【感想・ネタバレ】キャッチ・アンド・キルのレビュー

\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

#me tooのきっかけになったといわれる本。さまざまな角度から見て、学びになるポイントがいくつもあった。
まず、ずっと続いてきた悪事を暴きたいというジャーナリストの視点。妨害というのはこのような形で起こるのか。また、それを打ち砕くのに、慎重に慎重に合法的な方法を探っていく著者の姿勢。
そして、性犯罪(だけではないかもだけど)を告発するときのデリケートなあり方。被害者ほんにんがどこまで開示するのか、一つひとつ確認しながら進んでいく。そうだよね。
ときどき挟まれる謎のメールの話が、驚くべき事実につながっていくのは、本当に衝撃。
また、世界的なセレブカップルの2世で、美しいだけでなく頭脳的にも天才といわれるローナン・ファロー。彼もまた組織の中で働けば、企画が通らないことに苦悩し、予算の獲得に頭を悩ませる。そんなところも楽しんでしまった。

0
2024年03月16日

Posted by ブクログ

最低最悪の権力者の色欲と、それを利権と引き換えに覆って隠し通す最低最悪の関係各位。
もみ消しは持ちつ持たれつの関係を築くためだけでなく自分自身のため、という関係各位もいたりして。
日本の伊藤さんの件、森友問題(分野は違えど)と構造が同じかと。

ピューリッツァー賞を3回あげてもよいくらいの、世界的なうねりを作り出した報道の顛末が、この本に詰まってる。

ほんとに爛れてるとしか言いようのない、メディア(の権力者たち)。しかし、綿密な調査報道が受け入れられ、それが社会を動かせる分、日本よりマシなのか。

日本のメディアにも、飼い殺しの記者クラブ問題のみならず、実はアメリカと同じ色欲の病巣があるんだろうな…。

犯罪のもみ消しに慣れてはいけない。
慣れてはいないし、その都度ザワッとするけど、諦めてる人が、私含め,ほとんどではないか。

日本で報道をきっかけに、政治家ほか権力者の悪事を白日のもとに晒して「国民の皆様」が立ち上がり、彼らを失脚に追いやることはあるのか。
男性はこの本を読んで、この気持ち悪さを感じられるのだろうか。

ウッディ・アレンの娘の件も、かつて報道された時、自分も含めなんとなく扱いに困ってた風だったけど、ホント娘は気の毒だった。
自分含め!もう、映画見ない!公開しない!とか、ならなかったし。
力があるから、弱い者に好き勝手なことをしても許される(当人にはひどいという感覚はない)、ということが、許されない時代になってくれないか。
せっかく「平和」な国にいるのだから。

などと、つらつら考えずにはいられない本。

0
2022年11月11日

Posted by ブクログ

ワインスタインの犯行が明るみに出たのは2017年10月のこと。日本でも同年5月に権力者に近い人物の性加害を告発する報道が有り、10月には被害女性本人が記者会見をした事もあってこの事件は力関係を用いた性犯罪である類似性と共にいつもセットで思い出される。
ヒーローが活躍するハリウッド映画とは違って、現実のアメリカ社会は“弱者”を大きな力で不可視化し、無かったことにする手段(catch&kill)が確立していたことに憧れ転じて幻滅さえ覚えるのだが…被害を告発した女性やジャーナリスト達とひとりひとりが勇気を持って連帯することで卑劣な犯罪を許さない社会を作ることができると信じたい。著者のパーソナリティもとても魅力的。今後の活躍にも期待を込めて。


0
2022年09月01日

Posted by ブクログ

いやーすごい!凄い本に出会った,そして凄いジャーナリストを知った.#MeeToo が,ここから始まった,という帯の言葉通り,運動へのうねり,巨悪を暴く正義,行動力,それを阻もうとする巨大な権力や,慣習という暴力…息詰まる展開は最初から最後まで,まるでサスペンス映画を見る様だった.
そして…現実の権力構造の恐ろしさ.きっと問題はこれだけじゃないし,アメリカだけの問題でもなしい,きっと日本も相当闇深くて,もしかしたらもっと解決困難な状況なのかも…なんて滅入る気分も…
でも,数は多くなくとも正義のために,良心に従って取材活動を続けてくれるジャーナリストもいるし,それを是とする人もいる訳で,Liberty bellきっといつか!とほんの少しの希望も持って本を閉じます.

