【感想・ネタバレ】検証 ナチスは「良いこと」もしたのか?のレビュー

\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

近頃インターネット上で「ナチスは良いこともした」と主張したがる人が増えているとか....あまり知識のない自分はこの本でアウトバーンの建設、フォルクスワーゲンの開発、歓喜旅行団の事業 、失業対策のことなど知りました。日本は女性の地位が低いと言われていますがヨーロッパ諸国でもつい最近まで日本と何ら変わりなかったことも知りました。男性だけでは人類は成り立たないのに何故こんな状態が出てきたのだろう。いつも思うのだが大衆も自分たちの疑問に思うことを大いに話すことが独裁を止められるのではないかと思う。しかしそれには確固とした自分を持っていないとね。

1
2024年02月04日

Posted by ブクログ

定期的に繰り返される「ナチスは良いこともしたのだ」という発言や主張に対して、そんなわけないじゃん、で片付けるのではなく、歴史学の手法で丁寧に反証していく。

ある「事実」を、文脈や全体像、目的、背景までを視野に入れて捉え、「解釈」すること。そこから自分の「意見」を持つこと。それが「歴史的思考力」を養うことでもある。

ここで示される検証方法は、「歴史的思考力」とは何か、どうやって思考すればよいのかを知る手掛かりとなると思う。

0
2024年04月22日

Posted by ブクログ

正直、ナチスは良いこともしたと思っていた側の人間だった。
そこに対してしっかりと反証を持ってきて、全部プロパガンダだよと突きつけてくれる素晴らしい本。
ナチスに限らずだが、歴史認識というものは本当に難しいし、「ナチスは実は良いこともしていた」という面白く刺激的なナラティブにはどうしても心惹かれるものがある。
こういった本がちゃんと出版されることに感謝。

0
2024年03月30日

Posted by ブクログ

強い。
文書で戦うとは、こういうことか。ちょっと違うか。でも、徹底的に事実を並べ、検証する事の重要さを学べる。学生入門書としては本当に最適。

・ポストトゥルース
・歴史書

0
2024年03月08日

Posted by ブクログ

「はじめに」では、歴史学において重要なのは〈事実〉〈解釈〉〈意見〉の三層構造で検討することだと説明している。そのあとで、ナチスの個々の政策について歴史的経緯、歴史的文脈、歴史的結果という三つの視点から整理して検討しており、練習問題と解説であるかのようにとてもわかりやすい。このような視点で考えることは歴史学に限らず重要だろう。「あとがき」にあるポリコレへの反発という考察は納得のいくものであるだけに気が滅入るが、専門家は反発を覚悟しつつも粘り強く専門知識を伝える努力を続ける必要があるとしてTwitterで実践している著者を見ると心強く思う。

0
2024年02月24日

Posted by ブクログ

ナチ政権についての知識がほぼないまま読み進めたけど、平易でかなり読みやすかった。
政策について事実、目的、結果を順に説明して評価が書かれてあり、表面や小粒の事柄を捉るのではなく全体的な目的から評価する重要性にも気付ける。

あと最後の章で、ナチスは良いこともしたと主張する人たちの動機まで考察されていたのが興味深かった!

0
2024年02月19日

Posted by ブクログ

面白い。ナチスってなんだろうって感じの、予備知識が全然ない人にこそおすすめ。国民(国家)社会主義が何か、ソビエトの社会主義とどう違うか、みたいなの基本的なところから話をスタートしてくれるからありがたい。

著者二人とも、実際の検証を進める章では、とても理性的にナチスの動きを分析している印象。①政策の経緯 ②目指したもの ③結果 で分けるのはとても分かりやすくて良い。

事実、解釈、意見の三つの層を意識しながら、歴史を振り返ることはとても大事。フェイクニュースを簡単に信じれてしまう今の世の中において特に。
決まりきった史実をに反発して快感を得ようとしてる歴史修正主義には、暇な人たちなんだなと同情するしかない。何事にも疑問を持つことはたしかに重要だけど…

0
2024年02月15日

Posted by ブクログ

知らなかったが、2021年2月に、ヒトラーの大ファンと言う女子高生の小論文が称賛されるようなツイートがあり、ちょっとした騒ぎとなったようだ。
折しもトランプ元大統領が、在任中にヒトラーは良いことをたくさんしたと報じられたり、欧州ではヒトラーの行動に賛同を示す極右が台頭もしてきている。更に我が国の、何かにつけてとんちんかんな発言をする、あ◯う副首相の「ナチス政権を手口を見習う」問題があったり、否が応でも興味をひく主題だ。

