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外しの美学。
ほんとうに、クリスティーは人の思い込みを見越して、物語を構成する才に秀でていたのだと思う。
被害者の人物像を明確にするための装飾かと思いきや、犯人の動機と直結するという、、お見事。完全に見逃していました。
こんなに凄みのある物語が有名にならない、そのことこそ、クリスティー作品の裾野の広さでもあるかもしれない。
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『ナイルに死す』に続く、エルキュール・ポアロの中東シリーズ。とある家族の不穏な人間関係が事件につながる……。
事件が起こるまで、の第一部が面白い。前作同様、中東の旅情を背景に、独特な個性を持つキャラクターたちの人間関係的な攻防が興味を引く。第二部からはポアロの独壇場。最後の最後まで誰が犯人かわからない、というか話がどう転ぶかわからない、二転三転後のまさかの展開は、まいどまいどながら振り回されるのが楽しい。何かの教訓を得られる人間考察も毎度のことだが、本作はさらなるおまけ付き。このラストは良き。
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負けが続いているのでこのあたりでギャフンと言わせたい。ボイントン一家は少しオカシイ。理由は夫人を中心とした家族で、長男、その嫁、次男、長女、次女が疲弊している。理由はボイントン夫人がサディスティックのため、家族一家をマインドコントロールし、夫人が楽しんでいる。しかし、夫人が殺される。夫人を殺したのは一家の誰かか?医師、女医、女性代議士も登場しすべてが怪しい。夫人を殺せた時間はほんのわずか。クリスティのミスリードが続く。誰だ?誰だ~!と夢中になって読む。予想した時にはその人は出ていなかった~~そりゃアカン。⑤
久しぶりにクリスティーが読みたくなって購入しました。今の時代のエログロやバイオレンスの無い、上品な、しかし人の思惑や怨念のドロドロと渦巻くクリスティーワールドで大満足です。
犯人はそうくるか!でしたし、最後はみんなが上手くいく大団円で読んでいてスッキリしました。
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"いいかい、彼女を殺してしまわなきゃいけないんだよ"
出だしからかなり不穏な雰囲気で始まったこの作品は、母が常に睨みをきかせて抑圧されたボイントン家の兄弟達の物語でした。
一人一人の悩みや戸惑い、心は揺れているのだけれども逃げ出せない、閉鎖的な描写にとても不安になりながら、体力を持っていかれながら、少しずつ読みました。
最もやきもきさせられたのは長男のレノックスです。
自由になろうとさえ決断すれば、家を飛び出せる年齢である上に、妻のネイディーンという背中を押してくれる人が側にいたのに、現状を変えようとしませんでした。本当の彼は、一見何も感じないように見えて、心の奥ではどうすべきか分かっていたようなのですが…読んでいてうずうずしていました。
ポアロの探偵としての活躍を見るまではなかなかページ数があって、かなり焦らされます。しかし、数々の証言から、事実をふるいにかけていく手腕は今回もお見事でした。
個人的に、今回の犯人は思いもよりませんでした。
毎回予想は外れるのですが、"予想外"の種類が違っていた気がしました。
なんというか…今回は、クリスティお決まりの流れから見る犯人、という観点からは少しずれていたように感じました。そういった意味合いでは、『青列車の秘密』に似ていたかも?
それから、ジネヴラがとっても危なげで不安定で、可愛かったです。この作品で一番好きな女の子です。
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クリスティー文庫17巻!
誰もが真実を語らない。なのにその中から真実を探り出すポアロの思考に舌を巻きました
紙に書いて色々検証するも、訳わからなくなり断念。
クリスティの緻密な描写に毎回脱帽と尊敬の念が絶えません!
