【感想・ネタバレ】21世紀型「のれん分け」ビジネスの教科書のレビュー

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Posted by ブクログ

高木悠『21世紀型「のれん分け」ビジネスの教科書』(自由国民社、2021年)は、のれん分け制度を活用して、会社の発展と社員の自己実現を両立させる方法をまとめたビジネス書である。20世紀の工業社会では中央集権的なヒエラルキー型の組織が効率的で生産性が高いと考えられていた。しかし、官僚的志向に陥り、生産性が悪化する。社員のモチベーションも上がらない。特に店舗型サービスでは弊害が大きい。

「のれん分け」によって独立することで経営者としてモチベーションを持って経営できる。企業は身軽な経営、持たざる経営を推進できる。社内公務員的な存在の肥大化を防止できるとメリットが大きい。

本書が勧めるものは21世紀型「のれん分け」であり、旧来の「のれん分け」と同一ではない。相違点は「のれん分け」の条件を予めルールとして明確にし、従業員に提示することである。「はじめにのれん分け制度の仕組みや利用条件を明示しなければ、のれん分け制度に対する社員からの信頼を得ることができない」(50頁)。オーナーの気まぐれや恩恵で「のれん分け」する訳ではない。この点は個人の尊重や公正さが重視される21世紀的である。結果オーライでは納得性は得られない。

21世紀型「のれん分け」ビジネスはフランチャイズの一種である。フランチャイズはトラブルが多い印象がある。21世紀型「のれん分け」ビジネスは独立対象を従業員に限定することで、第三者が加盟店になる一般のフランチャイズよりもトラブルが少なくなると見込む。しかし、もし「うちで長く働いてきた社員だから何でも聞く」という感覚で一般の加盟店主よりも無理が効くと考えているならば逆にトラブルになるだろう。

従業員施策としてみた場合、会社と熟練従業員のステップアップ先として、のれん分け制度は有効である。しかし、のれん分けには他人資本で持たざる経営を実現するという目的がある。他人資本で効率的に多店舗展開する仕組みならば、フランチャイズシステムが元々存在している。

従業員に限定することは安心感があるが、広く他人資本で効率的に展開する点がトレードオフになる。とはいえ広く他人資本を受け入れようとフランチャイズを意気込んでも勝手知らない加盟店オーナーとトラブルが頻発する可能性が高くなる。ここは堂々巡りの議論になる。何を優先するかで制度を選択する必要がある。

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2021年08月16日

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