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Posted by ブクログ
狂騒と狂乱の90年代に群雄割拠したゲーム雑誌、その栄枯盛衰の歴史はまさに風雲黙示録。あの時代に確かに自分は生きていた。それを再確認させてくれる良書。
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子どものころ、はじめて購読した雑誌は『ファミリーコンピューターマガジン』だった。毎月、発売日を心待ちにしていた記憶がある。読者投稿欄などが充実した『ファミコン通信』もお気に入りだったが、友だちがファミ通を購読していたので、ぼくはファミマガを買い読み終わると交換していた。
自分でもおどろくことに、このときぼくはファミコン本体を持っていなかった。たぶん、テレビゲームという新しい子ども文化に触れることが、ただただ楽しかったのだろう。そこから、ゲーム雑誌を読むこと自体が楽しくなっていった。きっと、ゲーム雑誌が、雑誌やメディアに接する楽しさに目覚めるきっかけだったんだな。その後、ぼくの関心はゲームから離れてしまったが、大人になって雑誌編集者を生業にすることになった原体験は、ゲーム雑誌にあるのだと思う。
本著は1982年~2000年に創刊されたゲーム雑誌を、その特徴や誌面の変遷、廃刊の経緯にいたるまで紹介する。各ゲーム雑誌の変遷を通じて、ゲームやアニメなどの周辺領域、メディアの歴史がうっすらと見えてくるのが、ぼくみたいな門外漢にも楽しい。角川のお家騒動ってめちゃ大変だったんだなあとか、キャラに寄った美少女路線って90年代半ばでエヴァと同じくらいだなあ、とか。実際の誌面が豊富に掲載されていて、レイアウトでそういう雰囲気を確認できるのが楽しい。
あと、「ゲーム史」の本ではないところがポイントで、実際、ソフト名はほとんど出てこないんだよね。かわりに出てくるのが、読者のコミュニティや編集者・ライターのこと。雑誌がもつコミュニティ機能って、いまではほぼ忘れさられているけど、かつてはとても濃くて熱かったし、そこで指示されて名を挙げるライターとかいたんだよね。セガやSNK関連誌の読者について触れた箇所は、どれもグッときたな。こういう「メディアとしての雑誌」にフォーカスしているのは、著者のさやわかさんならではだなあ。
「ゲーム雑誌」の歴史って、日本がとても元気だった時期に生まれて、エンターテインメントの一大ジャンルになった「テレビゲーム」が育っていく過程でもあり、また、80年代に頂点をむかえた雑誌文化が廃れていく歴史でもある。ゲームについて詳しくない人でも、じゅうぶんに面白いので、是非読むべし。