次回のポアロのクリスマスは、打って変わって凄惨なものだそう。今から楽しみで仕方ない
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久々のクリスティ。支配的な老女が殺され、殺人が疑われる。殺人が起こるまでは丹念な老女の家族の描写が続く。
事件が起こってからはポアロの尋問タイムの始まり。関係者の証言を組み合わせてから事件の真相を暴く。クリスティらしいミスリードで犯人らしき人が次々と変わるとても読み応えのある一冊だった。
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もし、隣の人の話がうっかり聞こえてしまったら、どうしましょう。
まして、殺人計画の話を聞いてしまったら。
名作が多いアガサ・クリスティーの中で、自分は知らなかった『死との約束』。
他の本を置いてけぼりにして、買って一気に読みました。
冒頭に、いきなり『いいかい、彼女を殺してしまわなきゃいけないんだよ』なんて台詞を聞いて、実際に殺されてしまったら、犯人はきっとこの人なんだろうな、なんて勘ぐってしまいます。
先入観とは怖いもので、この人が犯人だ、なんて思ったら、とにかく追い続けてみたくなるものです。
しかし、意外とすんなりとターゲットは殺されないんですよね。これがまた面白いところで、次へとページを進めさせる仕掛けのように働いている気がします。
この辺、シャーロックホームズは違っていて、大体最初の方で事件が起こるので、ポアロは、なんとなくテンポが崩されてしまいます。
ただ、事件が起こると一気に楽しくなる、これこそがポアロの魅力で、また、ポアロも相変わらず自信たっぷりに推理を披露するわけです。
今の時代、間違ったことを言ってしまうと、ネットで炎上する、なんてことになりかねませんが、こうも自信満々だと、こちらは清々しい気持ちになります。
推理ものは、今では漫画などでも、数多く展開されていて、トリックも研究され尽くしています。
しかし、インターネットもない時代に、この複雑なトリックを考えたのかと思うと、まさしく天才としか、言いようがないですよね。
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原作と三谷さんのドラマで、どんな変更点があるのかが知りたくて読みました。
(黒門ホテルとか…)
伏線が美しい。
文学に「美しい」って変かもしれないけど、そう感じました。
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天才的。
ポアロの遠回しな推理披露会も悲しい結末も不自然な謎の合理的真相も全てが天才的。
クリスティーのいる地球でクリスティーのあとに生まれた自分に感謝する。
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心理的な分析が多く残されていて、好奇心をそそられる展開だった。登場人物が美男美女という設定もなんか嬉しい。
ボイントン夫人からサラに向かって言われたセリフの真意が暴かれた時はドキッとした!
伏線がかなり念密に描かれていて楽しかった。
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登場人物の魅力、キャラクター性は様々な物語になくてはならない要素だ。クリスティは描写力に定評があり、人物描写、風景描写は本当にその人達がその場所で生きている様な、そんなイメージを読者に与える。当然、時代のギャップや違和感は出てしまうが、それはあくまで古典としてのギャップであり、反対にそれらも魅力として捉えると、とてもノスタルジックな世界観の中ミステリーが展開されていき、何か壮大なストーリーを経験している様な、そんな気持ちになる。
今回、いきなり「いいかい、彼女を殺してしまわなきゃいけないんだよ」という二人の人間の会話をポアロが偶然耳にするところから始まる。舞台はエルサレム、そして死海を中心に展開されていき、ポアロの海外旅行物の一つにあたる。イラクやエジプト等、考古学者のパートナーを持つクリスティらしい場所から、今回はイスラエル周辺が舞台となり、砂漠や岩だらけの場所、洞窟等現実離れした設定が魅力的だ。
