステリであることに気付かされた。時代小説とミステリという組み合わせが自分には斬新だったが、各章で謎が顕現しそれを解いていくという、探偵小説に似た構成により読みやすさがあった。一方で毎度同じ展開の章が4度繰り返されるためワンパターンになりがちであったこと、また登場人物がそこまで多くなくかつある程度文章を読んでいくとトリックはわからずとも「この人犯人っぽいな〜」という示唆があり、ミステリとしては若干物足りないかなと感じた。

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2024年03月31日

Posted by ブクログ

何を信条とするか。
納得できないことや世の中にどう抗っていくか。
戦、恨み、神の罰。善因。
偉い人が言うから、世の中の常識っぽいから…に押し流されず、やっぱりこれってどうなの?なんとかならないかなって生きていきたい。

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2024年03月25日

Posted by ブクログ

黒田官兵衛と荒木村重の物語。歴史小説は大好きだが、あまり読みやすくないわりに感動や感銘は少なかった。直木賞。

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2024年03月12日

Posted by ブクログ

漢字の名前や表記が多くて、疲れた。歴史小説では当たり前なんだろうけど。さすが官兵衛。知恵をめぐらせて村重をコントロールしていた。

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2024年03月05日

Posted by ブクログ

うーん、よくわからんかった。ミステリーというか歴史小説というか群像劇というか。一人ひとりに着目すれば日本史も面白いかもなと思いました。

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2024年03月04日

Posted by ブクログ

読みやすいが、淡々と進んで物足りない。
謎の部分にもうひとひねり欲しい。
直木賞ってことで、期待しすぎたかもですね。
最後のシーンは良かった。

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2024年02月29日

Posted by ブクログ

土牢に入れられた黒田官兵衛の元に、荒木村重が訪れる。そこで官兵衛に城内で起こった事件のあらましを話し、解決のヒントをもらい、事件を解決するという話。こういうのを安楽椅子探偵と言うのかな?とにかく、官兵衛の頭の良さに感心してしまう。

有岡城に籠城していた荒木村重たちも、日に日にいつか織田軍に攻められるという事に疲弊と不安が増していく。負のオーラが漂う中、不可解な事件や天罰が下ったかのような出来事が起こる。そんな時、人々は宗教に頼ってしまうんだろうと思った。こういう人々の心が病んでいく心理描写が上手だ。

設定は面白いと思うんだけど、文章が難しくて私の力では読み進めれなかった。あと、主人公の荒木村重にどうしても感情移入ができなかった。大河ドラマ『軍師官兵衛』を観てたので、ドラマでこの有岡城の話は、官兵衛=岡田准一くんが苦しんだ場面だったので、どうしても荒木村重が好きになれない。私は岡田くんが好きなので…。そういう理由から星が1か2だったんだけど、最後の伏線回収が見事で星3になった。事件が解決しても何か違和感を感じてたんだけど、その違和感の正体が分かった時、「お〜」となった。さすが米澤穂信さん。荒木村重も本当はどこかで気付いてたのかも。でも、無意識に考えないようにしてたのかな?と思いました。

最後に官兵衛が、もしあれをしてれば、これをしてれば、と考えてたんだけど、乱世ではそれを考え出すとキリがないと思う。結局、原因があって結果があり、今があるから。

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2024年02月14日

Posted by ブクログ

米澤穂信さんといえば、ミステリー。歴史ものでミステリーは、読みづらさあった。直木賞とってるけど、それほど移入できなかった。読んでるうちに眠気がきてしまいました。

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2024年02月11日

ネタバレ 購入済み

歴史物として面白い

歴史物として面白いのでぐいぐい読めましたが、その割に登場人物たちの行動の動機、感情の部分は現代人ぽく感じた。なのでセリフくらいはもう少し現代風に脚色しても良かったかも。セリフが頭に入ってこなくて正直感情移入しずらくてイマイチだった。合戦シーンなどはさすがの臨場感。
ミステリーとしてのトリックは…別に戦国時代である必要は無いかな、と思った。
終盤に向けての盛り上がりは素晴らしかった。

#感動する #タメになる #怖い

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2023年08月20日

ネタバレ

米澤穂信ファンより

著者の作品はほぼ全て読み、中でもボトルネックなどはこれまでの読書人生最大のお気に入りと考えている程のファンだが、この作品は正直世間の評価が高すぎたと思う。

まず内容は、籠城中の将軍荒木村重が捕虜である黒田官兵衛に知恵を借りながら城内に起こる難事件を解決していくというものだ。ある程度史実に基づいていて、文体も当時の武士のものらしいものに揃えられているという完成度は素晴らしく、巻末の参考文献の多さに現れているとおり、著者の取材力には目を見張る。

しかしそこで起こる事件は必ずしも時代設定が戦国である必要のない部分もあり、作者が氷菓などで見せた街角ミステリーを、戦国時代でただ再構成しただけともいえる。米澤穂信氏は中世ヨーロッパを舞台とした折れた竜骨などでミステリーを事件のトリックだけでなく設定の面から構成する手腕を見せていたこともあり、それに比べると、主人公が共に捜査するでもない他人からの助言だけを頼りに街角の事件を解決する本書は劣る。さらに、史実に基づいてしまった為に予測を裏切るどんでん返しのような展開を作れなくなり、ある程度予測のとおりに物語は進んだ。そこに諸行無常のような因果の寂しさを感じることもできるが、それならばミステリー要素は不要で、あくまで戦国時代文学で良いと思う。

よって本書は氷菓のような街角ミステリーにも折れた竜骨のような設定から魅せる時代ミステリーにもなれていない中途半端なものだと思う。賞の受賞やこれまでの作品が面白かっただけに期待しすぎていたのかもしれないが、残念だ。

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2022年04月13日

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