このような背景には何があるのか、専門家の立場で、所謂「良いこと」とされる政策一つひとつに対して検証を加えて、結論を導く。
当然と言えば当然かも知れないが、真に個人の幸福を求めるものではなく、プロパガンダに満ちた政策には少しの肯定感もない。
その時代背景や具体的な数値を元に、「良いこと」とは、ナチスが扇動しただけのことだったと言う主張が理解出来たし、改めて時の為政者に絶大な権力がある時の恐ろしさを感じるところとなった。
ただ検証の根拠の一つに、政策の独自性があげられていたが、別にそれが二番煎じであろうと、良い悪しを判断する根拠には乏しいと感じた。(無論ヒトラーを肯定する気持ちなど露ほどもないが)

「おわりに」にもあるが、著者も反駁は想定しており、以下の言葉を留めている。
「歴史知識」と「歴史意識」は分けて考える必要があるという。
学校や大学、マスメディアなどを通じて伝達される前者に対し、後者は「過去に対する感情的イメージ」であり、それこそが「学んだ歴史知識をどのように解釈し、利用するか」を決定するのだという。「過去」について「自由」に発言したい、そして自分たちこそ「真実」を知っている。そういう感情が先にあるために、教育やメディア、研究などによって正確な知識が伝えられれば伝えられるほど、ますます反発を強めて「逃げ道」を探すようになると言う。
また、「売らんかな」で出版されるセンセーショナルな書籍では、人目を引く主張が行われているが、ナチスの戦争目的や人種主義、嘘や不正と切り離した「先進性」の評価はあまりに一面的で、とうてい学術的検証に堪えるものではない。
彼らの政策は全て、ナチ体制が来るべき侵略戦争のために軍備拡張を優先した結果だった。

0
2024年02月14日

Posted by ブクログ

育休、アウトバーン、環境保護… ナチスを絶対悪とする論調に反発するように取り沙汰される各種政策を批判的に検証。先進的に見える施策も数々の犠牲と差別の上に成り立っていた事が分かります。ブックレットながら非常に読み応えある好著。おすすめです。

0
2024年02月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 巷にはナチスやヒトラーを擁護・支持し、他の戦争犯罪や政治的弾圧・暴力を相対化せんとする主張がかなり蔓延っている。本書ではそのような主張を妄言と即座に否定せず、ナチズムやナチ体制下の各種政策について一つずつ検証を行っている。
 本書にて何より興味深い箇所は、「はじめに」で述べられる歴史学における姿勢--<事実><解釈><意見>の三層に分けて検討することである。筆者によると歴史学では<事実>レヴェルで片付けられる問題は少なく、2番目の<解釈>の層が最重要であるという。たとえ<事実>としては素晴らしく映る事象でも、歴史研究が積み重ねてきた厖大な知見=<解釈>を経て<意見>に辿り着かなければ、全体像や文脈が見えぬまま誤った判断を下すおそれがある。この歴史的事実を扱う際の姿勢はどのような問題においても当て嵌まるであろうし、今後も決して忘れるべきではないだろう。本書はナチス/ヒトラー研究の分野としても歴史学の分野としても適切な入門書と言える。

0
2024年01月20日

Posted by ブクログ

ナチスの功績を一つ一つ丁寧に検証し論じたもの.「良いこと」と世間で言われていることに惑わされないしっかりした目が必要だ.
「ドイツ人は最初は借金で生活し,次には他人の勘定で暮らした」に深く納得.ナチ体制はまさしくならず者国家である.

0
2024年01月15日

Posted by ブクログ

歴史的事象を現在の価値観を俯瞰しながら、資料を元に丁寧に解説している。当時の状況を知るだけでなく、短絡的に自己中心的な狭い視野で物事を捉えないことの大切さとも学べる。

0
2023年12月27日

Posted by ブクログ

素晴らしい。
SNSに徘徊するクズたちのかましツイートを正確に、そして丁寧に優しく粉砕していく。
そもそも知識とは、歴史認識やその文脈、前後関係等を加味した上で発信しなければ、ただの断続的な豆知識レベルだし、そんなもの実用性もない上に、あげくの果ては、誤った認識を多く生み出してしまう可能性もある、まさに繊細で複雑なものだ。
だからこそ専門家は入念に下調べし、資料を漁り、多数の書物を読破する。
ナチスなんて特に一国家レベルの壮大な規模、一歩間違えれば浅すぎる認識に陥るし、そんな浮薄な人間にしっかりとした批判を下す著者のその姿勢からは、専門家の崇高な意地を感じた。

