【感想・ネタバレ】ドーンのレビュー

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Posted by ブクログ

中盤まではなかなか読み進めるのがヘビーなのだが、登場人物たちが苦悩を自分自身の「分人」と結びつけて乗り越えようとしていく過程が読み応えがあり、特に主人公の明日人のそれの危うさを孕みつつ一種の誠実さと真摯さを手放さない感じが良かった。

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2024年02月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

平野啓一郎くんの壮大な長編。
壮大すぎてレビューが長くなりそうだけど書いてみる。

舞台は21世紀半ばの近未来。
私たちは、いろいろなものが進化しすぎて複雑化し、世の中がこの先どこへ進んでいくか想像もつかないけど、小説の中ではやはりまだまだ世界は複雑に進化している。
整理すると…

○人類は火星に降り立つ
○アメリカはアフガン戦争に続き、「東アフリカ戦争」なるものに介入している
○東京大震災がおこり、甚大な被害が出た
○テレビ電話的なものが更に進化し、通話相手がホログラムで目の前に登場
○車は「自動運転レーン」を走ったりする(しかしウィルスによって事故ることも)
○「無領土国家」なるものが登場し、人々はアメリカ国籍や日本国籍を持ちながらもその国家“プラネット”の国民にもなれる。国連にも認められている
○コンタクトやサングラスで映像が観られる
○「散影」と言って、街中の防犯カメラの映像を誰でも検索して、顔認識機能などを使って人の足取りを追うことができる
○「AR」と言って、死んだ子どもの遺伝子情報をプログラムし、まるで本当に生きているかのように成長させることができる。ただし光でできているので触れない

などなど…
もっと面白い設定があって全部書きたいけどやめとく。

まぁこのような世界で、医師だった主人公の明日人は、まず東京大震災で息子をなくし、その後心の傷をいやすため(?)宇宙飛行士を目指すことに没頭し、2年半かけて火星への往復を果たしたのだが、その過程で様々なトラブルに見舞われる。
読み終わってみればやはり、これは壮大なようでシンプルな明日人個人の物語なのだと思うが、同時にアメリカの大統領選挙の駆け引きと宇宙開発事業との関係、それに巻き込まれる宇宙飛行士たちがドラマティックに描かれているし、大統領選で共和党が勝つのか民主党が勝のかによってこれからの世界の在り方が大きく左右されるため、個人の物語でありながら世界がどこへ向かうのか、善悪とは何かという物語でもある。
私たちはいかにして、「正しいこと」を選びとれば良いのか。
世界ははたして、「正しいこと(もの)」と「凶悪なこと(もの)」にはっきりと分けられるものなのか。
アメリカ的民主主義は本当に善なるものなのか。
また、この物語の中でもっとも大きなテーマだと思ったのは、私たちは、個人「individual」の中にいくつもの分人「dividual」を持っている、とされていること。
現代を生きる我々も、個人の中に多面性があることは認めているが、近未来はもっとはっきりと、相手やシーンによって「分人」を使い分けている。
職場にいるときの自分と、家族と一緒にいるときの自分は全く別物である、という認識だ。それに合わせて、特殊な整形技術で顔を変える人さえいる。
これは一見、荒唐無稽な設定のような気もするが、現代の私たちは、ネット上では本当の自分とはまったく違うキャラを演じていたりするので、それがますます進んでいくとこういうことにもなり得るのかも…と思った。
とにかく色々な面で興味深い。
明日人の陥る状況がひど過ぎて、もしかして最後には以前読んだ「決壊」のような結末になるのか!?と不安になったけど…最後はシンプルだけれども納得の結末でした。
最終章のタイトルが「永い瞬きの終わりに」だったので、こんなにも壮大な物語でありながら、ここまでの章は「永い瞬き」か!?深い!と思った。
やっぱりレビューが長くなりすぎた。
ちゃんと読んで下さった方、ありがとう。

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2021年07月31日

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これって、去年の大統領選挙よりずっと前に書かれた作品なんだよなあ、と思いながら読み終わって、2009年の作品、と知って衝撃を受けた。
去年のどころか、その前のトランプ旋風選挙も、東日本震災も、宇宙関連でいうと、はやぶさ(1号!)の帰還もまだはるか先の話の時代の作品。
この作者の、「今」考えていることを追いたいと思いました。

