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Posted by ブクログ
日本が相対的に経済が貧しくなっていた余波が風俗業界にまで押し寄せて、風俗業界で働く女性たちが海外へと出稼ぎに行っているのは予想はできるものの、なかなか目に触れることにできない情報である。しかし著者の当事者らへの綿密な取材を通して、こうした暗闇の部分にスポットライトが当たった本書は貴重な情報源である。
また特に最初の事例で強く言及があったもので印象的なのは、風俗店が店で働く女性たちを"モノ”化していて、自立や自律をむしろ妨げるものであること、女性たちの方もそうした環境を受け入れることを当たり前だと思うことは、まさにジャニーズ問題でを思い出す日本の根深い問題である。
またなにより日本の女性たちはまだまだジェンダー的に差別や不当な扱いが根強く(特にこうした業界ではよりかもしれないが)、自分で自分の価値をブランディングできたり、自律的に行動する女性たちにとっては海外で稼ぐことは報酬面だけでなく、肉体的、精神的にもかなり魅力的かもしれない。
一方で、本書の取材対象となった女性たちは、毒親含む家族の虐待から逃れるため、派遣社員をやる中でギリギリの生活を強いられていた、孤独からホストなどに入り浸り、結果として風俗業界の門戸を叩くことになった人たちが多い。これは本書の人たちに限らず風俗業界で働くことになった女性、あるいは男性もこうした背景を持った人たちが少なからず(あるいは大半?)かもしれない。本書を読む中で強く感じたのは、「どの業界でも海外で出稼ぎに行く時代だ」と安易に肯定するのではなく、こうした状況を生み出す日本の社会的・経済的問題に対してしっかりと向き合うことが必要だということである。