【感想・ネタバレ】日本列島はすごい 水・森林・黄金を生んだ大地のレビュー

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Posted by ブクログ

ネットで本を買うことが多くなりましたが、偶に時間がある時に本屋さんに行くと今回読んだ本に出会うことがあって嬉しいものです。

この本は日本列島にはなぜ、各種資源に恵まれているのか、一部資源に恵まれていないのかを地質学的に説明されています。日本には台風・火山噴火・地震等の自然災害が多く、ある意味暮らしにくい、生活するにはリスクが高い場所かもしれませんが、それでも数万年と人間が住み続けてきており、魅力もあるのだと思います。

この本では日本列島だけではなく、なぜ地球に人類が住めるようになったのか、つまり酸素が増加するようになったのかの解説もされています、氷河期を幾度と経験してきた地球が、その間に酸素濃度が上がって生物が住めるようになったということを初めて知りました。楽しく読ませてもらった一冊でした。

以下は気になったポイントです。

・産業技術総合研究所のサイト「地質図Navi」そして、日本における地理情報の公開として国土地理院による「地理院地図」は、日々進歩を遂げていて、日本列島の形・成り立ちを考える売る上で欠かせないインフラとなっている(p9)

・なぜ陸が残っているのか、簡潔に述べると、それは陸を削る浸食作用に均衡するように「陸を作る作用」が働いているから(p21)

・氷期においては地球の高緯度の陸域に降った雪は根雪となり、やがて氷の塊に変化し海に戻らない。それが暑さ数キロメートルの巨大な氷床を作った。そのため地球全体で考えれば、陸と海の水のバランスが変わり、相対的に海水の量が減る。海面が下がる理由となる。直近の氷期である2万年前には、現在と比較して海面が125メートルも下がっていたことがわかる(p26)

・酸素濃度が現在の21%から16%になっただけで、事実上酸素供給体が絶たれたことになる。大気中の酸素濃度を地球史の時間軸で追ってみると、炎が生ずるような燃焼が成り立つのは、約4億年前以降の話である、地球史の最初の42億年は、火のない地球であった(p130)

・いくら光合成が起こっても、同じ速度で反応が下から上へと進む有機物(CHO化合物)の酸化分解が起これば、大気中の酸素は増えない。別な表現を使えば、大気中の酸素が増えるためには、光合成で形成された有機物が大気中の酸素と接する機会がなくなること、すなわち、地層の中に埋まってしまう必要がある。これが特に起こったのが、約24億年前と、7億年前である。これは、全球凍結との関連が指摘されている(p132)

・江戸時代の元禄の頃、日本の人口は約3000万人、世界の人口は6億人なので世界の20人に一人が日本人であった。人口世界シェアでいうと、日本人の割合はこの時代が最も高かった、現在は2%である(p135)

・日本列島ではきちんと管理すれば豊かな森林がなぜ保たれるのか、日本では降水量の多さ、黄砂による地力の回復、土壌の若さなどのおかげで樹木の再生が早い、としている。さらに、他の社会では多くの土地の森林を荒廃させる原因となった、草や若芽を食べてしまう、ヤギ・羊がいなかったことも付け加えられる(p137)

・学校で、窒素・リン酸・カリウムを肥料の三要素と学ぶが、海洋においては、カリウムイオンは海水に豊富にあるので、窒素・リン酸・ケイ素が三要素となる(p149)

・光合成生物が海に大量に発生し、副産物として酸素を放出したことで、海に溶けていた鉄が酸化し、真っ赤な海になる。それが海底に積もったのが縞状鉄鉱物である、海に溶けていた鉄が綺麗さっぱりと酸化沈殿されると、酸素は鉄の酸化沈殿に使われずに済むようになり、海は産後で充たされ、やがて酸素は海から大気へと解き放されるができ、待機中で酸素が増えた(p168)

・現在の岩手県南部から宮城県にかけて、南北に延びる北上山地を中心に多くの金鉱床が発見され、それらを資源として陸奥の平泉周辺には藤原三代の世が華開いた。建立された中尊寺金色堂はその象徴である(p182)

2024年5月23日読破
2024年5月24日作成

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2024年05月24日

Posted by ブクログ

<目次>
序章   日本列島の見方
第1章  かたち~1万4000の島々の連なり
第2章  成り立ち
第3章  火山の列島~お国柄を決めるもう一つの水
第4章  大陸の東、大洋の西~湿った列島
第5章  塩の道~列島の調味料
第6章  森林・石炭・石油~列島の燃料
第7章  元祖「産業のコメ」~列島の鉄
第8章  黄金の日々~列島の「錬金術」
終章   暮らしの場としての日本列島

<内容>
地学の本である。表記はおしなべてわかりやすい。特に松尾芭蕉の『奥の細道』をベースに語る前半が、文系と理系をつなぐような記述となっている。日本史を考えるとき、こうした自然環境だからこそ、のことが多い。それを裏付けてくれる本である。

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2024年05月03日

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