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さすが道尾先生というか、このもどかしさとやりきれなさから更にずぷりと沈め込まれるような痛み、心グサグサやられてしまう。毎回しんどさのメーター振り切れるんじゃないかってくらいなんだけど、これがクセになるんだっ。やめられない重痛の魅力。
主人公の床下の行動は乱歩作品みたいな変質っぷりだなぁと引いてしまいましたが(笑)
タイトルへの繋がりが出てくるたびにいつも成程、と息が漏れます。こんな自分が嫌なのに、嫌だから更に上塗りしてまた嫌だなと嘆く。誤魔化しながら、言い訳しながら、欲に手を伸ばして。主人公のみならず、自分までグサグサ刺される。
重なる嘘は、どれがどこから何が嘘で真実だったのか。その明確な答えはないまま、曇天の心にずっと小さな痛みの塊を感じながらの終幕は重い余韻。
妊婦からゾウ、蛇、球体と表す流れが好き。主人公が球体の内部に感じたものに、ずっと包まれていたいか否か。やはりはっきりと答え難い。
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最近読んだ中小説の中で一番好みな作品。
実に美しく物語が展開され、また収束していく。
終盤ギリギリまで本当に救いようが無い息苦しさを感じさせ、最後は読者に任せる形を取っていたのも良かった。
小賢しい人間に特に刺さる傑作だと思う。
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若さ故の過ちと言えど決して取り返すことのできない過ちを犯したと後悔する友彦、そして痛みを抱えたまま人生を過ごす人達。
人であるが故の悲しさの様な物がひしひしと伝わって来て乙太郎の死には泣かされました。
サヨ、智子も怖さを潜んでいたけれどもしかして本当に怖いのは始終、優しさを携えていたナオだったのかもしれない…。
それがたとえ他人を想う為の嘘だったとしても。
「女って、1つじゃないのね」
智子がつぶやいていた言葉が全てを表わしていたのかもしれません。
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おすすめ
悲しい話。
最後まで火事が起きた真相はわからない。
しかし、サヨ、乙太郎、智子誰が火事をおこしていたとしても悲しいことに変わりはない。
読み進めるにつれて
火事の真相に迫っていっていき続きがきになった
しかし進むつれてより真相がわからなくなった
比喩表現がたくみで美しかった。
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大どんでん返しがあるのかなと思ってたけど、普通に良い話だった。
星の王子さまの、うわばみが象をこなしているシーンの引用や、のみすけと話しているシーンの引用が妙に心に残る。
乙太郎さんの不器用な優しさとあるシーンでの醜さが同居した感じがリアルだと思う。
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皆嘘を内に抱えながら生きている。保身のための嘘もあれば救おうとしてついた嘘もある。嘘で作られたドームの中で、いつの日かやってくる救いを待っている。物語の終わりは雪で、まだ救いが来ていないことを示しているってことなのかな。。
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「道尾秀介」の長篇作品『球体の蛇』を読みました。
『鬼の跫音』、『龍神の雨』に続き「道尾秀介」作品です。
-----story-------------
あの頃、幼なじみの死の秘密を抱えた17歳の私は、ある女性に夢中だった……。
狡い嘘、幼い偽善、決して取り返すことのできないあやまち。
矛盾と葛藤を抱えて生きる人間の悔恨と痛みを描く、人生の真実の物語。
1992年秋。
