【感想・ネタバレ】海の仙人のレビュー

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ 2024年03月18日

作者が描く風景とメッセージが胸に流れ込んできて、いい読み心地でした。絲山秋子さんの物語はどっしり背中を預けて読めます。

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Posted by ブクログ 2021年02月26日

 主人公の不思議な生活ぶりが面白い。なんでよりにもよって山陰の薄暗い地域など好んで住むのか、海の近くなら静岡などの方がずっと暮らしよいと思うのだが、そうしたくなる気持ちが読み進めると理解できる。セックスレスでありながら女性を求めるのは相手に対してひどいのではないか、しかしそうなってしまうのも仕方がな...続きを読むい。

 文章の表現について、解説の福田和也さんの解説が素晴らしくて、お陰で理解できた。自分で読んでいる時はなんとなく、いい感じがするくらいしか思わなかった。

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Posted by ブクログ 2019年11月22日

その名もファンタジーて。ってとりあえず突っ込みたくなる本作。そのファンタジーをネタにした軽い笑いも要所要所にちりばめつつ、圧倒的リーダビリティで物語は進む。健康的に登場した彼女が、気が付けば不治の病に侵されたりとか、主人公が盲目になったりとか、展開の速さにも驚かされるんだけど、それが無理なく話の中に...続きを読む納まっていく様は、まさに名人芸。中編小説ながら実に濃密。素晴らしい作品でした。

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Posted by ブクログ 2019年10月02日

日常を生きるなかで、こういう読み物が連れて行ってくれる世界がどれだけ潤いになっているか。
あらためて感じさせられた。

自分が読んだ本を人に薦める人がいる。今までは自分はあぁはならないぞと思っていたけど、汲々とした時を過ごしている人には何よりも、こういう世界に連れて行きたくなる。 だから、今は人に...続きを読む本を薦めるお節介も許せてしまう気分だ。

読み終えて、「宝くじを買わなくちゃ」と思った人もきっといる。わたしもだけど。
河野の生き方が、生きる世界が現実の煩わしさから遠いところにあるだけでなく、彼が抱えた人生の苦難に静かに向かう姿勢、滲み出る佇まいに共感を覚え、愛してしまった人たちが、彼の世界を創っていることもわかってくる。

ここには心地よくて、頼りにならない神の寄り添う『ファンタジー』の世界がある。

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Posted by ブクログ 2019年09月24日

宝くじを当てて敦賀の海辺に移り住んだ河野。自身のことを役立たずの神様と呼ぶファンタジー。岐阜から遊びに来たかりん。河野の元同僚の片桐。どれも魅力的なキャラクターで、それぞれの道をのびのびと歩んでいるの感じがとてもよかった。
あらすじだけ読んだときは変な名前の神様が出てくるし、それこそファンタジー小説...続きを読むなのかな?なんて思っていたけれど、決してそんなことはなかった。魅力的なキャラクターが登場するけれど、べたべた依存するような関係はなく、それぞれがそれぞれの孤独を抱えて、それを認めながら生きていた。この小説は人間の孤独さを描いていて、けれど孤独が悲しいこととして描かれていないことがいい。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2019年03月08日

河野の生き方が羨ましかった。宝くじを当て、仕事をせず海辺の街で釣りをしたり農園で野菜を育てたりしてのんびりとした生活を送る、なんて幸せな生活だろうか。彼とかりん、片桐の微妙な三角関係が読んでいて切なかった。どの登場人物にも感情移入して彼らの幸せを願ってしまった。ラストシーンは個人的に不穏さを帯びてい...続きを読むると受け取ったが、河野は生きて片桐と新たな人生を歩むのだと信じたい。

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Posted by ブクログ 2018年07月24日

このお話に出てくる人はみんなそれぞれ孤独なんだけど、それは自分が選択した孤独で、そのことを自分でちゃんと分かっている。孤独に対する責任感みたいなものもあって、作者の人間性?とか考え方が出てるなと思った。はじめて読んだけど、絲山さんを好きになったし作品をもっと読みたい。一番好きな登場人物は片桐だけど、...続きを読むファンタジーは薬味的な感じで素晴らしい。片桐のいい女っぷりが台詞の端々に出ていて惚れる。