物語の中心はサラ・キングという若い女医とボイントン家の人々が担う。家長のボイントン夫人はとても嫌な人であり(クリスティは嫌な年寄りを描かせたら世界一だろう(笑))、ボイントン家の人々は彼女に支配され、洗脳され、外界での生活を遮断されて暮らしている。今回、偶然、家族旅行に来ているが、周りからすれば異常な家族に見られている(全員が夫人の悪意に敵意を持っているが、批難の言葉は辛辣、余りにも酷い表現が昔からクリスティ作品の魅力の一つでもある。)
舞台はホテルから場所を移し、ヨルダンのペトラに移動するが、そこでボイントン一族を巻き込む殺人事件が発生する。物語は第二部に進み、ポアロのが本格的に参戦し、事件の真実に迫る。
メロドラマ的な要素と二転三転するストーリー。誰かが誰かの為に真実を偽り嘘をつき、全てを隠そうとしていくが、ポアロは真相を見抜き、心理の中に真実を見つけ、組み合わせていく。全てを正しく配置するポアロの手法が巧みな作品で、僅かの時間で真相に辿り着いてしまう。
クリスティ作品を読み慣れていた事と、遥か昔に読み終えていた作品の為、何となく犯人を推理できたが、やはり一筋縄ではいかない、意外性のある展開は面白い。また、個人的には「オリエント急行事件」についてポアロが問われ、言及している様子もあり、あの事件の結末とポアロの対応にはとても感動していた為、作中ではどの様に思われていたのかが不思議であった(やはりあの結末を世間が納得していない事は明白な様だが、真実は一族とポアロしか知らない)
長い間クリスティの作品に浸かり、そもそも僕の読書の土台を形成した作家であり、また改めて作品を手に取るようになると、過去作との関連や言及が以外に散りばめられている事に気づき、面白さのベースが改善されていく。今作は当然、過去作なしでも楽しめるのだが、雰囲気を更に楽しむ為に「ナイルに死す」や「メソポタミアの殺人」「白昼の悪魔」等と関連して読むと旅行気分を味わいながらとても楽しめるだろう。
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殺人が起きるまでの第一部は「いいかい、彼女を殺してしまわなきゃならないんだよ」という興味を引く一文から始まるわりに大したことも起こらないようにみえて焦らされた
中東の風景に詳しくないのもあって想像しづらかった
うってかわって謎解きに入ってからはボイントン家の人々の行動や犯人にかなり意外性があって想像以上におもしろかった
自分が母親に会ってみたら死んでて、それを家族がやったと全員勘違いしていくところがいい
犯人を含めて一堂に会した謎解きかと思いきや、犯人には隣の部屋で盗み聞かせておいて…というのが凝ってるなと思った
Posted by ブクログ
「アガサ・クリスティ」のミステリ長篇『死との約束(原題:Appointment with Death)』を読みました。
『ポワロの事件簿〈1〉』、『ポワロの事件簿〈2〉』、『ヘラクレスの冒険』に続き「アガサ・クリスティ」作品です。
-----story-------------
「いいかい、彼女を殺してしまわなきゃ…」エルサレムを訪れていた「ポアロ」が耳にした男女の囁きは闇を漂い、やがて死海の方へ消えていった。
どうしてこうも犯罪を連想させるものにぶつかるのか?
「ポアロ」の思いが現実となったように殺人は起こった。
謎に包まれた死海を舞台に、「ポアロ」の並外れた慧眼が真実を暴く。
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1938年(昭和13年)に刊行された「アガサ・クリスティ」のミステリ長篇、、、
以前、映像化作品の『名探偵ポワロ「死との約束」』も観たことがある作品… 4作品連続で「ポワロ」シリーズです。
「いいかい、彼女を殺してしまわなきゃいけないんだよ。」という男女の囁きは夜のしじまを漂い、闇の中を死海の方へ消えていった、、、
エルサレムを訪れた最初の夜、ふとこの言葉を耳にした「ポアロ」は、好奇心にかられながらも想った… どうしてこうも、至る所で犯罪にぶつかるんだろう。
やがて「ポアロ」の予感を裏づけるかのように事件は起った… 当地を訪れていた「ボイントン家」の傍若無人な家長「ボイントン夫人」が死体となって発見されたのだ、、、
一家の不安を救うべく、「ポアロ」は立ち上った… 謎に包まれた<死海>周辺を舞台に、アンマン警察署長の「カーバリ大佐」からの依頼により「ポアロ」が真相を追及する。
家族を支配下に置いていた「ボイントン夫人」… 抑圧され束縛されていた「ボイントン家」の長男「レノックス」、その妻「ネイディーン」、次男「レイモンド」、長女「キャロル」に4人に「ボイントン夫人」を殺害する動機と機会があった、、、