0
2023年09月01日

Posted by ブクログ

・失業対策や家族政策、アウトバーン建設など、ナチスの政策の中で良いことと言われることもある政策。判断するためには、事実を押さえることはもちろん、オリジナル性やその目的、背景もきちんと理解することが必要。そうすれば決して評価できないとの論評。事実だけでなく解釈の重要性を認識


・事実、解釈、意見という三層構造は、歴史的思考力の前提としていよいよ重要になる。事実から意見へと飛躍することの危うさは、何度でも指摘しておく必要がある。意見を持つことはもちろん自由だが、それはつねに事実を踏まえた上で、解釈もある程度はおさえたものでなくてはならない。

0
2024年05月12日

Posted by ブクログ

部分だけ切り取って「良い」とか「悪い」とか判断する事の意味のないことを改めて感じる。ちゃんと部分の話もしつつ政策の意図や歴史意識にも触れて語られる文章は読みやすく理解しやすかった。

0
2024年05月10日

Posted by ブクログ

丁寧にならずもの国家たるナチスを検証した書籍。各種政策の良いと言われる面と実態に触れ、経済浮揚やアウトバーン、自然保護や健康増進などを解説。
オリジナルなものはなく、組み合わせというものばかり、そこに問題がなくとも通底するのは包摂と排除。メリットを享受しうる対象は"一般的"ドイツ人、そしてそれ以外はどうなった?
物事は一面だけ切り取るのではなく文脈・背景含めてでなければ見誤ると言うことかと思う。

0
2024年04月25日

Posted by ブクログ

ナチス礼賛の本かなと思ったけど、しっかり批判してあった

ナチスの政策など褒めている人など居るがそれがどう違うのか具体的に比較されていて面白かった

0
2024年03月28日

Posted by ブクログ

これまでの70年以上にわたるナチズム研究の成果を踏まえて、定期的に繰り返される「ナチスは良いこともした」論の検証を行う。具体的には、「ナチスは良いこともした」として言及されることの多いアウトバーン建設をはじめとする経済政策、労働者政策、家族支援政策、環境保護政策、健康増進政策等を取り上げ、その目的や歴史的文脈も踏まえて分析し、いずれも様々なまやかしや不正、搾取や略奪と結びついていたことは明白で、肯定できるものはないと断じている。
アウトバーンの経済効果について、乗数効果を考慮せず直接的な雇用創出効果のみでかなり小さかったと評価しているのは過小評価ではないかということなど、いくつか気になる点はあったが、全体を通して見て納得のいく検証内容であり、やはり「ナチスは良いこともした」とは言えないと確認できた。
本書で述べられているように、歴史学においては、「事実」「解釈」「意見」の三層で考えることが必要であり、歴史的事実の一面だけを取り出すのではなく、その評価は歴史的文脈全体を見て判断しなければならないと強く感じた。このことはナチスだけでなく、「日本は良いこともした」「○○には良い面もあった」という主張がされがちな、日本の戦前・戦中の政策(朝鮮半島・台湾の植民地支配など)に対する評価についても妥当しよう。
本書のような歴史学者による歴史修正主義的な俗説に対する丁寧な反論は、一般に対する影響はそんなに大きくはないのかもしれないが、歴史学研究の蓄積を無視した歴史修正主義に抗していくために有意義な試みだと敬意を表したい。

0
2024年03月24日

Posted by ブクログ

全てがパターン化した論調で却下されていく。つまりナチスは一つも良いことはしていないのだ。この結論はあくまで歴史学的な手続きを経た上でのことだが。事実、解釈、意見の三層とりわけ解釈の層の重要視だ。

人種、セクシャリティ、障害、ジェンダーにかかわる優生思想の根深さを感じた。また、戦争遂行は恐怖からだけでは進まない。飴も必要なのだ。

0
2024年03月20日

Posted by ブクログ

ナチス台頭前と状況が似てきているのではないか。政治は政権を握ったものが勝ちだと思うが、現在の政治状況は、方針が明快だった安倍政権より何をやっているか判らない岸田政権の方がむしろ危険だと感じる。

