【感想・ネタバレ】山椒大夫・高瀬舟・阿部一族のレビュー

\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

高瀬舟を読んで読書が大好きになりました。
ハッピーエンドの物語しか知らなかった頃に読んだ衝撃的な内容と世の中のままならさを教わったような気がします。

0
2017年03月11日

Posted by ブクログ

渋い。
渋すぎます。

表紙の装丁が素敵な角川文庫版。(手ぬぐい屋「かまわぬ」とのコラボシリーズは、大好きです)

この1冊、面白かった。
レベル高い。さすが、森鴎外さん。有名なだけのことは、アルんですねえ。

「山椒大夫」
「じいさんばあさん」
「最後の一句」
「高瀬舟」
「魚玄機」
「寒山拾得」
「興津弥五右エ門の遺書」
「阿部一族」
「佐橋甚五郎」

というのが収録作品。
好みで言うと、「魚玄機」「興津弥五右エ門の遺書」あたりはそんなにでもなかったです。
「高瀬舟」も、安楽死の問題など有名ですが、改めて再読してみて、他ほど小説としての衝撃はなかったような。

●「山椒大夫」
安寿と厨子王、という別称?で知られる物語。平安時代かくらい。
簡単に言うと、中級貴族の子女が人買いに拉致監禁されて、長男だけが脱走して救われ出世する、というお話。
コレ、森鴎外さん、すごい。
日本語使いとして、わざとこの短編は平易で判りやすい文章。誰でも判ります。児童文学のような語り口。
それでいて、センチメンタルにならずに、悲劇をあおらずに、過酷な物語をザックザクと大根を切ってごろんごろん投げ出すように語ります。
それがまあ、なんともどっきり、なんともズキッと読み手の心を抉る効果になっています。
全体の、ややもするとおとぎ話になるところが、そのキワドイ語り口で、すごく味わいのレベルが高い読み物になっています。

※ちなみに、戦国時代や江戸時代まで、僕らの日本という国では平気で人身売買、拉致労働が行われていたんですね。
その辺りは全く学校の授業で教えませんが、とっても大切なことだと思います。善だ悪だという次元とはまた別に、「数百年まえまで、それが普通に行われていた」という認識。

※で、なんでこの話の題名が「山椒大夫」であるのか?それだけが不思議。「安寿と厨子王」でええやんか...。
 「スター・ウォーズ」のタイトルが「ジャバザハット」だったと考えると、不可思議な思いを共感していただけるか...。

●「じいさんばあさん」
これ、渋すぎます。年老いても仲が良いじいさんばあさんの過ごした過酷な歳月、という話なんですけど。
とにかく、語り口が確信犯的に淡い。渋い。
「えっ」っていう呆気なさの向こうに、じわじわと味わい。
なんていうか…「大自然の素晴らしさ」というタイトルの絵画を見に行ったら、墨で淡く一本の曲線が書いてあって、それが山の稜線なのだった。そんな感じ。
すごい。
こういう地平線を見せられると、現代の挑戦的なブンガクなぞ、泣いて吹っ飛んでしまうような気がします。

●「寒山拾得」
これは更にその俳画的、水墨画的世界を推し進めたもの。ほとんど実験小説と言っても過言ではないというか。
禅問答が小説になったような...。
まあでも、謎なんて無いと言えば、無い。
中国を舞台に、俗物の高級官僚が、高名な禅僧の寒山と拾得を訪問したら...というだけのオハナシ。
これはほんとに、口あんぐりな終わり方(笑)。

●「最後の一句」は、さほどでもない罪で死罪になりそうな男がいて、その娘が「身代わりになりますから父を許して」と奉行所に行く話。
●「阿部一族」は、なんだかちょっとした不幸と偶然が重なって、一族で反逆者となってしまい、死を前提に戦って、やっぱり死んじゃった阿部一族。と、その周辺の武士たち。


