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Posted by ブクログ
石田夏穂初読。
率直に言って、とても好みな作家だった。21年に『我が友、スミス』で芥川賞候補になっていた人だと、後で知る。
『ケチな貴方』は極度の冷え性、『その周囲、五十八センチ』は人並み外れて太い脚、それぞれ身体的な悩みを抱えた女性が主人公だ。
彼女たちは弱音を吐かない。
そして彼女たちは頑張り屋だ。
家族や恋人や職場の人間に、自分の弱さを見せない。ただひたすら、自分の身体とストイックに向き合い、弱さを克服するためのミッションに粛々と取り組む。
時には、ままならない身体に「折檻」することで、「復讐を果たしたかのような満足を覚える。」p100
作者は工学部出身と知って納得だが、主人公の職種は、備蓄用タンクの設計施工と、配管設計のエンジニアだ。彼女たちにとっての身体は、どうにも手がかかる容器のようだ。理想のスペックに近づけるため、常にメンテナンスが必要で、それには少なからず出費や痛みや、不本意な労働が伴う。それは自らの身体と向き合い、身体と対話する作業である。そこを蔑ろにし、自分自身を安易な枠に嵌め込んでおしまいにすることはできないのだ。
「「ストレス」には無性にムカつく。何か汎用的過ぎて、弁解じみていて、あざとくて、甘ったれていて、それを言えば何でも許されると思っていて」p77
思い通りにいかなくても、トラブル続きでも、この身体で、この私で生きていく。そんな覚悟が見える彼女たちは格好いい。
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ちょっとした事で、相手の反応が変わる。愛想いい人、美しい人はやっぱりみんなに受け入れられる。そうだから、嫌でもハイと言ったりしちゃうし、高い化粧品買ったりしちゃうのよね。もうそろそろやめたいけどやめられない。
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何をしても冷え性が治らない主人公が、意に沿わない行動をすると冷えが軽くなった。
彼女は前時代的な会社において、昭和の女性らしい役割をして体温を上げる。燃料は怒りだろう。最後には倒れて入院してしまう。
物語の最初に、学生時代ランニングのしすぎでドクターストップがかかり諦める描写がある。それに沿ったように、彼女は自分の意思に逆らいすぎて倒れる。これからは元の自分になって、冷えと共に生きていく示唆があった。
Posted by ブクログ
心と身体は繋がっているというけど、こんな繋がり方あり?!身体が熱を生産しないことについて、身体がケチってるという捉え方がユニークだなあと。
熱を得るために心を広く与え続ける主人公と、その目的を知らずに親切を受け取り続けて尊大になっていく同僚たち。give&takeならぬ一方的なgiveはいつまでも続くはずもなく…
「その周囲、五十八センチ」の方は、読んでいて思わず自分の太腿の周囲を測ってしまった。それを知らずに生きている人は天に感謝するべきらしい。笑
最近石田さんの本を一気読みしたけど、どれも共通したテーマを感じるし、何より喩えが面白くて普通に声出して笑っちゃう。これは久々な感じで嬉しい。
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⚫︎感想
二作ともタイトルにインパクトがあり、良いと思う。
「ケチる貴方」…体が異常に冷える体質の主人公。それが原因で人に優しくできない。が、ある日から、人に自己犠牲を払って優しくすると体温を獲得できるということに気づく。この設定がとても面白いと思った。他人に親切にすると心が温かくなるとか、見返りを求めて優しくするとか、よくある言説が、主人公には、身体の温かさとして現れる。そのバランスは大変難しいものだということをメッセージとして受け取った。
「その周囲、五十八センチ」…太ももが五十八センチあることでずっとコンプレックスをもっていた主人公が、脂肪吸引中毒になっているお話。
どちらも石田さんらしく、面白く読めた。
⚫︎あらすじ(本概要より転載)
「冷え性」と「脂肪吸引」。いま文学界が最も注目する才能が放つ身体性に根差した問題作!
