【感想・ネタバレ】薬研堀小町事件帖 冬景色のレビュー

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気になるおちかの目の病い

御殿医を務めたことがある漢方医、賀川玄旭の末娘おちかが、門前の小僧・・・ではないが、父の漢方医の仕事を見よう見まねで習い、女医になった。おちかは父玄旭、次男と一緒に江戸の薬研堀に居を構えている。まだ年若く美しい姿から、世間からは小町娘と噂されるが、本人は目の病を持っている。そんな女医おちかは、病人が出ると、診察に患家を訪れて治療を施して病人を治す話しである。
患者は花街の女郎や江戸の町人、子どもから立派な旗本の母堂までと、様々である。
江戸時代も終わりに近づく18世紀の末は、幕府の体制にほころびが目立つようになる。反面、江戸の町人達で中には莫大な財産を築き、武士をも凌ぐ勢いの者が現れるそんな時代である。
病人はそうした時代の流れや変化に乗れない、ついて行けない弱い立場の人で、苦労して毎日の生活を送る人々である。
この物語を読むと、この当時の華やかで爛熟した江戸町人の文化や世俗が驚くほど詳しく書かれていて、非常に興味を引かれて勉強にもなった。
有名な小石川養生所が患者を診ることもせずに、腑分けに専心しているのを見た時、やがては、漢方医学も当時日本に入ってきた西洋医学の蘭学に取って代わってしまうのだろうと容易に想像できる。
玄旭の医者としての基本精神は「病を治すのではなく、病人を治す」ことであり、おちかもこの精神で病人に真剣に対峙するのだ。治療のお陰で、患者が快方に向かえばこちらもふっと安心する。だが、薬の名前はちんぷんかんぷんでどこか異国にいるかのような気持ちになる。

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2020年12月14日

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