乱暴に言うとどっちも、江戸時代の武家社会が官僚化していく中の悲劇をえぐっています。
そしてどちらも、大真面目に悲劇をえがきながら、奥の奥で喜劇だったりします。
官僚化して、実際的ではなくなった人間の組織の馬鹿馬鹿しさ。でもそれが実際に個人を支配していく怖さ。
そんなことでいうと、これは実はものすごく奥が深い。
きっと森鴎外さんも、言うに言えない明治大正の世の中の世知辛さ、あほらしさを反映させていると思います。

●「佐橋甚五郎」
徳川家康がまだ生きている、江戸時代初期。
朝鮮から外交使節が来た。家康が会った。その施設の中に、「かつて徳川家に仕えてた佐橋甚五郎がいた」と、家康。
佐橋甚五郎の履歴。
どうやら、つまり、現代風に言えば。
会社組織、好き嫌い、評価、人事、付き合い、不条理、理不尽、宮使え。
そんなことに嫌気が差して、徳川家を出奔。
国という枠組みまで超えて、自分なりの安息を掴みました。よかったね、という話が、これまた、渋く語られて。
ところがこれはこれで、微かな文のゆらぎの中に、後味としては、
「日本と言うナショナリズムまで含めた、こうあるべきだ、という国家や上層部が押し付ける人生モデルなんて、くそくらえ」
みたいなロック魂が香り立つんですよね。
うーん。ただそれがあまりにも渋く渋く包まれている。その微かさが、もう、快感。

######################

森鴎外さんは、明治の軍人官僚エリートの家に生まれたんですね。
(生まれたときは江戸時代でしたけど)
スーパーエリートでドイツに留学、そこでは、まあ今風に言えばストリッパーの少女とずぶずぶの恋愛になって、故国とエリートコースと血縁家族を捨てる寸前まで行った。

でもそこから挫折して戻ってきた。

それから、諦めたように黙々と、軍医として陸軍の官僚組織を生きて、見合い結婚して一家の家長として全うしました。

ただ、ずーっと兼業で小説家をやっていたんですね。

ドイツ語に堪能で、最先端のヨーロッパの文学を理解して。その上で様々な小説を書いた。

その語り口は、この本に納められているような、戦略的に素朴だったり、戦略的に江戸時代のような文語体だったり。

そして、表層から割れて微かに光芒がこぼれるようにほの見える、世間、俗、官僚、「お上」、「政府」、「国家」、へのロックな反骨精神。

この人は、この人なりに奥が深い。

また別の森鴎外さんを読むのが愉しみです。

まあただ...渋すぎますよ...鴎外さん...ほんと...。なんていうか...口当たりは悪いし、味は苦みとえぐみ。着色料も調味料もゼロ。味が薄い…。
お酒でもファッションでも音楽でも、仕事上の技術でも...ここまで渋いとねえ...判りにくいというか、ほとんど魅力が分かんないだろうなあ...というくらいに渋い...。
根っこかじってるような、なんじゃこりゃ的な味が、どこかで ふわあぁっ! とほのかに深い味わいが広がるような...

これも、40過ぎて再読して良かったなあ、という。
多分、いくつかの短編は昔も読んだんだと思うんですが、記憶がほぼ消失していましたね。多分、当時の自分は、サッパリ面白くなかったんでしょう(笑)

0
2016年02月21日

Posted by ブクログ

右の手には守本尊を捧げ持って、俯伏した時に、それを額に押し当てていた。

(山椒大夫/じいさんばあさん/最後の一句/高瀬舟/魚玄機/寒山拾得/興津弥五右衛門の遺書/阿部一族/佐橋甚五郎)

0
2023年12月31日

Posted by ブクログ

歴史小説ということで、そのような人物がいたのだ。実在したのかと。思う。武士の殉死などは、私には理解できない部分もあった。

0
2022年06月18日

Posted by ブクログ

青空文庫にて、高瀬舟を読んだのだが、読み終わってもぞくぞくとしたままである。森鴎外はやはり綺麗な文を書く。丁寧な言葉を使う登場人物が魅力的に感じた。喜助の弟の死への描写が、生々しく考えただけで身体がゾッとした。思わずゾッとする作品なんてそうない。ここが鴎外の凄いところか。