0
2024年03月10日

Posted by ブクログ

通読して全編エキサイティングかというとそうではないが、toxic な現代SNS史学トークにおける vaccine として配布されたものとしては有り難く接種させてもらった。特にアウトバーン政策の評価を軽く流した直後に「国際社会から見えないように発行し続けた疑似国債が1938年までに国家支出の61% かつ国民所得の21%」(小野寺・田野 2023:49下段)とあり、空いた口が塞がらなかった。ポーランド侵入に至るまでナチス政権が東西欧州に対して好戦的(=襲いかかる意志あり)だったことはある程度理解していたつもりだったが、政権奪取前後からそんなむこうみずな錬金術を使っているということは、もはや“後で人を襲って収奪する”ことしか念頭に無かったと言っても間違いではないレベルで、末恐ろしくなった。実際本書の後半でも、デートレフ・ポイカート『ナチスドイツ: ある近代の社会史』を引きながら「ドイツ人は最初は借金で生活し、次には他人の勘定で暮らした」と、「ならず者国家」のならず者性がどこにあるかを的確に要約してみせている。

0
2024年01月29日

Posted by ブクログ

そうですよねという結論に落ち着いて安心したけど。
専門家が「いちいち火消しするほどのものではないだろう」と沈黙していると、偽書や江戸しぐさや似非科学や最近では土偶の“新”解釈のような、専門家ではない人による言説がネットで一気に拡散して賛同者を得てしまうから、怖いな。
中二病的な歴史修正主義者が次々わいてくるのを見るにつけ、日本人の知性が低下してきているのかなぁと心配になる。

0
2024年01月20日

Posted by ブクログ

どんな意見を持つことも自由であり誰にも制限されない権利はあるけれど、少なくともそれは客観的事実に基づく正しい解釈でなければならないということを特にこのトピックでは再認識させられる。
ナチスの功罪を論じるに当たって、そもそもが他国や特定の集団・人々からの収奪や排斥を前提としているということは忘れてはならないと思う。

0
2024年01月20日

Posted by ブクログ

「ナチスは良いこともした」という議論が定期的に繰り返されている。
「はじめに」がとっても重要なことを言っていると思う。
著者はE Hカーの叙述を紹介する。「カエサル以前も以降もルビコン川を渡った人は無数にいる。カエサルの事実が切り取られて重要なのは、歴史家がそこに大きな歴史的重要性を見出すからだ」
 歴史の一断面を切り取って善悪を判断することは、しばしば間違う。切り取れてきたものの妥当性を相互チェックするというのが、学問本来のあり方だろう。
それには、「事実」「解釈」「意見」の検討が重要である。「解釈」までは、目的や文脈などで検証が可能であるが、「良いものは良いのだ」という「意見」に対してはどう対処するか。著者はだからこそ「解釈」が重要だという。「事実」から一挙に「意見」に飛躍すると、現代社会でそれが共通了解になることはおそらくないだろう。と著者は言う。(←ホントにそうか?日本はそうなっているのではないか?)

以下個別的検証
「ドイツ人は熱狂的にナチ体制を支持していたのか?」
←支持する理由は一定あったし、人々はそれによる利益も享受されていた。しかし、「熱狂的」とは言えなかった。「強制」という面もあった。

「経済回復はナチスのおかげ?」
←大きくいえば、過剰な財政支出に基づく軍需経済で、破綻の危機と紙一重のいわば綱渡りの体制だった。しかも、「収奪の経済」「外国人労働者の強制労働」があった。
←この辺りは「事実の検証」のみである程度立証できる。 

「ナチスは労働者の味方だったのか?(福利厚生措置)」
←①先駆的な取り組みではなかった。②目的は労働者の管理・統制のためだった。③実際に労働者の生活は改善もされなかった

「手厚い家族支援?(結婚資金貸付制度)」
←①ナチスオリジナルの政策ではなかった②目的は戦争を戦い抜くため。しかも社会主義者、ユダヤ人、障害者などは排除された③確かに子供は増えた。しかし政策のためではなく、世界恐慌のために控えていたカップルが、景気回復のために一時的に子供を産んだだけ。
「先進的な環境保護政策?」「健康帝国ナチス?」
等々も同じような経過を辿る。

著者は「おわりに」で、
「「ナチスは良いこともした」と主張する人たちにあっては、そうした反権威主義的な姿勢はいわゆる「中二病」的な反抗の域を出ず、(略)過去の研究の積み重ねから謙虚に学んで、それを批判的に乗り越えてゆく姿勢はほとんど見えない。」
と述べている。

ナチスに関する歴史については、こんなにもわかりやすい「入門書」が作られるのに、どうして日本の朝鮮半島への植民地支配については、ネットではなく、書き捨ての一時本ではなく、きちんとした「入門書」が作られないのか?

