【感想・ネタバレ】開国前夜―田沼時代の輝き―のレビュー

\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ 2013年05月04日

否定されたもう1つの日本史。田沼がうまくいってれば今も徳川幕府は形を変えて存在していたのかもしれない。

0

Posted by ブクログ 2011年12月18日

池玉瀾や只野真葛、工藤平助という人物の存在を初めて知った。

加えて本書は、明治維新を考える上でも参考になる部分が多かった。

よって今回の読書を益としたい。

0

Posted by ブクログ 2010年07月10日

”風雲児たち”のファンならば特別目新しいワケではないんだけれど
やはり田沼意次とその時代の再評価は嬉しい♪

0

Posted by ブクログ 2011年05月22日

 本書は主に18世紀後半を舞台として活躍した政治家から文人まで数人を取り上げ江戸後期に於ける明治維新(近代化)を準備した人々(という解釈)を活写するとともにその時代の様子を描写した書である。

 本書タイトルで「田沼意次の輝き」とあるが、田沼意次に関する記述はそれほど多くはない。田沼意次に関しては全...続きを読む6章のうちの1章を割いている程度の文章量である。

 田沼意次はおそらくもっとも広く認識されている人物像としては「収賄政治家で、後々それが為失脚する」という印象ではないだろうか?しかし、本書では「蝦夷開発、重商主義、開国貿易」等々改革派の政治家として描かれている。本書だけでは田沼意次の人物像は本当の所いかに?という観点で見るにはあまりにも内容が薄いが、本書では「開国前夜」の描写が主である為に仕方ないところであろうか。

 田沼意次に関してもっと詳しく知りたい方は他の書物を探すことをお勧めする。

 本書で紹介される主な人物は田沼意次以外に「平賀源内」「杉田玄白」「島津重豪」「池大雅」「玉瀾」「只野真葛」「工藤平助」「最上徳内」らである。ここで紹介される彼(彼女)らはほぼ田沼時代と同時代人である。以下に主な描写内容を示したい。

 平賀源内は主に博物学者として活躍するが、鉱山開発や科学者、文人等多芸多才な人物として紹介される。
 
 杉田玄白といえば、前野良沢、中川淳庵らとともに「ターヘル・アナトミア」というオランダの医書を翻訳して日本語で出版するまでの経緯を中心にして記述されている。その翻訳活動の主な動機として、「ターヘル・アナトミア」を入手したばかりの杉田玄白が、ちょうど死刑囚の腑分けを立会い観察する機会に恵まれ、入手した書物に示された人体の各内臓等の描写が事実と一致することを確認し並々ならぬ衝撃を覚えたことをあげている。「蘭学事始」にて杉田玄白は「さてさて今日の実験、一々驚き入る。且つこれまで心付かざるは恥づべきことなり。苟しくも医の業を以て互いに主君主君に仕ふる身にして、その術の基本とすべき吾人の形態の真形をも知らず、今まで一日一日とこの業を勤め来たりしは面目もなき次第なり。」と述懐していることからも想像される。本書で取上げられた事はやはり歴史的に有名な出来事であるだけでなく、医学的見地からみた「実証科学」の夜明け、すなわち近代の夜明けとしての象徴であるからであろうか。

 島津重豪は薩摩藩藩主である。薩摩藩に暗君なしと称されるほど代々名君を輩出してきた藩であるが、彼も例外にもれず18世紀後半の田沼時代に改革派、新しいもの好きとして描写されており、89歳の天寿を全うするのであるが、曾孫(孫ではない!)の島津斉彬(幕末に活躍する藩主である)を65歳にして得ている。恐らく斉彬にも少なからず影響を及ぼしたであろうことにも触れられている。
 
 池大雅と玉瀾は「近世奇人伝」なる書物に取上げられている所謂当時の常識から計ったところの「非常識」人に列せられている夫婦であるが、その生涯の概略を綴って江戸後期の雰囲気の一側面を伝えようとしている。

 只野真葛は「幼くして国学者の荷田春満の姪、荷田蒼生子に古典を学び、十六歳のときにはじめて書いた和文が賀茂真淵の高弟村田春海に賞賛され、その才能を認められた。父の平助(工藤平助)は、長崎のオランダ大通詞吉雄幸作や、前野良沢、大槻玄沢、桂川甫周などの蘭学者とも親交があったので、いつも来客であふれ「築地の梁山泊」といわれていた。真葛はかれらの話を見聞きして、世界に視野を広げ、外国の新知識を吸収していった」 と紹介されているとおり恵まれた環境を背景に成長していくが、大人になるころには家運が傾き近親者が次々と病死等して自身も良縁に恵まれず”自立した女性”としての生涯を送った様子が描写されている。著者に関して多くを知らないので推測であるが、個人的な感想としてこの人物をあえて本書「開国前夜」で取上げるのかはもう一つ理解し難いが、この人物を取上げた理由は著者自身のイデオロギーも関連しているのではないかと感じた。

 工藤平助、最上徳内に関しては主に幕命による蝦夷探検、蝦夷調査で重要な役割を果たした人物としてその探検・調査に至る経緯や様子の概略を記述しているが、江戸後期の蝦夷開発や調査に関して、またロシアとの関係等はそれだけで一冊を費やして描写している小説や記録も多数あるのでそちらをみたほうがよりわかりやすいかもしれない。

 本書ではあくまでも開国前夜の江戸時代後期の様子を総合的に感じる一助にしたいと思う読者にはお勧めするが、各事例の事実関係に関しては他の書籍も参考にしなかれば、とても「これは事実関係に十分肉薄している」と理解するには薄い内容であると感じる。

 最後に、本書は事実関係の詳細よりも、明治時代に開国して一気に日本が中世的な世界から科学技術や医術等々の最先端を怒涛のように導入したという先入観をお持ちの方のイメージを打破する効果が大きいだろう。明治期に一気に成長する下準備が江戸時代を通じて着々と積み重ねられていたのである。という考え方の一端を感じることができる一冊である。

0

「学術・語学」ランキング