【感想・ネタバレ】兎の眼のレビュー

「最近の若いのは」という言葉をよく耳にする。
実際に使ったことがある人も、少なくないだろう。

言葉こそ違えど同じニュアンスの文言は、明治の文豪たちの作品にも垣間見られる。
つまり、この言葉は昔からずっと、時代毎の若者が浴びてきた罵倒の言葉である。
では、現代に生きる若者は、明治に生きた若者より相当質が落ちているのであろうか。

決してそんなことはない。
そして、悪いのは子どもではない。
悪いのは、いつの時代もその状況を作り出した大人である。

どれぐらい子どものことを知っているか。
その心に直接的な関心を持って接しているか。
そこに生きるかけがえのない命を心底大事に想っているか、また、扱っているか。

本書は児童文学ですが、大人の方こそ読むべき作品です。
「美しい心」とは何なのか、「生きる」って何なのか。
そして、生きていく上で、また、人と接する上で、一番大切なことを本書は学ばせてくれます。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

ネタバレ

「人間が美しくあるために抵抗の精神をわすれてはいけません」
「そんなだれでもやるようなことはやるな、たちまち人が困るようなことをとくとくとしてやるな。どんなに苦しくてもこの仕事をやりぬけ。それが抵抗というものじゃ。」

心に残った言葉です。気に食わないからやらない、そんなことをしていた自分が恥ずかしい。やり抜く、それは自分への抵抗。卑怯で怠ける自分への抵抗。私も善財童子の美しさ、バクじいさんの優しさがほしい。

0
2024年02月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

"「学校の先生をやめます。きょうから、ただのオッサンになります。さようなら」"。この後書に辿り着くために読み始めました。
学校に通う中で出会うひとつひとつの出来事に触れ、向き合い、少しずつ逞しくなる小谷先生。子供達の成長がみずみずしくもあり、また、最後の闘いは何か人間の根本に触れているようで、心にシンとくるものがありました。心の素直さ、が描かれていました。

1番心が振れたのは、鉄三ちゃんの書いた文章を小谷先生が読めたこと。ふたりの関係の表れなのだなと。

少しずつでも毎日を積み重ねて生まれたつながりの強さは、彼らの等身大の姿でもありながらひとつ教科書のように尊かったです。
もういい大人になってしまいましたが、灰谷先生の教育者としての姿に童心に帰るような気持ちでもありました。

0
2024年01月27日

Posted by ブクログ

読んでいるあいだ、自分が小学生だった頃に、タイムスリップしました。
自分が小学生のときに出会ったできごとや先生の対応、学校の帰り道の風景、埃っぽさと、子どもたちの汗のにおいや笑い声と一緒に、完全に小説の世界にいました。
本当に純粋なものに触れたときの、感動だけではない苦しさも味わいました。
素晴らしい世界観を読むことができました。
また必ず読もうと思います。
好きな本は?と聞かれたときの返答の一冊に仲間入りしました。

0
2023年08月21日

Posted by ブクログ

相手の立場、事情、気持ちを汲む。
その為に自分が出来る事を考える。
至って単純なのに、日々埋もれさせてしまっている事に、小谷先生や足立先生、子ども達はそれぞれの形でぶつかり、表現し、仲間としての信頼と思いやりを育んでいく。
それは、いくら時代が変わったとしてもあてはまる大切な心の在り方ではないでしょうか。
小谷先生が教育者として、一人の人間として成長していくにつれ、夫との”生き方の違い”は誤魔化しのきかないものとなってしまいました。
それが幸か不幸か、それを決めるのも自身の手にかかっているのでしょう。
日々生きていると、たくさんの感情が生まれ、付き纏います。
その沢山の中から、喜びと哀しみ、この二つを同じ思いで理解し合える事が何より大切だと考えます。
人の幸せと痛みに寄り添える心を育んでいきたい。
読書中、何度も何度も涙で目が滲んだのは、無垢だったかつての自分を懐かしむ気持ち、理想と違う自分への悔しさ、胸を打たれる優しさ...この本からいろんなものを感じ取ったから。
自分にとってかけがえのない時間をくれた本です。
出会えて良かった。

0
2023年08月12日

Posted by ブクログ

先生のキャラクターは人それぞれ多々あるけど、この作品では、各先生が誰を主語にして考えているかが、はっきり分かる。自分たちの身のためなのか、子供達のためなのか。

視座が高くなると、こんなにも子供達を信頼して待つことができるようになるのか。それを小谷先生が子供達と関わりながら成長していく中で、視座が高くなるにつれて言動が変わっていくのがよく分かる。