主人公の不機嫌さは極端な冷え性ゆえで、よく読むと類型的な「不満持ち」ではない。気まぐれな「親切」が身体に激変をもたらす一夜を経て、劇的な面白さをもたらした。(「ケチる貴方」野間文芸新人賞選評より)――長嶋有
私は寒いとき必死だ。こんなにも必死なのに、何故この身体は頑なに熱を生産しないのだろう。
骨と皮ならまだしもお前はエネルギーの塊じゃないか。私の代謝機能よ。この身体を温める薪ならここに山のようにあるよ。
頼むからケチらず使ってくれないか。(「ケチる貴方」より)
第44回野間文芸新人賞候補となった表題作と
第38回大阪女性文芸賞受賞作を豪華同時収録。
私の脚は、生来、人並外れて太かった。その程度を定量的に示そう。その周囲、五十八センチ。
(中略)私は自分より脚の太い人を、ついぞ目にしたことがなかった。(「その周囲、五十八センチ」より)
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量がちょうどいい作品。
文章も超読みやすいけど、単調じゃない感じが好み。
普段ミステリーを読むことが多いから、独特の平坦さがあるこーゆー作品ってどーゆージャンルなのかなぁと思った。
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読書備忘録819号。
★★★★。
めちゃくちゃ薄い本。2本の中短編。
長編の読み応えは望むべくもないが、このボリュームでこの満足。
バランス的に★4つは固い。さすがっす!
[ケチる貴方]
主人公、佐藤さん。
備蓄用タンク(石油とか天然ガスのやつ)の設計、施工を生業とする会社の施工部で働く。
図体デカくてムッチリ体形の癖に極度の冷え性。打ち合わせが始まれば手を腋に挟む。それでもダメなら股グラに挟む。それでもダメなら貧乏ゆすりが始まる。それでもダメなら身体が震えだす・・・。
仕事に対する姿勢は労力ミニマム作戦。労力を使わないために、腕は磨いてきた自負はある。
新人教育を任された。面倒くさい。労力ミニマム。
全く慕っていなかった課長が会社を辞める。新人がお別れの寄せ書きとか準備している。ご苦労なことで。だが要領が悪く準備が間に合わない感じ。嫌々手伝った。その後、身体に異変が起こる!ホカホカする!
ん?
試しに嫌なことを率先して引き受けてみた。身体がホカホカする!汗ばむことなんて人生始まって以来!
新人に自分のスキルを惜しみなく伝授してみた。ホカホカ過ぎる!
どうやら極度の冷え性は、身体が体温を上げるためにエネルギーを使うことをケチっていたことが理由だったのか?
自分の行動もしかり。労力ミニマムの行動は正にケチそのもの。ケチじゃない行動をしたら体温が上がったのか?
という、ファンタジーなお話でした。笑
[その周囲、五十八センチ]
主人公、S木。
太ももの周囲が58cmある。
伸長は158cm。体重は48kg。普通そのもの。
だけど太ももは58cm。
生まれてからずっとダイエットしてきた。それでも58cm変わらず。
そして脂肪吸引中毒になった。
収入はすべて脂肪吸引の為に。2~3ヶ月に1回の割合で。
クリニックで。「この脚が嫌いなんです!何回でも脂肪抜きます!」クリニックの先生曰く「いややい脚が好きだからこんだけ頑張れるんだよ。貴女は自分の脚が好きなんだよ」
人は外見で決まる。内面が重要だとか勝手なことほざくな!
脚が好き?嫌い?人は外見?内面?