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Posted by ブクログ 2017年12月16日

波間にいるような、砂地に足を囚われているかのような……。とてもたおやかで寂しくてりんと強い。
過去に向き合おうとしても簡単に乗り越えさせてはくれない、悲しみは次々と自らを襲う。人は皆、自らに降りかかる孤独からは逃れられない。
ただわたし達はわたし達として生きていくしかないのだな、と静かに淡々と突きつ...続きを読むけられるかのようで、そのひっそりとした寂しさにも淡く光るものを感じさせてくれる。

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Posted by ブクログ 2016年03月16日

数ある絲山秋子さんの名作の中でも一、二を争う名作ではないでしょうか?物語中盤、日本海沿いにファンタジーと元同僚の女性とのドライブ旅の情景が特に好きです。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2016年03月06日

 河野勝男は、突然宝くじが当たることで億万長者になった。そんな河野の前に突然「ファンタジー」が現れる。
 敦賀に帰り気ままな暮らしを始めた河野の前に、「かりん」と「片桐(もと会社の同僚)」という二人の女性が現れる。やわらかく包み込むようなかりんと対照的に、あの手この手で河野をおとそうとする片桐。
 ...続きを読む結局どちらとの関係を実らせるでもなく、かりんは乳がんにかかってしまう。果たして、ファンタジーは不幸の前兆なのではないかと思った河野。その後、河野自身も雷に打たれて失明してしまう。やがて、河野は高校生のとき以来さわっていなかったチェロを手に取り、生きる意味を見出してゆこうとする。
 
 わずか150ページであったが、幸福と不幸、働くことの意味、異性との関係とは何かなど、様々なことを考えさせられる内容であった。また、著者の表現技巧が優れており、海や空まで目の前にあるかのように感じられた。

 この物語で登場するファンタジーは、疫病神なのか、神様なのか、仙人なのか。体はフェイクで顔はアメリカの雑誌から勝手に拾ってきたと自称したり、かりんや片桐にもその姿が見えて居たりするので余計にこいつは正体不明である。だから、余計にこの物語に引き込まれてしまうのかもしれない。

 美輪明宏さんが、一世を風靡した歌手が40歳くらいで声が出なくなって死んでしまった例をあげて、「幸福も不幸も、一生の長い時間のなかでならすと一緒になる」という趣旨のことを言っていたのを思い出した。
 宝くじは当たらなくていいし、人より自分が苦労しているように思われるときは「あとから何かいいことがある」と思えばいい気がした。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2022年03月18日

 ~森の青葉の蔭に来て なぜに寂しくあふるる涙 想い切なく母の名呼べば 小鳥答えぬ亡き母恋し~♪ 霧島昇と高峰三枝子の「純情二重奏」(1939年)。この物語は「孤独の三重奏」でしょうか。絲山秋子「海の仙人」、2007.1発行、文庫。ファンタジーの世界が広がっていました。 

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Posted by ブクログ 2021年08月21日

リアルと不思議に浸った本。
ちゃんと自分を律する大人たちの、安らぎと悲しみと愛情。
とても丁寧な思いやりと、心地よい距離。
素敵な風景が豊かな表現でいつまでも読み続けたい気持ちになりました。

もっと分厚いページにしてほしかった。
せめて、あと1ページほしい。
それもファンタジーということか。

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Posted by ブクログ 2021年04月18日

恋愛、結婚、友情、生活、出世、家族、人間って色々な悩みや楽しみの中にも沢山の孤独を背負って生きているんだなって深く感じさせられた一冊でした。

東京でサラリーマンをしている主人公は宝くじが当たって福井の敦賀で自由で孤独な仙人の様な暮しを続けていたある日に"ファンタジー"と言う不思...続きを読む議な神様が出現し主人公の家に居候する様になる。"ファンタジー"はその存在を感じられる人とそうでない人に分かれる。

 そんな不思議同居人との田舎暮らしの夏に海岸で仕事中毒なOLと知り合い付き合い始める。

遠距離恋愛を重ね年月が過ぎたある日に彼女が末期ガンと知らされる。


 彼女を失った主人公は元の孤独な仙人生活に戻るが元同僚である女性が思い出の貝殻をきっかけに8年間途絶えていた主人公に遭いに行く。

 不思議で柔らかな感じで爽やかな青春物かと思いましたが深いです。流石ですね絲山秋子さん、、最後のシーンで視力を失った主人公とファンタジーの会話と8年を経て遭いに来た彼女・・・泣きそうになりました。

