【感想・ネタバレ】新訳 リア王の悲劇のレビュー

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Posted by ブクログ

もうひとつの世界
これは戯曲だ。当然、悲劇は舞台の上で繰り広げられている。だが、わたしはもうひとつ別の世界を観た。第五幕でリア王らとコーディーリアらは再開する。わたしは嵐のあとのふかふかの大地を想像し、土の香りがした。地面に足を踏みしめる不幸な人々。そして血の臭い。すべて臨場感を持って観た。まるでそこは天の彼方にある場所のよう。
注が多くある。そしてその注には、舞台のお約束ごとやメタな視点からの解説と、詳しく書いてあった。そのためとても読みやすかった。戯曲を読んだことがなくても、関連知識がそれほどなくても楽しめると思う。
金子國義さんの絵を使った装丁もおしゃれで、かっこいい。

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2021年12月09日

Posted by ブクログ

シェイクスピアを再読。河合祥一郎訳の本文は勿論、詳注、2種類の版の差異、種本でハッピーエンドの「レア王年代記」の紹介、トルストイの辛辣な批評とオーウェルの反論等、時代背景や典拠など興味が唆られる内容満載で、該当箇所に戻り読み返す愉しさを満喫できた。
父リア王への愛情表現の求めに対して真実の心を伝える最愛の末娘コーディーリアに激怒し、無資産でフランス王のもとへ放逐する。一方口先だけの美辞麗句を並べる貪欲な2人の娘には国土も権限も全て与える。リア王はやがて貪欲な娘二人に荒野に放りだされ、コーディーリアも無慈悲な運命に弄ばれる。

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2021年09月26日

Posted by ブクログ

劇であるがゆえに小説とは異なり人間ドラマだけで物語が進む簡潔さ。しかし、人間の避けがたい運命がしかと刻印されている。河合祥一郎さんの解説も素晴らしい。とりわけ、コーディーリアのストア主義哲学、トルストイとオーウェルの論争の読み解き。

「…『わけのわからなさ』の中に意味がある、あるいは混沌の中に人間として生きる姿があるということを示唆しているのではないだろうか。どんなにまともに生きているつもりでも、人間である以上は愚かさを抱え、わけのわからない部分を秘めている――それがシェイクスピアの人間像だ。」
「…シェイクスピアには強烈な愛の発露がある。その愛があまりにも大きすぎるとき、『裏切られた』という思いも強烈なものとなる。嵐によって表現されるその激しさの中には、強い愛への思いとその欠如によって生じる痛みとの両方があるのであって、それゆえにこそリアは咆哮するのである。」

リア王という権威の権化の転落物語。シェイクスピア四大悲劇のひとつ、ということでやはり誰も救われぬのだけれども、コーンウォール公爵に反抗した民衆の気高さには胸を打たれた。なるほど、最近読んだアンティゴネにせよ、コーディーリアにせよ、誇り高き人間性(ヒューマニティー)の発現は常に抵抗とともにあるのかもしれない。

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2021年09月02日

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