【感想・ネタバレ】原発をつくらせない人びと 祝島から未来へのレビュー

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Posted by ブクログ

日本は原発列島。でも、原発を作らせなかった地域も3か所以上
ある。紀伊半島がそうだし、石川県珠洲市もそうだ。

そして、西瀬戸内海の小島で原発反対を唱えて活動し続けている
人たちがいる。

中国電力が建設計画中の上関原子力発電所。予定地である田ノ浦
の対岸にあるのが本書の舞台となる祝島だ。

中国電力が建設を予定した地域の海には希少種の生物も棲息して
いる。海からの恵みを受け取って来た島に生まれ、歴史を辿れば
村上水軍の血を受け継ぐ人々は、海を守る為に巨大な権力機構で
もある電力会社に立ち向かう。

反対運動の中心となったのは島の女性たちだ。正に「おばちゃん」
パワー。毎週のデモに加え、船に乗り込み中電の作業を止めさせ
ようとする。中国電力本社前の座り込みにだって積極的。

常に非暴力。力に力で対抗するのではなく、自分たちが愛した
海を汚されることに対する憤りが、捨て身とも言える反対運動に
結びついていた。

反対運動を始めた時、40代だった人は70代に、50代だった人は
80代になっている。それでも、島のおばちゃん・おじちゃんは電力
会社からの一切の金銭を拒否し、反対運動を続けている。

交付金だとか、補助金だとか、補償金だとかをばら撒いて、推進
派に転向させるのがどの電力会社にも共通の手口だ。だが、この
島ではそえは通用しなかった。

金じゃ購えないものがある。それを知っている人たちの運動の
軌跡は一読の価値あり。

しかし、凄いわぁ。祝島のおばちゃんたち。嫌がらせに島へやって来た
右翼さえもおちょくっちゃうんだもの。

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2017年08月20日

Posted by ブクログ

山口県上関原発計画に30年以上反対して来た祝島島民の運動に寄り添ったルポ。ほぼ毎週、1000回以上にわたるデモや中国電の台船との一触即発の様子の合間に豊かな自然の描写が挟まる良書。建設ギリギリのところで震災が起きたものの、完全に中止には至っていない。これを読むとこの原発はできないといいなと思わされます。絶賛お薦め。

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2014年05月03日

Posted by ブクログ

読んでいてため息の出る本だ。本当に頭が下がるというか、信じられないような心の強さを思い知らされる。目と鼻の先の対岸に計画された原発に対し、自分たちの生活の基盤である恵み豊かな海や自然を守ろうと、男女年齢を問わず懸命に繰り返される、瀬戸内海に浮かぶ小さな島「祝島」(いわいしま)の島民たちの30年にも及ぶ原発阻止運動のレポート。驚くべき粘り強さと行動力のドキュメンタリーだ。
中でも印象に残ったのが、「どうしても原発が必要なら、交付金を出さんようにしてください。(中略)そしたら、原発をほしい自治体しか手を挙げんと思います。」という漁民の声。もう一つは原発計画が浮上して間もないころ作られたという「上原(かみのはら)原発音頭」の一節。

オシャカ様さえ言い残す
金より命が大事だと
人間ほろびて町が在り
魚が死んで海が在り
それでも原発欲しいなら
東京 京都 大阪と
オエライさんの住む町に
原発ドンドン建てりゃよい
ここは孫子に残す町
原発いらないヨヨイのヨイ
反対反対ヨヨイのヨイ

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2013年11月02日

Posted by ブクログ

 わたしは能登半島の珠洲原発建設計画に揺れた珠洲市に住んでいます。この著者とも顔見知りです。
 珠洲原発計画が凍結されたあと,祝島に行っていたんですね。
 山口県上関町の祝島も,ずっとずっと前から原発計画に反対してきた地域です。
 どちらの町でも,市民が推進・反対に分かれて,余計に地域の活性化のブレーキとなっていくのが悲しいです。
 「国策」の「国」とは,「国民」の「国」ではないんです。
 「国策」の名の下でいろいろな施設を押しつけられた地域に住んでいる人たちは,とっくの前に,そのまやかしに気づいています。だからこそ,大量のお金をもらうことで,納得する人がいるのです。

