【感想・ネタバレ】BUILD 真に価値あるものをつくる型破りなガイドブックのレビュー

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Posted by ブクログ

心のこもったメッセージがたくさん詰まった良著
一つずつの話がコンパクトにまとまっており、読みやすくて良い。
時間がある時にもう一度読んでみたい
エピソードもすごく参考になる。

メモ
・辞めます
  ミッションに情熱を感じられなくなった
  手は尽くした

・最初の冒険
  意思決定に必要なツール 
   ビジョン、顧客の情報、データ

・最高のアイデアには次の三つの要素が揃う
  なぜへの答えがある。なぜ顧客がそれを求めるか
  多くの人が日常生活の中で直面する課題を解決する
  あなたにつきまとって離れない。リサーチし、知識を得て、試してみた結果、どれだけ実現困難かわかってもそのアイデアのことが頭から離れない

・優れた判断をするには遅い思考を実践する。スローダウンが必要。

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2024年01月27日

Posted by ブクログ

【はじめに】
トニー・ファデル。この本を読むまでその名前を知らなかったのだが、AppleでiPodとiPhoneの開発をリードし、米国で一世を風靡したサーモスタットのNESTを創業(最終的には2013年にGoogleに32億ドルで売却)したこの上なく素晴らしい実績を残した人だということを知った。大失敗に終わった伝説のゼネラルマジック社でエンジニアとして働き、フィリップスでのビジネス向け携帯端末プロダクトマネージャ(CTOの一人)を経て、AppleとNESTでの成功を築いたスター経営者だ。エンジニアからマネージャを経て経営者になるというとても分かりやすいが言うほどには簡単ではないキャリアを重ね、今では次世代経営者に向けてのメンターと資金提供を行っている。

成功者自身による成功譚は大変に面白い。そこに熱量や本人にしかわからない事実や感情が乗っかってくるからだ。NIKEの創業者フィル・ナイトの『シュー・ドッグ』、Google Mapのもととなったキーホールの共同創業者ビル・キルデイの『NEVER LOST AGAIN』、Apple共同創業者スティーブ・ウォズニアックの『アップルを創った怪物』などいくつもその例を挙げることができる。さらに本書は、著者の経験を軸にして、そこから得られたビジネスマン、特にプロダクトマネージャやプロダクトを届ける企業の経営者が持つべき資質や能力に関する洞察が融合されている。その点において、Intel創業者のアンディー・グローブの『パラノイアだけが生き残る』や『HIGH OUTPUT』にも比肩する本だと思う。
副題は”An Unorthodox Guide to Making Things Worth Making”~ 「真に価値あるものをつくる型破りなガイドブック」とあるが、まさにここに自伝ではなくガイドとして読まれたいという著者の意志がこめられている。読まれるべき名著。

【ゼネラルマジックからApple、そしてNESTへ】
ゼネラルマジック社のプロジェクトは(彼からすると)突然に終わりを迎えた。その経験を買われて情報端末を作るために入社したフィリップスを辞め、その後のリアルネットワークスはすぐに退社した。その後創業したスタートアップが瀕死の状態のときにAppleから声がかかり、その入社からわずか10か月で初代iPodを販売開始まで持っていった。スティーブ・ジョブズのもと、彼にしかできない芸当としか思えない。そこから18世代にもわたるiPodの開発チームを率いたあと、伝説のプロダクトでもしかしたら至上もっとも多く売れたプロダクトかもしれないiPhoneの開発を主導した。このAppleでの輝かしい9年を経て、NESTを創業する。このストーリーをなぞるだけでも心が躍るようなストーリーになりそうだ。彼は自らが世に送り出すプロダクトによって、何度か多くの人の生活に大きなインパクトを与えてきた。そこにはつねに明確な「なぜ」があった。

