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《もうずっと前から義兄のことが好きだった》
匂い系小説で調べると必ずと言っていいほど名を轟かせる本作。
物語の表面上はミステリーだが、その裏で主人公が義兄への感情を押し殺し叶わない恋に身を焦がす様子が歯痒い。
タイトルであるレモンタルトとの由縁も主人公と義兄が一定以上の距離に縮まることはないと宣言しているようで切なかった。
訳ありな出自故社内に敵が多くトラブル体質の主人公と毎度見計らったかのような最高のタイミングで登場する推理したがりな義兄。
解説に"主人公がトラブルに巻き込まれる元凶には義兄へ寄せる想いがあり義兄は探偵であり真犯人なのだ"とあり、心の中でスタンディングオベーションした。恋泥棒の義兄。憎い男め。
義兄を"ほかのだれのものでもない姉の海"と表現する主人公がこの先も囁かに心地良く泳げることを願う。
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初読の感想。俗物的な萌えを求めてブロマンス小説を検索しこの作品に行き着いたが、予想以上だった。
普段読まない文体、テーマだったが1ページ目から心を奪われた。そこから食入るように読み進め、ページ数が少なく終わり方も美しかったが、もっとこの世界を味わいたかった。初の官能小説だったが、言い方は悪いが肉欲的な感じはなく、性的ではない美しさを感じた。
表現が直接的な場面は少なく、想像しながら読み進めるためワクワクドキドキが止まらない。女が海を求める時がどんな時なのか、まだ未熟な私には分からずモヤモヤとした。主人公に好意
主人公の置かれている状況や展開はなかなかファンタジーで笑ってしまうが、危機的状況に陥っていながらも異様に冷静な主人公を違和感に思いながらも、読み進めると彼の職場での扱いでその異様な冷静さに何となく察してしまうものがあった。美しいだけでは無いのが美しかった。
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これは好きな小説だ…と、悶絶しながら本を閉じた。BL・MLとあらかじめ分かって読むよりも、出会い頭の事故みたいに不意の隙を突かれたほうが衝撃が大きいと思う。つまり、予想していたよりも官能的で驚いた…(笑)
亡くなった姉の夫である義兄に思慕を募らせる弟。恐らく理解した上でその思いを泳がせている義兄。
二人の関係は健全だが、義兄への思いをこじらせて男たちを無自覚に惹きつけてしまう弟に助け船を出してやる義兄。
故人との思い出が二人を繋ぎもし留めもする、茶番の中に匂い立つエロさと切なさがあった。
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とても綺麗な文章だった。
所々内容が理解できず、前のページに戻ることが合った。
主人公が報われて欲しい気持ちもあるが、このままの関係でいて欲しいとも思った。
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おしゃれな文体だな…。
装丁が女性向けっぽかったので読んでみたら別の意味で女性向けだった。
男性同士の恋愛は「許されない恋」「人に言えない恋」という背徳的な要素がより感情にブーストをかけ、だからこそ人気のあるテーマだが、
昨今の空気からしてそういうエッセンスが薄れつつある気がする。
段々と異性同士の恋愛と同じような扱いになっていくのだろうかな。
愛人として一生を終えた母が死に、母を囲っていた父も死に、姉も死に、残ったのは自分と姉の夫(義兄)だけ。
会社では諸事情により役員の便利屋として秘密裏に行動しているため、他の社員からは何も仕事をしていないと誤解され蔑まれ、それを釈明することもできない。
そうした環境に依る主人公の精神的な脆さが随所に現れていて良かった。
最初は不思議な出来事から始まり、叶わない恋へと主軸が移り、悲しくも穏やかな話か?と思いきや主人公の不幸な境遇が明らかになるにつれ物語のテイストがどんどん息苦しくなっていく。
登場人物を出来るだけイニシャルで表記する(必要なタイミングでは本名が明かされるが、それ以降もイニシャルは継続する)のが、主人公が周囲の世界から一歩引いた形で存在せざるを得ないことのあらわれのような気がして切なかった。
