【感想・ネタバレ】発情装置 新版のレビュー

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Posted by ブクログ

東大名誉教授として、東大入学生への彼女の祝辞は、東京医科大学の受験における女性差別から、メタ知識の重要性で締め括る、とびきりクールで理知的なスピーチだった。ただのフェミニストではなく、知性を感じる公平な内容。

本著を開いて一瞬、そのギャップにびびるが、本質は同じ。女性器の名称を連呼し、隠された性の不自然さ、背後の差別意識をとことん追求する。女性の性欲を肯定したい。何故、昔の女性は性行為を苦痛に感じたか。女性が性快楽を自ら求めたら不都合でもあるのか。

女体が記号化されている、との表現は目を引いた。確かに、陰部だけで、強烈に扇情的な力を持つ女性器だが、それが肉体としての繋がりがイメージされず、パーツだけ、かつ、意味付けや記憶が無ければ、男性は恐らく発情しない。ただの肉の造形だ。しかし、それが発情装置として、文化的意味を持つようになる。性行為や性欲は、文化、制度の延長線にある、というのは共感できる内容だった。

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2022年04月15日

Posted by ブクログ

1987-1998年論文をまとめた1998年版に、80年代-2010年代の時局発言を追補、半世紀にわたるセクシュアルティの地殻変動期を性的身体として生きた一人の女の歴史的証言。

性の抑圧やタブーは、文学やアートの源泉でもある。

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2017年11月25日

Posted by ブクログ

ネタバレ

自著解題より
セックス音ハードルはたしかに下がった。女性に性欲があることは当然視されるようになったし、女性が快楽を求めることにもスティグマはなくなった。女性があからさまにセックスやマスターベーションを口にすることへのタブーも、なくなりはしないが、確実に少なくなった。結婚の前にも後にも外にも、女性がセックスを求めることに社会的な制裁はいちじるしく減少した。そうでなかった時代のことを思うと、隔世の感がある。だが、それはほんとうに女性にとって「性解放」だったのだろうか?
その反面、ジェンダーの非対称性がおどろくほど変わっていないことにも驚く。避妊の知識と技術が普及したのに、無知からではなく遠慮からパートナーに避妊を言い出せない女。「今どこに誰といる?」と恋人に訊かれてしょっちゅう写メを証拠写真としておくらなければならない拘束を、愛情ととりちがえる女。…(中略)…
性解放は女の性の自立と自律を求めるもののはずだった。だが結局、いくらハダカで向き合っても「ベッドの中」だけが解放区になるはずもない。ベッドの中には、ありとあらゆくる社会的・経済的・政治的な非対称性が持ち込まれるだけにすぎないことが、あれから四〇年経ってみれば、あらためてよくわかる。フェミニズムの標語、「個人的なことは政治的である」は今でも有効なのだ。

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2016年02月15日

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