「日本は朝鮮半島に良いこともした」という「解釈」や「意見」に対して、私たちはどう向き合えば良いのか。
それを考える契機にしたいと思う。

0
2024年01月17日

Posted by ブクログ

SNSでは度々、ナチスは良いこともしたという言説を垂れ流す輩が現れる。その度に専門家たちが反論している。
この流れはもう何度やるんだってくらい繰り返されており、正直こちらもまたかという気持ちでいる。
その最終回答として、ドイツの現代史を専門とする小野寺拓也さんと田野大輔さんのお二人が、ドイツは良いことをした言説の悉くを喝破していく。

本書はナチス関係の入門書としては機能しないので、まず始めに新書なんかである程度知っておいてから読んだほうが理解が進むと思う。
浅はかな言説にはとらわれずに勉強することの大事さも教えてくれた。

0
2024年01月15日

Posted by ブクログ

昨今のSNSで定期的に話題となる「ナチスは良いこともした」という言説に対して、丹念にナチスを巡る歴史学の研究を追いつつ、実証的な検証をまとめた1冊。非常に薄い岩波ブックレットの一冊ということもありページ数こそ少ないものの、シンプルながら非常に理路整然と著者の主張がわかる1冊となっている。

本書ではよく耳にするようなナチスによるドイツの急速な経済回復、子育て支援などの育児政策、環境保護政策など、いわゆるネトウヨ的な人種がSNSでつぶやく種々の「ナチスは良いこともした」という主張1つ1つに対して、最新の歴史学の研究を踏まえて実証的な見解を示す。主張によってはある局面だけを取り上げれば良いことをしたと言える側面が多少あったとしても、政策の影響をトータルで良かったと言える類のものではない、というのが本書での結論である。

こうした実証を通じて、物事の価値というのは一側面から見るのでは決してわからず、多様な観点から見て初めてクリアになるものである、という当たり前の認識論を痛感させられる点で、一側面(と言えない場合すらあるが)から見ただけでそれが全てであるかのように語るSNS時代の言論やニュースを冷静に見ることの大切さを教えてくれる。

0
2024年01月14日

Posted by ブクログ

事実だけで評価することはとても危ういことだということを改めて痛感させられた。

私もヒトラーの演説がうまかったからなどと漠然とした認識しかなかったが、これを読んで、①どのような歴史的背景・文脈で、②何が目的だったのか、③そして、それがどのような結果をもたらしたのか

というように多角的に検証して「解釈」していくことがとても大切なのだ。

「歴史知識」と「歴史意識」を分けて考えること。

それを教育現場の「探究」で、どのように担保していくかが問われていくのだろうなぁと思った。

0
2024年01月07日

Posted by ブクログ

岩波ブックレットなので、事実も意見も、まず共通して持ち合わせるべき基本的なところを示しただけの一冊。深く知りたかったり、意見を言いたかったりするのなら、本書を踏まえた上でさらに探求すれば良い。
歴史と向き合う一冊として、ケーススタディとして読むことができる。

0
2023年12月28日

Posted by ブクログ

ナチスは良いこともしたのか?著者の意見は著者自身の「三十年くらいナチスを研究してるけどナチスの政策で肯定できるとこないっすよ」というツイートに集約されているといってよいだろう。この本の中でも、よく言われるナチスがやった「良い政策」が本当はどんな物だったかをあらわにしていく。
ただ「良いこと」とはなんなのかという価値の問題は簡単に測れないのも事実だと思う。ある政策が実際は他の国でも行われていてナチスのオリジナルではない、というのは良い悪いには関係ないように思えるし、戦況が悪化して最初に言っていた政策が実行されなかったというのはどう評価すべきか、とも思う。
ナチスが作ろうとしたアーリア人のドイツに含まれる人にとっては受け入れられる政策であったのだろう。異民族を暴力的に排除する歪んだ社会を希求したのは、第一次世界大戦が共産主義とユダヤ人によって背後から刺されたため悲惨な敗戦に終わったという歪んだ認識がヒトラーはもちろんドイツ人の中にもあったことが背景にはあったのではないだろうか。そのドイツ人達にとっては古き良きドイツを取り戻すナチスは全体としてはよい方向にこの国を向かわせている、と感じたのではないか。それがたとえユダヤ人の廃絶という絶対悪的な政策であったとしても。(もちろん公平な目で見ればこれは明らかに「悪い」ことなのだけど)
政策が結果として実を結んだのかという視点での「良いこと」とその時の国民の要求に合っている「良いこと」というのは違う物だろう。そういう意味ではなかなか簡単に「良い悪い」で言い切ることができないことが多いと思う。

読みやすさは評価したい。

0
2024年04月08日

Posted by ブクログ

たまたまネットで見つけました。ちょっと難しいですが、何とか読み終わりました。そうなのかー!納得です。

0
2023年12月31日

「学術・語学」ランキング