文体がなんか全体的におしゃれだったな。
他の作品も読んでみたい。
普段使わないような言葉が頻出するので語彙が増えそう。
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あらすじと表紙に惹かれて初めて手に取った長野まゆみ作品を雨の多い昨今読み返したくなった。
傘や海などのキーワードとともに展開される主人公の義兄への想いが切ない。
主人公を廻る登場人物とは大人な関係が描かれるが、それも本命への純粋で叶わない恋へのエッセンスとなる。
女子としてプラトニックを恋愛の最上に置く感性はとても共感できる。
絶対に嫌われたくないから欲を見せられないのに筈なのに周囲には見透かされてるぐらいわかりやすくてそういう可愛さも垣間見える。
義兄にはムキになり強気なのに、ラグーを作りながら涙が溢れてしまったり精神的脆さを見せるのはそういう相手なのが憎い。
義兄のどっちともつかずの態度は、彼としても姉の夫という立場が邪魔することもあるのかなと希望的観測をしてしまう。
結ばれることはなくてもギリギリの絆を紡げる2人であると思う。
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主人公も含めて、登場人物みんながお洒落な比喩表現や隠語を巧みに使っていて、他愛ない、俗語で話すと聊か下品な話も彼らがすると一流の会話になる。現実が舞台なのに、どこか浮世離れしたような、あり得そうであり得ない、見た事のない、妖艶で優雅な世界観…これぞ、私の求めている長野世界…という印象でした。
同性愛要素が含まれているので、苦手な方は避けた方が良いかと思いますが、主人公が男であるからこそ描ける世界だと思うので、美麗な文章を読みたい方は苦手意識を一度放り投げて読んで頂きたいです。
男と女になると、どうしても、設定に負けてこの世界観が濁るように、私は思います。
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「レモンタルト」というタイトル、表紙や文章全体がおしゃれな小説だった。
事前情報確認せずに読んだため、BLだったのは驚いたが心理描写が丁寧で良かった。
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この作品を読むにあたり、俗っぽく言うところの「BLっぽい」雰囲気は前提にあるとして読むことが求められているように思う。主人公(男)が男性に襲われかけたり、また他の男性と関係を持ったりするシーンが何度かある上、主人公もまた義兄に好意を寄せている。その他周りの人間にも「それらしき」描写が多く見受けられる。同性愛を描く作品でよく見かける「同性だから」という理由での葛藤も本作ではないと思われる。
そういう前提のもとで読み進めると、なんとも艶っぽい文章だったように思う。丁寧な地の文と少し荒っぽさのある実際の口調に差があるのもまた良かった。それに加えて、繰り広げられる情景もなかなかドキドキさせられるものであった。
傘や海などのキーワードや曖昧に終わるラストシーンは読者の想像力に委ねられている。切なさと温もりと、ほんの少しのきらめきを感じる素敵な作品だった。
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長野まゆみさんのご本は、可愛いお話と無邪気な残酷さとかあやしさがあるお話があるんだけど、今回はどちらかと言うと後者かな。
無邪気な、ではないけどね。
『チマチマ記』を思い浮かべつつ、あの二人よりも難しそうな二人だなって思った。
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長野さんの作品だから覚悟はしていたけれど、やはり表題通り単純なかわいいお話ではない。確かに主人公の義兄に対する感情は甘酸っぱいが、それ以外の部分が思いのほかぶっ飛んでいる。最初はその衝撃が「おいおい…」という感じでドン引いてしまうが、長野さんの言葉選びや案外冷静な主人公にすらすらと物語が入ってくる。そのギャップが不思議で、どこか心地いい。
