感情タグBEST3
Posted by ブクログ
脚本家倉本聰の書下ろし自伝エッセイ。父との思い出を語る前半と大学受験から業界入り、脚本家になるまでの後半の二部構成。
作家の作品はその作家の人生そのもの。完全な創作ということはありえず自己のそれまでの人生が繁栄されるもの、そんな思いを本書を読み強くする。
特に前半、父との思い出。野鳥観察と俳句、人知れず台詞に必要なリズム感と感性を身につける。一風変わった父。また戦中の疎開先、岡山での一人の年上の野生児的少年との出会い。慣れない田舎で地元の子のイジメをおそれ小さな妹と二人の通学など。筆者の代表作「北の国から」は大きな影響を受けていることが分かる。
氏の多くの作品と同様、詩情にとペーソスに富んだ作品でした。
Posted by ブクログ
数々のメガヒットTVドラマ作者で誰もが名前を知る倉本聰の自伝風エッセイです♪
名前しか知らなかった彼の歩みがきちんと語られていてとても興味深く読めました。
ご本人も知らず知らずのうちに大きくお父さんの影響を受けて今があることがよく分かります。
戦前戦中そして戦後の様子もきちんと描かれているので当時の背景がリアルに分かり易くていいです。
当然ですが私たちに馴染みの人々が陰に陽に倉本さんと繋がっていることも楽しく嬉しい履歴書になってて面白いですね!
そして脚本家として独り立ちするまでのストーリーで終わっているので爾後のストーリー編もあるのかしら?と思わせられるエンディング。
いやあ楽しめる自伝でした。
Posted by ブクログ
恵まれた子ども時代と破天荒な父
その時代に父が何を教えてくれたのか振り返って
人としての有り様を教えてもらったと回想する
東大二浪のあと入学したが大学へは
ほとんど通わす喫茶店でアベックの会話を観察
文学 演劇 シナリオなどに時間を費やし
つてを頼りにニッポン放送に入社
依頼がありペンネームで二足の草鞋で働くが
過労で倒れシナリオ作家として独立する経緯
今時できない行き方面白い
Posted by ブクログ
北の国からの脚本家 倉本聰の自伝。
父との思い出は、愛に包まれた幼年期は幸福感に溢れているが、後年衰えていく父への憐れみと、強くあってほしいと願う息子の心情が描かれている。
野暮かも知れないが、黒板五郎と純との関係そのものだ。
浪人の末 東京大学文学部に合格するものの、授業にはほとんど出席せず劇団の稽古場と、酒場との往復で、脚本家を漠然と目指していく。
その時点で、父親は亡くなっていたので、家庭教師などをしながら家計と学費を稼ぐのは、自分からすると凄いなと思ってしまう。
無頼をしているのに、いざ卒業試験を受ける段になると、震えが止まらなくなったり、卒論の評価に憤ったり、辞表を出して引き止められなくて、悲しんだりと倉本さん失礼ながら繊細なんだなと思ってしまった。
田崎健太著 真説・長州力の評伝でもそうだったが、何者でもない若い頃の話は饒舌なのだ。芸能界のことや仕事の世界の事は口が重くなる。
この後の専業脚本家になってからの続編はあるのだろうか?
Posted by ブクログ
書下ろし。
前半は、幼少期の戦中体験などから語られるから、日経新聞の『私の履歴』の改編かとおもったくらい。
『私の履歴書』には2015年8月に登場している。読んでいたとは思うが記憶は薄い。その年は4月のニトリHD社長の似鳥昭雄氏の印象が強烈すぎた。余談。
そんな前半は、父親山谷太郎氏の想い出といっていだろう。実に魅力的なキャラクターで、医療専門誌出版社の社長として羽振りのよい時期に、著者も幼少期を過ごし、戦後に一家が没落し困窮してくまでを、父親との関りが中心に描かれていく。
幼少期の著者本人が、自分でも認めているように「僕は全く箸にも棒にもかからない、臆病で卑怯な少年」であり、それは、まるで『北の国から』の純のようじゃないか、と驚いた。『北の国から』は純の目線から描かれた大人の世界、父親の生きざまだったのだなと、それは少年倉本聰の目線でもあったんだなと、改めて思わされた。
草太兄ちゃんのモデルとなるヒっちゃんという年長の兄貴分が登場するあたりも面白い。
そして、後半は「東大時代」「ニッポン放送時代」と、60年安保からテレビ創成期の時代が語られていて、こちらも興味深い。脚本家倉本聰がいかにして生まれたか!? 昨今の副業だのライフワークバランスなどといった概念とはまったく異なる価値観、時代の勢い、熱量といったものが感じられる。
熱く、いい時代だったなあ・・・。
嗚呼、昭和は遠くになりにけり、だ。