【感想・ネタバレ】構造の奥 レヴィ=ストロース論のレビュー

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Posted by ブクログ

久しぶりに中沢新一さんの本を読んでみた。

中沢さんは、ポスト構造主義〜宗教的神秘主義のイメージが強い一方、科学主義と批判されることも多いレヴィ=ストロースについてはストレートに肯定的でもあって、ここがどう繋がっているんだろうと不思議だった。

というわけで、レヴィ=ストロースを直接的に論じた本のようなので読んでみた次第。

エピローグに記載されているところでは、中沢さんは、レヴィ=ストロースの構造主義的人類学については、世間で理解されているもの、つまり、言語論的な構造主義の人類学への応用というものとは違う感じを持っていたということ。

というわけで、いわゆる「構造主義」の奥にあるものというタイトルになって、レヴィ=ストロースの主題に基づく4つの変奏として4つの試論が入っている。

ある文化に属するその人々には分かってない深層に「構造」があるというだけで、科学主義的な本質主義と批判されるところだが、さらにその奥に何かがあるという話しになると、さてどうなるのか?

第1章は、レヴィ=ストロースの構造主義には仏教がある、というかなり大胆な議論で、やや我田引水感はあるものの、そういうところもあるかもしれないと思う。少なくとも、中沢さんの中で、レヴィ=ストロースと神秘主義がどう繋がっているかはよくわかる。

第2章は、レヴィ=ストロースの弟子のリュシアン・セバークを紹介しつつ、マルクス主義との関係、経済という下部構造と文化という上部構造との関係という観点で、構造主義の可能性を論じている。

第3章は、文化人類学でよく議論される双分制に対するレヴィ=ストロースの懐疑的な論考をベースに、やや強引に物理学の比喩を使いながら対称性という自身の考えにつなげていく。

第4章では、ブリティッシュ・コロンビアの神話と日本の神話との類似性を構造分析しつつ、地震多発地帯としての環太平洋文化圏という視点を提案する。

この本はいわゆる「選書」で、学術的な研究書ではないので、議論がやや大雑把な感じはするが(中沢さんの本は大体そうですが)、提起している問題は重要なところだと思う。

要するに、ポスト構造主義的な観点から乗り越えられたとされるレヴィ=ストロースの今日的な意味を再発見しようという試み。言語学的な人文科学としての構造主義を経済、社会、宗教、自然とリンクした革命的な思想として読み直すことへの誘いということですね。

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2024年04月30日

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