さらに、その4人は、身内の誰かの犯行と感じ、お互いを庇おうという思いから偽りの証言を行ったことから、捜査を混乱させてしまう… でも、「ポアロ」は、偽証を見抜き、一歩ずつ真相に近付きます、、、
真犯人は家族の外にいたという驚きの展開が愉しめましたね… 冷静で賢い真犯人は、暗示にかかりやすい女性を利用して巧くアリバイ工作をしていたんですねぇ。
「ボイントン夫人」が、「サラ・キング」に向けて話しかけた(とミスリードさせられていて、実は別な人物に向けられた)「わたしは決して忘れませんよ… どんな行為も、どんな名前も、どんな顔も」という言葉と、殺害された当日の午後に家族を自由な行動を許可するという、いつもとは違う言動を取ったことが真相を推理するヒントになっていましたね、、、
家族に自由な行動を許可して、誰かを罠にかけて、さらに束縛しようという判断かと思いましたが、まさか、旅行者の中に新しい犠牲者を見つけ、料理すべき魚を捕らえるために邪魔者を一掃したかったなんて… 激しい権力欲、支配欲を持った暴君ですよね。
同情の余地なしの犯罪だったし、「ボイントン夫人」亡きあとの「ボイントン家」が幸せになるという、読後感が心地良い作品でした。
以下、主な登場人物です。
「エルキュール・ポアロ」
私立探偵
「ボイントン夫人」
金持ちの老婦人
「レノックス・ボイントン」
ボイントン夫人の長男
「ネイディーン・ボイントン」
レノックスの妻
「レイモンド・ボイントン」
ボイントン夫人の次男
「キャロル・ボイントン」
ボイントン夫人の長女
「ジネヴラ・ボイントン」
ボイントン夫人の次女
「ジェファーソン・コープ」
アメリカ人、ネイディーンの友人
「サラ・キング」
女医
「テオドール・ジェラール」
フランス人、心理学者
「ウエストホルム卿夫人」
下院議員
「アマベル・ピアス」
保母
「マーモード」
通訳
「カーバリ大佐」
アンマン警察署長、ポアロの旧友
Posted by ブクログ
ボイントン夫人が家族を支配しており、その支配がとても強力な物語。流石に今の時代はこんなことはありえないと思うけど、昔はあったのだろうか?
トリックもさることながら、ボイントン家のちょっとアカン状況も楽しませてくれる一冊でした。
Posted by ブクログ
注! 内容に触れています
やたらと全知全能なポアロwがことの真相を明かす後半より、ボイントン夫人が子どもたちを支配している、ボイントン家の状況が語られる前半の方が面白かったかな?
ただ、めでたし、めでたしな結末はよかった。
ホッとした(^^ゞ
ていうか、その人が犯人なら、ボイントン家の人たちやサラを、さも、「犯人はお前だろう」的にネチネチいじめないで、さっさと真相を言ったらいいじゃん!
ポアロって、性格わりぃー!(^^ゞ
もっとも、著者としては、読者に「え、その人が犯人なの? いやー、その人が犯人なんて可愛そう」とハラハラさせながら読ませることを目的に書いているわけで。
ポアロが性格悪いというよりは、著者の性格が陰険なのかもしれない(爆)
ていうか、ま、これはミステリー小説なわけで。
つまり、その性格悪いハラハラも含めて、「エンタメ」ってことなだろう。
とはいえ、犯人があの人っていうのは、著者がクリスティーだから許されることで。
これが、新人作家の著作だったら、ボロクソにこき下ろされそうな気がするかな?(爆)
これって、映画化したってことだけど、どんな内容なんだろう?
映画としてはコケたってことだけど、そもそも、こんな地味な話をどうして映画にしようとしたんだって話だ。
前半のボイントン夫人の暴君っぷりを見ていても不快なだけだし。
かといって、起こった事件は一つなわけで、
どうやって見ている人を話に惹きつけたんだろう?と、逆に映画を見てみたくなった(^_^;
本来、旅行なんかに出たくないはずのボイントン夫人が旅行に行こうと考えた理由が、途中で、ジェラール博士によって明かされる(ただし推察)。
“年寄のご婦人がたは世界中どこの国でも同じようなものなんです。つまり、彼女たちは退屈しているのです。”
これなんかは、今の日本人全てに当てはまるんだろうなぁーと。
ちょっと可笑しく、そして耳が痛い(^^ゞ
Posted by ブクログ
トリックではなく、心理的な要素が多い物語。
誰がどのような嘘をついているのか、本当のことは?
その推理をするポアロものの真髄です。
殺人事件が起こるまでが長く、関係者たちを丁寧に書き上げている印象があります。
この本も傑作のひとつです。
面白かった!
