【感想・ネタバレ】渇きの地のレビュー

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Posted by ブクログ

川が干上がるオーストラリアのリバーセンドという街で、牧師が突然、銃で5人を殺害する事件が発生。その1年後にジャーナリストのマーティンが事件のその後を取材に訪れた。マーティンはそこで新たに発生する事件に巻き込まれながらも牧師の大量殺人の真相に迫る。ジャーナリストと警察と諜報機関が入り混じって、何が真実なのか分からなくなってくるのが、現実に起こっていることのようでリアルさが増している。登場人物や発生する事件が多いが、複雑すぎることもないし、著者が読者をリードしているかのように読みやすい。最初の牧師の事件の描写からラストまで中弛みせずに楽しんで読めた。

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2023年11月27日

Posted by ブクログ

★5 豪州で発生した銃乱射事件を取材していくと… 愛情と正義、業と欲望を重く描いた傑作 #渇きの地

■あらすじ
オーストラリア内陸部にある街の教会で事件が発生。牧師であった男が銃を乱射し、住民五人を殺害。犯人も射殺された。
一年後、主人公である新聞記者のマーティンは、事件の取材するために街を訪れる。街の住民たちの証言では、凶行に及ぶような牧師ではないらしく、犯行の理由がわからない。その後、取材を重ねるために街に滞在していると、さらなる事件が発生し…

■きっと読みたくなるレビュー
ジャーナリズムのあり方とはなんなのか?

もともと民主主義の国においては、主権者が正しく判断ができるように、真実の情報を提供する役割があるはず。しかし記者は取材を続けるうちに、現場での様々な経験や、取材対象の場所や人物に気持ちが入ってしまう場合もあるでしょう。
本作はジャーナリズム魂をもった新聞記者が、かつて事件のあった街の住民たちに取材と交流を重ねていく物語です。

なによりストーリーの重厚感がエグイ。海外ドラマをワンシーズンを丸ごと観たようなボリューム感。牧師による銃乱射事件の背景に潜む謎、住民たちや警察からの様々な情報、スモールタウンでの人間関係。そして情報が錯綜する中、さらなる事故や事件が発生していく。読者は主人公の新聞記者と共に、情報の渦に巻き込まれていくのです。

まず現場取材の舞台が鬼リアル。読むだけで常に乾いた灼熱の地が目の前に広がっていきます。なかなか進まない情報収集や、取材の難しさが相まって、やたら喉が渇いてきちゃう。

そこに一輪の瑞々しい花ともいうべき、ブックカフェを営む可憐な女性、マンディが登場。物語が進むにつれ、彼女の過去や人間性が判明していき、そして主人公マーティンとの関わりも深まってくるのです。ここが本作の一番の読みどころといってもよく、人生のハイライトを切り取ったようで、二人の気持ちが体中に染み渡りました。

また警察官や他の住民たちも魅力たっぷりに描かれていきます。街を愛し、家族を愛し、恋人を愛し、正義を愛する、世界中どこでも見られる市井の人々。ただひとりひとりが深いバックグラウンドを背負っている。何故こんな不幸な事件が発生することになってしまったのか… 人々に心に潜む苛立ちが、読者の胸をぐっと締め付けてきます。

そして本作はジャーナリスト目線でのストーリーテリングで進行していく。街の住民から証言が得られ、次々と情報が発展していくものの、どうも真相が判然としない。誰が嘘をついて、何を隠しているのか? まさしく海外ドラマのミステリーを観ているようで、先が気になる気になる。マーティンのジャーナリストとしての活躍ぶりと、巻き込まれていくプロットが最高に気が効いてて面白いんですよね。

長い長いお話も、徐々に真相が明らかになっていく。当初からは想像だにしなかったほどに入り組んだ事件で、人間関係と背景があまりに濃厚な内容で、むしろ達成感がスゴかった。人々が幸せを願うことと、それを実現することの難しさが骨身に応えました…