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2013年06月30日

Posted by ブクログ

原発をつくらせなかった人がどれほどの苦労をしたかを、祝島を取材して書いた本である。海上保安庁の巡視船は尖閣列島問題で注目を集めているが、祝島では民間企業の中国電力の味方について、祝島の原発反対住民をいかに苦しめたかがよくわかる。

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2013年03月07日

Posted by ブクログ

祝島の人たちが、上関原発を建てさせないように、この30年闘ってきた様子がよく分かった。彼らが、日本に原発が増えるのを阻止してきてくれたことは、島民500人で、他の日本人1億3千万の命を守ってきたのと同じことだと思った。遠くに住んでいても、一緒に闘わないといけないと、この本を読んで思った。自分たちのことだから。

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2013年01月08日

Posted by ブクログ

フォークシンガーの笠木透さんから
「祝島」のことを
教えてもらったのは
もう何十年前のことだろう…

写真家「福島菊次郎」の
「祝島」の写真展を
見せてもらったのは
もう何十年前のことだろう

数年前に
ドキュメンタリー映画『祝の島』(纐纈あや監督)を
御ところだ

あの時も
そして
今も
「祝島」のおばちゃんたちの
原発ハンタイの「月曜デモ」は続いている

いつの日になれば
「月曜デモ」の声がなくなるのだろう

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2019年05月15日

Posted by ブクログ

タイトル中の「原発をつくらせない」という表記を見て、「著者は原発推進派。しかし世の中には、原発を作らせない反対派もいるので、推進派から見た反対派を描く」という内容かと思いましたが、実際には、「著者は原発反対派。そして、反対派から見た反対派の活動を描く」という内容でした。

小さく切り取られた範囲の中での話でしかないので、この本の内容をもって「やっぱり原発反対」となる人がいたら(著者の狙いはそこにあるのかもしれませんが)、それには違和感があります。

原発に関しては、もっと根本的なところから、あるいは、もっと長いスパンで、あるいは、もっと広い範囲で考え、ステークホルダーを事前にできるだけ多く巻き込みながら進める(推進や反対を決める)必要があると思うのですが、この本に出てくる推進派(主に中国電力や経産省(旧通産省)の人)は、「決まったことだから進める」、反対派は「自分の生活を守るために反対」という色合いが強く、お互いの正義がぶつかり合うしかない状況だと思いました。

著者は、原発反対派の現場を大切にしているのだと思いますが、もう少し高い視座からの思考や記述が必要だと思いました。
おそらくは、高い視座がないがゆえに、祝島の歴史や習慣の説明に、必要以上の紙面を割くことになったのだと思いますし、安易なタイトル(反対派の活動の名称の一部をそのままタイトルに入れ込むようなこと)になったのだと思います。

ただ、原発立地が流れた地域については、恥ずかしながら知らないところが多かったので役に立ちましたし、その中に珠洲市(2024.1.1の地震の被災地)が含まれていたことは、今回初めて知り、いろいろと考えさせられるきっかけにはなりました。

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2024年04月05日

Posted by ブクログ

祝島の長年にわたる粘り強い闘いの様子を知ることができた。
村が”スイシン”と”ハンタイ”に分断される悲しさ。
この分断を積極的に作り出し利用して、反対派の孤立化・弱体化を図る国と電力会社。住民同士を対立に導く方法が今、福島で、あるいは放射能汚染問題、原発再稼動をめぐって全国にある。
これをどう乗り越えていくか。祝島の実例にたくさんの示唆が含まれているように思った。

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2013年08月22日

Posted by ブクログ

寡聞にして知らない・・・・・というより、メディアには取り上げられないのだろう。珠洲についても、もちろん祝島についてもほとんど知らない。
全国でこのような戦いがなされているのでしょう。
それにしても、この新書がなければ知ることもなかった、この、まるで他国の出来事のような。
メディアは本当のところ、どちらの味方なのだろう。

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2013年01月30日

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