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Posted by ブクログ 2021年01月26日

とても美しい小説

男性と女性は身体だけではなく、心で繋がれる。
主人公と交際している女性の深い結びつきに、心が切なくなりました。

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Posted by ブクログ 2020年09月22日

―ファンタジーがやって来たのは春の終わりだった。

冒頭の一文にいきなりグッと引き寄せられた。な、なんだ?
いるだけでいい、というのはこういうヤツ(失礼!)のことをいうんじゃないだろうか。こんな居候ならぜひうちにもきてほしい。
相手をそのまま自然に受け入れるような、人々の関わり方も心地いい。
性別も...続きを読む時間も関係なく、ベースとなるものは静かにあり続けているように思った。

片桐のファンタジーとの会話が楽しい。同性ながら惚れた。

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Posted by ブクログ 2020年07月12日

しみじみと、いいなぁ…と思いました。
登場人物たちに起こることは過酷な事もあるのですが、とても静か。
登場人物たちが皆さん大人なのが、静けさだったのかなと思います。自分の気持ちだけで突っ走らないところが落ち着きます。
ファンタジーは何だったんだろう、と思いましたが、神ってこういうものなのかも。側にい...続きを読むるとなんだかいいな…となるけど、実際に何かをしてくれるものではない。
敦賀、行ってみたくなります。
絲山さんの本は初めて読みました。文章が朗らかだけれど温度が高過ぎなくて好みです。他の作品も読みます。

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Posted by ブクログ 2017年12月08日

敦賀の海はどんな海なのだろう。
私の中にあった閑静な港町のテンプレートのようなイメージが、最初のページ、主人公が「オレンジ色のダットサン・ピックアップ」で早朝の浜に乗り入れるところから一気に“敦賀”としての確かな形を見せ始める。なんて気持ちのいい物語のはじまり。聴こえてくるのはピックアップが砂を散ら...続きを読むし走る音、風が吹き抜けて朝日にきらめく凪いだ海の静かな波の音。車のオレンジと海の青が鮮やかに目に浮かぶ。「海の仙人」はまるで海のような小説だった。

登場人物たちはそれぞれがつかず離れずの距離で集まっては移動し、また離れてゆく。孤独をわきまえ、孤独に向き合い、そして傍にいてくれるのは海と、あとは“ファンタジー”くらいのもの。そんな彼らの“個”と“個”の間に敦賀の海が横たわる。作中、ファンタジーに対して河野が感じる“不安”は、きっと海をずっと眺めていると心に浮かんでくるどこか不安定な感情と同じものだ。

孤独はそもそもが「心の輪郭」であり「最低限の荷物」だと作中では語られる。人生という「旅」の、「最低限の荷物」だ。旅に出て分かるのは、自分自身は常に自分自身にしかなり得ないということ。河野は、過去を清算し自分自身何か変わろうと思って片桐の車に乗った。しかし結局は何も変わらなかった。旅で自分が変わるなんてことは旅に出る前だけの幻想だ。自分はどこまでいってもただ1人ということを学ぶのだ。“個”を固くする作業である。

きっと海と向かい合ったときにも同じような心象を心に抱く。
わたしと、外。
わたしと、あなた。
わたしと、世界。

最後、盲目となった主人公は完全に自分自身の内側へと眼を向けられるようになったのかもしれない。ある意味究極の“個”を最終的に完成させることができたのだ。そこで河野の“個”に唐突に侵入してくる片桐は派手で潔く、しなやかで美しい。真っ赤なアルファロメオが無彩色の景色の中で鮮烈なインパクトを残していった。

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Posted by ブクログ 2017年08月09日

宝クジに当たったというところからしてファンタジー!短い話だがテンポ良く人の繋がり哀しみが綴られていく静かな物語。幸せとは何かをソッと問うてくるような印象が残る。

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Posted by ブクログ 2017年07月29日

 おそらく私はこの本を何度も読み返すことになるんだと思う。自分がどのような状況下に置かれていようとも孤独であること。その孤独に浸りたいときに、読み返すと思う。

 河野が持っている独特の他者との距離感や、不意に生活圏に表れてきたファンタジーという出来損ないの神。そこに侵入する片桐。そしてかりん。

...続きを読む 解説にも書かれているけど、男女関係の物語に、ここ最近性描写がセットになっていて、性描写と愛がイコールになっているものが多くて辟易としていたが、この本はもっと違う何かでつながっている。それぞれが孤独であることを意識しながら、うまく距離を測っている。そんな対人関係の微妙な距離感がすごく好き。