人間の深層心理、業と欲望がじっくりと描かれた、味わいのある作品でした。

■きっと共感できる書評
誰しも人生うまくいっている時もあれば、何をやってもうまくいかない時がある。順風満帆の時、人は傲慢になり、うぬぼれ、他人を見下してしまうものです。

私も若かりし頃、同世代よりもお金を稼ぎ、人生経験や社会勉強ができていると自負していた時期がありました。しかし調子に乗って遊び続けていたら、いつも間にか年収も経験値も周囲に追い越されてしまったのです。そこから数年間は人生で一番キツイ時期で、ただ普通に生きるのがいかに難しいか、思い知らされたものでした。

決して傲慢にならず、でもプライドをもって最前線で戦い続ける。そして困っている人々を支えられるような人物。本書の主人公のように、もがき苦しみながらも理想に向けて邁進することが大事なんでしょうね。まだまだ襟を正して人生を歩んでいければと思いました。

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2023年11月12日

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はい、というわけでハヤカワ・ポケット・ミステリ70周年記念作品第一弾となるオーストレイリア発ミステリ『渇きの地』です


ハヤカワ・ポケット・ミステリとは?

早川書房初代社長の故・早川清が、GHQの兵隊がペイパーバックを尻ポケットに挿して持ち運んでいるのを見て、気軽に楽しめる大衆文学を届けたいという気持ちで作った世界最大のミステリ専門叢書。1953年9月のミッキー・スピレイン/清水俊二訳『大いなる殺人』(ハヤカワ・ミステリ101)の刊行から今年9月で創刊70年を迎え、来年2月には通巻2000番を迎える。(早川書房のプレスリリースより引用)

ミステリ好きなら避けては通れないレーベルですよね!
創設にはかの江戸川乱歩も関わっていたようです

はい、本編
ジャーナリストでもあるオーストレイリアの作家クリス・ハマーは本作がデビュー作で2019年度英国推理作家協会賞最優秀新人賞受賞作でもあります

物語はオーストレイリアの内陸の田舎町リバーセンドを一年前に起きた大量殺人のその後の町を取材するため、ある事件からの再起をはかるジャーナリスト、マーティンが訪れるところから始まります

関係者を取材するうちにマーティンはこの街に深く関わっていくことに…というストーリー

ポケミスで500ページ超はかなりの大作なんですが、そのほとんどがオーストレイリアの「渇き」の描写に割かれています

もちろん大嘘です
もちろん大嘘ですがなんの罪悪感も感じていません

まぁ確かにそう思わせるほどに力の入った描写が続くんですよね
山火事も起きるし

そしてもちろんこのオーストレイリアの「渇き」を克明に描写することは意味があるんですよね
そのひとつには今のオーストレイリアの現状を知って欲しいというジャーナリストととしての想いも含まれてるんじゃないかなんてこともチラッと思いました

オーストレイリアほんと干ばつがひどくて山火事や水不足のニュースもたまに目にしますよね
頑張れオーストレイリア

また、マーティンを通してジャーナリストが持つ葛藤みたいなんも吐露してるような気もしました
これはこの物語に深みを与えてる要因でもあって、すごく心に迫ってきました

ラストも良かった

そして続編もあるみたいなんで、是非とも邦訳してほしいものです

以上、オーストレイリアって言い方がただただ鼻につくレビューでした〜

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2023年10月29日

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ネタバレ

・あらすじ

旱魃に苦しむオーストラリア内陸の町リバーサイドが舞台。
その町では1年前牧師による銃の乱射事件が起きた。記者であるマーティンが取材を行った住民の殆どは牧師に対して好意的な様子…。
人気があり敬虔な牧師がなぜ銃乱射事件を起こしたのか。