前半では、まずはゼネラルマジックやフィリップスでの失敗の経験から学ぶことの重要性が綴られる。そのことを著者は、「社会に出るとは、いつの日にか多少うまくやれるようになるまで、ひたすら失敗を重ねていくチャンスを手にすることだ」と表現する。他の個所でも、失敗をしていないのは、十分に挑戦していないからだともいう。どんな仕事に就いてもいいが大手戦略コンサルにはなってはいけないと言う。そこには失敗できる要素がないからだ。また会社には挑戦を邪魔する多くのクズがいるとして、ご丁寧にその分類と対処策を教えてくれる。著者は基本的には辛口で、一緒に働くとどうも大変そうだが、書きっぷりは面白い。

そのキャリアの中で、著者が本気で取り組むべきものは大きくぶれなかったこともわかる。
「あなたが本気で好きになれる仕事、最終的に成功者となれるようなキャリアを見つける一番の方法は、自然と興味を惹かれるものを追いかけ、どこで働くかを決める段階でリスクを取ることだ」
ゼネラルマジックを選んだこと自体は決して失敗ではなく、取るべきリスクであり、それは著者の人生の中で十分に報いられたとも言える。

iPodやiPhoneの開発エピソードからは、プロダクトを生み出すまでの具体的な苦労が語られるが、そこからはストーリーの重要性や顧客に向き合うこと、そして「なぜ」に立ち帰ることの重要性が語られる。
スティーブ・ジョブズのプレゼンがスムーズで人の印象に強く残るのは、彼がそのストーリーをそれまでに社内で何度も何度も繰り返して語り続けてきたからだという。そしてそのストーリーの最初に来るのが「なぜ」だ。なぜ、このプロダクトが存在する必要があるのか。なぜ重要なのか。なぜ人はそれを必要とするのか。なぜ夢中になるのか。「何を」に囚われることなく、その前提になる「なぜ」にこだわることが必要なのだ。そして優れたアイデアには、その「なぜ」への答えが含まれているのだ。
そのストーリーはプロダクト開発の最初に考えられるべきものである。そのためにプレスリリースを開発の前に考えるべきだというのが著者のアドバイスだ。このリリースノートを書くというのは、IT界隈では有名な話になっていて、自分も書くように言われたことがあった。難しく、またそれが重要であることはよくわかる。

そして、それをどう伝えるのかもまた重要である。
「メッセージこそがプロダクトだ」と著者は言う。
顧客にとってのアナロジーの重要さは、iPodの「1000曲をポケットに」がとても強力なメッセージとなって果たした役割からよくわかるという。このメッセージによってiPodはその圧倒的な価値を端的に示すことができた。

iPod/iPhoneの開発譚では、そこから得られるプロダクトマネージャのあるべき姿に対する分析と指摘が白眉とも言える。
曰く、
「プロダクトだけがプロダクトなのではない。ユーザーのエクスペリエンス全体、つまりユーザーがあなたのブランドを始めて知ったときから、返品するか捨てるか、友人に売ったり中身をリセットするなどして別れを告げるまでの一連のプロセスが、あなたのプロダクトなのだ」

プロダクトマネジメントについての語りは深くて同時に説得力がある。プロジェクトマネジメント、採用とチームビルディング、リスクマネジメント、グロースマネジメント、マーケティングなどの役割と意味を教えてくれる。プロダクトマネジメントとプロダクトマーケティングは一体であり、ひとつの仕事であるべきだとも。
またプロダクト主導を進める上で、「従来型の歩合制は過去の遺物だ。時代遅れで最悪の行動を助長する」としする。セールスとマーケティングは違うとドラッカーが言ったことをとても説得力ある形で理解して腑に落ちることができたのがこの点だ。コミッションの文化、セールスの文化が会社自体を害すると。これは本当に難しい問題ではある。