誰かを想い、誰かのために動く、こんな教育を小学校の頃から本気で取り組めていたらよかったなと心から思いました。

時代を経ても同じ課題を感じさせるこの作品は、もう一度読んだら、もう一歩深い部分で、西大寺の善財童子との関連を何か読み解けそうな気がする。

0
2023年07月28日

Posted by ブクログ

児童文学だけど、大人にもオススメです。登場人物がみんな生き生きしていて一緒になって悩んだり怒ったりしちゃう。映像化作品もあるらしいのですが、未視聴。いつか観てみたいです。

0
2023年05月18日

Posted by ブクログ

素敵な教育者、素直で綺麗な心の子供、ちゃんとそれを見守る大人、素直に考え改める大人、そして体裁と利己的な大多数の「大人」。自分は残念な後者であろうと思い哀しくなる。大人が読むべき本だった。

0
2023年04月10日

Posted by ブクログ

古い作品だが、読み込む中でその世界観に入り込み今の時代でも感動を与えてくれる。昔だからではなく、今でも同様の問題や大事な考え方のヒントがあった。
鉄三や処理場の子供達の中に宝物があった。子供に必死に向き合った教師達から葛藤の中から得られる大事なものや人生の尊さも感じた。

0
2023年03月05日

Posted by ブクログ

大学を出たばかりの新任教師・小谷芙美先生が受け持ったのは、学校では一言も口をきこうとせずハエを可愛がっているのが原因でトラブルを起こしている一年生・鉄三。
決して心を開かない鉄三に打ちのめされる小谷先生だったが、鉄三の祖父・バクじいさんや同僚の「教員ヤクザ」足立先生、そして学校の子どもたちとのふれ合いの中で、苦しみながらも鉄三と向き合おうと決意する。
そして小谷先生は次第に、鉄三の中に隠された可能性の豊かさに気付いていくのだった。鉄三のことを知るためにハエのことを勉強していく中で、鉄三はバイ菌のついているハエを飼わないことやハエ博士と呼ばれるくらいハエに詳しいことを知る。鉄三が興味あるハエの研究を小谷先生が手伝う中で、字や絵を書いたり勉強するようになった。
小谷先生は、鉄三と暮らすバク爺さんの壮絶な過去を知る。小谷先生は、鉄三の他の子の家をまわって子供の勉強をみたりするようになった。
伊藤みな子という走るのが好きな女の子が、小谷学級に転入してくる。みな子は自分のものと他人のものの区別がつかないので、隣の子の給食をとって食べたりする。
小谷先生は小谷学級の子と相談して、交代でみな子の世話役をするみな子当番をすることになった。
鉄三のハエの研究が、近くのハム工場のハエ対策に役立った。ゴミ処理場の移転に反対した子供がストライキしたり、小谷先生たちも子供たちと戦う。
学校と家庭の荒廃が叫ばれる現在、真の教育の意味を改めて問いかける。すべての人の魂に、生涯消えない圧倒的な感動を刻みつける、灰谷健次郎の代表作。 2006年11月に逝去された、故灰谷健次郎氏の文壇デビュー作。
1997年の神戸連続児童殺傷事件の報道姿勢に対して新潮社からの版権引き上げなど、政治的な立ち位置は賛否両論あろうが、本作について言えば、日本における児童文学の金字塔であると断言できる。
共に助け合い暮らしていく中で、個人個人が人間的に成長出来るし世界が良くなっていく。教育とは、育った環境が違う者同士が学び合うもの。
優しさとは、苦労や喜びを分かち合うこと、寄り添うことであることそして死んだ生き物の命に感謝をして生きることであることを、バク爺さんは拷問にあって裏切り死なせた親友の命を、足立先生は貧しさから子供の頃一緒にどろぼうした兄貴の命を背負い生きる生き方やゴミ処理場の子供たちの優しさとたくましさを通して描かれていて、時代を越えて読み継がれるべき児童文学の傑作です。
「人間が美しくあるためには抵抗の精神をわすれてはなりません」