0
2013年11月18日

Posted by ブクログ

大正元年から大正五年の間に発表された歴史小説9編を収めた本。
「山椒大夫」「じいさんばあさん」「高瀬舟」など、もはや説明不足と言うべきくらいに無駄がなく、重要な登場人物の心理描写が少ない。だがむしろその表現が観察者にとって畏敬すべき何かを強く感じさせる。

0
2012年11月18日

Posted by ブクログ

後半漢字が多すぎるストーリーは、病気の身体を休めるのには、まったく向いてなかった。健康だったら読めたかと言ったら、それも疑問だけど。
「高瀬舟」の話は良かった。足るを知る、という言葉は知ってはいても忘れてしまうことが多いが、このストーリーを読んだことで、今後は、頭の片隅に、夜の舟の上のシーンが蘇ってくるだろう。

0
2023年08月23日

Posted by ブクログ

山椒大夫に売られた安寿と厨子王の姉弟の話。母に再会する涙の話のように覚えていたが、姉の安寿の機転で逃げ延びた厨子王が出世して政道を正しくし、人身売買をやめさせ、そして偶然母に再会という淡々とした話だった.高瀬舟は安楽死を取り上げていて、苦しんで自殺しかけた弟に頼まれ、楽に死なせてあげる喜助の話だが、殺人幇助だが現代でも十分考えさせられる話だ。阿部一族は殉死の矛盾をついた話。同じく主人の跡を追って自害したのに、周りの冷たさ、薄情さは悲劇としか言えない。最後の一句や 寒山捨徳など短い話だけど ふっと笑える話。森鴎外の作品は、現代文に慣れた僕には最初読みづらかったが、脚注を見ながら読み進めると面白いと思った。でも、正直短編だから読めたのだとおもう。

0
2022年10月25日

Posted by ブクログ

難しい。歴史小説に傾倒していたらしいが、流石に読みにくい。注釈がわからないことも多いくらいである。

辛うじて読めたものからは、どの時代の人間の描写にも通ずるところはあるということを感じる程度。

作品名と作者の名前だけを見聞きしていてやっとその文章を読んだ高瀬舟はこういうことかと少し驚いたが、高瀬舟でも阿部一族でも山椒大夫でも、どこでも、なんて今より決意の硬い人間たちであり、価値というか、事象の貴重さみたいなものについての理解のない、「昔の情報の人」という感覚。ただし普遍性はあって、考えることはある。

0
2022年07月02日

Posted by ブクログ

高瀬舟だけのために購入。
この話、短いけど深い。
・お金の価値
・死への考え方
ぎゅっと凝縮していて考えさせられる。


安倍一族と、山椒大夫も読みたいのだけど、ふりがながふってあって、読みづらく。
別の本を購入しようと思う。

0
2021年04月07日

Posted by ブクログ

舞姫が旧かな使いで苦労したイメージばかりが強かった森鴎外。これに収められているのは晩年の作品だそうで、思いの外読みすかった。全体的に死の色が濃いい。解説によると明治天皇の崩御、乃木対象の死が影響しているとか。阿部一族の要領がいいんだか悪いんだかわからない阿部弥一右衛門。可愛げがなかったんだろうな。上司にも同僚にも認められず、意地を張りすぎた男とその一族。折れ所間違えるとろくなことが起きないわけで。

0
2020年11月19日

Posted by ブクログ

 歴史小説としてみれば、史実にそぐわないだろう点もあるが、当時の武士の心境が見事に現れていると感じています。
 森鴎外の作品のなかでも特に好きなものが詰まっている一冊です。

0
2020年04月25日

Posted by ブクログ

山椒大夫 若い母が人売りに騙されて、幼い子供達と引き離される。安寿と厨子王は山椒大夫に買われ、奴隷となった。兄弟愛と幼い姉の覚悟が切ない。最後は良かった、と思うけれど、やはり悲しい。ありそうなお話。

高瀬舟 死にそうで苦しいから死にたい、と言う人を殺すことは、罪か。現代でも話題になる安楽死の問題。
罪人となった男は、むしろすっきりしているようだ。幸せになれるといいと思った。

