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『高丘親王航海記』に並ぶ澁澤龍彦の絶筆。最終3編を畏友 巖谷國士に託している点で、絶筆感がより深い。
選ばれた裸婦はどの女もこの女もシブサワ好み。オブジェ化したエロスの香気を放っている。
明らかな間違いを共著者が解説で正してくれたのはグッドジョブ。
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巖谷國士さんとの共著の形をとる本作は、澁澤龍彦最期の美術エッセイです。バルテュスやクラナッハはもちろん、百武兼行にヘルムート・ニュートンの写真やギリシア彫刻の両性具有など、その視野の広さと「澁澤らしさ」には脱帽です。解説で巖谷さんの言うように、対話体を用い、軽く気ままな、独特の視点を持つ円熟した本書から『高丘親王航海記』への到達の過程をうかがうこともできるでしょう。
個人的には、バルテュスの絵がやっぱりいいなぁと思ったのと、最後をアングルで締めるのは流石だなと思いました。
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バルチュス スカーフを持つ裸婦……幼虫としての少女。ポルノグラフィーと芸術。
ルーカス・クラナッハ ウェヌスとアモル……背景の黒のモダン。
ブロンツィーノ 愛と時のアレゴリー……マニエリスム。時の老人が重要。
フェリックス・ヴァロットン 女と海……得体のしれない海。
ベラスケス 鏡を見るウェヌス……尻の裸体画のタブー。スペインらしい禁欲主義。
百武兼行 裸婦……犯される気品があるからこその猥褻。
ワットー パリスの審判……18世紀、快楽主義的で演劇的で祝祭的。人間機械論は同時に、機械はどこまで人間に近づきうるか。
ヘルムート・ニュートンによるシャーロット・ランプリング……ドイツの精神史として眺められたヨーロッパの没落。デカダンスとは必ず現在と過去を二重写しにすることによって生じる。
眠るヘルマフロディトゥス……失われた全体性を回復しようとする人間の本質的なあこがれ。原初の黄金風景のイメージ。
デルヴォー 民衆の声……1900年代のブリュッセルへの固着。見る者との間にドラマが生まれず、絵の内側にドラマがある表情。リビドーの幽霊。
四谷シモン 少女の人形……人間は神のまがいもの。人形は人間のまがいもの。人間は神。自動人形の幻。人形という主体を生きるために、いまにも動き出しそうな幻を呼び起こす。
アングル トルコ風呂……コラージュ。遠近法の無視、主観的なパースペクティヴの導入。