【感想・ネタバレ】定本 言語にとって美とはなにかIのレビュー

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ネタバレ

画期的な言語論。
言語をウィットゲンシュタインのように本質的な起源から構想したというよりは言語を意味論的なものとし、表現形式としての単語を解体し、それを文法表現から自己表出(最も自己表出性を帯びたのは感嘆詞)と指示表出(前略 名詞)に分けている。また、彼の美意識によって日本文学から引用しながら作られた表出史なるものは文語体と話体で区別し、前者を自己表出性のある文学と区分し、それぞれ表出史に出てくる文学を解説する試みであるが、これはスゴい。しかし、一読しただけなので、私はまだ、半分も理解できてないだろう。
これは素晴らしい言語論だ。

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2022年01月24日

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『言語にとって美とはなにか』によって、文学の政治による抑圧から解放された。この著作に至る前に、日本共産党批判、社会主義リアリズム批判を著者は成し遂げている。「政治と文学」論争を通じて、「文学」の「自立性」を追求し、時枝誠記の言語理論、三浦つとむの言語理論を援用し、古代から、近代までの文学作品の評価軸を確立した。ただ、歴史社会学派からの批判的な継承に関して、立場は明確だが、記述から不分明な感もある。不思議なことに『平家物語』には一切触れていない。

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2013年10月28日

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「文学の作品や、そのほかの言葉で表現された文章や音声による語りは、一口にいえば指示表出と自己表出で織り出された織物だと言っていい」。

『言語にとって美とはなにか』という命題は、
長年、詩や文学に対峙してきた吉本が、
これらを原理として上昇させようとした意気込みとある種の確信を表している。

彼は、差異性をことさら強調するのではなく、
共通性にこそ着目する。
それは信じて疑わない。

この態度は、しばしば断定的に現われるため、
違和感を感じるかもしれないが、配慮してもなお余りある成果が在る。

この理論に対する正当な批判は存在するのか?

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2012年09月14日

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ー 原始人がはじめて現実の対象を有節音声としてえらびとったとき、発したその音声は意識に反作用をおよぼした。それは一連の意識の波紋をえがいたにちがいない。こういった一連の意識の波紋は、また一連の音声波紋として表出せられたかもしれない。これを、不完全な言語の段階での文だとかんがえれば、わたしたちは、カッシラアにならって、言語の世界でいちばん簡単なのは、常識的にかんがえるような単語ではなく、むしろ文だとおもわれる。

しかし、こういう仮定にそれほど固執するわけではない。原始人たちは、海を眼のまえにはじめてみて〈海(う)〉といっただけかもしれたない。ただこう仮定したのは、一連の音声波一紋の表出が完結するためには、有節音声は、よりおおく意識の自己表出としてのアクセントで発せられるものと、指示表出として発せられるもののどちらかに傾かざるをえないことをいいたかったからだ。もちろん、言語の本質はこのふたつの面をもっているから、いずれのばあいも他を含んであらわれるといえる。 ー

想像していたより分かりやすくて面白い。

最近、ビジネス書とか地政学とかが多かったので、違うジャンルを読みたく、かなり遠めのジャンルに行きました。

とは言え、佐藤優繋がりで、マルクス主義文学論とかも出てくるので無縁ではない。

言語にとって美とはなにかを問うことは、言語と行動の問題、言語が人々に与える感情の問題、言語と戦争の問題、言語と世界内存在の問題を問うことに繋がってくる。

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2022年03月19日

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一巻。まずは言語について、え そこからですか…?ってくらいのところ(それこそ原始人が叫んでいた頃から)から、本当に確かか丁寧に丁寧に固めながら、言葉の意味とは、価値とは、音韻とは、比喩とは、正に冒険と言う感じに根本から問い直して、答えを出してくれる。凄くエキサイティングだし説得力があった。
後半は、イデオロギーや歴史に依らない、表出の変遷だけを追った表出史。主に文学体、話体(自己表出、指示表出)と言う切り口で、これもまた丁寧に言語表現の歴史を追っている。

全篇通して異常な密度。

二巻が楽しみ。

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2011年11月09日

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作家や文学研究に携わる人でなくとも、読書好きな人なら「文学とはなんだろう」という疑問を抱くことがあるだろう。しかしその疑問も私たち一般読者は、作品を読み重ねていくうちに独自の文学観なるものが形成され漠然した答えが導き出されることで解消されてゆくように思う。それは大抵、自分の「好み」がはっきりすることと、名著と評価された作品(一般的な価値基準)を取り入れることである種の(独自の)価値観が形成されるからではないだろうか。
この著書は、研究対象としての文学の捉え方といった堅苦ものではなく(この著書の学術的な価値を批判するわけではない)、文芸作品の読み方の一つの例として私たちに貢献してくれる本だと思う。詩人であり、批評家である吉本隆明の文学観を順をおって知ることは、前述した私達が作り上げてきた価値観を明確なものとする手助けになるだろうと思う。

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2010年12月10日

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日本人が自ら立ち上がり考え抜いた言語論(特にその本質論)はこれしかない。出版当時に学生だった先生から強く薦められ、実際、現代の学生であるぼくにとっても、海が割れるような衝撃だった。また、この本のおかげで時枝誠記を知ったのも大きい。

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2009年10月04日

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