0
2022年08月15日

Posted by ブクログ

一気に読んだ。日本でもハーヴェイ・ワインスタインのニュースは報道されていたし、そこのに続く#MeTooも日本国内にも広がりを見せた。そのワインスタイン事件が世に出るまでの戦いの詳細が記されている。ワインスタインはもちろんの事こと腐れ切っているNBC上層部の動きには読んでいてはらわた煮えくりかえる。ここまで何度とない阻害に立ち向かったローナン・ファロー、ニューヨーカー、ニューヨークタイムズの記者が素晴らしい。ニューヨーカー、ニューヨークタイムズという老舗報道機関が汚染されていなかった事に安堵する。ローナン・ファローがここまで屈する事なく戦えたのは、父ウディ・アレンと姉の問題に対する彼の立ち位置も影響しているのかもしれない。
日本の報道機関はどうだろうか?

0
2022年08月08日

Posted by ブクログ

 全ての女性に読んで欲しいと思う。卑劣な罠と暴力を許してはならない。
 身の危険に怯えながら告発した女性たち、自身のキャリアを危険に晒しながら報道した、ジャーナリスト達の姿に胸を打たれる。
 性暴力、正義と保身等難しいテーマについて考えさせられる本だが、アメリカのエンターメント業界についての興味もそそられるし、敵が迫ってくるスリルもあり、とても面白い。

0
2022年07月25日

Posted by ブクログ

圧倒的な権力の元で男性から女性に与えられる性暴力を告発し、世界的なムーブメントとなった”Me Too運動”、その発端はハリウッドの大物プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインの性暴力を告発する女性たちであった。その告発は、大手メディアNBCの記者であった著者が発表した記事から始まっており、著者はその功績により2018年のピューリッツァー賞を受賞している。

本書はその一連の経緯をまとめたノンフィクションであるが、ドラマを思わせるような妨害工作の中でいかに著者が1本の記事を出し、世界を変えることになるかという様子が凄まじい。相手はハリウッドの大物プロデューサーであり、これまでも被害にあった女性たちの告発が起きないようにカネや弁護士たちを使った圧力などで自身の悪行を闇に葬ってきた人物である。当然、著者がその闇を暴こうと取材を続けているのもいつしか耳に入り、スパイの送り込みや勤務先のNBCの上層部を利用してプレッシャーなど、ありとあらゆる妨害工作が行われる(実際、そのために著者が発表した最初の記事はNBCではなく、独立系雑誌のニューヨーカーに投稿された)。

しかし、本書は決してハーヴェイ・ワインスタインのような加害者だけを追求するものではない。むしろ、その共犯者として被害者たちの声を無視してきたメディア自体に対する告発こそ、本書の白眉と言える。タイトルの"Catch and Kill"とは、一部の悪質な御用メディアが繰り広げた悪行を指すワーディングである。わざわざこの言葉をタイトルに選んだのも、加害者⇔メディアの共犯関係によって、このような性暴力が続いてきたという点への告発に他ならない。

2022年に読んだ、これから読むであろうノンフィクションの中でも超弩級に面白いこと間違いなしの一冊。

0
2022年06月12日

Posted by ブクログ

自分は絶体誓うと言えるだろうか?
仮に絶大なる権力を持っていたとしたら…
権力者の暴走を止める為に声をあげられるか…
妨害工作に屈せずに戦い続けられるだろうか…

そういった意味でもとても価値がある1冊であり
迷った時に心を鼓舞してくれる忘れてはいけない本。

0
2022年05月13日

Posted by ブクログ

ハーヴェイ・ワインスタインの事件を詳細に描いたノンフィクションである。既に『その名を暴け』があるが、こちらも負けず劣らずの良い出来である。
権力とは、そこの座に座った者とは。何をしても許されるように世界を作り替え、専属のチームまでいてさらに出版社まで協力させていたのは心底ゾッとしたし胸糞が悪くなった。映画ファンの一人として、今後彼が製作に関わった映画を観る時は良い想いはしないだろう。