17歳だった私「友彦」は両親の離婚により、隣の「橋塚家」に居候していた。
主人の「乙太郎さん」と娘の「ナオ」。
奥さんと姉娘「サヨ」は7年前、キャンプ場の火事が原因で亡くなっていた。
どこか冷たくて強い「サヨ」に私は小さい頃から憧れていた。
そして、彼女が死んだ本当の理由も、誰にも言えずに胸に仕舞い込んだままでいる。
「乙太郎さん」の手伝いとして白蟻駆除に行った屋敷で、私は死んだ「サヨ」によく似た女性に出会う。
彼女に強く惹かれた私は、夜ごとその屋敷の床下に潜り込み、老主人と彼女の情事を盗み聞きするようになるのだが…。
呑み込んだ嘘は、一生吐き出すことは出来ない―。
青春のきらめきと痛み、そして人生の光と陰をも浮き彫りにした、極上の物語。
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「道尾秀介」が、初めて「ミステリーではない」ことを意識して執筆された作品らしく… ちょっと物足りなさを感じましたが、『龍神の雨』と同様に、うまーくミスリードさせられ、物語が二転三転する展開だったので、序盤から終盤まで緊張感が途切れず、愉しく読めました。
父親が家族に全く感心のないことが原因で両親が離婚… 父親と暮していた「友彦」は、父親が東京へ転勤した際、一緒に東京へ行くことを拒み、幼い頃から親しくしていた隣家の「橋塚家」に居候して高校生活を送っていた、、、
「橋塚家」の家族は、白蟻駆除の仕事をしている父親「乙太郎」と娘の「ナオ」の二人… 7年前、キャンプ場でテントが火事になった事件で「乙太郎」の妻「逸子」は亡くなり、顔に大火傷を負った「ナオ」の姉「サヨ」は、事件後に自殺していた。
「友彦」は、小さい頃から「サヨ」に憧れていたが、火傷を負った「サヨ」に対し、憐れみや同情の気持ちが強くなり、その気持ちを「サヨ」に話した直後に「サヨ」が自殺したことから、自分のせいで「サヨ」は自殺に追い込まれたと思い、そのことは誰にも言えず、自分の中で抱え込んでいた、、、
土日に「乙太郎」の仕事を手伝い、白蟻駆除や点検で家々を訪ねるうち、「友彦」は「サヨ」に似た女性「智子」と出会い、彼女に強い魅力を感じた「友彦」は、夜な夜なその屋敷の床下に忍び込み、「智子」と屋敷の老主人「綿貫」との情事を盗み聞きするようになる。
そんなある夜、「友彦」が、いつものように床下に忍び込んでいたところ、屋敷が火事になり「綿貫」は焼死… 床下に「友彦」が忍び込んでいたことを知っていた「智子」は、自分を「綿貫」から救うために「友彦」が放火したのだと思い込み、二人の関係は急速に親密になっていく。
「智子」の勘違い… そして、それを否定せず、「智子」に近付きたいがために、自分がやったように仄めかす「友彦」、、、
これが悲劇の始まりになるんですよねぇ… この後は、暗く哀しい展開が続きます。
「智子」は、「友彦」を守るために「乙太郎」を持ってしまい、「友彦」は、その現場を目撃、、、
さらに「智子」は、7年前のキャンプ場の火事は自分の煙草の不始末が原因と当時の教師「綿貫」に信じ込まされ、身体の関係を強要されていたことを告白… 「友彦」は、「智子」のせいで「逸子」が亡くなり、「サヨ」が自殺したことを知り、「智子」を罵倒して、彼女の部屋を後にする。
思いやりの嘘や狡猾な嘘、同情に満ちた言葉、怒りの感情を抑えきれない言葉、そして胸に秘めた隠された事実… これらの言葉が相互に作用して、複雑に交錯、、、
「智子」は自ら命を絶ち… と、負の連鎖を生み出すんですよねぇ。
終盤では、「ナオ」の証言から、キャンプ場の火事は、「智子」のせいではなく、「サヨ」がテント内で花火に火を点けたことや、「サヨ」の自殺は「友彦」の同情とは関係なかった… ということが明らかになり、「友彦」は「ナオ」と結婚・妊娠と、二人の幸せな生活を予感させるエンディングでしたが、、、
これも、「友彦」のことを自分のものにしたい「ナオ」の嘘だったのかもしれない… という、微かな不安を含んでおり、読み手によって、色んな解釈の仕方のある物語だったと思います。