亡くなった姉の夫(作品内では義兄と呼ばれている)と暮らす弟は、彼に恋愛感情を抱いている。それは義兄に明かされることはないし、関係が発展することはない。しかし一つ屋根の下に暮らすその環境がなにも発展しない関係性と反比例してもどかしく、読者を悶々とさせる。そして各短編の中で弟は誰かしら男性との関係を描かれる。上司Yや同期Mなど、詳しい名前は途中になってからしか判明しないが、その人物像は詳細に描かれていて、解りやすいのが面白い。他の男に組み敷かれても、弟は冷静に振る舞い、むしろ義兄との関係を縮めることはできないことの方が心中を占めている。しかし義兄はいつまでも義兄で、姉の夫なのだ。そして義兄と姉の思い出のレモンタルトが、彼の甘酸っぱい感情と絶対に埋まらない距離を象徴していて切なさを一層濃縮させる。
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絶妙なタイミングで現れる義兄がずるい!(笑)
姉との思い出、義兄への想い。読んでて始終もどかしく、切なかった。
各話の謎が解明されてるようでされてない、この曖昧な感じが好きです。続きが気になってぐいぐい読めました。
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読み返した。
士の恋が報われてほしいという思いしかない。初めて読んだときもそう思った。でも士は一哉(義兄)のことを決して手に入らないものだと思ってるから。なんてったって“海”だもの。
一哉の中ではなな子(士の亡姉)だけが妻で、彼にとって士は永遠に義弟のままだろうな。亡くなった人間に生きてる人間が勝つのは難しい。
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面白い!
決して交わらない2人ということだけれど…どうだろう。
主人公がいい。あのもやもやしてるところとか若干諦観しているところが。
長野作品に出てくる、飄々としていて底知れず、それでいて溢れ出る品と人情、面倒見の良さを兼ね備えた男性がたまらん。そんな男性は実在しません。
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楽しかった~!でも続きが気になってもだもだしてしまった…もう少しお兄ちゃんでれてもいいと思ってしまうのは、すっきりさわやかに切ないせいでしょうか?(*´ω`)
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叶わない義兄への思い、ちらつく亡き姉。
2つの感情に板挟みになっているうえに会社の立場はとんでもない主人公に「オー人事!オー人事!」と叫びたくなる。
でも、日常に混ざる非日常や主人公の思いが淡々とつづられる文章はさすが長野さんと唸る。
「となりの姉妹」や「箪笥の中」などと同じ系統かな?
買ってよかった
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高校生の時分、図書室に置いてあった同作家の「雨ふらし」が、このなんとも言えない世界に沈み込むきっかけになった。
長野まゆみの作品に共通する、曖昧な部分とはっきりと描写される部分とが絶妙に入り混じった文体。読後感はさっぱりとはしないものの、ふわふわと宙を浮いているような気持ちにしてくれる。
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作家名に惹かれて購入。
前に鳩の栖を読んでいたので内容はある程度予想していたが、それでも予想を超えた設定にへらへらしてしまった。私はこの本の内容にへらへらする種類の人間である。
解説での「秘すれば花」の言葉はこの本にふさわしいと思った。
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綺麗に切り取ったBL。
描写が足りない分、主人公にヤキモキするのが、読みて側としては好き。
場面を貼り合わせても空白が多いので、?が多かったけれど妄想できたので良し。
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叙情的で、あまり今までに読んでこなかった作風。
主人公が職業柄というか、それ以上にさまざまなトラブルに巻き込まれていく中、いつもタイミングよく義兄が現れて助けてくれる。
義兄はどういう生活をすれば、こんなにタイミングよく現れられるんだろう。
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はじまりがとてもすてきだった。