 私も比較的孤独をよく認識しているつもりだ。いつかファンタジーに会えるのかなと、読んで少し期待した。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2016年09月03日

これはまたいい小説を読んだ。
優しくて非情でリリカルで奇妙で。
何せファンタジーという名の「神」が当たり前のように現れたり消えたりするのだ。
そしてファンタジーは、筋としてはいてもいなくても変わらないのに、いることで間違いなく小説が芳醇になる。
小説が「∞」という形状をしているとしたら、その結節点に...続きを読むファンタジーが存在していたりしていなかったりするのだ。
内的モノローグはこういう仕掛けを通じて小説的なダイアローグになるという、見本のような小説だ。

★孤独な者と語り合うくらいだ。
・いま、お前さんの運命の女が走ってきたのだ。
・ファンタジーと会うのははじめてだけど、でも前から知ってるような気がしたの。
・セックスレス
・そうですともよ。妬いてますわよ。
・オカヤドカリが前に住んでた貝殻。
★見たよ、恐竜のタマゴ。
・俺に救われるんじゃない、自らが自らを救うのだ。
・近親相姦や、早い話が。
★寝るときは一緒でも眠りに落ちるときは独りだぞ。
★お前さんが生きている限りファンタジーは終わらない。
・ここは家族全員がね、帰ってきたら「かあちゃんただいま」っていう家なの。
・乳がん
★中村は中村の孤独のなかに入っていくのだ。
・でも私はあなたのこと、好きになれてよかった。今だけでも、あなたと、あなたのことを好きな自分がここにいることがとってもありがたいって思う。
★生きている限り人間は進んで行く。死んだ人間は置いて行くしかないのだ。

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Posted by ブクログ 2016年01月08日

正直、冒頭の唐突さに面食らってしまい、話に入り込めるまでは、いつ本を閉じようかと考えながら読んでいました。慣れてきたら驚くほどにするすると入る言葉と映像の渦に、興奮気味に読み終えた海の仙人。結びにかけての、まるで詩のように研ぎ澄まされた文体は、さすがです。きっと、再読時には初めから入り込めるでしょう...続きを読むね。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2015年12月20日

よかったぁ。しみましたぁ。

海が見たい‼︎敦賀の浦底行かねば‼︎

宝くじ当選、ファンタジー登場って
なに⁉︎この現実からの距離感…⁉︎

でも、河野の日常と。かりん、片桐とのかかわりって。
しっかり、じっくり、しっとり伝わる。
心がじんわりと、あったまったかしら。

ファンタジー登場の海〜諦めた...続きを読むように〜
かりんとの海〜青い稲妻〜
偽善と同情、幸せ、孤独。
〜心の輪郭なんじゃないか?外との関係じゃなくて自分のあり方だよ。背負っていかなくちゃいけない最低限の荷物だよ。〜

澤田もよかった。
そして、ヤドカリ。

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Posted by ブクログ 2015年12月19日

 登場人物みんながそれぞれに孤独を抱えているし、相手が孤独を抱えていることにも気付いていて、だからこそ適切な距離感をもって相手を尊重してあげられるのだと思う。土足で踏み込むわけでもなく突き放すわけでもない彼らの支え合いは、少しの切なさもあるけど尊く温かだった。孤独を感じてどうしようもなく嫌になること...続きを読むがあるけど、片桐が言うように孤独がそもそもの心の輪郭であり、人が背負っていかなければならない最低限の荷物なのだと考えられれば、引きこもらず、かつ相手を思いやっていけるのかなぁと勇気づけられた気持ち。

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Posted by ブクログ 2015年07月31日

絲山秋子作品。宝くじに当たったサラリーマンが会社を辞めて海の美しい敦賀に引っ越した。そこへ神様の遠縁のファンタジーが表れてというお話。ファンタジーが神様っぽくなく俗っぽい。途中で悲しい過去やら厳しい現実を経験して・・・敦賀の海が美しいので尚更哀しみが深くなりますが敦賀の海を感じたくなりました。

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Posted by ブクログ 2015年03月30日

空想は孤独なひとに寄り添う友であり、孤独なひとはその存在を頼みにしなければ生きていけない。空想そのものが何かの役に立つわけでなくとも、その存在はやはり神様と呼ぶべきものなのだと思う。