0
2022年12月24日

Posted by ブクログ

あの時代の力強い子どもたちや熱意のある教師たちの暮らしが伝わってきて迫力に圧倒された。みんながとても一生懸命に生きている。

0
2022年10月29日

Posted by ブクログ

小学生の頃に読み耽った灰谷健次郎さんが、今の本屋の店頭にあった事がもの凄く嬉しくて購入

ほんと灰谷さんは子どもの主体性を蔑ろにせずに教育、また寄り添う事で学んだ人だったんだな

0
2022年09月06日

Posted by ブクログ

子供の頃この本を読んで読書感想文を書いたことを覚えていますが、内容の記憶は「ハエが好きな男の子と若い女の先生のお話」ということぐらい。角川文庫の企画でかわいい手ぬぐい柄のカバーがかけられていて、なんとなくもう一回読んでみたくなりました。
読み返してみると、ハエを飼っている鉄三以外にもかわいらしい子供たちがたくさん出てきて、新卒で医者の娘である小谷先生が泣きながら傷つきながらも先生として精一杯この子たちと関わっていく気持ちがよくわかります。鉄三と小谷先生が少しずつ心を通わせていく様子はしみじみとうれしくほほえましいです。
子供たちだけでなく、その保護者や小学校の先生たちもいきいきとキャラクターが描き分けられていて、その背中に負っているストーリーにもぐっときます。特に鉄三の祖父、バクじいさんの過去には胸が詰まりました。
登場人物全員のストーリーが語られるわけではないけれど、誰にとってもその人の人生は一分の一のものだと改めて思いました。
物語の後半で、鉄三やその他の子供たちが暮らすごみ処理所の移転問題が持ち上がります。そこに暮らす大人たちはごみ処理所で働いていて、処理所が移転すると転居せねばならず、子供たちは慣れ親しんだ小学校を離れ、転校を余儀なくされる。しかも新しい処理所は道路が整備されておらず子供たちの安全が確保されない。移転説明会でこの安全面での懸念について大人が役所の職員を問いただしたときに職員が言い返した言葉
「きょうび、犬でも車をよける」
を読んだとき、子供時代この言葉を読んだときの衝撃がよみがえりました。ああ、そうだ、あの時もこの言葉にはすごく頭にきた…

自分の子供時代に刊行されて読んだ物語が、もはや古典のように感じられることにも驚きましたが、子供時代に読んだ本を大人になってもう一度読むとこんなに面白いのか!ということにも驚きました。

0
2022年08月02日

Posted by ブクログ

高度経済成長期の阪神工業地帯。新米の女性教師、小谷先生は学校ではまったく口をきかず、時には他人に暴力を振るってしまう鉄三少年の心をなんとか開かせようと悪戦苦闘する。
心を閉ざし、周りから理解されない者にも向けられる優しい眼差し。もちろん暴力を肯定するものではないが、粘り強く鉄三と向き合う小谷先生の奮闘を通して作者が伝えたかったのは人を信じることの大切さだろう。令和の今こそ、若い世代に是非読んでもらいたい作品だ。

0
2022年07月28日

購入済み

出会えて良かった

灰谷さんの名前は知っていても児童文学の認識で、著作を手に取ることはなかった。偶然とはいえ、この本との出会いは人生の喜びである。まさに読まずに死ねるかであった。

0
2022年03月16日

Posted by ブクログ

祖父母世代の学校、先生、生徒のリアル。
先生には今よりもずっとプライベートはないし、
学校と生徒、保護者の距離もかなり近い。
だからこそぶつかるし、協力して助け合って生きていく。
22歳の箱入り娘の小谷先生が、全力で鉄三やみな子ちゃんにぶつかっていくのが愛おしい。
今となっては考えられないけれど
の時代の方々のおかげでいまの日本、いまの教育があるんだと思えた!

0
2022年02月13日

Posted by ブクログ

とある経営者の方がお勧めしていたため、興味を持って読んでみた。本の中で、小谷先生や足立先生が子供たちのために奔走する姿は見ていて応援したくなる。また、子供たちの純粋さには思わず涙しそうになった。
また、マネジメントの視点からこの本を考察してみると、優秀なリーダーとは、異分子を排除するのではなく、異分子の特性を理解し、組織の中で上手く作用させることができるリーダーなのではないかと感じた。小谷先生は鉄三やえつこを排除することなく、組織の中で上手く作用させて、クラスを盛り上げていた。リーダーとはかくあるべきだと改めて思った。

0
2021年10月08日

Posted by ブクログ

母に勧められて読んだ本でしたが多分今までに読んだ本で一番泣きました。気軽に読める本ではありませんが読むべき本だな、と思いました。

0
2021年10月01日

購入済み

何回読んだだろう

引っ越しの時失くしてしまった。灰谷健次郎の文庫本はほとんど残っているのに
「兎の目」が無くなっていた。
しっかり覚えているが、やはり感動を新たにした。自分自身、教職歴34年。管理職を目指すことなく、子供と多く接した。同感する事が、多々ある。 

0
2017年11月06日

HL

購入済み

久しぶりに涙腺が緩みました。

0
2013年07月22日

Posted by ブクログ

一気読みしてしまった。(会社の昼休みに読んでいたら、気づいたら休憩時間超していた。)
人って、人間ってなんだろう。まだ、覚悟を持って生きるのに足りるだろうか。目の前の人を、人としてちゃんと見ているだろうか。私と同じく、生きている人だって、分かっているかな。
うつくしい人って、

