【感想・ネタバレ】「未熟さ」の系譜―宝塚からジャニーズまで―(新潮選書)のレビュー

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Posted by ブクログ

KARAとか少女時代が日本のチャートでも活躍していた時代だったか…韓国のアイドルは「完成度」で勝負するのに対して日本のアイドルは「未成熟」を楽しむもの、という言説に出会ったことがあります。それは源氏物語で光源氏が若紫の成長するのを愛でるような体質が日本文化にそもそもあるからだ、というような指摘でした。その説が正しいのかどうかは検証するのが難しいと思います。しかし日本に資本主義が定着し消費社会が成立する時代にフォーカスを当てて芸能史を「未熟さ」をキーワードに分析する本書を読んで、研究としても掘りがいのあるテーマだと思いました。分析されるのは、童謡、宝塚、渡辺プロダクション、ジャニーズ、グループ・サウンズ、スター誕生!。特に童謡については知らないことだらけで驚きの連続。都市に生まれた新中間層の理想が「音楽のある家庭」であり、そこが童謡の「市場」だったという論には説得力がありました。今年読んだ貞包英之『サブカルチャーを消費する』ともリンクしました。さすがに著者が長年取り組んできたテーマです。一方、渡辺プロダクション以下のテーマについては、コンテンツを提供する側のストーリーに比して、享受する側の分析がもっと分厚くてもよかったかも。それぞれが繋がったら日本文化の「未熟さ」を愛でる文化へも肉薄できるかも、と思いました。さらなる論考の深堀を楽しみにします。

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2022年08月18日

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