感情タグBEST3
Posted by ブクログ
男ばかりの兄弟五人で暮らす夏目家の三男・夏目晶紀は高校三年生。
家事を一手に引き受ける晶紀は、社会人の一実、大学生の嗣人、中学生の真生、小学生の楓の世話で大忙し。朝から、弟たちのお弁当作りに追われ、家族全員の朝食の準備をする。放課後も、スーパーで買い物をして帰り、夕食を作る。
そんなある日、一実が同僚の波柴一郎とともに帰宅する。
親しげに話しかけてくる波柴を、最初は胡散臭いと思っていた晶紀だが、波柴の優しさに、やがて惹かれ始めていく。
そして、波柴によって段々と晶紀の気持ちに変化が訪れる。
今までは「自分には何のとりえもないから」と思い、引き受けていた家事だったが、その気持ちの中に「頼りにされたい」という気持ちが潜んでいたことに気づき、当たり前のように家族に家事をやることを頼りにされていることに苛立ったり。
おまけに、よりによって晶紀は高校三年生。
日々の生活に追われているうちに、自分の将来を考えることを忘れていたことに周りの変化に気がつかされる。おまけにそれを長兄に咎められて……。
この手の葛藤の話は前に、別の本で読んだことがあります。
そっちの作者様もとっても文体の系統が似てるので、一瞬、混同しそうになりますが、ちょっと、ほっこりあったかい物語。
一度、誰かがその任を担ってしまうと、それが当たり前に過ぎてしまう。そんな日常の典型的パターンなお話。
引き受けた方は別に、それをやることが嫌ではないのだけれど、時折、それが自分のキャパを越えてしまうことがあって、その苛立ちを爆発させてしまうものなんだと思います。それを考えたら、晶紀は本当によく耐えてると思う。
私だったら本当はもうちょっと早くにキレてる気がする。
けど、本当は誰でもみんなが平等にやるように、最初に分担しておくのがかしこかったと思います。
まぁ、そうやって全てを背負うことである意味逃げてた晶紀が自分と向き合い始めて、それを大人な波柴が上手に支えてあげる話……でした。
こういう晶紀には、大人な波柴がお似合いだと思います。