0
2024年03月07日

Posted by ブクログ

#MeToo運動のきっかけとなったと言ってもいい本である。
権力者が金や商売上の力や、非合法な工作まで行って、性的暴行を受けた女性を抑え込み、更には貶めるなどやりたい放題であった事が分かる。
大昔の、こう言ったことに寛容であった時代の話かと思ったが、つい最近まで行われていたと知り驚いた。
マスコミまで、この隠蔽に加担していたとは、驚くばかりだ。資本の論理で、資本家に乗っ取られたり、利益至上主義になっていることの影響が出ている。
日本でもおそらく同じような話があるんだろうなと、感じるが、何故かあまり報道されていない。

0
2023年01月20日

Posted by ブクログ

長い、長いけど、読み始めたら止まらない。思っていた内容とは全然違うコンゲーム、スパイ合戦。でも最後にそのスパイに好感を持ってしまう。NBCが報道を潰したことで結果的にこの本がベストセラーになっているから皮肉だ。本当にこんなことがあるんだな、事実は小説より奇なりだななどと感心している場合ではない。ボーイズクラブによって現実世界が捻じ曲げられているのは日本も同じ。むしろ、こうして証拠の握り潰しがちゃんとスキャンダルになったアメリカの方がまだ正常な方向に向かっていると思う。女性が声を上げ歪みをなくしていこうとするときに立ちはだかるバイアスやレッテルや抑圧を、これほどまでかと痛感させられる。アレンの息子でスーパーエリート男性というローナンだからこそここまで捨て身の報道ができたというのは間違いないので、やはり力というのはこういう風に使わないといけないと思う。日本もたとえば望月衣朔子さんがやっているのと同じことをエリート男性がやれば全然風当たりが違うはず。あとアメリカでは弁護士が報道の細部までチェックしていて(それが握り潰しの一端を担うこともあるが)、こういう活用の仕方があるよなと思った。

0
2022年10月16日

Posted by ブクログ

ハーヴェイワインスタインのセクハラレイプへの抗議の声をまとめるだけでも大変なのに、NBCからの裏切り工作にあって苦闘する様子が臨場感持って描かれている。
途中からスパイ映画もどきの展開で誰も彼もが敵のようだった。

0
2022年07月27日

Posted by ブクログ

権力者の男性による女性搾取の実像を書したドキュメンタリー本です。本来は、そのような暴力を暴く役割のはずの報道機関もそれを黙認していた事実も明らかにしています。
自由の国といわれ、日本に比べればはるかに女性の社会的地位が高いと言われるアメリカでも、このようなことが行われていることは残念です。
日本の映画界においても同様なことが行われていたことが、最近、明らかにされています。
このような状況が、この本の作者のようなまっとうなジャーナリスト、われわれ第三者の目や発言で、すこしでも改善されていくことを望みます。

0
2022年07月08日

Posted by ブクログ

ハリウッドの大御所プロデューサーとして長年業界に君臨する一方、その強力な立場を利用して女性への性的暴行を繰り返してきたハーヴェイ・ワインスタインの告発とその後の「Me Too ムーブメント」に繋がる調査報道でピューリッツァー賞を受賞した著者が、報道に至る経緯を克明に記した一冊。

長年にわたって多くの女性被害者が口を封じられ、業界関係者も見て見ぬふりをしてきたワインスタインの強大な権力に立ち向かう中で、著者は過去に報道を試みて失敗したジャーナリストや、告発を諦めざるを得なかった複数の被害者を味方につけ、慎重かつ執拗な調査で遂に決定的な証拠を掴むが、実際の報道に至るまでにはさらに想像を絶するような困難が立ちはだかる。そのような中でも報道にこぎつける著者の思いを支えたのは、父親であるウディ・アレンから性的虐待を受けた姉を守ることができなかったという贖罪の念もあったに違いない。