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2021年07月04日

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『空白を満たしなさい』に続いて分人主義が通奏低音になっている作品で、監視カメラネットワークやAR(拡張ではなく添付)そして火星有人探査などの実現する近未来が舞台。ただそこで語られるテーマは紛争、移民、そして民主主義のあり方など「近い将来ありある」というよりすでに今現在の私たちの社会で起こっていることを考えさせるものです。今年はちょうど米大統領選の年ですし、日本でも首相交代が行われたタイミングでもあるのでこの本を読んで少しだけ考えてみても良いのでは。

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2020年10月03日

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すごいよかった!

いまは強固で社会の地盤となってるものごと、
みんなが持ってる価値観が
将来は跡形もなくなくなってるのかもしれない。
と同時に人間が未来も解決できない
しょうもない問題もあるんだなぁ

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2020年09月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

この「ドーン」という作品、結構な長編だし、場面の切り替わりに頭がついていけなくて最初は結構読み進めるのに苦労したのだけど、平野啓一郎さんが書く半分SF的な未来絵の結末がどうなるのかを知りたくて、少しずつ読み進めました。まず、面白いと思ったのは分人という考え方。本の中では、「日本語で〈分人〉って言ってるその dividual は、〈個人〉individualも、対人関係ごとに、あるいは、居場所ごとに、もっとこまかく『分けることができる』っていう発想なんだよ。(中略)相手とうまくやろうと思えば、どうしても変わってこざるを得ない。その現象を、個人 individual が、分人化 dividualize されるって言うんだ。で、そのそれぞれの僕が分人 dividual。個人は、だから、分人の集合なんだよ。──そういう考え方を分人主義 dividualism って呼んでる。」と説明されている。そして、「人間は、ディヴをそれなりにたくさん抱えて、色んな自分を生きることでバランスが取れてるんだと思う。その相手がいないと、行き場を失ったディヴは、過去の記憶や未来の想像の中にばかり溢れ返ってしまう。」さらに「誰も自分の中のすべてのディヴィジュアルに満足することなど出来ない。しかし、一つでも満更でもないディヴィジュアルがあれば、それを足場にして生きていくことが出来るはずだ。」という発言があるように、この作品全体はこの分人という考え方がとても大事なポジションを占めている。大切な人を失ってしまったディブは行き場を失ってしまうこと。全てがダメだと思った時も、満更でもない自分のディブがあれば、生きていくことができること。そして、「人間は、社会に有益だから生きていて良いんじゃない。生きているから、何か社会に有益なことをするんだ。」という言葉も心に響いた。大変不名誉なことがあって、絶望があって、でもまずは生きることが一番。そして生きている中で、満更でもないディブを見つけていければ、何か社会的に有益なことができるという風につながるのではないかなと思料する。

ドーンというのは2030年代に火星に有人宇宙船が火星探索に行くという話。日本人宇宙飛行士であり医師である明日人はこの計画に参加し、見事に帰還した英雄だけど、宇宙船の中で女性宇宙飛行士を妊娠させ、堕胎させるという事件の当事者になる。明日人が結婚していること、女性宇宙飛行士の父親は保守派の副大統領候補の政治家で堕胎には反対派。こうしたこともあって、宇宙船内の事故の発覚は英雄を一気にダーティーなイメージに貶めてしまう。そもそも明日人がなぜ宇宙飛行士になったのか。明日人には東京大地震で失った一人息子の太陽という子供がいた。太陽に向かっていたディブが行き場を失ったことが根底にあった訳だ。事件発覚後、ボロボロになった明日人は結局自分のディブを整理するきっかけをつかみ、最後は立ち直れたのかな・・・ディブを整理して妻今日子との関係を再構築できたところで物語は終わるという理解をした。

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2018年12月28日

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すごい。こういうのが読みたかった。

今の10代が30代、40代として活躍しているような近未来。
大震災後、有人火星探査、可塑整形、散影(divisual/監視カメラのオープンなネットワーク)、AR(死んだ人間のその後の人生をプログラムし、立体映像化する)、分人主義(dividualism)、生物兵器(蚊)、ウィキノベル(Wikinovel)。
これでもかというほどアイディアが詰め込まれている。
全般的に希望的な未来としては描かれていない。
書かれたのが2009年。東日本大震災以前というのがすごい。
そして、現実はこの小説が持つ雰囲気に近い状態で進んでいるように感じる。