という脂肪教という宗教にハマった女子の話でした。笑
Posted by ブクログ
朝井リョウが講演会でおすすめしてたので借りた。
短編が2本入ってて、一つは「尋常じゃない冷え性の女の話」、もう一つは「脂肪吸引依存症の女の話」。
主人公たちは自分の悩みである、冷え性や脚の太さに抗ってるんだけど、本人たちがあまりにも冷静に、本気で取り組んでるからシュールで面白い。
そして、女性だから〜と会社で抑圧されてきた主人公たちの精神的な抵抗がある種身体に表象されてるんだな
ケチる貴方の方で、最後に主人公が体温を手に入れるために、自分を曲げ、これまで自分が掴んだ生きた知識を手放し、会社に迎合してしまったのは少し寂しかったな。
他の石田夏穂作品も読んでみたい
Posted by ブクログ
とても気になっていた1冊。
冷え性と脂肪吸引なんて、ちょっと面白い。
どちらも自分の体について、どうにかしようとあれこれやるのが、だんだん読んでいて辛くなってきた。見た目によって変わる周りの態度や、女であることの生きづらさを感じた。
スミスも早く読みたい。
Posted by ブクログ
言語感覚やば。身体が変化してから自分の気持ちが変化していく。周りの人達は見た目によって変わっていくけど、見た目に寄りかかってくるというか、関係が良くなるわけではないのが面白い。
表題作と「その周囲58センチ」、どちらもすごいテンポ良くグイグイ読めた。
面白い作家さん見つけて嬉しい!他のも読もう。
Posted by ブクログ
スミスは筋トレだったけど、次は「冷え症」と「脂肪吸引」が主題って、やっぱり視点が面白いです、石田さん。
時折挟まれる、主人公の辛辣なコメントに笑っちゃうし、主人公の「冷え症」なり「脂肪吸引」との向き合い方が真面目で必死で可笑しい。
ものすごく吸引力があるというよりは、気がついたらハマっている沼のような物語だった。
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ケチる貴方
他人に寛容になることで冷えを克服し、めでたしめでたしで終わらないとこが面白い。
その周囲、五八センチ
お前は……一体どこの星の王子さまだ。←爆笑
Posted by ブクログ
女性は生きていくうえで少なくないバイアスがかかる。その圧は常に自分が、世間の (というより男たちの)望むタイプの女性なのかどうかを意識させる。
自分らしくあるための生き方に翻弄される女性を描く短編集。全2話。
◇
中堅規模の備蓄用タンク設計施工会社に勤める佐藤。まだ若手の女性社員だ。
佐藤には子どもの頃から体質についての悩みがある。それは極度の冷え性であることだ。夏でも体温維持に留意しないといけないため、家では朝晩の入浴が欠かせないほど重度の冷え性なのだが、人前で寒がってみせることが佐藤にはできない。
笑顔など無縁の無愛想な表情。長身かつがっちりした体格。
たおやかとはほど遠い自分は人に気遣ってもらえるタイプではなく寒がっても似合わない。
そう思って青春期を送ってきた佐藤は、いつしか人に助けを求めない代わりに、人を助けることもしないようになった。
会社でも佐藤は自分の仕事のみを粛々とこなす。なぜかと言うと、仕事に必要なスキルもほとんどが自身で努力して身につけたもので、誰かが親切に教えてくれたものではないからだ。そして、佐藤が自分のスキルを人に教えることは決してない。
ところがある日、佐藤は部長から新入社員2人の教育係を命じられた。女性らしい面倒見のよさを部長は期待しているらしいが、それこそ佐藤の苦手とすることだ。しぶしぶ2人に仕事のイロハを教え出した佐藤だったが……。(『ケチる貴方』)
* * * * *
自分らしく生きる。
それは他のものに惑わされることなく、自分に最善と信じる生き方をすることでしょう。そうすることが自分の人生を豊かにする。それは確かです。
でも、それってすごく難しいことなのだと思いました。自分らしい生き方を構築する段階ですでに、既成の価値観( 本作ではルッキズム )に左右されているからです。
『ケチる貴方』
佐藤は周囲に期待しない。深刻な冷え性という悩みを、子どもの頃から今に至るまで誰にも相談しなかったのはその表れで、陸上部でひとり黙々と長距離を走り続けていた。
それは代謝を促進して体温を上げるためのことなのだけれど、周囲の人間は男女を問わずそれをダイエットのためだと決めつけていた。つまり佐藤のことを、「ダイエットを図らねばならないような体型だ」と思っていたということだ。