阿部一族 読みづらく難しい。細川忠利の側近が生前に殉死を許されれば、忠利の死後に切腹できる。しかし後継の支えになって欲しいからと殉死を許されなければ、それはそれで周りの目が厳しいらしい。大変だなあ。
結局許されていないのに自ら切腹した父のために、阿部一族は日陰に追いやられることとなった。権勢衰えついにはお咎めを受け殺されることとなるも、阿部一族は一家揃って対抗し戦った。阿部一族が、落ちぶれた末に凄惨な最期を迎える様が異様に記憶に残った。

0
2016年01月24日

Posted by ブクログ

山椒大夫・高瀬舟・阿部一族の3作のみ読み終えた。
さすが森鴎外。圧巻の語彙力である。
無駄が無く、私が過去に読んだ、近代文学作者の中で一番の優雅さが伺える。

ただ、情景描写しかしておらず、心理描写がないという点が、自然主義文学を中心に読み進めてきた私にとっては、物足りなさを感じた。

兎角、夏目漱石と並び称される、森鴎外とは一体どのような作家なのかを知るという目的で読み進めたため、それは十分に果たされた。
また時を置いて、他作も読もうと思う。

0
2015年03月06日

Posted by ブクログ

 この作品の時代は、平安時代だそうです。(作中には書かれていません)
 僕らの時代(高校生頃まで)に、『舞姫』と共に現代国語の教材として使われていたそうなんです。もしかして、習ったかもしれません。でも、記憶がないのです。
 何しろ現代国語の授業が大嫌いで、授業中は窓の外を眺めていたからです。(笑) だから何で今更って言う感じなのです。
 この年になってこの作品を読んでいると、純文学と言うよりは歴史小説チックな感覚があります。
 初出は大正四年で、『高瀬舟』は大正五年ですから時代背景から考えると近代日本の成長期ではなかったのかな・・・なるほど、時代を置き換えて読んでみると、この小説は国にとって成長期ではあったけれど、国民にとっては物造りの大量生産を強いられたかの様なイメージを連想するのです。
 この作品が、何故学校の教材に選ばれたかについては、教育の思想的判断かもしれません。ネットで調べてみると、この作品の書評は数多くありますが、鴎外先生の伝えたかったものの真意は分かりません。
 もしかしたら、辛いだろうなと思う時代の風刺なのかもしれません。
でも、その風刺が真意ならば検閲されていたでしょうね。
この作品の鴎外先生自身の解説本がありますか?

0
2013年10月17日

Posted by ブクログ

ネタバレ

教科書に載っていた『舞姫』以来久しぶりの森鴎外作品。表紙がきれいで、見ていて飽きない。今回は以下の3作品を読みました。

『山椒大夫』…正直、なんだかよくわからなかった。当時の人買いの風習だとか、奴隷として働くくらいなら入水しようという考え方?信仰の大切さ?姉弟愛?いろいろあるだろうけど、その時々の生き方を書いているのだろうか。読む人次第なのかな。
『高瀬舟』…この中にある『附高瀬舟縁起』にも書いてあるけど、安楽死と、兄弟愛、財産に関する考えかたを描いている。特に、財産に関する考えかた(貰っている量が違うだけで、財産が残らないのなら変わりは無い。足りなくても、それで満足する心持)は勉強になった。あと、自分でも、兄弟に迷惑をかけるくらいなら死を選ぶことが出来るのだろうか。兄弟愛について考えさせられた。
『阿部一族』…殉死についてを書いている。殉死については、明治天皇が逝去したときの乃木希典のイメージしかなかったが、武士の時代には一般的な風習だったのか。これについては授業で使えそう。「武士は上が認めたことをしてこそ意義がある。そうでないなら犬死だ」という考え方は、面白く感じた。そして、急に話が展開し、阿部一族の話になる。面白かったが、最期の部分で何を描きたかったのだろうか。考えていく必要があると感じた。

今回はこの有名なこの3作品にしました。この人は歴史による倫理観の違いを読んでいくと面白いのかもしれない。意義として、昔の色々なエピソードを、読みやすく現代化したことに成果があるのかな。もっと勉強しなければ。

0
2013年11月09日

「小説」ランキング