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2018年10月30日

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有人火星探査成功の裏でおきる『愚行』。片道8ヶ月、ミッション含めて3年もの長く、常に生命の危機に晒されている過酷な環境で起こり得る人間の性。帰還後に多くの人間に多様な苦難がまちうける。未来も現在も人間の本性と苦悩は変わらないようです。

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2024年02月18日

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これが「分人」の概念が登場した初めての小説らしい。2033年の火星探査とアメリカ大統領選という壮大な舞台とは対照的に、その時代でも尚続く人間の業の深さ、対人関係から生じる内面的葛藤が生生しく描かれている。
この小説の世界では「分人主義」が概念として一般化しているが、読み始めはその明示的な設定に違和感を感じた。ただ、主人公をはじめ様々な登場人物たちは、それぞれある分人には葛藤・苦悩を抱えながらも別の分人には未来への足場をつくりながら生きていく希望の輪郭が次第にくっきりと見えてきた。
後半、「恥」と「悪」に関する会話シーンがあるが、これが分人の考え方と相まって印象深かった。"恥" は社会的に自分がどう思われるかを意識する際の対人感情、"悪" は道徳的・倫理的な評価基準だとすれば、そのいずれもが自分の分人に大きな影響を及ぼしている。一方で、そうした大きなものの影響は様々な分人の集合体である個人全体と決して不可分なのではなく、自分にとって大切な分人、そして、その分人が生まれるきっかけとなった他者との関係性もまた個人全体に影響を与える。しかし、これを突き詰めて考えていくと、個人と不可分とされる「意志」と「責任」がつきまとう。分人の意志、分人の責任をもっと考えてみたい。

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2023年07月16日

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「閉鎖的な対人関係によって分人が過度に抑制されると、過去や未来の妄想の分人が大量に溢れ出て、収集がつかなくなる」

この描写に自身の経験を重ね合わせ、離別による悲劇に見舞われた直後に誰にも会いたくなくなるのは、対象の分人を邪魔されずに大切にとっておきたいからなのだ、と合点がいった。

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2023年07月12日

Posted by ブクログ

分人主義の話。

最近読んだ転職自己啓発本で、株式会社自分という概念があったんだけど、それと似ている。株式会社自分の中には、家族事業部やお仕事事業部、音楽事業部などがある。一個の事業が上手くいかなくなっても大丈夫なように、いろいろな事業部を抱えている方がリスク分散になって安心だなと、この本を読んだ時に考えたことを思い出した。

分人も、色々なタイプがいていいんだと思えるし、むしろそれが健全な人生に繋がる。この哲学を身につけると本当の自分探しという不毛な命題から自由になれると思う。

一つの分人だけだとやっぱりそれは息苦しい。リリアンが、誠実で正直な分人としての自分を生きていくと決めたシーンは感動した。

私はどんな分人を育てていこうかな。
誰といる時の自分が好きかな。

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2023年02月09日

Posted by ブクログ

640ページ読み切った〜!人類初の火星探査の話にも関わらず、火星探査自体の話はなく、その過程で起こる深刻な人間模様。平野啓一郎さんが唱える分人論の予備知識がないと、少し分かりにくいところもあるかも。
けれど、氏の著作なら後味の悪い終わり方はしないだろう、という期待が裏切られる事はなかった…

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2022年11月23日

Posted by ブクログ

分人主義という考え方を知って読もうと思いました。2030年代の近未来をディストピア的に描かれてますが、発行が2009年という事に驚きます。散影、ウィキノベル、AR、プラネットなど、2022年の今、すでにあり得そうな設定を実感しながら読み進められます。大きな震災、大統領選、大国の戦争への介入など、今の時勢にもはまり読み応えのある一冊でした。

