【感想・ネタバレ】「地霊」の黒い陰 災害の黙示録のレビュー

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Posted by ブクログ

本の著者は大阪大学名誉教授を務めた工学博士。ある事故をきっかけに大災害や大事故が起こる要因には、地霊が関係しているのではないかということに気づきます。なんでも地霊とは土地に宿り、その土地を所有したり、その豊穣をつかさどったり、そこにすむ人や物を守護すると信じられる精霊をいうそうです。
この地霊に逆らわないよう固有の歴史や風土などを尊重して土地開発や建築を行うことにより優れた景観が生まれるとのこと。
著者が地霊を意識するきっかけとなったのは、昭和47年の千日デパート火災、そのほか主だった大事故・大災害と地霊との因果関係を述べていてとても興味深いです。単なる迷信ともいえるし、土地の歴史など気にすれば限りがありませんし、気にすれば何でも障りになるようにも思えます。ただ、工学博士という肩書きを持つ著者の長年の調査や経験から、「地霊」の存在を軽視してはならないという主張は説得力ありました。
本来、地霊は地名から判断できるものだったとのこと。過去の事件や事故を風化させないため工夫された地名などが明治以降減少の一途をたどっているのは怖いと思いました。土地そのものの記憶というのもあるような気がしますが、気にしすぎるとどこにも住めなくなってしまいます。自然はその意に沿わない開発を行うと、いずれ強烈なしっぺ返しをするそうです。近年の大規模開発などの現場はどうなっているのでしょうか? 土地の声に耳を傾け、地霊を尊重するという謙虚でありたいものです。

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2017年12月29日

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