それでも釈明など一切せず、信じることを懸命にこなしていく佐藤の姿は悲しくもある。
部長の「女性らしさ」論で押しつけられた新人教育。当初は義務感で対応していたが、たまたま新人の尻拭いで佐藤自ら奔走したある日、退勤後も身体の温かさが持続したうえ便秘まで解消された。高揚した気分も上々である。
こうして、自己犠牲が冷え性改善に直結し、心身の健康につながると思いこんでしまった佐藤だったが……。
☆佐藤を誰にも相談できない人にしてしまった原因は何なのか、考えてしまいます。
そして、
「あいつには親切にしなくても大丈夫」
そんなふうに人を見かけで判断していると、佐藤のような有能な人材を損ねてしまいかねないということを、忘れてはいけないと感じました。
『その周囲五十八センチ』
「五十八センチ」とは腰回りではなく腿回りの数値で、主人公の女性はそれを痛く気にしていた。
体型コンプレックスから逃れるため勉学に力を入れ、国内最高峰の大学に進学。超一流企業への就職を果たす。それでも彼女からコンプレックスは消えなかった。
就職を契機に強硬手段に出る主人公。脂肪吸引手術に踏み切り、ついに理想とする美脚を手に入れることに成功した。
術後は身動きかとれないほどの激痛に見舞われるものの、やがてそれさえ快感となり、主人公の脂肪吸引は全身に及んでいったのだが……。
☆まさに美容整形依存と呼べる症状です。それは痩身願望という現代社会が生み出した美的基準に端を発するものです。
厄介なのは、痩身手術を受けたのは自分らしくあるためだと本人は思っているけれど、それは既成の価値基準に合わせたものに過ぎないというところです。
本当は、腿回り58センチであること、あるいはその腿の太さに忸怩たる思いでいることこそが、自分らしかったのではないでしょうか。
こういう苦痛を伴う全身痩身術のような変身願望の実行譚には、寒気がするほど気味悪さを感じてしまうので、この2話目は早々に記憶から消したいと思います。( 無理かもしれません。百田尚樹さんの『モンスター』もなかなか記憶から消えてくれないから。)
1話目は冷え性の改善のため、2話目は腿回りの太さの解消のため、それまでの自分を変える行動に出た主人公たち。
その甲斐あって佐藤は男性社員に想いを寄せられるようになったし、2話目の彼女には恋人ができました。けれど2人ともちっとも幸せそうではありません。
自分が自分であることは、自分が女であることとほぼ等しい。けれど、女であることを ( 男 ) 社会の価値観に当てはめて考えるのは違うと思います。
自身の価値観で自分らしさを確立するのが難しいのは理解しています。人間社会で生きていく限り世間の物差しから逃れることはできないからです。
それでも、自分独自の価値基準をコツコツ作っていきたい。そう思いました。( 砂上の楼閣に終わるのかも知れませんが。)
Posted by ブクログ
一人称が軽やかで親しみやすい!
独特なキャラクターの主人公の心理描写が巧みで読み進めるのが楽しいです。
「ケチる貴方」と「その周囲、五十八センチ」のどちらの主人公も、その物語の中での成長ぶりが心理面の動きで描かれているので人の成長体験を読者の私も追体験できたように感じられました!
心に残る一冊です!
Posted by ブクログ
冷え性をテーマにした『ケチる貴方』。
☆3
重度の冷え性の主人公が
人に親切にすることで熱を得る。
脂肪吸引をテーマにした『その周囲、五十八センチ』。
☆5。
脂肪吸引と、その後の痛みに依存する話。
見た目が変わったことで人から優しくされ、
それによって自尊心を得て、人に寛容になれる。
なかなか心に響く物語だった。
Posted by ブクログ
『わが友、スミス』同様、人にとって身体とは?心にとって身体とは?を突き詰める。自他に向けられたクールな毒舌と疾走感のある文体がいい。主人公のキャラはいずれも肛門性格。
Posted by ブクログ
★カラダと心★表題作はケチな気持ちが低温につながっていたという気づき、もう一作は脂肪吸引によるダウンタイムの痛みを乗り越えた達成感。身体が変化すると気持ちの持ちようも変わるという話はほかにもあるが、身体の変化の特徴が独特。さらに表題作は気持ち→カラダという逆方向の流れの切り口が面白い。いずれも痩せるともてる、という共通点があるのが女性の主人公ならではか。うまいのだが、もうひとつ何かが欲しい感じ。