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2022年03月12日

Posted by ブクログ

壮大な物語と緻密な心理描写。なにより、日本語の美しさを感じる。「ある男」で感じた言い得て妙というか、細かな機微を言葉にする力を、また違った形で感じられる。平野さんの丁寧な言葉たちが、ともするとどこまでもひろがっていってしまいそうなストーリーをきれいにひとまとまりにおさめている。
分人主義というものを理解するためには必読の一冊で、もとより社会のなかで、家族といるときや友達といるときや先生に対してなど、様々な顔をして生活している我々は、現代においてネット世界の深化によりさらにその顔を複雑に入り乱れて所有し、使い分けることとなった。それこそ家族で幸せそうにターキーを囲むときにも自分の子どもに自分の知らぬ分人が潜んでいるような状況だ。
物語の終盤にはそのたくさんの分人を内に所有することに対して、ひとりの人間という姿を取り上げられるが、間違いなくこれがこの物語の救いであり、そして壮大で不穏な様々な分人が入り乱れるこの物語のひとつのゴールなのだと思う。
平野さんは2作目だったが、幸せな読書体験だった。

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2022年02月11日

Posted by ブクログ

人に薦められて読んだ。

最初は分人主義やら「散影」やらいろいろ近未来要素がたくさん出てきてよくわからなかったり、登場人物の相関関係が把握できなかったりしたけれど、読んでよかった。最後まで読んで、もう一度、読み直すと、よりいろいろわかりながら読める気がする。

近未来のお話。火星に初めて降り立った宇宙飛行士の佐野明日人を中心に、火星でのミッションを「無事」終えて帰還してからの、それぞれの事情、環境に翻弄されながら、そして、いつしか大統領選に巻き込まれながら、それぞれが自分がどうしたいのかを悩んだり、立ち止まったり、時に暴走したりしながら、選び取っていく。

宇宙飛行士は誰でもなれるわけではないものではあるけれど、ひとりの人間。狭い空間に長時間居続けることは、いいことだけではないのだ。そんな当たり前のことを思う。ミッションを「成功」させたからと英雄視するのがあまりにも短絡的なのだ。日々には、さまざまなトラブルも目をそむけたくなることも大なり小なりある。何かをわかりやすい型にはめてしまうことの問題性は、この英雄に祭り上げることも、そして、東アフリカでの「悪」「テロ」との戦いにも通じるものがある。

大統領選終盤でのネイラーの語りが今の世界にも、とても響くところがあって、本当にその通りだと深く賛同してしまった。力では何も解決しない。複雑な現状を様々な視点で緻密に愚直にひも解いていこうとすることが本当に必要になってきているなぁと思う。耳障りのいい言葉、主張に惹かれるけれど、そこで一度、踏みとどまる胆力を備えたい。

そう、今日は、「戦後」75年を迎えた。

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2020年08月15日

Posted by ブクログ

初のSF小説。SF小説はフィクションでありながら、実社会の問題を定義していると思っているため、社会情勢、経済や政治の歴史であったり、社会が向かっている方向を知っていなければ理解できないジャンルであると思い敬遠していた。

本作は火星探査船「ドーン」で、人類初の有人火星探査から帰還した医師であり宇宙飛行士・佐野明日人。帰還後に火星で撮されたある映像により英雄から転落。
探索船「ドーン」をタイトルにしながらも、火星探査までの過程の小説ではなく、帰還後の社会について、大統領選挙、テロという社会問題をテーマに近未来を描写し、現実社会の課題を示唆している。

一方で、本作で提唱されている「分人」なる新しい概念も提唱されており、それを理解するにあたり難しさを感じた。読みかけては前に戻ってを繰り返していたため、意外と前半部分までは自分のペースで読み進めるのが、難しかった。
ただ、作者が提唱する「分人」の考え方の発想における概念をうっすらとであるがわかったような気になったとき、作者がindividualからdividualが生まれると説明した手法が今後もしかきたら社会に生まれてくるかもしれない言葉のような気がするして、作者の予見能力の凄さを感じた。と、同時にもう少し「分人」に関するものを読んでみたいと思う気持ちが生じてきた。

分人の主人公・明日人が、妻・今日子へ次のように説明している。「人間の体はひとつしかないし、それはわけようがないし、実際には、接する相手次第で、僕たちは色んな自分がいる。今日ちゃん(今日子)と向かい合っている時の僕、両親と向かい合っている時の僕、NASAでノノと向かい合っている時の僕、室長と向かい合っている時の僕、・・・・・相手とうまくやろうと思えば、どうしても変わってこざる得ない。その現象を、個人individualが、分人化dividualizeされるって言うんだ。で、そのそれぞれの僕が分人の集合体なんだよ。-そういう考え方を分人主義って呼んでいる。」
 
