感情タグBEST3
Posted by ブクログ
児童図書と言っても、
私に取っては
骨太でずっしりとくるテーマでした。
所々にセント・キルダの言い伝えが
美しい言葉とともに描き出されて
とても味わい深かった。
世界のはてという絶景の様子もまざまざと
目前に広がっているように感じられ
その表現の素晴らしさは
岩島での過酷さを体感として迫ってくるようで
とてもとてもつらかった。
一体、この話はどこへ辿り着くのだろうと
恐ろしかった。
実話がベースになっていたとは驚きです。
主人公クイリアムの母の言葉に
「壺いっぱいの善意と清潔な耳があれば
どこにいたって幸せでいられる。」
というのがありました。
読んでいる途中でつらい時
私自身、その言葉で励ましていました。
瑞々しい若い頃に読んだなら
確実に自分の価値観に影響を与える一冊になったような気がします。
もちろん、今、瑞々しくはなくても
大いに自分の価値観に刺さる一冊になりました。
Posted by ブクログ
・あらすじ
スコットランドのヒルタ島から鳥漁のために大人3人、子供9人を乗せた船が離れ岩へと出航。3週間で島へ戻るはずがいつまで経っても迎えが来ず、そこでサバイバルすることになる。
主人公は14-16歳?の想像力豊かな男の子。
資源や食べ物もろくにない岩に取り残された過酷な状況で心身が擦り減る日々を想像力で皆の心を和ませ、勇気づけてこの局面を脱しようとするクイリアムが良い子だった。
癖がある他のメンバー、閉鎖空間で起こる人間関係の軋轢、縋るものや信じるものがあるとはいえかなりキツイ
かなり過酷な状況だけど淡々としてる文章で読みやすかった…けど私のあんまり詩的な文章得意じゃないから所々であんまりピンとこなかったり。
しかし最後がかなり衝撃的だった…所詮オーナーにとっては代えのきく取るに足らない存在なんだよな。
ヒルタ島は今はもう無人島で、グーグルマップでみるとこんな島に人が住んでたのかと驚くレベル。
実はこの事件は1727年の夏に実際に起こったことらしい!(記録が残ってないから詳細不明)
ヒルタ島に伝わる「世界が終わっても、音楽と愛だけは生き残る」という言い伝え通りクイリアムの世界は一度終わってしまった。
いい作品ではあるが…
マコックランの作品は不思議を売る男以来二作品目でしたが、正直作品性の違いにただただ打ちのめされました…
いい作品ではありますが、YA作品としておすすめできるかと問われると…うーん…自分が子供だったら、この結末は理解できなかったと思います…
物語というものをテーマにしているのはマコックランらしく、むしろ大人の読者ではないとこの作品を理解するのは難しいんじゃないかなと思いました。
Posted by ブクログ
YGの旗手たる筆者の最新作の文庫化。
YGの筋から少しそれている感がしたのは私だけだろうか。
英国の厳しい環境にある島で実際に有った事件をもとにフィクションで膨らませて行った技巧は評価できるものの 起きた現実を具に検証すると、果たして未来の大人になる摂台に『勇気と希望を与えるものか』と首を傾げざるを得なかった。
英国は欧州の中でもつとにファンタジーモノが得意、人気もあり 高いレベルを誇っている(個人的に、余り好みではないのだが。日本では変にマスコミのあおりがってか キャッチコピーが踊っている感が強い)
ファンタジーという予測で読んでいくと半ばで気持ちがねじれて行くと思う。
子供9人と大人3人、当然に個性が種々に絡んでいくのは予測できるが思う以上にダークな事象が相次ぐ。
とりわけ 牧師然とした擬態を作ろう墓掘りが虫好かないキャラだった。
最後までファンタジーらしく❔ごちゃごちゃしている感は否めなく、そこが整然とした作品を異を異にして、夢想の幅を広げますよ・・と言った売りなのかな。
終章で、この時代この島で観られた鳥の種類が述べられている。無論作品の中でも圧倒されるほどの海鳥の種類とそれぞれの価値、役目が印象的だった。身体に有する油、味は近世ならでは存在だったろう。
大ウミガラスをぐぐってしまった。
Posted by ブクログ