0
2023年10月25日

Posted by ブクログ

とにかくジャケットが良い。持っているのに何度も手に取ってしまいます。

そして小谷先生の言葉遣いが、またたまらなく良い。いまや時代言葉なのでしょうが、全てをひっくるめて、これほど会ってみたいと感じてしまう主人公は、小谷先生の他になかなかいません。

0
2023年06月18日

Posted by ブクログ

教員になるなら読んだ方がいいのかなと思って買っていた本。

いよいよ1ヶ月を切り……というところでようやく手をつけた。

足立先生、かなり好き。
試行錯誤しながら子どもと必死に向き合おうとする小谷先生のようにありたい

0
2023年03月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

1974年に出版された小学校の新任女性教師に関するお話。

もう50年近く前に書かれた本なので今とはかなり時代背景が違いますし、実際に教育現場で働いている方から見ればかなり理想論過ぎるところもあるかとは思います。ただ、それでもやっぱり非常に良い本だと思いました☆

現実問題として、今の教師が小谷先生や足立先生のような教育をする事は無理だと思います。ただ、少なくとも小学校や中学校では、勉強を教えるだけでなく、人としての思いやりの心を大事にする教育を重視していって欲しいなと思いました。

0
2022年12月23日

Posted by ブクログ

新人教員の小谷先生と塵芥処理場の子どもたち。ハエ博士の鉄三。バク爺さん。教員になる人にぜひ読んでほしい一冊。

0
2022年12月05日

Posted by ブクログ

新任の小谷先生と子どもたちとのやりとりや成長にいちいちうるうるした。

人のことは表面だけみていてもさっぱりわからない。行動にはそれなりの理由がある。鉄三やミナコ。いろいろなこどもたちがいていろんな立場のおやがいる。

0
2022年11月26日

Posted by ブクログ

読んで良かったです。対ヒトというのがどういうことか。難しいし誰でもできることではないけれど小谷先生の姿に見習いたいところがたくさんあった。

0
2022年08月18日

Posted by ブクログ

尖り狂っていた自分と、恩師を投影して読んでしまいました。足立先生は松本大洋の「サニー」で出てきてるような気がして嬉しいです。

0
2021年09月29日

購入済み

ほっこりと人間的に成長できる

担任の若い先生・子供たちが、問題児との交流を通してさまざまな困難を乗り越えながら、その親たちを含め、まわりの皆が人間的に成長していく過程が心地よい。

0
2018年08月20日

Posted by ブクログ

国語の教科書を思わせるような本でした。良いことと悪いことは綺麗に線を引くことができなくて、自分と相手両方の視点から、問題を把握していくことが大切だと感じました。小谷先生の生き方はかっこいいと思います。

0
2023年09月29日

Posted by ブクログ

昔の話。
伝えたいことや感じ取ってほしいことは、きっと素晴らしいのだろうけど、個人的には国語の教科書っぽいなと思った。

0
2022年07月30日

Posted by ブクログ

友だちが送ってくれた一冊。
初心に戻って考えさせられた作品。

昔の作品?子どもにも読みやすいようにか、所々平仮名で登場する文章に違和感を感じ、なかなかスムーズに読めませんでした。
現代の学校現場とのギャップとの違いにも違和感を感じて、ようやく読み切れました。

子どもたちを第一に考えることは昔も今も変わらないということです。

0
2022年06月25日

Posted by ブクログ

初めて灰谷健次郎の作品に触れる。昔の作品で読みにくいのかなと懸念があったけど、全くそんなことない。サクサク読めた。
鉄三のハエを育てるという趣味に、最初は理解ができなかった。でも読んでいるうちに引き込まれた。
「芸は身を助ける」
鉄三はコレを体現している。でも、その能力を発見できたのは、担任の小谷先生の気長な観察力があったからだ。小谷先生の生徒に体当たりで向き合っていく姿勢に感動した。

0
2022年06月21日

Posted by ブクログ

つまらない作品とは決して思わない。
新人の先生たちが生徒たちのために奮闘する、それ自体は素敵なんだけれど…
「先生」が書いた話だな、と思ってしまった。
不条理なことなんて結局起こらないんだよ、
先生ががんばって子供たちもついてきてみんなハッピーだね…って
いかにも先生が書きそうなお話。

0
2022年03月20日

Posted by ブクログ

あれ? バーコードで登録したのに全く違う表紙が出てきたぞ。
ま、こっちの方がいいや。
 
小学校の新任教師、小谷芙美が生徒たち、その親、同僚と接する中で、互いに成長してゆく物語。
 
昭和初期~中期かな、貧しくとも逞しい子供たちに接するうちに、お嬢様だった主人公が逞しくなり、子供たちにも良い影響を与えるようになってゆく。
 
楽しかった。
これもブグログでどなたかのレビューを読んで購入した作品。
ありがとう。

0
2022年02月20日

「小説」ランキング