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Posted by ブクログ
[潜在大国の表と裏]その政治体制から宗教、外交政策に至るまで、ありとあらゆる側面で注目を集めるイラン。強硬派とされたアフマディネジャド大統領時代にイランに赴任することになった記者の現地レポートにして、今後のイランの行く末を考えた一冊です。著者は、毎日新聞で記者を務める春日孝之。
著者は特に「イスラム」と「ナショナリズム」の両面が近年のイランでは溶け合っていく様子に注目しているのですが、イランの複雑さを理解する上でも勉強になる視点なのではないかと思います。多くのイランの有力者のインタビューが掲載されているのも好感が持てますし、赴任が初めてのイラン経験とは思えない程いろいろと考えられているのだなと感心してしまいました。
日本においては外交面、特に核開発で注目を集めるイランですが、その内政が外交に大きく関わってきていることを感じ取れるのが印象的。個人的にも興味を持っている国なのですが、こういった形の手に取りやすい本が出版されることは大変ありがたい限りです。
〜イランが本気で「イスラムの大義」を掲げてイスラム共同体の建設を目指すのであれば、「シーア派」の顔も「ナショナリズム」の顔も、大きな妨げになる。にもかかわらず、それらを抑えられないところが、なんともイランらしいのである。〜
なんと多層的な国家なんでしょうか☆5つ
Posted by ブクログ
イランて、結構、複雑な国なのだなと言うのが、この本を読んだ感想です。
機会があれば、イランの歴史とか中東の歴史とかの解説本を読んでみたい気もしますが、とりあえず、そんな時間なさそう。
ちなみに、この本も、@hideoharadaさんがツイッターで紹介しているのを見て、読みました。
Posted by ブクログ
イランを取り巻く世界がよくわかります。
現地に行って現地の人の声を聞いているのでリアリティがあり、ニュースで取り上げられていることや自分自身がイランに持っていたイメージなどが全然違ったことに驚きました。
シーア派VSスンニ派
イランVSアメリカ
イスラムVSユダヤ
革命派VS保守派
などの様々な状況が入混ざっている国であるため、国民も日々翻弄されているのだなと思いました。
保守派なのに革命派な要素を持った人
などが登場してきたところにイランという国を感じました。
イスラム文化をもっと勉強しよう。
Posted by ブクログ
2005年から4年間、毎日新聞のテヘラン特派員としてテヘランで過ごされた著者によるイラン分析。「へぇ」と思うところが多々あって、面白かった。アメリカ、イラン、イスラエル、アラブ諸国などの関係は表面的に見えているところだけでは判断できないもののようだ。
以下、覚書。
*イランは中東では最もアメリカ的なものが好きな国民。
表向き反米の旗を振りながら、実際は対米関係の修復を志向している。
*イラン人は日本人以上に本音と建前のギャップが大きい。
*女性の服装について。
西洋化政策を進めたパーレビ王政は1936年、チャドルを後進性の象徴として着用禁止令を出した。
これに対し、王政への不満が強まる中で、チャドルの着用はパーレビ王政に対する抵抗の象徴となった。
「西洋では女性が肌を露出させ、その美しさを誇示することが性の商品かにつながった面がある。これこそが女性の隷属化ではないのか」
*イランでは一般の会社や役所の中間管理職に占める女性の割合は日本より圧倒的に多い。
*女子はイスラム的な伝統社会の中で家族に大切に守られて育つ。それが解き放たれるのが大学生活。なので男子よりも勉学へのモチベーションが強い。
*イランには今も約二万人のユダヤ人が居住し、イスラエルを除けば中東最大のユダヤ人コミュニティがある。
*1948年にイスラエルがパレスチナの地に建国された際、中東で真っ先に国家承認したのが、王政当時の親米国家イランだった。
*ホメイニ師は「ユダヤ人」と「シオニスト」を区別。
*イスラム教シーア派を国教とするイランだが、信教の自由は憲法が保障している。
*イランは反米・反イスラエルを掲げながらも、アメリカやイスラエルから武器供給という軍事支援を受けていた。
*スンニ派は形式をより重んじる。
イラン人で日常的に礼拝している者は見ないし、偶像崇拝の禁止についても気にかけていない。
*シーア派に自爆の発想はない。
*「嘘は方便」はイランの常識。その例が「タキーヤ」(信仰秘匿)
*911の時、中東アラブ諸国では多くの人が歓喜したが、イランでは各地で市民がろうそくを灯して犠牲者を悼んだ。
Posted by ブクログ
イラン世界がよくわかります。
現地に行って現地の人の声を聞いているのでリアリティがあり、ニュースで取り上げられていることや自分自身がイランに持っていたイメージなどが全然違ったことに驚きました。
ペルシャ人はアラブ人と「同じムスリム」と同一視して欲しくない。自分たちは「アーリア人、白人だ」という思いが強い。アフガンやバーレーンなど周辺の小国への露骨な大国意識を隠さないし、イラン・イラク戦争の前科もあるので、アラブ諸国はイランへの警戒感は非常に強い。
シーア派VSスンニ派
イランVSアメリカ
イスラムVSユダヤ
などなど、
Posted by ブクログ
テヘラン特派員として日本人記者が現地で見てきたイラン像が中心となっている本。著者が実際に驚いたことが書かれているからなのか、「え?そうなの?」「なるほど!」と思う箇所が多い一冊でした。
ブッシュ前大統領の「悪の枢軸」発言にしても、対タリバンや対アルカイダという利害一致によるアメリカ支援という当時の事実を知った上で考えれば謎めいて聞こえる。イランはイスラム教でもシーア派の国で、スンニ派のアラブ各国とは考え方も全然違う。「中東」「イスラム」というキーワードだけでは判断出来ないことが、この本を読むとわかると思います。
イラン人は「嘘は方便」が当たり前だったり、隠れてホームパーティを毎週開催していたり、さまざまな個性を知った上で考えると、アフマディネジャド大統領もただの過激派というわけでもないように思えてくる。
イランとイスラエルの戦争の可能性は排除できないと思うが、メディでの報道以外の視点でもこの問題を見られるようになりそうなので、その点でこの本を興味深く読めて良かった。
Posted by ブクログ
イランという国に対してなぜか黒いイメージ・・・核開発疑惑やアフマディネジャド大統領のホロコースト否定発言に代表されるような過激発言など・・・が付き纏うのは往々にして僕らが欧米の側に立った視点で見ているからのように思う。本書はそれをイランの側から改めて見つめなおし日本人に知られざるイランの姿を教えてくれる。イランにはイラン人が誇るべき歴史を持つペルシア文化や文学があり、それらはその昔「イスファハーン(イランの都市)は世界の半分」と謳われたのに恥じない素晴らしい世界共通の財産でもある。この本を読めばそんなイランに対する遠い異様な国というイメージを、本来は親日的で意外に身近な国なんだというイメージに変えることができるかもしれない。視点を変えてみるという意味ではなかなか面白い本だった。