【感想・ネタバレ】戦後教育で失われたもののレビュー

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Posted by ブクログ

私は物事を何も忖度なくズバズバ言う人(書く人)が好きだ。時には自分の考え方を否定されてカッとなる事はあるが、すぐに冷静になって何でそういった考えになるのか相手の心の中を探索してみたくなる。本書の筆者の書きっぷりも潔い。戦後教育に潜む問題点とその結果生み出された我儘自分勝手な日本人に鉄槌を下しているような見事な書きっぷりである。レビューを書くにあたりその全てが正しいとか、自分の考え方と一致するとは思えない記述も多いが、概ね私の考え方には近かった。だから余計にスカッとしたのも間違いではない。
私が幼い頃は先生は神のような存在だったと思う。今でも幼稚園の先生から大学の教授までほとんどの先生の顔も名前も言っていた事も多くが記憶に刻まれている。今の自分のものの考え方も、働き方も、日常の趣味でさえ、〇〇先生の影響があったとはっきり言える。そして特に小学校5、6年の時に担任を受け持ってくれた渡辺先生への感謝は今でも忘れないし、人間として何が大切でどう生きたら良いかはその先生が教えてくれたと信じている。まだご存命だろうか。兎に角私の学生時代などは何から何まで全て競争だった。運動も勉強も1番になればクラスの人気者になれたし、近隣の学校とのスポーツの交流試合にも(競技の経験など関係なく)学校の代表選手に選ばれるような時代だ。勿論、学校を背負って試合に出てるから絶対に負けられない、という信念も小学生ながら強く持っていた。高校時代は中間期末試験結果は全教科上位10名の名前と点数が張り出され、1位独占までは中々達成できずとも全て3位以内を目指せば卒業時にはかなりの有名大学への推薦の道も開けるような学校だった。死に物狂いで教科書ガイドに書き込んだ事を今でもよく覚えてる。競争に育てられ、助けられて生きてきたような物だから、確かに今の学生諸君のやり方や考え方は直ぐには理解できない事もある。会社組織で部下を持つようになって漸く自分との違いに気づく事も多くあった。凡そ管理職は同世代が多いから、相容れない考え方の若い子達を一括りに「ゆとり」と読んで新橋で酒のネタにしている(実際はどう対処するか真面目に話す事が多いが)程度である。その様な中でもキラリと光る人材も稀にいて、彼ら、彼女らは私が一々指図などしなくても担当プロジェクトを1人で上手に回してしまう(特に最近は女性が優秀と感じる)。大体そういう子達との1on1では話し方考え方に頭の良さが出ている。逆にできない子の典型は言い訳ばかりで他人のせいにばかりしてる。話し方もいかにも偉そうに政治家の様な喋り方をしながらも内容は常に世の中や会社組織への不満や、給料が安い事などを暗に?文句ばかり言うタイプだ。それなりの評価しかこちらもしないから、2、3年も経つと大きく差がついている。話はそれたが、要はどの程度真剣に勝負や競争をしてきたかではないかと感じる。勿論遺伝的な物で頑張り方や理解力も異なるだろうが、しっかり競争の中で勉強を重ねてきた子は強い。暇さえあれば本を読んでる子などもそうかもしれない。
本書は現在の教育が抱える問題について実例を挙げながら、本来どうあるべきか考えさせてくれる。このままでは日本が停滞していくという予想は、本書が書かれた2005年から今日までの20年を見れば、今の結果を見れば、残念ながら当たってしまったようだ。教育は時間がかかる。1人や2人を勉強のできる子にするなら容易ではあるが、日本を背負うような世代全体を勉強のできる世代にするには相当な努力と改革が必要だ。さらにその先にその子供達が大人になるまでの期間を考えたらあっという間に四半世紀、半世紀が過ぎてしまう。だからこうした書籍を読んで現実を知り、各々が教育について真剣に考える事が必要だ。

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2024年02月20日

mac

ネタバレ

大人になるために

一部ご紹介します。
・私たちが、他人を幼稚と感じるのはどんなときか。「思考が単純である」「常に主役でいたがる」「感情のコントロールができない」といったところ。
・どんな劇も主役だけでは成り立たない。脇役がいて、エキストラがいて、裏方として働く者がいて、初めて劇は成り立つ。
人は誰でも自分の人生において主人公だ。だが、それは、脇役を演じている自分、小道具を作っている自分を肯定することから始まる。台詞も満足に覚えられない子供が「僕も主役をやりたいよ」と主張しても、それをはねつけるのが大人の嗜みというもの。
・「『己』を知る謙虚さ」「『宿命』を受け入れる潔さ」「『不条理』を生き抜く図太さ」「『日本人』であることの誇り」を獲得する中で、「大人になる」ことが大切だ。
・緊張感のない組織や個人に活を入れるには「競争原理の導入」が最も手っ取り早い。
・共同体意識が最も高くなるのは「祭り」
・デモクラシーの本質は「国民皆兵がデモクラシーの正当性を基礎づけた」という歴史的事実にある。有事になれば、たった一つしかない命を国家に預けて戦う。これが国民国家の基本型。だから平時にでも国民は平等に国政に口を出す。命の重みに金持ちも貧乏人もないからだ。それゆえの「一人一票」。婦人参政権が認められた最大根拠は、第一次世界大戦により戦争の在り方が、国家の持てる力全てをかけて戦う「総力戦」に変化したことにある。これにより、男性が戦場に行った後の「銃後」が重要な存在になったためである。
・ほとんどの子供には「やりたい仕事」などないのが現実だ。大人でさえ「やりたい仕事」など変化するものだから。それ故、まず「普通の職業」に就く。特別な才能などなくても、まじめに努力すれば生活できる職業に。作家や芸人を目指す者は、その中から見つけるだろう。小説のネタになる出来事が。共感を生む笑いの元が。
・私たちが求める社会とは、「特別な才能のない人間でも、親や先生を信じて精進すれば、まっとうな大人になれ、平凡だけれども幸せな人生を送ることができる」、そんな当たり前の社会である。戦後教育(左翼全体主義)との決別とは、教育にリアリズムを導入することだ。それは同時に、戦中教育(右翼全体主義)との決別をも意味するのである。

#タメになる

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2022年09月30日

Posted by ブクログ

 昨今の日本人に失われたと言われる謙虚さ、日本人としての誇り、などの元凶は戦後教育にあるとし、学校は「青年用保育園」に成り果てた、とする種々の分析を展開している。
 「不条理があるから共同体」など、納得できる部分は多々ある。ただ、かなりデリケートな話題を扱っているので、筆者の趣旨を注意して読みとる必要がある。「○○を決して肯定しているわけではないが」と断り書きが随所に書かれているものの、やや感情的に書かれている部分も見受けられる。(08/09/24)

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2009年10月04日

Posted by ブクログ

 不条理に耐えうる大人になれる教育が、今ほど求められる時代はない。やりたいことをやりなさい、自分の興味に従って好きなことをやりなさいと、個人の価値観を奨励してきた戦後民主主義的教育の限界が露呈している。

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2009年10月04日

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