ただ、個人的にはもうちょっと甘い小説が好きなので,主人公に対して社会がつらくて泣いた
ドライブが楽しいものだと嬉しい。
最初の傘がなんだったのかわからなかった。
何度か読んだらわかるかもしれないけど、主人公がセクハラに遭うのを見たくないので考察を探してみます。
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読んだ後の余韻がすごい。はっきりと明言せず、考えさせる形式。でも、義兄が好きってところははっきりわかって良かった。主人公がめっちゃモテるけど肝心な本命とはうまくいかない。義兄が主人公を受け入れるでも拒否るわけでもなくなんとももどかしい。最後の考察で義兄は永遠に手に入らないものの象徴であり、今は亡き姉の思い出に主人公は一生勝てない勝てないというのを見てとても切なく感じた。姉と義兄の思い出の1つとしてレモンタルトがある。主人公がレモンタルトを食べながら義兄への感情を抑えるシーンがグッときた。
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予想以上にライトだった。猫道楽とかよろずとか桜蔵のやつ(タイトル忘れた)とかと同じテイスト。
これ何も知らずに読んだらびっくりするんじゃ?とか思ったけどそっちに重きを置いて読まなければいいのか。
相変わらずわけのわからない厄介ごとに巻き込まれる主人公(今回はゲイ(ゲイ?))、相手は長野先生お得意の絶妙な距離の身内。死んだ姉の旦那。しかも同じ敷地内に住んでる。姉は死んでるからある意味もうどうしても手に入らない人のものの義兄。
主人公の仕事がこれまた都合いいっていうか、ありがとうございますって感じ…役員の公にできない様々な用事を文句言わず請け負う仕事。同僚からは縁故採用と疎まれ事情を知る者からは役員の犬と蔑まれる。
あめふらしとかとは違って、今回の話は全部不思議ではあるけど超常現象的なものはない。あれ?あったっけ… うまいことオチはつく。
「とっておきの料理」で主人公が好意を寄せる相手にひどいことされる場面はヤッター!と思ったけどそのあとの展開があまりにチョロすぎてちょっと興ざめ…笑
全体を通して義兄との距離感がいい。
解説が結構直接的というか、BLって言葉が出てきてアッ…ハイ…って急にパンチ食らった気分になった。自分はそういう選び方してるけど、なんかこういうちゃんとした文庫本だと許される気分になる。
かるーい気分で読める。
Posted by ブクログ
夭逝した姉の配偶者、つまりは義兄とは隣に住む「私」の不思議にまみれた仕事と恋の日常を描く。
「私」が、恋に巻き込まれるたびに白馬の王子様のごとく現れる義兄との間には死者の、姉の匂いがうっすらと漂う筆致は見事。見事、だけど――やはり長野まゆみである。
『雪花草紙』で「ぎゃー」と叫んだことがあることをすっかり忘れていた。この手のジャンルはそこまで得意ではないことを忘れていたわけではなかったのだが、忘れていたわけではなかったのだが手にしっとりとなじむ柔らかな文体でつい最後まで読んでしまったのが流石は長野まゆみであるといったところか。後半になればなるほど心の中の「ぎゃー」の頻度は増していったが、違和感もなく読むことが出来る。作中登場する女性陣が、非常に物わかりが良いのも一つの仕掛けか。
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”私”は義理の兄と二世帯住宅に暮らしている。
会社の重役に与えられる数々の秘密の任務をこなし、奇妙なできごとに巻き込まれながら義兄への思いを募らせていく姿が描かれている。
長野まゆみさんの本、初でしたー
そしてBLを取り上げている作品も初でしたー
ことこまかい描写がなかったので読めました。
普通には起こりえないことが起こっているのに淡々と仕事をこなしている主人公、という印象を受けました。
Posted by ブクログ
地に足がついているようでついていない独特の世界観に引き込まれて一気に読んでしまった。作品のなかに漂う空気や雰囲気がとても好き。
突っ込みどころ満載で腑に落ちないところもたくさんあったのだけれど、それを差し引いてもとても素敵な作品だと思った。
私と義兄の関係性がもどかしくもあり、それがたまらなく魅力的でもあり、この甘酸っぱい作品のタイトルに通ずるのでしょう。