Posted by ブクログ
ユーモア溢れてとても面白い。ありえないトンデモストーリーなのか、甲状腺疾患なのか、色々考えたけど、自分の信念と引き換えに熱を獲得する姿は、生きやすさの獲得と生きがいの喪失のせめぎ合う気持ちを表現しているように思いました。
Posted by ブクログ
別に見た目が逞しくがっちり体型の人が
極度の冷え性だって問題ないと思うのだが
主人公は頑なに、自分の様な見た目の人間が寒さを訴えるなんてできないと
思い込んでいるのだ。
その思い込みと現実的な問題との不協和音が
とてもユーモラスで、オイオイ・・・と苦笑いしてしまう。
もう一つの短編は、足の太さに悩む女性が主人公。
彼女の考えによれば、足の太い人間には人格さえ無さそうで面白い。
見た目のコンプレックスや中身とのギャップって拘れば拘るほと、泥沼化してしまうんだねぇ。
Posted by ブクログ
自身も幼少期から運動量も多く食欲旺盛だったのに何故か極度の寒がりだったので、紹介動画を見て絶対に読もうと決めていた一冊。
寒くて堪らないものの、周りから浮いてしまう季節感への羞恥心や、運動不足、少食だと思われることへの悔しさ、あらゆる温活に取り組んだ結果どうにもならなかった脱力感。少し主人公とは違うけれど共感の嵐だった。
自分の体や心の欠点が、誰からも納得して貰える致命的な病気ではない不甲斐なさって、持ってる人が案外いるんじゃないかなぁ。
ただ話はファンタジーよりで、ケチを治すと温かくなるといった内容で、それで治るならいいなぁって感想だった。主人公は相当クセがあったし。
それより面白かったのは、脂肪吸引依存の話。容姿に異常な執着をもつ女性の人生。でもそれは、容姿に執着を持たなくて済んだ人間への皮肉でもあって。こういった人、今たくさんいるだろうなと思った。
痛みによる達成感。なるほどなぁと。
でもそれぞれ人と違う弱みを抱えながら、しっかり立っている感じ。毒もあって面白い。
言葉のチョイスが偽悪的でもあり、新鮮だった。
Posted by ブクログ
深刻な冷え性に悩む会社員の話。
仕事は有能だが冷たい印象の主人公。彼女がハマっていく温活がおもしろすぎて笑ってしまった。
もうひとつの話は主人公がどんどんやめられなくなっていく様子がちょっとつらい。きれいごとではなく実体験で感じる周りの評価がリアル。
Posted by ブクログ
石田佳穂さんやはり面白い。
途中まではケチと冷え性のおもしろ設定小説だと思って読んでいたが、最後になると急に球体と冷え性について言及されていて、ぎゅいんと純文学に呼び戻された感じ。好き。
ただ面白いだけじゃない、「我が友スミス」も読まなくては。
Posted by ブクログ
冷える体の「ケチる貴方」、58センチの太腿と脂肪吸引の「その周囲、五十八センチ」どちらも自分の体に向き合ってがっぷり四つに組んだ小説。ユニークな視点が面白かった。
Posted by ブクログ
石田夏穂さんの作品にある引力。
主題が「冷え性」「脂肪吸引」(他作品では「筋トレ」「新卒採用」)等ニッチであること、そして今を描く作品にも関わらず、徹底的に「個」に終始し他者との関係性を描かない違和感ではないか。
石田さんの描く女性(主人公)は自分だけを見つめ、他者は自分に影響を及ぼす変数ではあっても、小さな存在感しか持たない。
それが、このSNS時代とのアンバランスと可笑しさを覚えるのかもしれない。
Posted by ブクログ
『冷え性』『脂肪吸引』のテーマで2作。
どちらも女性の切実な悩みに着手していて、痛みや苦しみの代償として、辛さを乗り越えることで目的を手に入れていくが、だんだんとそれは一種の自傷行為に近いものに変化していく。次第に目的と代償がひっくり返り、皮肉にも痛みを感じながらじゃないと生きる実感が得られなくなる。人間の執着と弱さを描いてるように感じた。
Posted by ブクログ
表題よりもその周囲、五十八センチが好みだった。これがあるから3だった。なかったら2だった。
ちょうど脂肪吸引が気になって調べまくっていた時期だったので興味深く読めたし脂肪がつく場所に偏りがあってげんなりする気持ちも共感できた。
ダウンタイムがキツい描写や見た目が変わることによって周囲か舐めた態度取らなくなるところはリアリティがあった。どんどん依存してお金を注ぎ込む姿は狂気的でもあった。
全体的にストイックで疾走感があり身体と精神がリンクする描写が独創的だった。