NESTに関しては、新しいプロダクトを作って市場で既存プレイヤから顧客を奪うということと、その後のGoogle売却の顛末がとても興味深いエピソードで満載になっている。NESTのプロダクトで自前工事の取付用ドライバを付属させたエピソードが効いている。ドライバがストーリーの一部になった。こういうところこそが重要なのだ。
(NESTについては、サーモスタットの北米でのポジションを知っている必要があるかもしれない。日本でサーモスタットと言ってもほとんどだれもピンとこない。でも、当時はスマートホーム・ホームIoTの文脈でとても有名な事例だった)

ここでの体験から、会社を作るとはどういうことか、CEOになるとはどういうことか、取締役会はどうあるべきか、会社を売ることもしくは買うこととはどういうものなのか、そしてCEOを辞めるとはどういうことなのかが丁寧に書かれる。

【まとめ】
この本では、著者の何人とも代えがたい体験に裏打ちされた素敵な内容が目白押しで出てくる。そこで使われる言葉もまたとても素敵だったりする。おそらくは著者のメッセージをいかに伝えるのかに心を砕き続けたことが、使う言葉も含めて染みついているのだろう。

起業や買収売却、そうでなくても大きな意思決定について、曰く、
「完璧なデータをそろうのをまってはいられない。そんなものは存在しないからだ。腹をくくって未知の世界に一歩踏み出すしかない。学んできたすべてを動員し、次に何が起こるかを知恵を絞って予想しよう。人生とはそういうものだ。決断を下すとき、データは参考になるが答えをくれるわけではない」

また同じく、
「これは冒険だ。冒険が計画どおりにいくわけがない。だから楽しい。だから怖い。だからやる価値がある。だから深呼吸して、最高の仲間を集め、荒野に向けて歩き出すのだ」

また曰く、
「顧客を抜きにした数字は空疎であり、コンテキストを抜きにした事実には意味がない」

さらには、
「ソニーはiPodを笑った。ノキアはiPhoneを笑った。ハネウェルはネスト・ラーニング・サーモスタットを笑った」
こんなことを言えるのは著者だけかもしれない。かっこいい。

最後に著者は、
「突き詰めると、重要なものは二つしかない。プロダクトと人だ。「何を」つくるか、そして「誰と」つくるかだ」
という。

この本の中では、著者がビジネスの上で関係をもった多くの人が出てくる。もちろんスティーブ・ジョブズもその一人だし、Googleのセルゲイ・ブリンやラリー・ペイジもそうだ。Androidを作ったアンディ・ルービンもゼネラルマジックでの同僚でAppleに買わないかと持ち掛けてきたというエピソードで出てくる。そこからは人、そしてチームの重要性が強調される。当たり前ではある。でも、簡単ではない。自分ももっと積極的に人に絡んでいくべきなんだろうなと思った。

そして、この本の中心でもある「プロダクト」は一連のエクスペリエンスだということが何度も強調される。自分もある新製品のプロダクト開発の責任者(たぶんプロダクトマネージャの位置づけだったのだと思う)になったことを思い出して、知識は薄っぺらだったし、考えも甘かったということを痛感した。

何か新しいことをしたいと思う人、特に若い人には、まずもって面白いので手にとって読んでほしい。

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2023年12月31日

Posted by ブクログ

昔のアップル社の話題が満載で、個人的にノスタルジックな感情で楽しめました。経営者、管理職、将来管理職のポストを狙ってる方だけでなく、一般社員の方も開発部の方には特に読んでいただきたい。トニーがハードウェア開発部にいた頃のアップルが懐かしい。iTunes, iPod, iPad, iPhone が次々と発表されたいい時代でした。

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2023年12月27日

Posted by ブクログ

1人の伝記の中に色々なエッセンスが詰まっていて、実績も豊富で説得力が高い。他の自慢伝記とは少し違います。

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2023年11月09日

Posted by ブクログ

久しぶりにビジネス書で大当たり。経営とエンジニアリングに関わる人は首がもげるほど頷く内容と驚きの内容なのでは。

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2023年08月23日

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