取材時に所属していたNBCでの報道が叶わず、それでもニューヨーカー誌からの報道にこぎつけるまでの道程は、ハリウッドやメディア業界がいかに「男性社会」としての堅牢な”加害者を守る”構造を維持しているか、またそれを打破するのがいかに困難かを如実に示しているが、これをハリウッドだけの特殊事情として片付けることも決して許されない。このサスペンス映画さながらの迫真のドキュメンタリーが映画化されることがあれば、ハリウッドが本当に変わったと言えるのかもしれない。

0
2022年06月05日

Posted by ブクログ

まず安心する翻訳のクオリティー。
カタカナ名ばかり出てくる本作であっても、土台がしっかりしているから苦に感じずに読み進められた。

取材対象と所属する組織の2つと戦う個人という、世の中にはあふれている、でも当事者となると強靭な精神力と意思が必要な状況のルポルタージュ。

0
2022年05月21日

Posted by ブクログ

♯Me Too運動はこの1冊のから始まったという。タイトルのキャッチ・アンド・キルとは、捕らえて殺すと直訳されるが、実際に殺されるという話では無いない。性的搾取、不正を揉み消す組織的な手段を説明するもの。本著は、ハリウッドを舞台とし、女優たちが如何に虐げられていたか、そのキャッチ・アンド・キルの構図を明らかにする。

イスラエルの会社であり事件の揉み消しに加担したブラックキューブ。諜報機関であり、イスラエルの国家諜報部と繋がりもあるスパイ組織。被害女優のスキャンダルや汚点を探し出し、逆に貶めて事件を封印する。メディアは、問題の中心人物の芸能界隈への権力により、思い切った行動が取れない。ーこんな話、日本でも聞いた事があるし、確かスノーデンも印象操作されていなかっただろうか。

女優のマッゴーワンやグティエレス。知らない名前はネットで検索すれば、画像が出てくる。日本にいると遠くの話のようだが、著名人を対象にした大事件だ。権力による性的搾取の正当化は、根深い問題。示談で成立するならば、リスクを取って加害者と敵対し、公開するインセンティブが低い。起こった事は取り返せず、自らを曝け出す手間やリスクを考えれば、示談金や見返りの方が良い。味を占めて常態化したり、他の被害を防ぐために立ち上がれれば良いが、疲労感の方が強い。しかし、これを許すと、金と権力のある輩は、好き放題。この構図に対し、♯Me Too運動はよく立ち上がったと思う。女性の連帯感は、自己防衛上も必要なのだ。

0
2022年11月09日

Posted by ブクログ

訳者・関美和さんのあとがきより
ー 「スキャンダルを捕らえて抹殺する」手法は「キャッチ・アンド・キル」と呼ばれ、一部のメディアの常套手段となっていた ー

被害者が口を閉ざすように、あらゆる手法で脅してきた。
事件を追うジャーナリストたちも身の危険を感じる。
金と権力さえあれば、黙らせることができる
そう、思わせてきた者たちのなんと醜いことか。

事件は解決したといえるだろうか。
ハーヴェイ・ワインスタインは裁判の結果
第3級強姦罪と第1級性的暴行罪で有罪判決を受け、懲役23年を言い渡され収監。

多くの被害者(明らかにされていない人含め)に終わりなどない。
苦しみから少しでも解放されることを願って止まない。

0
2022年07月30日

Posted by ブクログ

ハリウッド大御所プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインの性的虐待疑惑を追求した記者がその全容を記した作品。多くの人が彼の悪行を知りこれまでにも調査した人はいたが、金と権力で、メディア、政界、司法も加担しスパイ活動、囮調査などで葬り去ることができていた。著者が脅しや妨害に屈せず事件を明るみにしたことで、世界中に#MeToo運動が広がった。フィクションでも書けないような驚きの内容だった。被害者は自分にも落ち度があると感じ自分を責めるような思考になる、加害者はそこにつけ込む、また相手の弱点を見つけるよう画策し、なければ偽情報を拡散させるなど、手口は巧妙で卑劣だ。この事件後、その余波はメディア大手、政治家などに波及し同じ手口で女性の口を塞いでいたことも明るみになった。残念だがこれがアメリカ社会なんだろう。でもこれと似たようなことは身の回りで十分に起こりうるだろうと思う。知っておいて損はない参考になる作品だった。

0
2022年07月10日

「ノンフィクション」ランキング