また、この作品で明日人は2歳の子・太陽を震災で失っており、その設定が東日本大震災の予兆のように思え怖くなった。

そして、単純にすごいなぁと感心したのは、平野ワードである。ウィキノベル(Wikipediaとnobelの造語)、添加現実(AR=Augmented Realityだか、ARをArtificial Realityかと思った)、可塑整形と、現代において実在し、将来に進化したものであろうと想像できる言葉を創り出していることだ。

大統領選挙さながらの演説も面白かったが、愛すべき政治家としてのこの説明がいい。「ネイラーは、尊敬される政治家でありながら、時折、思いがけない穴を見せた。・・・・確かにその穴は、失望させられるというよりも、むしろ周囲の者に、自分こそが、サポートしなければならないという積極的な支援の感情を抱かせるものだった。・・・・・立派であることは、最低限の条件だったが、その立派さも、国民のサポートがなければ危ういと感じさせる、どこか不完全な感じがなければ、政治的決定は、自分たちの血が通わない、冷たく、一方的な命令と受け止められてしまう。」

文章においては、私の問題点ではあるが、語彙、構成において解り辛らかったが、全体的には読後は、満足感が残った。

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2020年06月15日

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最愛の子を失った夫婦が、互いが知らなかった、それぞれの「分人」を認め、受け入れ、「個人」として新たな一歩を踏み出す物語。
「火星プロジェクト」「大統領選」「戦争」。ストーリーは壮大。一方で、物語の終末が「個人」の歩みに還るのは、それらの物語を紡ぐのが、あくまでも「個人」であり、人類は地球で「個」を認めた唯一の存在だからか。


役立つものが生きているのではなく、生きているものが役立とうとする。
分人 ディヴ 何種類の「自分」が発生しているか
死を乗り越える 認める
圧倒的に強いリーダー 寄り添う隙のあるリーダー
主語の大雑把さに注意
散影
国民として認められるということ

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2020年04月25日

Posted by ブクログ

長編だけど、読みやすい。
二つのストーリーが進んでいくので、あきが来ないし、シチュエーションを上手に利用していると思った。
何よりは、この本の面白さをTwitterで呟いたら、作者様からリツイートしてもらえたこと。

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2019年12月11日

Posted by ブクログ

火星探査船「ドーン」に乗り込み、人類初の火星探査を果たして一躍英雄となった宇宙飛行士・佐野明日人。しかし、闇に葬られたはずの火星でのある「出来事」が、アメリカ大統領選を揺るがすスキャンダルに。
近未来の宇宙飛行、ラブロマンス、大統領選をめぐる情報戦…輝かしい要素が満載にも関わらず、この小説が目指しているのはその方向ではないようでした。むしろ惨めで地味な現実が暗雲のように立ち込めています。精神に異常をきたしたクルーの世話に追われ、自らも薬に頼らざるを得ないほど追いつめられる明日人。帰還後は軍事企業のCEOに絡め取られそうになり、妻の今日子とは不和に。
しかし読み進めるうちに、気が滅入るどころか、のめり込む魅力がありました。本書の中で提唱されている分人主義。矛盾や葛藤は断ち切られるべきとされがちですが、それらを抱えたままでもいいじゃないか、と肯定されているようでした。

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2018年10月22日

Posted by ブクログ

分人主義の理解を深めようと読む。自分としては「空白を満たしなさい」の方が、よりポジティブな分人主義の理解に役立った。本作は、600ページを超える大作だが、全体を通して暗く陰鬱な気持ちから逃れられない。ただ、分人主義の考え方がなければ、未だに主人公の救いはないのかもしれない。

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2018年02月26日

Posted by ブクログ

初平野啓一郎作品。SFだが非常に近い未来を想像させる設定が見事だった。火星という非現実的な環境と、大統領選というタイムリーな出来事、登場人物のリアルな心情部分のやり取りなど、構成要素が上手く絡み合い面白かった。