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三谷幸喜がアガサ・クリスティーを日本を舞台に翻案してドラマを書いているが、「死との約束」はその第3弾。見ていないのだが「オリエント急行殺人事件」「アクロイド殺し」は読んでいたものの、「死との約束」は未読だったのでこれを機に。しかし三谷さんはヘイスティングズが登場するやつを選ばないですな…(まあ思ったほど出てくる作品少ないんですけど)。
多分ドラマだとそんな描き方できないのだろうが、プロローグ、第一部、第二部、エピローグと進む中でポアロが主体となって登場するのは二部だけで、他は1シーンずつしか出番がない。
家庭を支配する「精神的サディスト」ボイントン夫人に束縛されたボイントン家の一族と、その旅行中に出会う人物たちとのやり取り、そして殺人が起こるまでが第一部。しかし海外ミステリって結構皆簡単に恋に落ちちゃうのな。びっくりだよ。あと会話の端々に時代性が垣間見えて興味深い。
ヒントというか伏線を第一部で大量にぶち込んだところでポアロ登場。
「いいかい、彼女を殺してしまわなきゃいけないんだよ」
を直に聞いている(しかもそれを発した人間を第一部で特定している)ポアロだが、名探偵なのでそこに乗ったりはしない(小説っぽい)。真相は二転三転以上に転がり続ける。いや分からないわこれ。
とはいえ、ちゃんとヒントは提示してあるし、真相を語る前に全てのピースは存在し、しかもポアロは親切にも着目点を途中で提示してくれる。しかし、真相との間に数々の「怪しい事象」が多すぎてこりゃ惑うわ…。ものすごく綺麗に読者の目を欺いてますな。
心理学的分析に関してはやはり「???」となる部分も少なくない(時代性だろうと思う、E.クイーンを読んでもそうなるときがある)のだが、真相の導き方自体は論理的なので納得感があった。そういう意味では「超フェア」。
あのエピローグはこの小説だから生きるのだろうなとは思った。むしろこの最後のためだけに謎解きが書かれたんじゃないかと思ってしまう。
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「アガサ・クリスティ完全攻略」で高評価の作品。エルサレムを舞台とした作品。
実は初挑戦のアガサ・クリスティ。迷った末に本作から読んでみた。
殺人事件が起きるまでな前置きの長いことが意外。三分の一が前置き、終盤の三分の一はエルキュール・ポアロによる謎解き。
1938年の作品。アガサ・クリスティの作品がその後多くの作品に模倣されたのだろう。古典ではあるが全く古びておらずそのまま現在にも通じるように思う。
構成はもちろん登場人物のキャラの設定がうまいように思う。
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そして誰もいなくなったでは読んでるうちに誰が誰かわからなくなって混乱してたけどこちらは全員のキャラが濃いのですぐ覚えられた
おばちゃん殺さんでもみんなで逃げればいいのにと思いながら読んでたけど、まだ逃げたい気持ちに気づいたばかりなら考えが突飛になったり逡巡して諦めたりはあるだろうなってなった
もしも犯行が行われずにちょっと経ったらみんなで逃げるってパターンも考えられそう
真犯人が意外すぎてびっくり まだ読んだばかりでなんで?って感じだけど最初から読み直したらまた犯人に対して印象がかわるかも
しかし犯人を自殺させるように仕向けるのやばいね
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そうくるかぁー。入れ替わり立ち代わり雑談を交えながら関係者に尋問して真相を暴いていくタイプで、一行が家族って設定だったから、オリエント急行を連想してしまった。けど今回は真逆で、家族は誰も犯人じゃないのかぁ、と。いや確かにプロットはすごいけど、ちょっと最後無理矢理過ぎない?と真っ先に思ったが、犯人のチョイスやエピローグを見て、ミステリーのプロット以外にもクリスティーなりのテーマが今回もあるんだなと思い、好きな作品の一つになった。
持って生まれた欲求や性質があるなら、それを持て余して堕落するのではなく、良い方向に昇華させることもできるはず。ボイントン夫人の卑しい人生と、事件後のジネウラの幸せと成功な姿があまりにも対極的で印象に残った。
前半の登場人物の描写が鮮明で、相変わらず人間の洞察力に長けた作家だなと思う。冒頭の鮮烈な一文に反してしばらく事件は進展しないが、登場人物が関わり合っていく様子や人物描写に引き込まれて一気読みしてしまった。
犠牲は時には必要なんじゃないかというサラに向かってジェラールが言った台詞が心に刺さった。「あなたがそう考えているなら医者を選ぶべきではない、医者は常に死と戦うべきなのだから。」
