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Posted by ブクログ 2018年01月14日
面白かった!
母子家庭で怒ってばかりの夜の仕事をする母親を持つ「僕」と隣の印刷会社の「真鍋さん」に、宇宙の話などいろいろなことを教えてもらい、真鍋さんは僕のすべてだった。
真鍋さん所有の謎の機械は、透明人間を作る薬製造機だと知った僕は・・・
最初、SFの話かと思ったが、最後は全然違った。
僕の一言で...続きを読む一人で「外国」へと旅立った真鍋さん。
26年後に真鍋さんから届いた手紙には、驚くべき真実が記されていた・・・
それを読んだ母も涙する・・・・
これだけ、前半と後半で小説のイメージが変わるのは初めて。こんなどんでん返しもあるのかと、新鮮でした。
Posted by ブクログ 2021年05月03日
これ本当に児童書なの?って思いながら読みました。昭和52年、母と2人暮らしで友達がいない9歳の「ぼく」にとって、隣に住む親切で物知りな真鍋さんはいつも一緒に過ごし沢山の話をする大切な存在。でも真鍋さんには重い秘密が・・・。
この時代、北朝鮮をユートピアと捉えていた人は、こんな風に語っていたんですね。...続きを読むでも真鍋さんはその国家への信頼を裏切られた。
昭和の雰囲気を懐かしさを混じながらも、ちょっと違う角度から味わえました。
Posted by ブクログ 2014年01月28日
ミステリ界の巨匠・島田荘司の作品。
実は島田荘司の作品をほとんどまともに読んだことがなく、純粋なミステリ作品としては本作がほぼはじめてという点をまず断っておく。
物語は「ヨウちゃん」と呼ばれている人物の視点から語られ、その人物がこうであって欲しいと思っている願望のフィルターを通して描かれているが、そ...続きを読むこはミステリ界の巨匠だけあってきちんとフェアに情報を与えてくれており、元々ミステリーランドという子供向けミステリとして出版されたとはいえ本格派の体裁を整えてあるあたりはさすがである。
ヨウちゃんが語る隣人の「真鍋さん」は何でも出来る人で、いつもヨウちゃんのことを気にかけてくれる優しくて頼れる人だった。彼が語る言葉の端々から、そして昭和52年という時代設定から、おおよそ彼がどんな人なのか、彼が語る国はどこのことなのかは察しがつく。そこからおおよその事件の背景が見えてくるが、明かされる真実は自分としては結構意外で、ヨウちゃんが信じていたものとは別の意味でまんまとだまされた。
真鍋さんはその理想郷と思っていた国から長い手紙をヨウちゃんにくれるが、そこで明かされる真実は結構切なくなる。この物語を通して、僕たちが生きているこの社会は案外捨てたものじゃないし、一生懸命やればきっと報われるんだよという島田荘司からのメッセージが織り込まれているように感じた。
Posted by ブクログ 2013年06月23日
北朝鮮の内情はニュースで聞きかじるくらいしか知識がなかったから、
理想郷が何を指しているのか想像ができなかった。
してやられたと言うか本当にオカルトチックなオチにならなくて良かったと言うか、
ストンと腑に落ちた読後感でしたね。
ただ、金縛り云々の下りは必要あったのかな(笑)
透明人間に対するミス...続きを読むリードを誘いたかったのか、少年期によくある症状を現したかったのか、
そのどちらも兼ねていたのかはわかりませんが、
さしあたってストーリーにあの場面は必要なかったような気もします。
ちょっとあざとかったかもしれないですね。
でも個人的には好きでしたよ。短さもあいまって小さく綺麗にまとまっている感じ。
表題のぶっ飛び具合から社会派小説へのシフトは良し
Posted by ブクログ 2017年07月27日
伊坂先生がタイトルをあげていたので、興味を覚えて読んでみました。
元々は講談社が2003年から2016年にかけて発行していた書籍レーベル『ミステリーランド』の第一回配本。
かつて子どもだったあなたと少年少女のためというのがコンセプトだそうで、元は箱入りクロス装丁だったのだとか。
確かに内容は大人用...続きを読むな感じはしますが子供でも読めて、
そして衝撃を受け、かつ大人になって読み返すとまた違った感想が得られそうです。
島田先生の作品は読み始めたばかりでそんなに多くはまだ読めていませんが
ファンタジックなところから一転して現実に引き戻されて
収束されていく落差が面白いなと思います。
真鍋さんとヨウイチの交流の描写から始まり
心温まるはずのシーンなのにどこか仄暗く、
石塚桜子さんの挿し絵の効果も相俟って
不穏な空気が纏わり付いてくる感じがして、続きが気になって
一気に読んでしまいました。
個人的には、ホテルから消えたという部分と、部屋にいた女の種明かしは期待とは違ったなという感じでした。
昭和の時代でDNAが捜査に使われ始めたばかりの頃とは言え、
窓の埃の有無や蜘蛛の巣がどれぐらいで張られるかぐらいは
一般常識の範疇ではないかと思ってしまいましたし、
目撃者がいないのではなく聞き込みを徹底していなかっただけで
警察の怠慢のように感じました。
ただ、種が明かされるまでの、透明人間がホテルから出て部屋にやってきたのでは、と感じるじわじわくる恐ろしさが良かったです。
自分が子供の頃住んでいた家も、天井が安い木材だったので
節がたくさんあり、模様を眺めて物語を作っていました。
その模様のせいで面白い夢を見たり、悪夢を見たりしたことを思い出しました。
読み終えて、著者のコメントの意味もわかるわけですが、
タイトルについても興味深いものがあります。
単純に印象に残るタイトルではありますが、
本文を読んでから考えてみると、タイトルからは様々な意味が読み取れるように思います。
姿が見えなくなるということには、肉体が透明になることだけでなく
そこに居るのに気に留められないということや、ここには居ないという
意味合いも考えられるでしょう。
英文のタイトルである『The Invisible Man's Virus』もまた、
本文でのウイルスの話や宇宙人の話なども関係してくる他、
Virusにはウイルスの他に道徳・精神上の害毒という意味もあることが
非常に興味深く思われました。
Posted by ブクログ 2016年09月28日
序盤にして彼の正体は察せられていた。
だからこそ透明人間という言葉の喩えるところもぴんときた。
語り手の周囲の人間関係もわかりやすかった。
が、人間消失のトリックがどうしてもわからなかった。
が! トリックなんてなかった!
これは物理トリック得意の島田先生にしては大いに肩すかし。
以上は大人の読...続きを読むみ物として。
子供の読後感を想像すれば、ここまで興醒めで現実べったりな犯行理由に、何と思えばいいのか。
御大は現実の社会情勢を作品に反映させることを信条としている。
小説は具体的なもの、という特性を活かした、訴え、だ。
そして日常生活に潜む暴力性を題材とする点において、村上春樹と通じるとも思う。
が、春樹よりも刺さった棘は、子供が成長するにつれて熱を帯びるのではないか。
トゲトゲのジュブナイル。