複雑な余韻の残る作品でしたね、、、
この作品には、嘘を抱えた人間がたくさん出てくるのですが、良かれと思った嘘のせいでお互いを思いやる気持ちにズレが生じて、すれ違ってしまう… 本心でぶつかることを恐れたことにより誤解が生じているんですよね。
これって、事の大小はあるけど、現実世界では日常茶飯事として起こっていることなので… 身近な自分の行動に置き換えて、一つひとつの言葉の大切さや、影響の大きさについて、考えさせられました、、、
摩擦を恐れて誤魔化すばかりじゃなく、本音で、本心でぶつかることも必要なんだと改めて感じました。
本作品、ミステリ的な要素を残した、青春小説、恋愛小説として巧く仕上がっていると思います… 「道尾秀介」の新しい境地かな、、、
でも、個人的には、もっともっとミステリ色の強い作品を描いてほしいと思います。
Posted by ブクログ
幼なじみの死の秘密を抱えた17歳の「私」はある女性に出会い惹かれる。その時言えなかった些細な真実が誰かを傷つけるなんて考えもせずに…。
狭い世界でのたうち回る蛇のように、互いの嘘で傷つき傷つけあってしまう。最後の展開が救いだったのかはちょっと考えてしまうな。
終始釈然としない主人公に苛立ちながら、妙に人間臭さも感じてしまった。
Posted by ブクログ
読後、球体の蛇というタイトルに納得した。
主人公が見聞きしたものが嘘なのか、主人公が考えたことが嘘なのか、何もかもが信じられない。
曖昧なものが思いの繰り返しによって本当のようになっていく。
想像や思いの中で物語が動いていくので(回想ってことじゃない)、まさに球体に閉じ込められたようだった。
静かに進む出来事を不思議に眺めている、そんな気持ちで読み進めた。
その感覚もまた、球体を見つめているようだ。
最後の一行がとても印象的。
そもそも終盤も印象的。
奇妙な作品だったと思った。
Posted by ブクログ
自分が殺した人。
自分が殺す原因を作った、あの人。
罪なき失敗を殺人と見なし、殺してしまった自分。
そして、誰かを守るための嘘。
少し沈んだ調子で物語は進むが、読後感は爽やか。彼らの明るい未来を祈らずにはいられない。
Posted by ブクログ
95%読み終えるまでは割と平坦な展開だと思っていたけど、残り5%くらいのところでそういう裏があったのか、そういう嘘もあるのか、としびれさせて頂きました。タイトルの意味も最後の最後で理解し、味わい深いと感じました。
Posted by ブクログ
結局、何が真実なのかあやふやで、読み手に想像させるようなラスト。はっきりしないことで、読んだ後の余韻が残る内容。主人公の心情の変化か分かりやすく表現されていて、重い内容の雰囲気がどんよりと伝わってきたが面白い作品でした。
Posted by ブクログ
例によって道尾秀介である。
友彦は両親の離婚により、隣の橋塚家に居候していた。主人の乙太郎さんと娘のナオ。
奥さんと姉娘サヨは7年前、キャンプ場の火事が原因で亡くなっていた。
友彦はサヨの死に深く関わっているのだが、それは誰にも言えずにいた。
ある日、乙太郎さんの手伝いとして白蟻駆除に行った屋敷で、死んだサヨに雰囲気が似た女性に出会う。
彼女に強く惹かれた友彦は。。。
今までの道尾作品とは違い、どんでん返しや伏線回収はほとんどなし。
あるにはあるが、それがメインではない感じ。
どこは重く、切なく、なのに読後感は悪くないという、不思議な作品である。
冷静に考えると主人公の友彦の行動はとんでもない気がするが、
多感な時期である事を思えば、まぁアリかな、と。
乙太郎さんもただの善人じゃなく、唯一の善人はナオなのか。
物語のラスト近くで友彦に語った2つの内容は、
嘘かもしれないがそれでもナオの善人さが出ている気がする。
恐ろしいのはサヨであろうか。乙太郎さんと逸子さんはいい人っぽいのだが、
なぜあんな怖い娘になったのか、不思議である。
