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Posted by ブクログ
火付盗賊改方に取り締まられる側の盗賊が主の短編集です。
火盗といっても鬼平が登場したのは『江戸怪盗記』1作でした。
やや拍子抜けしたものの、他の短編も面白かったです。
盗賊の葵小僧に盗みに入られただけでなく女房を犯された日野屋。それも一度のみならず二度も。また来年も来るという。不安に思った日野屋は親しくなった隣の近江屋に泊まってもらうことにするのだが…。
意外な展開と鬼平の裁きがかっこいい『江戸怪盗記』。
金の入った包みを拾いながらも実直にそれを持ち主に返した女乞食。
「乞食というものは、人のおあまりをいただいて暮らしているんですよ」だから、わりと拾いものを返すという。
その心意気に感心した《夜兎の角右衛門》はその女に鰻を御馳走する。
そしてその女の片腕がないのは、己の“はたらき”の際、手下が三ケ条の掟を破ったからだと知り…。
自身の理を通した角右衛門の潔さは盗人ながらかっこいいと思いました。
『四度目の女房』『市松小僧始末』は豊満な女房の話で、母親に包まれているような気持ちで安心できるのでしょうね。安らぎを求めるのでしょうか。
『市松小僧始末』『喧嘩あんま』『ねずみの糞』には大店の娘ですが巨体のおまゆと掏摸の又吉が登場します。
いろいろとあった後に彼らは夫婦になり幸せに暮らしますが、又吉がふとした出来心から掏摸をしてしまい、お縄になるところでおまゆが取った行動は…。
おまゆのおかげで成長した又吉と因果応報の話が楽しめました。
因果応報といえば『さざ浪伝兵衛』。
伝兵衛が初めて人を殺したのは伊之助という男だった。
初めて殺した人の亡霊に悩まされる先輩を笑っていた伝兵衛だったが、火盗に追われ泳いで逃げる際、己の足を掴む伊之助の顔が見えて…。
『おしろい猫』は女の執念というか、女は怖いと思わせる話でした。
木綿問屋の若主人におさまった平吉は、ふとしたきっかけで幼馴染のお長と関係をもってしまう。
お長から子が出来たといわれた平吉は、同じ幼馴染の仲の栄次郎に仲介を頼むのですが…。
猫の鼻におしろいをつけて、という思わせぶりがかえって怖い話です。
どこか悲哀があったり、生身の人というのを感じさせてくれる短編集だったと思います。