【感想・ネタバレ】芸能の不思議な力のレビュー

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Posted by ブクログ

何だか怖くて近寄り難い作者の『芸能の不思議な力』(なかにし礼著:毎日出版社)読む。そう感じていたのは類い希な『観察者』だったからだ。
「絶望を抱えた歌姫が至高の性愛を歌う。悲しみもだえる者が星と輝く。虚と実の間にいちばん深い喜びが花開く---。」、美空ひばりというのは、そういう芸能の天才だったのか。作者はこういう角度で才能を凝視しピタリと表現する。思想的な言説が時にあるが実に真っ当。左翼と言うのは当たらない。世情が右回転しているからそう思えるとしたら腹立たしい、直球ど真ん中勝負の平和主義、実に嬉しい。表紙で迷ったが、読んでよかった。

美輪明宏、黒柳徹子、黒澤明、高島礼子、大竹しのぶ、北島三郎・・・(第1章/芸能の不思議な力)。古今亭志ん朝、桂枝雀、市川團十郎、世阿弥、能の梅若・・・(第2章/古典の斬新)、韓国の詩人、映画『タクシー運転手』、Wカップ、栃ノ心、プーチンとストーン・・(第3章/異郷からの衝撃)。野坂昭如、アリと猪木、カズオ・イシグロ、田中一村、ポケモンGOの野村達夫、藤井壮太・・・・(第5章/芸能的な文芸論)。石原裕次郎追想(第6章)。省略してもこれだけ広範囲の対象。作者のそれらの人たちとの関わり方に感心した。そして、普通の人々が思う狭い『芸能』世界を一気に広げてくれた。そうか、『芸能』というのは連麺と続く無垢の楽しみか。無くても生きていけるが、無ければ人間とは言えない人生を送ることなのか。深い。

最も印象深かった箇所は、『ノーベル文学賞、カズオイシグロの寓意』。『わたしを離さないで』で描かれる臓器提供のクローン培養制度が「根深い帝国主義による新しい奴隷制度」と述べながら、それが「私たち日本人は・・・このクローン生徒たちと変わらない」にぎょっとし、その理由を「サンフランシスコ講和条約」がある限り日本が真に独立することはあり得ないのに。自主憲法憲法制定を言い続ける人がいて、それはイカサマ論法だと断じる。続けて、「私たちはアメリカという帝国主義が作り出した新種の臓器提供者かもしれない。」、この小説をこういう風に読む観察者が少し前までいてくれたのだ。

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2021年12月31日

Posted by ブクログ

リアリストでミニマルな自分には芸能の世界はどうも合わないなと思いつつ読み進めた。この世界、実力や努力はもちろん大切だけどそれよりも運や運命が大きく作用するのだなと実感。違う世界を知れたという意味では面白かった。

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2021年07月20日

Posted by ブクログ

子供のころの私はTVをあまり見ない子で、今は見るとしても海外ドラマとドキュメンタリーとニュースがほとんどで、日本の芸能界のことを、それはもう、本当にもう、自分でも愕然とするくらい全く知らないので、なぜこの本を読もうと思ったのか・・・。
記憶がすでに定かではないのだけれど、たぶん新聞の書評欄か何かで見かけたんだと思う。

そんな芸能知識ゼロの私でもけっこうおもしろかったです。
プロレスとか日本の伝統芸能の話はやはりあまり理解できなかったのですが、第4章の「異郷からの衝撃」は、私ももともと海外ドキュメンタリー好きなので、大変におもしろかった。

政治的な話は割と左寄りな感じの考えが多く(極端ではありません、念のため)、それを新鮮に思う自分が意外でした。
昨今、世界中が右傾化していて、右方向の意見が多いから、なんだかんだとそっち寄りに耳慣れちゃってたんだなぁ、と改めて思った次第。
いずれにせよ、戦争を知っている世代の話はもっともっと耳を傾けなくちゃいけないな、と、思った。当時の話は、いろいろと考えさせられます。「過剰なエネルギーを持った者しか生き延びられなかった」なんていう話は非常に興味深い。

雑多なテーマの中で、一番印象に残ったのは、やはり石原裕次郎さんとの数奇な出会いの話。ぜんぜん知らなかったので、本当にビックリしました。彼の気まぐれな言動と偶然によって、著者の人生がガラリと方向転換している。こんな不思議なことってあるんですね。
運命というものについて、改めて考えてしまった。

しかし、石原裕次郎さんという人は、初期の芸能界の誰が語る回想にも、常に「太陽のように燦然と輝く大スター」として登場するなぁ。本当にすごい存在だったんだなぁ、と思う。私には、小太りで渋面のおっさん、という印象しかないけど・・・・

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2019年04月04日

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