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Posted by ブクログ
【月刊サギサワ】は、鷺沢萠が23歳〜25歳の時に書いた連載エッセイである。
エッセイというよりは日記に近いものがあって、鷺沢萠をとても身近に感じることができる。
基本的に酔っ払ってるか、麻雀してるか、締め切りに追われてる生活は、昔ながらの「飲む、打つ、買
う」的な文筆家みたいで凄まじいものがあるが、あの美貌と当時20代前半という若さでのこの生活だか
ら尚更、鷺沢萠という人間のスケールに驚くばかりである。
この頃の鷺沢萠は、ちょうど韓国留学をしている時期でもあり、その様子がうかがい知れて嬉しかった。
この韓国留学を経て、ぼくの大好きな【君はこの国を好きか】や【さいはての二人】が書かれたのかと
思うと、嬉しくてたまらなくなる。
このエッセイから垣間見える鷺沢萠は、とても豪快であり、強気であり、しかし、とても繊細な女性であ
り、寂しがりやで弱く儚い。
本当に絶妙なバランスで保たれている精神というものが、この頃からチラチラと顔を出していくのも見え
てなんだか切なくなってしまう文面もある。
生きていれば今年40歳だった鷺沢萠。
まだまだ名作を世に送り出していたに違いない。鷺沢萠の作品について、ここで書くたびにぼくは
「惜しい」とか「実に残念だ」とか書いているが、やはり、何度でもそう思ってしまう。
でも、こうして彼女が綴った活字が残っている限り、ぼくらが目にする限り、彼女の世界は未来永劫に
語り継がれ、残されていくのであろう。
文豪とはそうものである。