・ジェラルディン・マコックラン「世界のはての少年」(創元推理文庫)を読んだ。所謂ファンタジーかと思つて読み始めたのだが、どうも趣が違ふ。読んでゐるうちに、結局、ファンタジーとは全く関係のない作品だと分かつた。カバーには「YAの名手が実際の事件をもとに描いた、勇気と成長の物語。」とある。最初にこれを読んでゐればと思ふ。たぶんYAだらうが何だらうが買つたはずである。ただ、ファンタジーとして読み始めるのと、「実際の事件をもとに描いた」物語を読み始めるのとでは、言はば、意気込みが違ふ。その意味ではいささか迂闊であつた。その「実際の事件」はいつ、どこで起きたのかといふと、1727年 に、スコットランド西岸沖のヘブリディーズ諸島、その西の果てにあるセント・キルダ諸島のヒルタ島で起きた。子供9人と大人3人が島に取り残されて冬を越さねばならなくなつたのである。日本では享保年間、八代将軍吉宗の時代である。これで分かるやうに、この物語は所謂無人島ものである。実際にはヒルタ島と呼べるやうな場所ではなかつたやうで、「こちらの舞 台は『島』ではなく、草木の一本も生えぬ『岩』であって」(「訳者あとがき」301頁)とある。その記録があるかと言へば、「彼らがそこで何を考え、いかにして生き残ったのかは、歴史に埋もれてしまっている。だれもそのときの記録を残さなかった。」(「著者あとがき」293頁)とある。つまり何があつたかは分かつても、具体的な記録はないのである。そんな中からこの物語は作られた。「一度ページをめくったが最後、途中で本を置くことはまず無理だらうが」(「訳者あとがき」 304頁)といふのはいささか言ひすぎだが、後半はそれに近くなる。ファンタジーとは全く違ふ物語であつたが、それとは別のおもしろさがあつた。
・実話に基づく無人島ものであるが、この事件の記録は残つてゐない。名前が記録されてゐるのかどうか。物語の登場人物には名前がある。大人3人は職業を持つ。子供達に職業がないのは当然だが、その代はりそれぞれに豊かな性格が与へられてゐる。作者としては何が起きたかを想像することも大変だつたであらうが、同時に子供や大人の性格付けもまた大変であつたらう。これが一人一人実にくつきりと描かれてゐる。一人の大人は教会の墓掘りだつた。「牧師の代理が務まるとは、だれも思っていない」(39頁)のに、いつの間にか牧師然とし始める。たかが墓掘りのくせにと思つても、なかなかそのやうにはできない。しかも火の管理をしてゐるのである。例へばこの一事だけでも11人の動きは違ふ。それだけでもおもしろい。そして鳥、何種かの鳥が出てくる。最後にまとめてある。「セント・キルダの鳥たち」(295〜297頁)である。これを見ると絶滅した鳥もゐる。オオウミガラスである。飛べないし陸上では不器用、無防備だが、代はりに「水の中では敏捷に泳ぐ。」(295頁)そんな鳥である。たまに姿を見せる。これを食ふことはなかつたらしく、人の近くに平気で行くやうであ る。その他の鳥はどうなのであらうか。フルマカモメはランプ代はりらしい。食ふのはカツオドリらしく、その幼鳥のグガは 御馳走だつた。このやうな鳥達も豊かに描かれてゐる。カツオドリの見張り役が王である。「このカツオドリさえつかまえてしまえば、あとは」(23頁)獲り放題である。それを最初につかまへれば「カツオドリの王として仲間内で君臨できるのだ。」(同前)さうして子供達の中心になつたクイリアムが主人公となる。鳥と子供達の豊かな個性で読ませる物語と書いて おかう。12人ゐるが11人になつた物語である。
Posted by ブクログ
実話を元にしたサバイバル小説。
(実際は子供8人・大人3人で、全員無事帰還)
信仰から雲行きが怪しくなってきた。
大人(校長)でさえロープのせいにして自殺を図ろうとしたり、いじめっ子の足の指が凍傷て壊死してしまい切断したり、針の番人に拘る余り死んでしまったり、無事帰還したものの住民の殆どが天然痘で死んでおり、12人が帰ってきたことでようやく人口が倍になったり。
ウイリアムの〜の番人とそれぞれに名ずけてやる気を与える考えは素晴らしいし、自身の物語の番人っぷりも凄い。音楽の番人、時間の番人、ロープの番人など。
同じく、ウイリアムはマーディナの空想に救われている部分が強く、他の人から魔女だ妖女だと言われるも(ジョンも女と発覚してから色々言われたが)、信頼のおける空想の喋り相手を作るというのは、考えの整理にもなるし、緊急時は真似てみたいものだ。
ジョンは生理すら母親に教えてもらっておらず、いくら男として育てるにしても、極端だと思った。ウイリアムはマーディナと結ばれるが、ジョンもウイリアムのことを想っていたのもあり、苦楽を共に過し生き抜いた仲間という意味でも、女と初めて見破ったという意味でも、ウイリアムとジョンに結ばれて欲しかった。
ジョンは女というだけで、やはり帰還後は、誰かと結婚して子供を作らざるおえないのだろうか。