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2017年02月13日

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人間と社会への深い考察を行い、
それを小説の中にわかりやすい形で盛り込み、
読者に考えるきっかけと示唆を与える
ということこそが小説家の仕事だと考えると
極めて誠実な仕事を継続的に行っている作家だと思う。

平野啓一郎という作家は。

いろんな概念や象徴、考えが詰め込みすぎなくらいに
盛り込まれているけど、アメリカ大統領選という
2つの対立する陣営の議論を通じて
2元的にわかりやすく構図を持たせているのは
さすがだと思った。

キッチンズとネイラーの意見の相違によって
世界はどうあるべきか、正義とは何かという考えが
わかりやすすぎるくらい2軸にまとまっていた。

正直、要素を詰め込みすぎた感はあるけれど
若き作家の野心的な意欲を前向きに評価したい。

細部で気になるところもあるけれど
この大作をまとめあげた仕事ぶりに
敬意を表したいと思う。

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2016年09月19日

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ネタバレ

作者が提唱する「分人」の思想にあまりしっくり来なかったため、ストーリー自体は楽しく追えたけれどイマイチはまりきれなかった。「会社での私、恋人の前の私、家族の前の私はみんな違うけどどれも自分の人格だよね」っていう主張自体はごもっともなのだけど、それが作中で世界的に、ここまで一般的に普及するほどのものかという説得力が感じられなかった。
あとは普通に大気圏外まで出てきて浮気すんなよ、とどんな偉大っぽいことを言っていても下半身に逆らえない主人公がチンケに見えてしまって残念。

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2018年12月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ

難しかった。
最後の方はどんでん返しもなく、決まった結末に収束していった感じでいまいち?

若林が勧めてたのです読んでみた。
しかし、純文学って何なんだろう。
これ、純文学ですか?

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2016年12月06日

Posted by ブクログ

人類初の有人火星探査を成功させた主人公が隠す火星探査の2年で起こった出来事が徐々に解き明かされ、その出来事が近日行われるアメリカ大統領選に影響を与える、みたいな話。
僕らが暮らす現実世界で、接する人毎に対応の仕方を変えるように(一部の人は裏表無い人柄という評価のもと清廉潔白な顔をして自己をどこに対しても通す狂人がいるけれど)、この物語では自分の姿形や性格さえも手術によって自在に変化させることができるみたい。すごい。

SF小説でよく思うのは著者がイメージする近未来的な世界、特に今ない技術を読者が正しくイメージして物語を読むことができるかが重要だよなァ、っていうことで、これはものによって結構難儀である。加えて本作は登場人物が多く視点も時々で変わっていくため、栞を挟んで次に物語に戻る時に、立ち位置を確認する作業でかなり手こずってしまった。物語自体も少し冗長的な面も否めない。
しかし、そうしたネガティブな要素を含んでいながらも、人と人との交流を真摯に描いており描写は丁寧で楽しく読めた。
たぶん映画化されて視覚的に情報を補完できればもっと楽しめるのではないかと思った(読者としての読解力なぞは棚に上げる)

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2022年09月17日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 えすえふ、のようでえすえふじゃないのかな、と思ったんだけど結局やっぱりSFなんだろうな…カテゴリは恋愛小説にしたけど←

 SFとしてはリアル志向の拡張型。火星探査船、サイボーグ蚊(笑)、《散影/divisuals=相互監視装置》に《プラネット/plan-net=無領土国家》などなど設定も盛り沢山で、そのあたり挑戦的でいいなぁと思います。

 相互監視、という表現をしたけど字面とは少し違って、万人がアクセス出来る監視カメラネットワーク、みたいなものなのだけれどこれは、こんなにすんなり受け入れられるものだろうか、という感じは少し。
一部の層にだけ閲覧が許可されているから反感が生まれる、という理論は確かに納得だけれど。それを扱える感覚がいまの延長にあるかなぁ。ぶつぶつ。

 これ怖いわ、と思ったのはWikinovel。有り得すぎてぞっとする…いやむしろもうどこかにあるんじゃない? なろうサイトとか隅々まで見たらそういう集まりできてそう…