・感想
牧師の動機を探るうちに色んな要素や過去が判明するタイプのストーリー。
個人的には戦地取材でPTSDとなったマーティンがこの事件の取材を通して「ジャーナリズムとは」と己の仕事、やるべき事を見つめ直していくリハビリの過程が面白かった。
どこまでも客観的にものごとを見て、書いてきたマーティン。
初めて当事者になる事で今までの自分の無感覚や「真実以外への無関心さ」を自覚するくだりは良かった。
(本邦のマス◯ミは真実とかどうでも良いらしいけど)「真実を知る権利」ってなんだろう?
それを錦の御旗に横暴なことしてる印象あるからあんまりあの手の人たちは好ましくないけど、この作品は作者自身がジャーナリストだったらしく葛藤や矛盾などが書かれていて面白かった。

三部作らしく解説に残りのあらすじ載ってたけどなんか意外な展開になりそう。
オーストラリア舞台の作品は初めて読んだけど、日本の公安的立ち位置のキャラが結構いい味出してた!

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2024年02月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

作者の経歴がそうさせるのか、描写が鮮明に感じた。
何の予備知識もない舞台なのに、没入感がすごかった。事件の展開に夢中になるのはミステリならではのものだけれども、自分もそこにいるような感覚は珍しいかもしれない。
中盤以降、物事が大きく動くのに、街は旱魃で動きがない。対比がよかった

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2024年01月30日

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ネタバレ

面白かったけど、主人公の途中の解説が長いせいか、飽きそうになった。
解説のせいで、複雑な話が判りやすい面もあるけど、もう少し何とかならないのかとも思う。

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2024年01月16日

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ネタバレ


旱魃と不景気と暑さでいらいらしている人たちにいらいらする時間も長いし、スクープ抜いた抜かれたもめんどくさいと思いましたが、
じわじわと真相が明らかになっていく過程は読み応えがありました。

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2023年11月20日

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オーストラリア内陸の町リバーセンドの教会で、牧師が銃を乱射し五人を殺害する事件が起きた。一年後、町へ取材に訪れた新聞記者のマーティンは、住民が牧師を庇う証言をすることに気づく。だが、町外れに住む男だけは、住民の言葉を信用するなと警告するのだった。そんな中、山火事が町を襲い、火災現場からかつて行方不明になった観光客の他殺体が発見される。この事件にも牧師が関わっていたのか―?牧師の過去と、彼が事件を起こした真の理由とは。

オーストラリアの暑く乾いた田舎町のブックカフェから始まる物語。報道内容が二転三転して、トラブルになること間違いなし。推理の過程で主人公があれこれ悩み過ぎ。だからこの厚さになったのか。

先日の神保町ブックフェスティバルの話の続き。HPB70周年記念のトートバッグを販売していた。ポケミスが70冊入るのが売りだが、社員さんによれば、80冊は入るそうだ。他のグッズについてたずねたところ、ブックカバーの案が出ているとのこと。楽しみです。

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2023年11月03日

Posted by ブクログ

なかなかに読ませる話だが、主人公の一人思考が濃すぎて、
もうすこし薄くて良かったか。しかし、みな嘘ばかりついてるな。続編でるのか?

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2023年10月31日

Posted by ブクログ

SL 2023.11.13-2023.11.15
オーストラリアの内陸の町リバーセンドで牧師が教会で銃を乱射し五人を殺害した。事件の一年後取材のためやってきた新聞記者のマーティン。
住民たちを取材していくうちにかえって事件の謎は深まり、マーティンは町にはまりこんでいく。
いくつもの事件が錯綜して飽きさせない展開で先を読ませる。

裏の取れていない記事を書いて窮地に陥ったりして、報道のあり方も考えさせられる内容だった。
「真実を明かすことで誰が傷つこうとかまわない」のか、ジャーナリストは。

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2023年11月15日

Posted by ブクログ

オーストラリアの架空の町が舞台のミステリ。
主人公はいわくつきの記者。事件は1年前に決着したものだが、何故評判の良い牧師が5人もの人を射殺したのか?との思いに押されて始まる。
ポケミスで500ページ超えだからなかなか躊躇されるかも、とは思うが、読んで損はない。主人公の新聞記者としての哀しさも良かった

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2023年10月24日

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