創作機能の負担を減らしたいから、人間はだいたい真実を語るものだ、しょっちゅう嘘ばかりついていられない。というポアロの発言に非常に納得した。そう言いきって、実際に自分のやり方で真相を暴いちゃうポアロの魅力にどうしても釣られて、ポアロものを読んじゃうんだよな…。
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シンプルながら意外性もある本作。
冒頭から「いいかい、彼女を殺してしまわなきゃ……」という不穏な会話が飛び出すところが王道っぽくて良い。
事件発生までを書いた第一部は、ボイントン一家の歪な関係がメインとなっている。
第二部でポアロは捜査に乗り出すが、やっぱり最後の最後まで犯人が分からなかった。
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「いいかい、彼女を殺してしまわなきゃ・・・」エルサレムを訪れていたポアロが耳にした男女の囁きは闇を漂い、やがて死海の方へ消えていった。どうしてこうも犯罪を連想させるものにぶつかるのか?ポアロの思いが現実となったように殺人は起こった。謎に包まれた死海を舞台に、ポアロの並外れた慧眼が真実を暴く。
どう考えても怪しい会話が冒頭で繰り広げられ、犯人としか思えない展開から始まるところが本当に上手いなあと思う。読者はどうしてもそっちに意識がいってしまうので。誰かが嘘をついている中で、時間のアリバイを順序立ててポアロが謎解きする場面はやっぱりかっこいい。ボイントン家の家族と彼らにそれぞれいろんな関係者が絡んできて、訳が分からない。自分ではさっぱり解けませんでした(笑)しかしクリスティは歪んだ精神を描く筆力がすごい。普通に被害者に全く同情できなかった。
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本作は衝撃的な言葉から幕が上がり、ある家族の物語が描かれて、そして事件が起こる。大胆なトリックこそないが、緻密に描かれた描写に感服させられた。
なるほどね
証人尋問だけで解決させるポアロのお手並みは見事なものだけど
それを推理小説にするとこうなるのかという感じで
ミスリードといったら良いのか肩透かしといったら良いのか
私にとってはスッキリしなかった。
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ポアロもの。
「いいかい、彼女を殺してしまわなきゃいけないんだよ」
この不穏な囁きを、ポアロが偶然聞いてしまうという導入部が何とも秀逸で惹き込まれますよね。
エルサレムを舞台に物語は展開するのですが、第一部はボイントン家の異常さを中心に描かれています。
この家族を支配する、ボイントン夫人が“毒親、ここに極まれり”という強烈さで、彼女の息子や娘達(そして嫁)は、まさに“生殺与奪の権”をボイントン夫人にがっちり握られてしまっている状態です。
この異常な家族を含む複数名で観光をしているうちに、ついに事件が起こり、第二部からポアロが前面に出て、真相解明に乗り出します。
そこからは、ポアロと被疑者達とのヒリヒリするような心理戦が続き、読む側も思わず熱がこもってしまいます。
被害者と関係のあった人達は全員怪しいので、後半の連続ミスリードのレールに乗りっぱなしの私はあちこち迷走する羽目に(汗)。
結局、真犯人は個人的に完全ノーマークの人で、またしてもクリスティーにやられましたね。
そして、ラストはそれぞれ“収まるところに収まった”感じで、皆が幸せそうで何よりでした。
ところで、この作品は以前日本人キャストで映像化されていたそうですね。見てみたかったな~。
Posted by ブクログ
家族が老婦人の支配下にいる描写が半分まで続く。その様子はとても丁寧に書かれてある。種明かしも斬新だった。
読者に違う人間が犯人だと思わせるテクニックも素晴らしいし、真犯人が真犯人たる所以も納得いくものだった。
ただ最後の家族の大団円は出来すぎてて蛇足だった。
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第二次世界大戦前に今のイスラエルはエルサレムと死海を観光するご一行さんに殺人事件が起こるの巻き。さすがはイギリスのミステリー小説、その当時すでにこの辺が観光出来たのだった。
クリスティには中東ものが結構ある。「ナイルに死す」「メソポタミアの殺人」「オリエント急行の殺人」「春にして君を離れ」など。
現代でこそ日本人の普通の人が行けるようになったので親しみ深いが、エキゾチックな舞台ではある。
久しびさに読んだせいか、これぞ正統派の謎解きと心楽しく読んだ。材料が出揃ったところで、さあどうだ、わかるかなーと言わんばかりの、十四章、やはり解らなかった。なので読み応えありということである。