>「役に立たないが故に神なのだ」

>「神に救われるんじゃない、自らが自らを救うのだ」ファンタジーが苦々しげ...続きを読むに答えた。

>「売り場で…(略)ハダカのヤドカリの気分や」
>「貴様の殻は、敦賀か」
>「海やな。日本海が僕のおふとんみたいなもんや。僕は海に依存してるんや」

>「幸せ」ってなんだ」ファンタジーが言った。「過去を共有することなのか」
>「ありのまま、を満足すること」

>「孤独ってえのがそもそも、心の輪郭なんじゃないか?外との関係じゃなくて自分のあり方だよ。背負っていかなくちゃいけない最低限の荷物だよ」

>「あたしのファンタジーは終わりだ」
>片桐はファンタジーにむかって言った。
>「終わらない」
>ファンタジーは言った。

>「真実とはすなわち忘却の中にあるものなのだ」

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Posted by ブクログ 2016年08月16日

なんか、粗筋を書くとドロドロの恋愛小説みたいですが、そんな話ではありません。
不思議な話です。ファンタジーっぽい要素もあれば、きれいな恋愛小説的なところもある。どう書けば、この小説の魅力を言い表せれるのか判りません。
ただフワフワと心地よく、時に微笑ましく、時に切なく物語の中を漂ったような気がします...続きを読む

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Posted by ブクログ 2023年01月03日

切なさが残る。
読み終わってすぐはあっさりとした感覚だった。でも、この本のことを考えると少しずつ心の奥底に切なさが降り積もっていき、今はずっしりとした気持ちになった。

会ったこともないはずのファンタジーに想いを馳せる。彼は一体誰なのだろう。とても不思議な存在で、そこにいなくても誰も困らないし、いつ...続きを読むかきっと忘れてしまう人。それなのに会うと嬉しくて心が温まる人。まるで人の希望が具現化したような人だな。

不器用でも、傷を抱えていても、孤独でも、人は生きていかなくてはいけない。私たちはみんな、孤独とともに生きるのだ。静かな夜にじっくりと読みたい一冊。 

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2020年08月16日

確かにファンタジーのお話。読後にあらすじで考えれば荒唐無稽なんだけど、そこで書かれていることが地に足ついているためにそのことに気が付かないようになっている。
孤独は心の輪郭で、自分のあり方だっていうのは、わかる。輪郭がなければ触れ合うことができないから。でもこの本の登場人物たちはあんまり触れ合おうと...続きを読むはしていない。惹かれていても、みんなどこか別の方向を向いていて、私はこういう話は切なくなってしまって苦手だ。
孤独とともに現れるファンタジー。孤独は人と一緒にいてもある。後で思い返せば、輪郭に触れれば良かったのに、何で孤独に浸っていたんだろう、と後悔することがたくさんある。私は今こう思っていて、あなたはどう思う?という風に、さっさと、ただ聞けばよかったのに…と思う。
河野とかりんは、遅かったけど少し触れ合って、永遠の別れを迎える。片桐は澤田に後押しされて、河野に会いに行く。この本は、大丈夫だよ、と言っているトーンであのラストを突き付けてくるわけで、この距離感を本当に肯定しているのだろうか、と訝しく思う。踏み出して、触れ合っておかなければ、取り返しのつかないことになるんだよ、と言っているんじゃないかと。どうなんだろう。

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Posted by ブクログ 2016年05月07日

宝くじにあたった河野、店員を辞め、敦賀の空き家を買い取って一人暮らし。元同僚のサポーター片桐、ヘビーワーカーの恋人かりん。いるとはなしに、仙人ファンタジー。

人間ではない仙人の存在が不自然ではない、だけど現実的でもある、不思議な世界ですね。人間界のドロドロがない。

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Posted by ブクログ 2015年05月12日

読み終えて、ふと、ファンタジーって結局何だったのだろうと考える。
昔から知っていたような気がする人もいれば、本当に初めて見る人もいる。
神さまなんだけど、何か特別なことをしてくれるわけではなくて、そばにいて、日常に溶け込んでいる(焼酎飲む姿なんて、人間臭いというよりおっさん臭い)。
どこか希薄な存在...続きを読む感で、ストーリーにおけるスパイスになっているかどうかさえ怪しいのに、彼なしのストーリーは、それはそれで浮かばない。
決定的な何かではないのに、いないと決定的に何か足りないような気持ちになる。
たぶん、そのあやふやさが、ファンタジーなんだろう。
とりあえず、そう結論付けて、いつかまた読む日を待つつもり。

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