智子に関しては何ともいえない。
あまりにも「妖艶で不思議な空気を纏った悲劇のヒロイン」感が強すぎて
ちょっと感情移入できない人である。
少し気になるのは、余りにも偶然が過ぎるところか。
智子が捨てたタバコが原因というのが本当だとすると。
この作者の作品が読みたい、という人にはあまりお勧めしないが、
単品で読む分にはおススメ。
Posted by ブクログ
道尾秀介さんが描く過去と現在が激しく交錯し虚実が入り乱れる一人の青年を巡る3人の女の人生の物語。「球体の蛇」には現実の蛇は出て来ませんが何度も壊されたスノードームの中でうごめいている印象が鮮烈ですね。暗くて切ないストーリーですが、でも読者を本格的に落ち込ませないのが道尾さんの良さでしょうね。主人公トモとサヨと智子とナオの愛の物語で序盤のトモが床下に忍び込む場面では乱歩の人間椅子を思い出しました。トモはこのままきっぱりとサヨと智子への執着を断ち切れるのでしょうか?智子を追って物語は続きそうな予感がしますね。
Posted by ブクログ
「文学」読んでる、って思いながら読んだ。このカテゴライズが正しいかわからないけど。主人公の心の動きが細やかに描かれているというか。
幼馴染の姉妹の姉・サヨに好意を抱く主人公。サヨの心の闇に気づく主人公だが、読み進めていくうちに、主人公の心の闇も感じられてくるのがなんとも。
Posted by 読むコレ
思い込み、欲望、すれ違い…人を傷つける切っ掛けなど誰かと関わっていれば無数に見つかるものですが、それがどう作用しどういう結果になったかなど、普通は知り得る事の方が少ないのでしょう。
当然物語ですので、それらが偶然か誰かの意志か詳らかにされる所に面白みがある訳ですが、本作では更にもう一つ伝わって来た事が。
それは単純に「お互い様」という事。
一方的に他人を傷つけてきたのではなく、自らも同じだけ騙され、傷つけられてきたのだと思うことが、ここではどれだけ救いになった事か。
案外悪くない読了感。
氏の作品が好きになります。
Posted by ブクログ
ひたすら「え?」の連続。誰のために口を閉ざしたのか。誰もが真実を見ていたような気もするし何も知らない気もする。最後、二人は本当に幸せなのか?それすらよくわからない。
Posted by ブクログ
なにが真実でなにが嘘なのか。分からないままだけど、それぞれの人生を生きていかなければならない。最後まで飽きることなく読めました。ただ、登場人物一人一人に共感はできなかった。
Posted by ブクログ
「月光」がよぎった。
何が嘘で何が本当なのか分からないけれど、嘘だろうが真実だろうが、吐いた相手と吐かれた相手が同じ気持ちになることはないよなぁ…。
終わり方には少しだけれども安心できた。
Posted by ブクログ
真実なんてどうでも良くて、登場人物それぞれが思い悩みながらベストな答えを考えて生きている。結局それがうまく絡み合わなくて、それぞれが苦しい思いをしてしまう。息苦しさを感じる作品でした。
Posted by ブクログ
道尾秀介さんはどんでん返しミステリのイメージが強かったのですが、本作は一味違った作品でした。
序盤の、先が気になる展開は好きでした。
しかし、2章、3章と進むにつれてだんだん重たくなっていくのが辛かったです。とはいえさすが道尾さん、ずっと先が気になる展開が続くので、だれることなく読み進めることができました。
元気がある時に読むことをオススメします!笑
Posted by ブクログ
道尾秀介さんは定期的に読ませていただいていて、この時期の作品は暗くて哀しい物語が多い印象。もともと子どもの男の子をよく登場させるなと感じていましたが今回は少しだけ等身が上がっての17歳。嘘がテーマのようですが読後感は悪くなかった。
Posted by ブクログ
今まで読んでいた道尾秀介さんのどんでん返し要素と少し違っていたけど、変わらず読みやすく話に入って行きやすくて好きだった!