 どうにも日本の小説っぽくない、というか。内容的にはもちろんなんだけれど、文体も含めてそれが少し気になってしまった。きっとそれは修辞の方法論の違いなのかなぁ? なんとなく日本語は縦に積み重ねる言語、英語は横に積み重ねる言語、みたいなイメージがあって、言葉の密度が増す前者と、言葉の表面積(? うーん思い付きなので巧い単語が出てこないな)が増す後者、というふうに位置付けると、自分の好みはもうそれは前者で。
 そのぶん後者の文章で書かれたことの重みが、なんとなく入ってきづらくなっているのかもしれない。それはあんまりよくないなぁ。
 この、密度と表面積、という対比はちょっと興味が湧いたので今後掘り下げるかもしれません。
 なんというかね、変な感じ、翻訳もの読んでるような気分がしたのです。言葉選びとか繋げかたとか、キャラの造形とかも。それがオレには災いして、特にアストーと今日ちゃんの側にあんまり入り込めなかったというか。分人が未分化なのかな?←
 SF的にガードナーの側はめっちゃ楽しんだけど。



 個人的なハイライトはJ.J.マッコイのシーン。ところでこう、云いにくいことを云うキャラクタとしてゲイを配置するっていうのはゲイの側からしたらどういう気分なんだろう? こんなところでそんなセンシティブな話題に触れるなって?(笑
 なんとなくこー、話をその方向に進めるために用意された人格、みたいなものに大きな抵抗があって。例えば乗り越える相手として露骨に設定されている旧態依然とした価値観の男性、みたいなのに、こんなステレオ今どきねぇよ、って一気に醒めたりしちゃうんだけど、もしかしたらそれと同じようなことが、露骨に越境するものとしてのLGBT、みたいに起こっていたとしたら、それを意識しないでこんなこと云いたくないなと思って。


 随分話が逸れましたね。
 にしても現実の大統領選のニュースを見ながら読むことになるとは。面白いものです。お勧めしてもらってから随分経ってしまいましたが…いや大統領選待ってたんですよ! うん! バランス見て☆3.4!

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2020年11月05日

Posted by ブクログ

分人やディヴ、それから次世代のテクノロジーに加えて火星探査など、なかなか想像の簡単でない近未来が描かれてました。偉業を成し遂げる人が登場して、大統領選挙に絡めた戦争や国家に対する思想が説明されているのに、みんな暗い一面を背負っていて、尊大な感じがないです。未来ってこんなに微妙なバランスの上に成り立っていくのかと、心配になります。

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2019年09月05日

Posted by ブクログ

人類初の火星の有人探査船ドーン。迫るアメリカ大統領選挙の行方と陰謀に巻き込まれていくクルーの運命は。火星探査は正直おまけであり、メインは大統領選挙。SF要素はほぼない。
話としては正直詰め込みすぎで、宇宙の話必要なかったのでは?という気もする。しかし、背表紙解説にも書かれているが、「分人(ディビジュアル)」という概念については、かなりふに落ちるものがあった。作られたキャラクターではないが、相手や環境によって変わる自分をそれぞれのディブとして捉える考え方は、自分を統合しなければならないという考え方から自由になれる素晴らしい捉え方だと思った。対人関係と一くくりに考えてきたが、誰との関係が問題であるのかという分析的思考を持つのに役立ちそう。

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2019年02月16日

Posted by ブクログ

表現も独特で、描写も精緻なれど、大事なことは語らないところが少し残念。あと、アメリカである必要性と近未来である必要性に疑問。かなりの長編なれど、ずっとそれを感じたまま。

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2017年12月31日

Posted by ブクログ

ネタバレ

マチネの終わりに、が面白かったのでもう一冊平野啓一郎を読んでみる。遠くない未来、起こり得そうなSF小説。宇宙飛行士を神格化せずに、飛行中に妊娠し、陰謀詭計渦巻く軍需産業、大統領選、テロリズムを同時平行に走らせ、そこに夫婦の問題、親子の問題、震災を絡ませるって、読んでて疲れるよ。でも、普通はとっ散らかって嫌になるところが、しっかりと読ませるところがこの作者の筆力。どこでも映像で監視される社会って、しかもそれがネットで検索できるとか、もうすでにおきかけている。分人主義について、インディヴィジュアルとディヴィジュアルの違いが最初よくわからず戸惑ったが、ここの理解がより深ければ最初から楽しいはず。確か新書で分人主義についての本を出していたはず。読んでみる。

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2017年07月18日

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