ひとりの。みんなの、人生の哀しみ
Posted by ブクログ
暗くて切ない物語
テーマは「嘘」
幼いウソと過ちの連鎖が人生を変えていく。
本作も、文芸作品的な文体なのですが、この文体って嫌いなんだよなぁ(笑)
ストーリとしては、うまく語ることができない(笑)
主人公は、両親の離婚により、サヨの妹のナオと父親乙太郎と同居しているトモ。
サヨは幼いころから、残酷ないたずらをする性格。
ある時、サヨとナオと乙太郎と妻逸子とトモでキャンプに行ったときに悲劇が起こります。
サヨとナオをテントに残して夜のドライブに行ったときにテントが火災。
子供を助けようとして全身やけどを負った逸子は死亡。
ケロイドの傷跡を負ったサヨはその後自殺
その責任を感じる父親乙太郎
その自殺の原因を造ったと思っているトモ
そんな設定の中、
サヨに似ている智子にトモは惹かれ、智子が過ごす家の床下に夜な夜な潜り込みます。
智子はその家で先生といわれる男といやいや関係を持たされている。
そして、ある時、床下に潜り込んでいたときに、その家が火事に。
それを機に二人は付き合うようになります。
そして、ある時、智子がいやいや関係を持たされている原因をトモは知ることになります。
ここから話は急展開!
トモと智子の関係は?
トモとナオとの関係は?
そして、テントの火事の真相は?
最後の最後はちょっと救われた気分
Posted by ブクログ
ウソと過ちの連鎖、知らないうちの共犯関係。普通に生きていくのは楽ではないなあ、と思わされるのだが、明かされていく真相のゾワゾワ感はそれほどではなかった。もっとそれぞれの登場人物に感情移入して読むことができればよかったのだが。ミステリー度低、気持ち悪さ中。
Posted by ブクログ
暗い。 冬の田舎、広い家とその床下、智子のアパート、大学生活、そして主人公の思考… 暗い。 床下ではバレないか、少しおかしいサヨの行動、終盤の風俗嬢、所々に変なドキドキが有り加速するも全体にスローな感じ。母親の再婚以外、手放しで喜べないような。
Posted by ブクログ
両親の離婚により、幼なじみの家で暮らす少年。
おじさんと幼なじみと、家族同然の暮らしだったが、彼には心に抱えた秘密があった。
幼い頃に亡くなった幼なじみの姉の死の秘密。
そんな彼女に似た年上の女性に心奪われ、彼女が過ごす家の床下に忍び込むようになり、事件が起こる。
悪気のない嘘が人を変えたり傷つけたり。
何が本当なのかもわからない。
終始もやもやして、息苦しくなるほどの読後感。
Posted by ブクログ
もしも嘘をつくたびに、体の中にある球体にどんどんその嘘が溜まっているとしたら…。
想像しただけで怖ろしい。
周りを欺き、自分に都合の良い状態を作り出すために人は嘘をつく。
嘘をつかれた人は苦しみ、ときにはその嘘が原因で不幸になることもある。
だが、その嘘が自分自身を苦しめる諸刃の刃になることだってあるのだ。
複雑に絡み合った嘘のために、登場人物たちの人生が少しずつ狂っていく。
真実は最後まではっきりとはわからない。
人は信じたいものを信じ、生きていくしかないということだろう。
サヨという人物が理解しがたかった。
他者を壊したいという破壊願望が強いのか、それとも自分が壊れていく破滅願望が強いのか。
自らの闇に飲み込まれ、どんな結果になるのかも深く考えずに、ただ感情のままに行動する。
彼女の存在は不気味で、主人公である「私」が惹かれたものが何なのか、なかなか理解することができなかった。
強烈な闇に周囲を巻き込み、そして破滅していったサヨ。
彼女が死んだ後もずっと、サヨに関わった人たちの人生に影響を与え続けたことが、より一層彼女の存在を怖ろしげにしていた。